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5月30日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月30日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「なぜ失敗の繰り返し? “首相会見”吊るし上げなきゃダメだ」

 <居酒屋が謝る必要なんてない 謝って責任を取らなければいけないのは無能な政治家連中だ><ろくな補償もせず、ただオリンピックのために無理強いをする政府や東京都のやり方に異議を唱えるとともに、再開するお店屋さんを応援したいと思います>

 以前なら、少しでもルールを破ると「自粛警察」のターゲットになったものだが、怒りの矛先は、無能無策の菅政権に向いている状況だ。

 「ここまで失敗を繰り返したら、国民が菅首相に苛立つのは当然です。国民に自粛をお願いするだけで、効果的なコロナ対策をまったく打とうとしない。水際対策に失敗し、PCR検査も拡大しようとしない。しかも、五輪開催だけは強行しようとしている。これでは新型コロナの感染拡大だってストップするはずがありません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 最悪なのは、このままでは国民が疲弊し、社会が荒廃しかねないことだ。

 「健全な社会は、いざという時、国家が助けてくれるという信頼感がなければ成り立ちません。信頼があれば、ギリギリの生活でも、国民はルールを守り、なんとか耐えられるものです。ところが“自助”を強調する菅首相は、国民に自粛を強いるだけで、手を差し伸べようとしない。国民に寄り添う気持ちが見えない。これでは、これまでルールを守り、我慢してきた国民だってバカらしくなりますよ。このまま菅政権が続いたら、日本社会は破壊されかねません」(五十嵐仁氏=前出)

 一刻も早くポンコツ首相を辞めさせないと、この国は取り返しのつかないことになる。


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5月25日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月25日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「国民から悲鳴 菅政権は本気で“自爆の五輪”に突っ込むのか」

 一方、菅首相はといえば世論の反発から逃げ回っている。沖縄への宣言追加発令を決定した21日、本来であれば会見が開かれるはずなのに、記者クラブのみのぶら下がり取材でゴマカシ。宣言の発令、追加、延長にあたって首相が会見しなかったのは初めてだ。渋々応じたぶら下がりも約5分半、計7回のやりとりのみ。

 会見見送りの理由を聞かれても「説明については適時適切に対応している」と真正面から答えず、五輪については「感染拡大防止に全力を尽くして、安心安全な大会にする」とナントカのひとつ覚えだ。五輪強行でさえトンデモないのに、ここへきて「観客あり開催」が急浮上。無観客を回避し、一定の観客を入れて開催すべきとの意見が政府や大会組織委員会で強まっているという。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「五輪を強行すればコロナ禍で不足している医療資源が引きはがされ、医療提供体制の崩壊が加速するでしょう。国民と五輪が限られた医療を奪い合うゼロサムに陥ってしまう。開催によって人の往来を増やせば、人流抑制によって感染を抑え込むという政府方針とも矛盾する。宣言下で酒類を提供する飲食店に休業を強いているのは、人の流れを抑え込むためではないのか。東京五輪の意義は復興五輪、人類が新型コロナに打ち勝った証し、世界の団結の象徴、絆を取り戻すなどとコロコロ変わってきた。要するに、今夏に開催する意義は何もないということの裏返し。形だけの開催にどれほどの意義があるのか。国民の反対も国際社会からの批判も受け止めず、政権浮揚に凝り固まって思考停止の菅首相は無為無策、無能無責任ですよ」

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5月21日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月21日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「暗愚の首相の居直り暴政 ポンコツ政権はつくづく有害」

 今国会は6月16日の会期末まで1カ月を切った。入管法改正案を断念したのは、日程的な問題もあり、与党側が重視する他の法案を成立させるためでもある。支持率は気にしているが、国民の声を重視しているわけではない。世論の関心が高まっていない法案は、実態がバレて反対の声が高まる前に今国会で成立させてしまう腹積もりだ。

 参院では三原じゅん子厚労副大臣の“遅刻”で厚労委が止まっていたが、19日、75歳以上の後期高齢者の医療費に関し、単身で年収200万円以上の人を対象に窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案が参院本会議で審議入りした。

 「現役世代の負担軽減は必要でしょうし、国会議員のような高収入の高齢者が医療費を今より多く負担することに異論はありませんが、年収200万円は余裕のある層ではない。生活保護を受けずにつつましく暮らしている高齢者の窓口負担が倍増したら、病院に行かれなくなる人が増える可能性がある。同時に政府は病床削減促進法案も進めていますが、これらは病床不足が深刻な問題になり、経済的な打撃を受けている人も多いコロナ禍で進めるべきことなのか。不要不急どころか庶民いじめの暴政です。入管法や日本学術会議の問題もそうですが、この政権は学問的知識や人権を軽視し、経済効率ばかり重んじる傾向がある。それが五輪の開催強行やコロナ対策の失敗にも表れているのですが、国民の目がコロナに向いているドサクサに紛れて居直り、国民投票法や原発事故汚染水の海洋放出なども火事場ドロボー的に押し通そうとしていることは看過できません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

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5月16日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月16日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「「総辞職は時間の問題」という声も 虚ろな首相はもう限界」

 分科会が反乱するのは当たり前だ。北海道も岡山も広島も感染拡大が止まらなくなっている。とくに北海道は13日、新規感染者が過去最多の712人も発生。いつ医療崩壊してもおかしくない状態である。「緊急宣言」を適用しない方が、どうかしている。

 「北海道について菅首相は、『重点措置の効果を見たい』などと悠長なことを言っていました。さすがに専門家は、あの一言に切れたのだと思う。今回決起した最大の理由は、菅首相に対する不信感でしょう。これだけ感染が広がり、大阪は医療崩壊しているのに現状を直視せず、現状を分かろうともしない菅首相の態度に堪忍袋の緒が切れたのだと思います」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 どうして菅政権はこれほどまでに後手後手、失敗続きなのか。そもそも、本気でコロナと向き合っているのかも疑問だ。

 「恐らく菅首相は、いま日本が国家的な危機に直面しているという認識さえないのだと思う。大阪という大都市で1万人以上が入院できないのは異常なことですよ。分科会のメンバーが反旗を翻したのも、菅首相にコロナに立ち向かう覚悟が見えなかったからでしょう。菅首相から透けて見えるのは、コロナ対策も五輪開催も、すべて政権維持のためだということです。五輪開催に執着しているためにコロナ対策が後手に回っていますが、その五輪開催も、アスリートのためではなく、政権浮揚のためなのは明らかです。菅さんは、総理になってはいけなかったのだと思います」(五十嵐仁氏=前出)

 分科会が造反したことで、菅内閣の総辞職も時間の問題だという見方が強まっている。これまでは分科会を利用して、「専門家の意見に従い」などと、もっともらしいことを口にして勝手なことをしてきたが、分科会がアンコントロールになったからだ。この先、分科会は「緊急宣言」の解除も簡単に認めないだろう。となれば、オリンピックの開催はますます難しくなる。五輪中止なら、菅政権は即刻、退陣となる可能性が高い。

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5月9日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月9日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「“バカの一つ覚え”に国民絶望 この政権では永遠に緊急事態」

 4都府県の緊急事態宣言を延長し、愛知、福岡両県の追加を決めた菅首相。7日夜の会見では、負担が続く国民に「深くおわびする」と陳謝したが、危機管理は結果がすべて。何度、頭を下げようがウンザリで、お決まりの決意はもうたくさんだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「GWを利用し『強力な対策を短期集中的に実施』と言った手前、菅首相は『人流の抑制』を成果のごとく、やたらに強調しますが、論点をズラさないでもらいたい。緊急事態宣言の目的は人流ではなく、あくまで『感染の抑制』です。感染者数は高止まり、重症患者は過去最多を更新。新たな宣言対象の2県のほか、『まん延防止等重点措置』の対象地域に北海道、岐阜、三重も追加されたことで、感染抑制は失敗したのです。ところが、菅首相は短期集中の是非を問われても、この期に及んで満足に答えない。『一人一人が意識を持って行動を』と、さも国民に非があるかのような発言も出ましたが、後手後手対応の揚げ句、緊急事態宣言や重点措置を乱発。自粛長期化で国民の危機意識を低下させたのは菅首相自身の責任で、内閣総辞職がスジです」

 恐ろしいのは、菅が五輪と同じ感覚で改憲の地ならしと台湾海峡有事に着々と備えていそうなことだ。

 昨夜の会見でも憲法の緊急事態条項創設について問われ、「新型コロナウイルス禍で緊急事態への国民の関心は高まっている」とシレッと回答。火事場ドロボー的感覚を隠しもしない。

 4月の日米首脳会談の共同声明でも菅は52年ぶりに「台湾」を明記。「自らの防衛力を強化することを決意した」と米国に誓った。防衛省は既に南西諸島に陸自ミサイル部隊の配備を進め、12式地対艦誘導弾の射程を改良し、約900キロまで大幅に延伸。相手の射程圏外から攻撃可能な「スタンド・オフ・ミサイル」計画を推進中だ。

 「仮想敵」はどう考えても中国だ。この計画は弾道ミサイル攻撃を相手国内で阻止する「敵基地攻撃」への転用も可能とされ、台湾有事に備えた米国の軍事行動への協力を求められる可能性も取りざたされている。要するに菅は自ら進んで米中対立に巻き込まれる危険な道を選んだに等しい。

 「まるで菅首相はコロナ対策よりも総選挙対策が最優先。強固な保守層を取り込むためのリップサービスかもしれませんが、コロナ禍の国民の不安や嫌中感情につけ込んだ惨事便乗型の政治姿勢は極めて危うい。政治的目的の達成には、緊急事態が長引いた方が都合がよい。まさか、そんなヨコシマな思惑にとらわれているのではないかと勘繰りたくなるほどです」(五十嵐仁氏=前出)

 有事をあおる菅は火事場ドロボーを上回る「火付盗賊」。国民が亡国政権の悪辣に決起しなければ、この国では緊急事態が永遠に続いてもおかしくないのだ。

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5月5日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月3日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「しがみつく菅義偉に退場勧告 ボンクラ政権が続く損得」

 菅は「最強の官房長官」ともてはやされた気分が抜けないのか、まるで自分が見えていない。今や強力に補佐する人材は皆無。菅は「自らの政策に反対する官僚は異動させる」と公言し、しばしば執務室で部下をドヤす。そんな目に遭うのは御免と、官邸スタッフは菅を腫れ物扱いだ。

 閣僚も一体感に乏しい。安倍前首相の頃の国会は、野党議員が質問すると各閣僚が一斉に手を挙げ、弾よけになって安倍をかばおうとした。そんな忠誠心争いの光景は消え、菅本人が渋々、答弁に立つ場面も目立つ。

 むしろ、次の総理を目指す河野行革相や茂木外相、加藤官房長官らは、9月の総裁選での“看板スゲ替え”を念頭に、最近は菅と意思疎通を図らず距離を置いているようにも映る。

 「この政権が長続きするとは誰も思っていないでしょう。新型コロナ対策の無為無策、説明能力とリーダーシップの欠如を嫌というほど見せつけられれば仕方ない。菅首相は無派閥で党内基盤は脆弱です。後ろ盾の二階幹事長が見切りを付けたら、あっという間に“菅降ろし”が始まりますよ」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 もともと総理の器でなかったとはいえ、誰もが見放しつつある政権の行く末はどうなるのか。

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5月4日(火) 「戦争法」施行から5年 憲法記念日の今考える(その2) [論攷]

〔以下のインタビューは民主青年同盟の『民主青年新聞』3087号、2021年5月3日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕


 共闘につながる転換点

――歴史の転換点という見方もありました。

 大きな転換だったと思います。15年8月30日、国会前には12万人が集まり、国会前や官邸前の集会はひんぱんに行われ、衆院での強行採決後は毎日開かれていました。何かあれば、そこで声を上げるのが当たり前になった。そういった点では「民主主義の覚醒」と言いますか、「NOを言える社会」になったということだと思います。
 少し振り返れば、08年の年越し派遣村、11年の脱原発運動を経て、15年の安保反対運動で大きな盛り上がりを見せました。特に特徴的なのが、組織化されていない広範な市民が自らの判断で運動に加わったことです。学生団体のSEALDsやママの会など、それまで政治や運動に関わってこなかった青年・学生、女性も大きな役割を果たしました。

――今の「野党共闘」へどうつながるのでしょうか。

 当初は、戦争法反対運動の中で「野党は共闘」という声が上がるようになりました。少数派は手を組まなければ大きな力にならないということを、運動の中で市民も野党も学んだと思います。そして、野党が共闘したからこそ、60年・70年に次ぐ第三の安保闘争と言われる大きな運動を生み出すことができた。こうした声に応える形で、日本共産党が安保法制が強行されたその日(15年9月19日)に「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」を提唱しました。これをきっかけに、選挙に向けて共闘を発展させようという機運が高まり、翌16年7月の参院選での共闘が成立したわけです。その結果、32ある1人区のうち11区で勝利するという、大きな成果を上げました。その後、紆余曲折はありながらも共闘は維持・発展して現在に至り、今年の総選挙で全面的に開花するチャンスが高まっていると思います。

 政治を変えるための学びを

――若者に伝えたいことをお願いします。

 コロナの感染拡大によって、青年や女性、ひとり親家庭など弱い立場の人々の生活苦、困難が増えてきています。しかし、安保法制でもコロナ対策でも、今の政府は若者の未来を奪うようなことをし続けている。ここをしっかりと見抜かなければなりません。皆さんには、若者の命と暮らし、未来に寄り添う青年組織であってほしいと思います。
 その上で、若者には三つのことを期待したい。一つは、忖度したり空気を読んで同調したりしてしまう日本社会の悪しき風潮を打ち破り、言うべきことを言い、やるべきことをやる勇気を持ってもらいたい。二つには、コロナ禍で社会や政治の実像が見えにくくなりフェイクニュースやデマが飛び交う中、事実に基づいて判断し真実を見抜く知性を磨くことです。そして第三に、このような勇気や知性にもとづいて、世の中の不条理や不正義を正すために立ち上がる行動力を身に付けて欲しい。
 そのために貪欲に学ぶことが何よりも必要です。そうして、政治を変える先駆者になっていただきたい。明日の天気は変えられなくても、明日の政治は変えられるのですから。


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5月3日(月) 「戦争法」施行から5年 憲法記念日の今考える(その1) [論攷]

 〔以下のインタビューは民主青年同盟の『民主青年新聞』3087号、2021年5月3日付、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 安保法制=戦争法の施行(16年3月29日)から5年を迎えました。平和主義を掲げる日本の形を大きく変えた政策転換と、それに対し空前の規模で行われた反対運動から今の「野党共闘」にどうつながっているのか、法政大学名誉教授の五十嵐仁さんに話を聞きました。

 青年の未来に関わる問題

 ――安保法制の制定時、何が行われたのでしょうか。

 安保法制(戦争法)の根本的な問題は、それまでの政府解釈でも認められなかった「集団的自衛権」について一部容認へと転換してしまったことです。同盟国に対する攻撃を自国に対する攻撃とみなして反撃する集団的自衛権は認められず、「専守防衛」の立場を守るというのが「国是」でした。ところが閣議決定(14年7月1日)で覆してしまった。それは憲法前文や9条の平和主義に反すると小林節さんら憲法学者や法律家の大部分が反対したにもかかわらず、法制化しようとしました。このような立憲主義の違反に加え、多くの反対意見を押し切って強行採決して民主主義を破壊した。このように平和主義・立憲主義・民主主義という3点について違反するという問題が明らかになったことが、広範な国民的反対運動を引き起こす要因になったと思います。
 安倍政権を引き継いだ菅政権においても、コロナ禍の陰で極めて危険な方向へと政治が動いています。日米共同声明でアメリカと共に中国と対峙することを約束してしまった。アメリカの要請に応じて、アメリカと一緒に「戦争できる国」づくりを進めてきた安倍政権以来の路線が、米中対立に巻き込まれる形で具体化しようとしています。戦争法制定時に想定されていたのは「中東有事」でしたが、今は「台湾有事」。そうなれば〝日本有事〟に直結するリスクが高まる。戦争になったらまず若者から動員されますから、これは青年の未来にかかわる非常に重大な問題です。
 強権で異論を排除するのも安倍政権から菅政権に引き継がれた悪しき〝遺産〟です。戦争法などに反対した学者6人の日本学術会議会員への任命拒否はその最たる例ですね。コロナ対策も専門家の意見を尊重せず、科学的知見を軽視するという問題があります。その走りが、戦争法の憲法解釈で法律家の反対を押し切って立憲主義を踏みにじった「成功体験」にあったのではないでしょうか。

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5月1日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』5月1日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「このまま本土決戦? 五輪を中止にできない“戦前と同じ国”」

 全国3600万人のうち首都圏に住む65歳以上の高齢者は約900万人だが、5月末に東京で始まる予定の大規模接種センターが想定しているのは1日1万人への接種とされる。3カ月後の8月末でも90万人で、1割がやっとだ。

 米国では1日に約300万人が接種を受け、すでに2億回に達したというのに、日本はまだ全国で200万回強で100分の1だ。この差は何なのか。国力を総動員の準戦時体制でもこのありさまでは、常識的にも能力的にも五輪開催は不可能だろう。自衛隊の医官を動員する国難なのは間違いないが、それは国民の安全と健康を維持するためであり、決して五輪のためではないはずだ。

 「国民の多くは、五輪開催は無理だと思っているはずです。五輪のために医療リソースが割かれ、国民の健康や生命を犠牲にすることなど倫理的にもあり得ないし、それは近代五輪の精神にも反する。しかし菅首相は、五輪を開催さえすれば国民世論が盛り上がり、秋までの解散・総選挙で有利だという思惑から、撤退は念頭にないのでしょう。五輪の成功しか政権浮揚の打開策がないからです。神風が吹くことをひたすら願っている。強行開催すれば、日本がウイルスをバラまいて国際的な批判を受ける可能性もありますが、もし不測の事態が起きても、五輪スポンサーでもあるメディアを使って『大成功』の虚偽報道を繰り返し、選挙になだれ込むつもりでしょう」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 海外メディアが懸念を示したように“一大感染イベント”になる可能性も、日本発のウイルスをバラまいて国際的な批判を浴びるリスクもおそらく分かっているが、希望的観測にすがっている。国民世論を考慮すれば、五輪中止をブチ上げた方が支持を得られる可能性は高いのだが、非科学的な精神論で突き進もうとしているのだ。

 「いまの政府がやっていることは、科学的データを軽視して戦線を見誤り、戦力の逐次投入で失敗し、最後は精神論で乗り越えようとした戦前の軍部と同じ神頼みです。上層部のメンツのために中止を決断できず、我慢を強いられる一方の国民が犠牲になる。仮になんとか五輪を開催できても、その後の感染爆発の引き金になり、本土決戦は焼け野原になりかねません」(五十嵐仁氏=前出)

 一度決めたことは止められない。それで誰も責任を取らない。そういう「国の在り方」が戦前と変わっていないことが恐ろしい。この国は何度、同じ過ちを繰り返せば気が済むのか。

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