6月30日(土) 強引な手法による強行突破は焦りの現れ? [国会]
時間の経つのは早いものです。今日で、1年の前半が終わってしまうのですから……。
その時間を惜しむかのように、またもや強行に次ぐ強行です。通常国会は始まる前から150日と決まっているのに、何を慌ててバタバタやっているでしょうか。5000万件にも及ぶ「宙に浮いた年金」問題について、安倍首相は通常国会開幕直後の2月頃から知っていたというのに……。
しかも、会期まで延長しての強行です。「会期延長しても混乱を防止できないなら、延長の意味がない」と、扇千景参院議長の批判するとおりでしょう。
「宙に浮いた年金」問題を受けた年金時効撤廃特例法と社会保険庁を解体する社保庁改革関連法が、今日未明の参院本会議で自民・公明両党の賛成多数で可決・成立しました。社会保険庁改革関連法と年金時効特例法も今日未明に成立しました。
安倍首相が国会の会期を延長してまで成立に執念を燃やしていた改正国家公務員法も、今日の午前3時前に成立しています。民主党議員が委員長を務める参院内閣委員会では採決しなかったため、与党はこれを省略し、本会議で「中間報告」を強いて直接採決する強硬手段をとりました。
これに反発した民主・社民・国民新党が退席するという異常事態で、議会運営のルールも何もあったものではありません。安倍首相の強引なやり方での強行突破を象徴するような光景です。
今度の国会が、どれほど異常であったか、与党の強硬が目立ったか。これについて、『毎日新聞』の記事「目立った『強硬』与党」が明らかにしています。
これによれば、「野党が委員長席に詰め寄るなど採決が混乱したケースは衆院だけで計14回」だそうです。「あっても1国会2、3回」という状況の下では、まさに「異常な突出ぶり」だと言って良いでしょう。
野党との合意がないままでの与党委員長職権での委員会開催は「衆院だけで計53回」にも上ります。予算の審議がピークを迎えた「3月は最多の15回に及んだ」といいますから、「強硬」な議会運営は最近になってからだというわけではありません。
このような与党の強硬ぶりは、国会最終盤で一段と目立ちました。年金の記録漏れ問題での批判の高まりと内閣支持率の急落に焦りを深めた安倍首相が、一度は諦めたかに見えた重要法案の成立に固執し、国会運営に強力に介入したからです。
参院選の街頭演説で、「私はこれだけのことをやりました」ろ、宣伝カーの上で胸を張りたいということなのでしょう。全ては、安倍さんの我が儘から発したことです。
『毎日新聞』は、「官邸は法案を出しすぎだ、委員会審議が大渋滞を起こした」(自民党国対幹部)という不満が与党内に残っていると伝えています。結局は、このような「大渋滞」は力ずくで解消されてしまったというわけです。
このようにして、無理に無理を重ねて改正国家公務員法、年金時効撤廃特例法、社保庁改革関連法法が成立しました。でも、果たして、それほどの意味があったのでしょうか。
今日の『日経新聞』には、「天下り規制 実効性に課題」という記事が出ています。安倍首相が会期を延長してまでこだわった改正国家公務員法についての記事です。
「天下り規制」という点では、「どこまで実態が変わるかは不透明」で、実際に役に立つかどうか分からないというのです。役に立つかどうか分からない法律のために、これほどの政治的エネルギーと時間が費やされ、参院選の投票日まで延期されたのです。なんということでしょうか。
この改正国家公務員法を成立させるために、参院自民党は内閣委員会から法案を取り上げて採決を強行する「中間報告」という“奇策”を弄しました。委員会審議の空洞化を指摘する記者に、片山参院幹事長は「それじゃ、どうすりゃいいんだ。廃案にすればいいのか」と、反論したそうです(『毎日新聞』6月30日付)。
そうです。「廃案にすればいい」のです。
「どこまで実態が変わるかは不透明」な法案のために、議会審議を空洞化させたり歪めたりすることは許されません。片山さんは、安倍さんの我が儘を通すために参院の空洞化に手を貸したのです。
野党は、法案の成立を阻止するために、参院で柳沢伯夫厚生労働相の問責決議案、首相に対する問責決議案、鶴保庸介参院厚労委員長(自民党)解任決議案、衆院で内閣不信任案を連発して抵抗しました。これに対して、中川自民党幹事長は「国民全体の利益より選挙を考えたパフォーマンスだ」と批判しています。
しかし、「選挙を考えたパフォーマンス」を行ったのは自民党の方でしょう。午前3時前という異常な時間に採決を強行したのは、自民党の都合によるものなんですから……。
自民党の青木参院議員会長は、本会議を深夜に休憩として、今日の朝に再開する「分離開催案」が浮上したとき、「選挙前の土曜日が1日つぶれてしまう。一気にやった方がいい」と、これを拒んで徹夜国会を厳命したそうです。“選挙のためには強行採決も徹夜も辞さず”というのは、「選挙を考えたパフォーマンス」そのものではありませんか。
『諸君!』8月号は、「安倍政権、墜落す!」という衝撃的な見出しの記事を掲載しています。あの『諸君!』でさえ、「底なしの支持率凋落と無党派層の不気味な沈黙。参院選後の劇的展開はもはや不可避だ」と“覚悟”したようです。
その“覚悟”を無駄にしないように、きっちりと「墜落」させなければなりません。強引な手法による強行突破にしっぺ返しする機会は、1ヵ月後に迫っているのですから……。
ブログを始めました [日常]
この間、大原研究所のサーバーがダウンし、たくさんの方にご心配をおかけすることになりました。申し訳ありません。
研究所のサーバーは古く、5月始め頃から、毎週末になるとダウンを繰り返していました。時々、繋がらなくなることに気がつかれていた読者の方も多かったでしょう。
「危ない」と思った私は早急に善処することを求めましたが、そこまで手が回らないうちに、力尽きてしまったというわけです。大学が一斉に停電した後、サーバーに電源が入らなくなってしまいました。
電源が入らなければ、機械は動きません。このまま再生しなければ、サーバーに入れられていた記録は基本的に失われることになります。
ということで、この機会に、新たな地平へと踏み出すことを決意しました。今はやりのブログとやらを、試みてみようというわけです。
まだ、始めたばかりで良く分かりません。“よちよち歩き”になると思いますが、徐々に充実させていこうと思っていますので、お付き合いいただければ幸いです。
6月23日(土) そのうち、外からも「弾」が飛んでくる [内閣]
以下の文章は、6月23日にアップする予定だったものです。しかし、サーバーのダウンによってアップできなくなりました。
少し、古くなりましたが、せっかく書いたものでもありますので、「引っ越し」のご挨拶をかねて掲載させていただきます。
ここから、本文。
安倍首相は心休まらない日々を過ごしているに違いありません。参院選を前にして、頭の痛い問題が山積しているからです。
最大の問題は国会の会期延長が吉と出るか凶と出るか、でしょう。国会審議がどうなるかという問題もありますが、投票日が変わったために各方面でさまざまな混乱と膨大な無駄が生じているからです。
その責任の全てを、安倍首相自身が引き受けなければなりません。与党も参院も渋っていたのに安倍さんがごり押ししたわけですから、それは当然です。
安倍首相は、前任者の小泉さんの真似をしようとしているのです。郵政法案を参院で否決されて窮地に陥った小泉前首相は、衆院を解散して総選挙に打って出、「刺客」を放って「小泉劇場」を演出し、あれよあれよという間に大勝利を博しました。
この小泉さんの「一発逆転劇」を間近で見ていたのが安倍さんです。そのときの「成功体験」によって判断を狂わされ、多分、安倍さんはこう思いこんでいるのではないでしょうか。
「どれほど追い込まれても、自説を曲げず、あくまでも貫くことが大切だ」「強いリーダシップを示すことができれば、再度の一発逆転は可能だ」と……。
しかし、安倍さんは小泉さんではありません。小泉さんほどのシナリオ作成能力はなく、演技者としての力も、数段、劣ることは明らかです。
しかも、ここにきて、海外からも安倍さんを悩ます「弾」が飛んでこようとしています。ヒル国務次官補の訪朝によって米朝協議が進展し、アメリカ議会で従軍慰安婦決議が採択されそうなのです。
ヒル訪朝は6ヵ国協議再開のための準備で、韓国に戻ったヒルさんは今年2月の6カ国協議での核放棄に向けた合意を完全に履行することを米朝両国が確認したとし、「北朝鮮は寧辺の核施設の稼働を停止、使えなくする用意がある」とも語りました。「1カ月以内にも米朝国交樹立」との情報があるといいますから、そのための打ち合わせがなされた可能性もあります。
6ヵ国協議が再開され、拉致問題とは別個に核放棄に向けての動きが進めば、日本は孤立します。拉致問題での進展がなければ、北朝鮮への支援再開には応じられないと言っているからです。
他方、米下院外交委員会での従軍慰安婦決議は26日(火)に採択される予定だと伝えられています。ヒョッとすると全会一致になるかもしれず、本会議でも可決される可能性が高いといいます。
日本の国会議員などがワシントン・ポスト紙に従軍慰安婦について出した意見広告『THE FACTS』が反発を招いたからです。自民党有志議員でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相、歴史教育議連)が6月19日に公表した南京大虐殺はなかったとする調査検証結果も、火に油を注ぐ結果になりました。
これまでは、日米関係への配慮から決議に消極的だった下院議員も、日本国内に従軍慰安婦や南京大虐殺を公然と否定する議員が多くいることに驚いたのでしょう。そのような議員が選挙で選ばれているということに、強い危機感を持ち始めたのかもしれません。
もし、米下院で従軍慰安婦についての決議が採択され、7月上旬とされている6ヵ国協議で日本の孤立化が明らかになれば、安倍政権は外交でも大失敗を犯したことになります。選挙を前にして、「売り物」だった外交での失態は大きな打撃になることでしょう。
とはいえ、今となっては取り返すことができません。アメリカがどう動くか。これから参院選投票日までの1ヵ月以上、安倍首相にとっては、眠れない夜が続くことになるでしょう。
この先、事態がこのように動くとすれば、アメリカは安倍さんを見限ったということを意味します。そしてそれは、「脱自民党」時代に向けての幕開けとなるかもしれません。