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9月1日(金) 日米同盟のみに依存して目先の圧力強化にこだわってはならない [国際]

 「北朝鮮に関する日米の利害はミサイル問題などで必ずしも一致してこなかった。米国は中国とは安保理でも協議を深めており、日米同盟のみに依存して目先の圧力強化にこだわれば、はしごを外されかねない。」

 これは「国連で安保理担当の政務官を4年前まで務め、交渉の舞台裏に詳しい川端清隆・福岡女学院大教授(国際政治)」の発言です。昨日の『朝日新聞』8月31日付に掲載されていました。
 川端さんが指摘する通り、「日米の利害はミサイル問題などで必ずしも一致」していません。大陸間弾道弾(ICBM)が開発される以前から、日本は短距離や中距離ミサイルの射程内に入っており、余りにも北朝鮮に近いためミサイル防衛は技術的にほとんど不可能だからです。
 したがって、トランプ米大統領にはICBMがアメリカ大陸に届くようになる前に軍事的手段を行使する選択肢があったとしても、すでにミサイルの射程内に入っている日本にはそのような選択肢はあり得ません。安倍首相には、このような違いが分かっているのでしょうか。

 中国との関係も、アメリカと日本では大きく異なっています。「米国は中国とは安保理でも協議を深めて」いると川端さんは指摘されていますが、逆に安倍首相は中国を敵視し、その包囲網づくりを外交政策の重要な柱としてきました。
 北朝鮮危機が高まったために慌てて中国との関係を強めようとしていますが、足元を見透かされるだけです。ここでも、安倍外交は破綻していると言わなければなりません。
 北朝鮮の核開発やミサイル実験を抑制し、朝鮮半島の非核化を実現するために中国との協力関係をどう打ち立てていくのかという長期的な戦略を欠いたまま、ひたすら包囲網づくりに精を出してきたのが間違いだったのです。その結果、北朝鮮危機打開のために協力できるような信頼関係を失ってしまいました。

 さらに川端さんは、「日米同盟のみに依存して目先の圧力強化にこだわれば、はしごを外されかねない」と指摘されています。誰によって「はしごを外され」るのかと言えば、それはアメリカです。
 安倍首相は「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかで、今は圧力をさらに高める時だ」と強調し、トランプ大統領もツイッターで北朝鮮との「対話は解決策ではない」と書いて再び態度を硬化させました。2度の電話による日米首脳会談で、トランプ大統領は安倍首相に説得されたのかもしれません。
 しかし、マティス米国防長官は「我々は外交的解決を決してやめていない」と述べて、交渉による解決を目指す米政府の姿勢を改めて強調しました。マクマスター米大統領補佐官(安全保障担当)も「米国は北朝鮮問題の平和的解決を優先する」と語っています。

 かたくなに「対話」を否定する安倍首相の態度は極めて特異なものであり、まるで危機の激化と緊張関係の強化を望んでいるかのようです。その対応は冷静さを欠き、国民に対して危機感を煽る異常な姿勢が際立っています。
 歴史を振り返って見れば、いつの時代でも権力者は自らの利益のために紛争を起こし、危機感を煽りたててきました。安倍首相も例外ではなく、自らの利益のために北朝鮮との紛争を利用し、危機を煽り立てているかのようです。
 「森友」「加計」学園疑惑や都議選での敗北、内閣支持率の低下などで守勢に立った内政から外政へと国民の目を転じ、頼りになる指導者を演じて支持回復を図ろうとしているのではないでしょうか。北朝鮮危機を軍事費の増大や軍備の強化、軍需産業の拡大、ひいては9条改憲に結びつくような世論作りに利用しようとしているように見えます。

 国民に不安を与えないこと、安全や安心への配慮よりも自らの政治的な思惑を優先しているから、北朝鮮危機を本気で解決する気がないのです。ただひたすら圧力強化のみを主張し、日米共同演習など軍事的な対応をちらつかせながら北朝鮮を屈服させようとするばかりです。
 このような対応はまさに「武力による威嚇」そのものであり、憲法9条に反しています。日本が「はしごを外され」国際的に孤立する前に、このような対応を転換するか、安倍首相を交代させなければなりません。

 これについて、『日刊ゲンダイ』8月30日付で私は次のようにコメントしました。
 「日本国内が過剰に反応すればするほど、北朝鮮の思うツボですよ。騒ぎを起こして、世界に見せつけようというのが北の狙いなのですから。それに、国民が不安を感じざるを得なくなってしまったのは外交・安保政策の失敗にあるのに、安倍政権は不安を煽って対外緊張を支持率回復につなげようとしている。ひどい話です」(政治学者の五十嵐仁氏)

 なお、9月の講演などの予定は以下の通りです。お近くの方や関心のある方に足を運んでいただければ幸いです。

9月2日(土)13時 横浜市上郷・森の家:神奈川革新懇
9月3日(日)13時30分 横浜市市民活動支援センター:横浜市中区革新懇
9月9日(土)14時 レインボープラザ北九州:北九州革新懇
9月10日(日)13時 千葉土建船橋習志野支部会館:船橋革新懇
9月24日(日)14時 あ~ちぷらざ東京土建板橋支部会館:なかいた・ときわ台9条の会

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