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9月3日(水) 「代わったけれど、変わらない」滞貨積み残しの内閣改造 [内閣]

 これでは、「代わったけれど、変わらない」と言うべきでしょう。自民党の党役員と内閣の顔ぶれは確かに代わりましたが、その骨格に変化はなかったのですから……。
 過去の改造では「滞貨一掃内閣」などと言われることもありましたが、今回の改造で「滞貨」は一掃されませんでした。いわば、「滞貨積み残し内閣」です。

 こうなった理由は、はっきりしています。安倍首相が、本当は改造などしたくなかったからです。
 しかし、第2次安倍内閣が発足してから1年8か月にもなり、衆院5回以上、参院3回以上の「大臣適齢期」に達した議員が59人もいるそうです。これらの「入閣待望組」の不満が募っている現状を放置できなくなりました。
 というわけで、党役員人事と内閣改造を決断したわけですが、これまでの骨格を変えたくないために主要閣僚は軒並み留任しました。だから、内閣の基本も政策の方向も「変わらない」ということです。

 自民党の3役は全員交代しましたが、「官邸主導」が確立していますから顔ぶれを変えても大きな影響はないと考えたのでしょう。それでも、安倍さんなりの工夫をうかがうことはできます。
 最も注目されるのは石破幹事長の後任に自民党総裁の経験者である谷垣禎一前法相を据えたことで、その他の3役として総務会長には二階俊博さん、政調会長には稲田朋美さんを起用しました。加藤紘一さんに近く穏健なリベラル派で中国とも関係の深い谷垣さんや、旧田中派の流れを汲む二階さんなどのベテランの起用は、選挙の看板として利用するためであるとともに、党内の結束を図りつつ総裁再選への布石を打ち、公明党との関係を強め、中国との関係改善を期待してのものであると思われます。
 保守派の論客として知られる稲田さんの起用は、安倍さんに近い女性議員の知名度を上げ後継者として育てる意図があってのことでしょう。このような役員体制の強化は、一面では政権基盤を安定させるかもしれませんが、他面では役員の力を強め消費税の10%への引き上げや対中国政策などで政府との不協和音を生み出すリスクもあります。

 希望していた幹事長の続投を断念させられた石破茂さんは、地方創生担当相として閣内に取り込まれることになりました。これは石破さんの敗北ではありますが、必ずしも安倍首相の勝利とは言えません。
 先の総裁選挙で自民党の地方組織の支持では安倍さんを上回っていた石破さんは、もともと地方に強い基盤を持っています。「地方創生」の看板を掲げてこの基盤強化に取り組んで総裁選に向けての力を蓄えることができるわけですから、石破さんにとってもマイナスとは言えないでしょう。
 それに、安倍内閣としては「集団的自衛権の行使容認について意見が違う」ことを公言した異分子を抱え込んだことになり、「閣内不一致」で追及される可能性があります。今後の国会審議などで答弁を求められたとき、石破さんは安倍首相の方針を受け入れるのでしょうか、それとも自己の信念に従うのでしょうか。

 今回の改造では女性の起用も注目され、高市早苗総務相、山谷えり子拉致問題担当相、有村治子女性活躍推進相、小渕優子経済産業相、松島みどり法相の5人が入閣し、過去最多に並びました。安倍首相としては、女性の活用を訴えていた自らの言葉に縛られた結果だといえます。
 特に注目されるのは、これまでも数々の問題発言を繰り返してきた高市総務相であり、男女共同参画や夫婦別姓に反対する山谷拉致担当相です。閣僚としては歴史認識問題などでの持論を封印した稲田さんを含め、これら安倍首相に近い右翼的な女性大臣や党幹部が今後どのような言動をするのか、注視する必要があるでしょう。
 5人の大臣はいずれも女性であるが故の入閣とみられ、それぞれの担当分野をこなせるだけの能力を持っているかどうかは未知数です。大臣への女性抜擢はその活躍推進の象徴として必ずしも悪いわけではありませんが、それなりの実績を示すことができなければ単なるパフォーマンスと人気取りにすぎなくなり、国民の批判を受けることになるでしょう。

 このような骨格の維持や石破さんの取り込み、女性の重用などの結果、18人という大臣の枠は次々と埋まってしまいました。同時に、実務重視の布陣としたために塩崎恭久元  官房長官の再登場もあります。
 その結果、女性以外の新しい顔ぶれは、西川公也農林水産相、江渡聡徳防衛・安保法制担当相、竹下亘復興相、山口俊一科学技術相の5人にすぎなくなりました。59人もいると言われていた入閣待望組の1割に満たず、大半は「積み残された」わけですから党内の不満がうっ積するのは避けられないでしょう。
 今回の改造では、マスコミ報道で従来以上のバカ騒ぎが目につきましたが、これは国民の関心を高めて支持率を回復したいという官邸側の思惑にマスコミが乗せられた結果だと思われます。しかし、このような変わり映えのしない顔ぶれでは限界があり、その思惑通りにいくのでしょうか。

 安倍内閣の支持率の低下傾向も、改造への「ご祝儀」で一時的に増えるかもしれませんが、結局は「代えたけれど、変わらない」ということになるかもしれません。果たして、これまで以上に重要課題が山積する秋の政局を、このような陣容で乗り切ることができるのでしょうか。

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6月24日(火) 「峠」を越えた安倍内閣にさらなる追撃を [内閣]

 通常国会の最終盤、「決めてはならない」法律を次々と決めてしまったときが「峠」だったのかもしれません。国会が幕を閉じた途端、あちらでもこちらでもボロが出てきたようです。

 このブログでも厳しく批判した東京都議会でのセクハラ野次ですが、それを発した一人が名乗り出ました。大田区選出の鈴木章浩都議です。
 まだ、何のかんのと言い訳をしています。どれほど人権感覚を欠いた許されざる野次だったのか、まったく自覚がないようです。
 このような人は議員を続ける資格がありません。責任を認めて、きっぱりと都議を辞職するべきでしょう。

 辞職に値するのは、石原伸晃環境相も同様です。除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設計画をめぐって「最後は金目でしょ」と発言した石原環境相も、福島を訪れて関係者に謝罪しました。
 「あの親にしてこの子あり」と言うべきでしょうか。父親の慎太郎と同様に息子の伸晃も、これまで何回も問題発言や失言を繰り返してきました。
 政治家としての資質や人間性に大きな欠陥があるという点も父親譲りで、大臣にはふさわしくありません。責任を取って、環境相を辞任するべきでしょう。

 大臣にふさわしくないと言えば、この人もそうです。「ナチスの手口に学んだらどうか」と発言して欧米諸国などから厳しい批判を浴びた麻生太郎副総理兼財務相が、またもや問題発言を行いました。
 集団的自衛権をめぐるたとえ話の中で、いじめの対象となる子の条件について「勉強はできない、けんかは弱い、だけど金持ちの子、これが一番やられる」と発言したのです。深刻化するいじめ問題について政府が対策に乗り出しているときに、このような条件がそろえばいじめられても仕方がないかのような発言は許されません。
 総理もろくに勤まらなかったこの人が今も副総理兼財務相になっているというのが、そもそもの間違いなのです。前回の失言に続いて今回の問題発言と、イエローカードを2回もらったようなものですから、とっとと退場するべきでしょう。

 なんだか、失言や妄言で失速した第1次安倍内閣に似てきました。実質的には「政権末期」の様相を呈してきたということでしょうか。
 「水に落ちた犬を打て」と魯迅が言ったように、「峠」を越えて下り坂にさしかかった安倍内閣をさらに追い込んでくことが必要です。戦争狂いの安倍首相による「魔の閣議決定」を阻止するために……。

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4月2日(水) 「誤解されたくない」と言うのであれば武器輸出三原則を堅持すべきだ [内閣]

 これはまさか、エイプリルフールの「嘘」ではないでしょうね。武器輸出三原則の緩和についての閣議決定です。
 「死の商人」に成り下がる道を日本に押し付けようというのでしょうか。安倍首相は武器輸出三原則の名称を「防衛装備移転三原則」と変えることで、原則的に武器輸出を自由化しようとしています。

 政府は1日、武器輸出三原則に代わる新たなルールを閣議決定しました。紛争当事国などへの禁輸方針は堅持するとしたうえで、「日本の安全保障に資する」など一定の条件を満たせば輸出を認めるというのです。
 ここで決められた新たなルールは「防衛装備移転三原則」として、①国際的な平和と安全の維持を妨げる場合は輸出しない、②輸出を認める場合を限定して厳格に審査する、③目的外使用と第三国移転は適正管理が確保される場合に限るというものです。
 そのうえで、審査の流れを透明化するとして、貿易を所管する経済産業省が審査し、その後に外務省と防衛省、国家安全保障会議(NSC)の事務局が加わり、外交的、技術的な視点も交えて審議するそうです。過去に扱ったことのない案件などについては、NSCの下で局長級会議を開いて協議し、さらに慎重さを要する案件はNSCの閣僚会合で判断するとされています。

 このように、これまで武器の輸出は例外とされてきましたが、今後は一定の審査を通れば輸出が可能となります。基本的に禁止されていた原則が解禁され、基本的に自由にしてそのための条件が明示されるわけで、ほぼ180度の転換だと言って良いでしょう。
 しかも、この条件とは、「平和貢献、国際協力の積極的な推進や、わが国の安全保障に資する場合に認める」などというものです、何が「安全保障に資する」のかは曖昧にされたままで、その内容についての判断は最終的に政権側の裁量に委ねられています。
 特定秘密保護法で、何が特定秘密に当たる情報なのかは曖昧にされたままで、その内容についての判断が最終的に政権側の裁量に委ねられているのと全く同じです。これに対するチェック機能は、どのような形で働くのでしょうか。

 そもそも、武器やそのための技術を提供することが平和を増進し、安全を高めることに繋がるという発想自体が間違いです。武力によって平和を守るという安全保障観は時代遅れであり、そのような形で相手国との関係を強めたり、信頼関係を築こうとするのは邪道だと言うべきでしょう。
 しかも、これまでの軍縮・軍備管理に向けての国際社会の努力に対する挑戦であり、真っ向から敵対するものです。提供された武器や技術が、いつ、どのような形で紛争当事国や武装集団などに回るかは分からず、武器の総量を増大させる愚行は間接的に世界の紛争を拡大させ、問題の解決を遅らせることになります。
 それを分かっていての転換ですから、日本国憲法の平和主義原則を歪め、「平和国家」としての日本のイメージも大きく転換させることになるでしょう。ひいては国際社会における信頼感の喪失に繋がることは避けられません。

 さらに、そのやり方も問題です。武器輸出三原則の転換に当たって、国会での審議を経ることなく閣議決定によって一方的に変更したからです。
 集団的自衛権の行使容認という大転換も同じようにやられようとしています。しかし、今回は「安保法制懇」のような諮問機関の答申を受けてという形ではありません。
 手続き上の形を取り繕うことさえ省略された暴挙だと言えるでしょう。武器輸出三原則が形骸化していたからと言うのであれば、それを厳格化するべきであって、緩めるというのでは話があべこべです。

 現在の日本は右傾化し、軍国主義化しているのではないかと、国際社会から疑いの目で見られています。安倍首相は、常々、それは誤解だと抗弁してきました。
 もし、このような見方が誤解だと言いたいのであれば、そのように見られる言動を慎むべきでしょう。しかし、従軍慰安婦など歴史認識への曖昧な態度、国家安全保障会議の設置や特定秘密保護法の制定、靖国神社への参拝、集団的自衛権の行使容認への執念などによって自ら「誤解」を広めてきたうえに、今回また武器輸出の原則自由化を図ろうというわけですから、逆に、日本の右傾化と軍国主義化を裏付けるようなものではありませんか。
 「そうではない」と言いたければ、武器輸出三原則を緩和せずもっと厳格に運用し、国際的な軍縮・軍備管理の先頭に立つことによって「誤解」の一端を解消するべきでしょう。もちろん、集団的自衛権の行使容認などもきっぱりと断念しなければ、このような「誤解」を完全に晴らすことは無理でしょうけれど……。
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9月7日(土) このような人物が官房長官であることの方にこそ「非常に違和感がある」 [内閣]

 注目の夏季オリンピックの開催都市決定が、明日に迫ってきました。日本時間では明日8日(日)の早朝に結果が明らかになります。

 オリンピックが開かれれば経済効果が大きいというわけで、安倍政権は招致成功のためになりふり構わない働きかけを行っています。その一つが皇室の利用です。
 宮内庁は9月2日、高円宮妃久子さんがアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる2020年の開催都市を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会に出席すると発表しました。東日本大震災支援への感謝を表すスピーチをするということですが、「皇室は招致活動に参加しない」との姿勢を守ってきた宮内庁は、風岡典之長官が記者会見して「苦渋の決断をした。天皇、皇后両陛下もご案じになっていらっしゃるのではないか」と異例の発言を行いました。
 皇族がIOC総会に出席するのは初めてで、下村博文文部科学相が宮内庁を訪れて総会出席を要請し、官邸からも要請があったそうです。これに対して、菅官房長官は「宮内庁長官の立場で両陛下の思いを推測して言及したことは非常に違和感を感じている」と苦言を呈しました。

 しかし、久子さんの出席とメッセージが、オリンピック招致活動の一環でないとすれば、何なのでしょうか。なぜ、この時期に、わざわざ地球の裏側まで出かけて、このようなメッセージを述べる必要があるのでしょうか。
 それはやはり、オリンピック招致を有利にするためである言うしかないでしょう。その意味では、高円宮妃という皇室の一員の政治利用であるだけでなく、東日本大震災という国民的災厄をそのための口実として利用しているというしかありません。
 これに対して宮内庁長官が懸念を示したのは当然であり、それに「違和感」を感じる菅官房長官の方にこそ問題があると言うべきでしょう。本来であれば、菅官房長官は憲法の規定に抵触する、このような皇室の政治利用に目を光らせ、そのような意見や動きを未然に防ぐべき立場にあるはずです。

 「違和感」と言えば、最高裁判事に就任した山本庸幸前内閣法制局長官が集団的自衛権の行使容認問題について「解釈の変更で対応するのは非常に難しい。実現するためには憲法改正をした方が適切だ」と述べた時にも、同じような発言を行っています。菅官房長官は8月21日の記者会見で、「最高裁判事が公の場で憲法改正の必要性まで言及したことについて、非常に違和感がある」と反論しました。
 安倍政権は、憲法解釈見直しの議論を加速させる構えで、政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を本格的に再始動させました。同時に山本さんのクビを切り、後任に解釈見直しに前向きな小松一郎前駐仏大使を起用しています。
 これは法制局長官を代えることで憲法解釈を変更しようという強引なやり方で、許されるものではありません。ストライクを取るためにアンパイアを変えるようなもので、反発が出るのも当然です。
 菅さんは発言に文句を付けるのではなく、集団的自衛権の行使容認に道を開くために慣例を無視して法制局長官人事に介入するという禁じ手を用いた安倍首相の方をたしなめるべきでした。内閣の番頭としては、文句を言うべき相手を間違えていると言わなければなりません。

 さらに、松江市教育委員会が漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を全小中学校に求めた問題でも、菅官房長官は当初、下村文科相と共に妥当な判断だとの見解を述べて援護射撃を行っていました。これも、本来であればきちんと問題点を指摘するべきだったでしょう。
 結局、このような官房長官や文科相の判断に反する形で、松江市教育委員会は閲覧制限を撤回しました。これについて菅官房長官は、「本来であれば(教委事務局が)教委にあらかじめ諮った上で対応するのが適切だ」と述べて「撤回は妥当だ」としましたが、それなら当初の見解は何だったのでしょうか。
 閲覧制限措置が取り消され、「はだしのゲン」に対する注目度が高まり、本は飛ぶように売れて増刷されているそうです。「はだしのゲン」を子ども達の目に触れさせないようにしようと画策した在特会の会員からすれば、「倍返し」されたわけです。

 こうして見てくると、菅官房長官の言動には大きな問題のあることがはっきりしてきます。このような人物が内閣の中枢で官房長官を務めていることの方にこそ、「非常に違和感がある」と言わなければなりません。

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12月27日(木) 「船頭」多くしてどこに行くのか安倍新内閣 [内閣]

 国会で首班指名選挙が行われ、安倍晋三首相が選出されました。その後、安倍首相は、副総理兼財務大臣、金融担当大臣に麻生元総理大臣、外務大臣に自民党岸田派会長の岸田元国会対策委員長を起用するなどの閣僚人事を決め、菅官房長官が閣僚名簿を発表しました。

 国会の開会前に開かれた自民党の両院議員総会で、安倍総裁は「いよいよ今日ら、国会本番が始まる。国民の皆様の自由民主党を見つめる目は、いまだに厳しい。この緊張感の中において、われわれは、1つひとつ実績を残していくことによって、信頼を勝ち得ていきたい」と述べたそうです。「厳しい」国民の目は、自民党に対してだけでなく、5年前に総理の座を投げ出した安倍首相自身に対しても向けられています。
 しかも、来年7月には以前の首相時代に大敗して辞任する一因にもなった参院選が控えています。それまでには、「安全運転」に徹するという方針だといわれています。
 その点では、安倍新政権は「安全運転内閣」をめざしたものだと言えるでしょう。運転技術に習熟したベテラン・ドライバーが各所に配置されています。

 しかし、このことは同時に、多くの「船頭」を閣内に取り込んだということでもあります。元首相で総裁経験者の麻生さん、同じく前総裁の谷垣さん、連立相手である公明党の前代表である太田さん、総裁選で争った前幹事長の石原さんに林さんと、いずれも「お山の大将」になっていた人やこれからなろうとする人たちです。
 これだけの「船頭」を抱え込んで、どこに向かって行こうというのでしょうか。安倍内閣という「船」が「山」に上ってしまう心配はないのでしょうか。

 しかも、参院選目当てということもあって、意識的に女性を登用したことが裏目に出るかもしれません。タカ派の論客として知られている稲田朋美元副幹事長が行政改革担当大臣、公務員制度改革担当大臣、規制改革担当大臣に、高市早苗衆院議員が政務調査会長に起用され、予算委員会でのヤジで批判されたこともある森雅子元副幹事長が少子化担当大臣、女性活力・子育て支援担当大臣、消費者担当大臣に就任したからです。
 安倍首相が「安全運転」を心がけようとしても、これらの元気の良い女性閣僚や党役員に突き上げられるかもしれません。勝手に「暴走」を始めてしまう恐れも充分にあります。
 しかし、何よりも最大の不安要因は、安倍首相自身でしょう。復古的でタカ派的な言動によって内外からの批判を招いたり、すでにネットでの本人や秘書の発言が物議を醸したりしているように、失言によって窮地に陥ったりする可能性もあり、何よりも健康問題に不安があります。

 右にしかハンドルを切れない欠陥車であるかもしれません。それでもなお「安全運転」が可能なのかどうか、政治実験が始まろうとしています。
 その意味では、新政権は「実験内閣」と言うべきかもしれません。左にもハンドルが切れるかどうか、時にはきちんとブレーキも踏めるかどうかが試されるという点での……。


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10月22日(月) 支持率1割台になった野田内閣は田中法相を罷免して国会を解散すべきだ [内閣]

 野田内閣の支持率が1割台になり、「危険水域」に突入しました。今日の『朝日新聞』に報じられた世論調査の結果です。

 20~21日に実施された調査によれば、野田内閣の支持率は18%と、前回10月調査の23%より5ポイント低下し、不支持率は59%(前回56%)になりました。内閣発足以来、支持率は初めて2割を切って過去最低、逆に不支持率は過去最高です。
 内閣改造の効果は全くなく、新しい内閣への期待感も示されませんでした。それどころか、外国人献金や過去の暴力団関係者との交際を認め、国会への出席をサボって病院に逃げ込んだ田中慶秋法相の起用に対する野田首相の任命責任、米軍オスプレイの沖縄配備や米兵2人による強姦事件に対する批判などもあって、支持率を急落させています。
 民主党内には「これでは解散はできない。改造人事が失敗だった」という指摘や、「3党党首会談も響いた。首相が予算編成にまで言及し、首相の欲が見えてしまった」という意見が出ているそうです。今後、野田首相による政権運営が厳しくなるのは避けられそうもありません

 政党支持率では民主11%(前回14%)、自民26%(同21%)となり、衆院比例区での投票先でも民主13%(同17%)、自民36%(同30%)と大きく自民党に水を空けられました。自民党の方は、いずれの数字でも野党転落以来、最高になっています。
 今、総選挙をやれば民主党が惨敗するのは明らかで、野田首相が「近いうちに」と言いながら解散から逃げ回っているのも良く分かるような数字です。副大臣の一人は「解散すれば大半は戻って来られない。野党転落は確実だから、もう少し与党でいたい」と本音を漏らしているそうです。
 ただし、解散時期をめぐっては、民主党幹部の間でも足並みが乱れています。前原誠司国家戦略担当相は、「年明けに解散して『近いうち』とは言えない」と述べ、年内に解散すべきだとの考えを示す一方、安住淳幹事長代行は、前原さんの発言は「個人の感覚」だとして、首相のフリーハンドは確保されていると強調しています。

 なお、その他の政党の支持率は、生活0%(同1%)、公明2%(同3%)、共産2%(同1%)、社民0%(同1%)、みんな1%(同1%)、維新2%(同2%)などとなっています。衆院選比例区の投票先では、生活1%(同1%)、公明2%(同4%)、共産3%(同2%)、社民1%(1%)、みんな2%(同2%)、維新3%(4%)などです。
 注目されるのは、維新(日本維新の会)の支持率2%、衆院選比例区の投票先3%という数字です。支持率は前回と同じ、比例区での投票先では1ポイント低下し、いずれも共産党と同じになりました。
 日本維新の会の勢いが収まり、「普通の政党」となったことは前回調査からも明らかでした。今回の調査は、引き続きその勢いが弱まっていることを示唆しているようです。

 この『朝日新聞』の調査を見ても分かるように、世論はもはや野田政権を見離しています。29日(月)から臨時国会が始まりますが、野田首相は田中慶秋法相をとっとと罷免し、冒頭で選挙制度改革についての法案を処理したうえで、国会を解散して民意を問うべきでしょう。
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10月1日(月) 野田第3次改造内閣の特徴はどのような点にあるか [内閣]

 野田第3次改造内閣が発足しました。副大臣や政務官などはまだですが、閣僚人事の骨格が明らかになりました。
 野田さんは、これで支持の回復を図りたいところでしょうが、果たしてそうなるでしょうか。この内閣について、差し当たり、4つの特徴を指摘しておきましょう。

 第1は、政策継続という点です。今回の改造で18人のうち10人という多数の閣僚が交代したにもかかわらず、この点ははっきりしています。
 これまでの内閣を運営してきた閣僚の中心部分が変わっていないからです。内閣の要の藤村官房長官、税と社会保障の一体改革を推進してきた岡田副総理、尖閣諸島の問題を担当した玄葉外相、原発政策を所管する枝野経産省、オスプレイの沖縄配備や普天間の移設問題に関わってきた森本防衛相をはじめ、郡司農水相、羽田国土交通相、平野復興相は、いずれも留任しました。
 ということは、これらの大臣が関わる政策も基本的に継続されるということです。この間拡大してきた国民の要求との乖離を政策転換によって是正し、縮小するという意思は、今回の改造によっても示されなかったということになります。

 第2に、分裂回避のための改造であったという点です。これは党役員人事を含めた特徴だということになるでしょう。
 とりわけ、幹事長人事を急ぎ、しぶる輿石さんを説得して続投させました。代表選が終わってすぐに野田首相がこのような行動を起こしたのは、国連総会に出席している間に新たな離党者が出ることを恐れたためだとされています。総選挙の先送りと党内融和を持論とする輿石さんの続投をはっきりさせ、若手に人気のある細野さんの起用を固めることで、挙党態勢に向けてのサインを送ったのでしょう。
 閣僚人事では、民主党代表選を首相と争った原口元総務相、赤松元農林水産相、鹿野前農水相の陣営からの起用はなく、この点はそれほど明確ではありません。副大臣や政務官人事では若手や反主流グループからも登用することになるでしょうが、それが上手くいって離党の流れが収まるかどうかは今後の問題です。

 第3に、論功行賞がはっきりとした人事だということです。このような特徴は代表選後の改造では通例のことで、今回もその例外ではありませんでした。
 代表選でいち早く野田支持を表明した旧民社党グループの田中慶秋副代表を法相兼拉致担当相とし、もともと小沢さんに近かったにもかかわらず今回の選挙では早々と野田支持を打ち出した田中真紀子さんを文科相に起用しました。野田再選で功績のあった前原、樽床、城島などの党役員経験者はいずれも閣僚として入閣しています。
 これは自民党の人事も似たようなものです。自分に近く、選挙に協力してくれた人をそれなりに処遇したいという欲求は、与野党共通のものだということでしょうか。

 第4に、今回の改造だけの特徴として注目されるのは、選挙対策が意識されているということでしょう。この党執行部と内閣人事によって、野田さんは来るべき総選挙と参院選を乗り切ろうと考えているようです。
 そのための人事として注目されるのは、政調会長に細野豪志環境相兼原発事故担当相、幹事長代行に安住淳財務相、国対委員長に山井和則国対副委員長を起用したことです。若くてイケメンと評判の細野さんを「選挙の顔」として活用したいということでしょう。
 また、閣僚でも、知名度が高くて人気のある田中真紀子さんを文科相にしたのは、選挙での「人寄せパンダ」として活躍してもらおうという意図なのでしょう。その前に失言などで問題を起こす可能性も十分にあり、この起用が成功するかどうかは分かりませんが……。

 ということで、「近いうち」に行われる可能性の高い総選挙に向けて、民主党は「戦闘態勢」を固めたということになります。対抗する自民党も、安倍総裁と石破幹事長を中心とした執行部を選出しました。
 新しい執行部の下で、両者の綱引きが本格的に始まることになります。当面の攻防は、臨時国会の開催と総選挙の実施時期をめぐって展開されることになるでしょう。
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6月4日(月) 内閣改造で咽に刺さった「小骨」を取り除きはしたけれど [内閣]

 注目の内閣改造が実行されました。咽に刺さった「小骨」を取り除いて、消費増税法案についての修正協議への障害物をなくしたわけです。

 野田首相は、問責決議を受けた田中直紀防衛相の後任に元防衛相補佐官の森本敏拓殖大大学院教授を起用しました。防衛担当閣僚に民間人が就任するのは防衛庁時代も含め初めてになります。
 また、同じく問責決議を挙げられた前田武志国交相には羽田雄一郎参院国対委員長を起用しました。書類送検された在日中国大使館1等書記官との関係が指摘される鹿野道彦農相の後任に郡司彰元副農相、国会で携帯電話の競馬サイトを見ていて批判された小川敏夫法相の後任に滝実副法相を昇格させました。
 さらに、国民新党の希望で、自見庄三郎代表が務めている金融・郵政担当相に同党の松下忠洋副内閣相が就くことになりました。問責2閣僚を含む5人が交代したことになります。

 防衛相への森本さんの起用には驚きました。同じ学者とはいえ、ほとんど接点はありませんが、「太田総理」のテレビ番組に出ていたとき、たまたま控え室が一緒で言葉を交わす機会がありました。
 森本さんは、安全保障論が専門で、自公政権時代の2009年にも防衛相補佐官に起用されています。防衛大卒で航空自衛隊を経て外務省に入省した経歴を持ち、自衛官出身の防衛相という点でも異例です。
 これまでの田中防衛相が「何も知らない人」であったとすれば、これからの森本防衛相は「知りすぎている人」だと言えるでしょう。確かに、防衛・安全保障問題の専門家ではありますが、日米同盟や自衛隊の強化、集団的自衛権については確信犯であり、国会でこれまでの政府見解を踏み越える答弁を行う可能性が大きく、田中さんとは別の意味で、野田さんにとっては「躓きの石」になるかもしれません。

 今回の内閣改造についての説明がどうあれ、消費増税法案の成立のための改造であることは明瞭です。今、野田首相のやっていることの全ては消費増税を実現するためなのです。
 その意味では、まさに「政治生命を賭け」ているわけですが、そんなことに「生命」を賭けている場合なのでしょうか。野田さんにとって「全ての道はローマ(消費税引き上げ)に通ず」というわけですが、その目的地が根本的に間違っているのではないでしょうか。
 世界的な経済不安と景気の減速、円高にどう対処するのか、そのような経済環境の悪化の下で、国民生活をどう守るのかという問題こそ、今、野田首相が「政治生命を賭けて」取り組まなければならない最大の課題なのではないでしょうか。

 今日の『朝日新聞』の「天声人語」は、「片や経済は、ユーロ危機の再燃、中国経済の減速、米景気の不安と風雲急を告げ、同時株安が止まらない。大きな財政赤字を抱えながら、日本は通貨だけが消去法で買われる『ほめ殺し円高』の苦境だ」と書いています。「このようなときに消費税を引き上げたら、一体、国民生活はどうなるのか」と、これまでの『朝日新聞』なら、そう書いたことでしょう。
 ところが、『朝日新聞』の「主張」は、「それでも、社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、野田首相がようやく自民党との協調にカジを切る覚悟を鮮明にしたことを歓迎したい」と書くのです。 野田首相のめざしているところと同じであり、国民生活の苦境など眼中にありません。
 野田首相も『朝日新聞』も、大震災と原発事故によって呻吟している被災者や国民が、消費増税による新たな負担増やTPPによる市場開放に耐えられるのかという問題意識さえないように見えます。今日の『毎日新聞』には、消費増税法案に反対が57%もあるという世論調査の結果が報じられていますが、野田さんや『朝日新聞』の目には、このような「世論」は目に入らないようです。

 国会は停滞し、「決められない政治」が批判されています。しかし問題は、決めて欲しくないという願いを踏みにじって、民意に反する政策を決めようと無理をしているところにあるのです。
 消費増税、TPPへの参加、大飯原発の再稼働、米軍普天間基地の辺野古移設など、野田政権が決めて実行しようとしていることは、どれも国民や県民が強く反対していることばかりではありませんか。これらを撤回して民意に添う政策を掲げさえすれば、「決められない政治」からの脱却は容易だということが、どうして分からないのでしょうか。

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4月11日(水) 国民に支持されていない内閣が国民に支持されない政策を実行しようとしている [内閣]

 一昨日のNHKニュースを聞いて呆れてしまいました。アナウンサーは、野田内閣の不支持率が初めて半数を上回ったこと、内閣が実行しようとしている現在の政策が、全く支持されていないことを伝えていたからです。
 野田内閣は国民に支持されず、不信任を突きつけられました。その政府が、国民に支持されていない政策を実行しようとしているのですから、もはや末期症状と言うほかありません。

 NHKの世論調査によれば、野田内閣を「支持する」と答えた人は30%で、先月の調査より3ポイント下がったのに対し、「支持しない」と答えた人は先月より5ポイント上がって53%となりました。野田内閣発足以来、初めて半数を上回ったというわけです。
 次に、野田内閣が進める「社会保障と税の一体改革」の取り組みについてですが、これを「大いに評価する」が2%、「ある程度評価する」が29%、「あまり評価しない」が42%、「まったく評価しない」が20%でした。つまり、評価するが31%、評価しないが62%で、「評価しない」と答えた人が「評価する」と答えた人を30ポイント余り上回っています。
 また、政府が消費税率を引き上げるための法案を今の国会で成立させるとしていることについては、「賛成」が25%、「反対」が36%、「どちらともいえない」が35%でした。「反対」と答えた人が「賛成」と答えた人を10ポイントあまり上回っていますから、これも国民に支持されていないことは明らかです。

 さらに、定期検査のために停止している原子力発電所の運転再開についても賛否を聞いています。運転再開について、「賛成」が15%、「反対」が39%、「どちらともいえない」が42%でした。
 これについても、「反対」の方が「賛成」の2倍以上になっています。原発の運転再開など、とんでもない、というのが民意だということになるでしょう。

 国民の意識ははっきりしています。「一体改革」も「消費税の引き上げ」も「原子力発電所の運転再開」も、全て、国民に支持されていないことは明らかです。
 政府の主要政策に、これほどの反対があることを野田首相はどう考えているのでしょうか。このような厳しい民意を無視し続けるつもりなのでしょうか。
 民主主義に基づく政府であれば、そのような対応を取るべきではないでしょう。民意にそっぽを向かれている政策を転換するか、その地位を去って新しい政府に交代するか、いずれかの道を選ぶべきです。

 今、野田内閣がやろうとしていることは、国民に全く支持されていません。こんな内閣が何も決められず、長続きしないのは当然でしょう。
 野田内閣を長続きさせてはなりません。即刻、辞職して、政策を転換すべきです。


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1月15日(日) 横ばいか下がってしまった野田改造内閣の支持率 [内閣]

 「野田佳彦首相の内閣改造は支持率上昇に結びつかなかった。新体制への評価は低く、首相が意欲を示す消費増税方針への理解も広がっていない。」
 これは野田改造内閣に対する世論調査への『日経新聞』の論評です。13日の金曜日のブログで、私は「今回の内閣改造が国民にどう受け止められ、このような内閣支持率の動向にどう影響するのかという点も大いに注目されます」と書きましたが、野田さんに比較的好意的な『日経新聞』ですら、こう指摘せざるを得ないような惨憺たる結果になりました。

 各社の世論調査による内閣支持率の変化は、以下のようになっています。左の数字が今回で右の数字が前回の調査ですが、大まかな傾向はほとんど同じです。

日経 37←36%
共同 35.8←35.7%
朝日 29←31%
読売 37←42%

 世論は、岡田前幹事長の副総理起用については評価しているようですが、今回の改造自体についてはほとんど評価していません。日経と共同の調査ではほぼ横ばい、朝日と読売では上がらなかっただけでなく、下がっています。
 政党支持率でも民主党への支持は増えていません。日経は「民主党が昨年9月の野田内閣発足後初めて自民党を下回った。自民党は前回より3ポイント上昇し29%、民主は前回と同じ28%だった」と書いています。
 これまでの内閣改造では、目先が変わり、多少とも支持率は上がるというのが普通でした。それが逆に下がっているわけですから、いかに世論の目が厳しいかが如実に示されています。

 なお、消費増税の政府案についても、「賛成は34%で、反対の57%を大きく下回」(朝日)り、賛否の差は拡大しつつあります。ここでも民意は明確です。国民は消費増税に賛成していません。
 日経の調査でも、消費税率引き上げ方針を打ち出した野田首相の判断について、「評価する」が42%、「評価しない」は46%となっています。「評価しない」方が多くなっているのに、日経の論評は「首相が自ら乗り出して民主党の素案をまとめた姿勢に一定の評価が集まった形だ」というものでした。
 何という牽強付会。それとも、消費増税に執念を燃やす日経らしい曲解だと言うべきでしょうか。

 なお、今回の結果について、「消費増税方針への理解も広がっていない」としているのは不正確でしょう。逆に、「消費増税方針への理解」が広がり、負担増に対する国民の不安や懸念が増大しているからこそ反対世論が増え、「消費増税シフト」のための内閣改造が評価されなかったのではないでしょうか。
 また、消費増税の前提とされている国会議員の定数削減や公務員の人件費削減についても、朝日の調査では、首相が削減を「できると思う」と答えた人は19%しかなく、「できないと思う」が67%を占めています。これについては、そもそも「国会議員」や「公務員の人件費」は「無駄」なのかという根本的な問題がありますが、その実現可能性についても信用されていないというわけです。
 さらに、同じ調査で、消費増税の際の景気については「大いに」「ある程度」を合わせて80%が「考慮する必要がある」と答えています。消費税を3%から5%に引き上げた97年以降の日本の経験やギリシアなどのように、増税が税収増に結びつかず、景気を悪化させ、かえって税収減をもたらして財政赤字を増大させる危険性についても国民は気づき始めているということでしょうか。

 昨日のテレビ東京の番組で、野田首相は一体改革について「私の政治生命をかけてやり抜く」と述べ、固い決意を示しました。そのような決意があるのなら、世論の支持が得られるようなまともな政策の実現にこそ、「政治生命」をかけてもらいたいものです。

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