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8月30日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月30日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「絵空事を並べた年金財政検証 政府を信じたら損するだけ」
 「今後、年金受給額が減るのは間違いなく、どこまで減るかだけが問題です。国民は『100年安心』という説明を信じて保険料を払ってきたのに、政府は『老後資金で足りない2000万円は自助で何とかしろ』と言い出した。

 自民党政権が非正規雇用者を増やしてきたせいで、年収300万円以下の労働者は40%もいる。どうやって2000万円も貯めろというのか。年金制度の安心が維持できないからと、今になって国が投資による資産形成を勧めるのは国家的詐欺としか言いようがない。

 投資には元本割れのリスクがある。目減りしても、国は責任を取ってくれません。年金給付額の減少が嫌なら、さらなる増税を押し付けてくるのでしょうが、自国民が困窮していても見ないふりで、海外で気前よくバラまいてしまう安倍首相の下では、諦めが蔓延し、日本国民全体で沈んでいくしかない。次の総選挙が最後のチャンスです。今から2000万円を貯めるより、政権を代える方が簡単だし確実です。今回の財政検証は、異次元緩和の幻想を振りまくだけに終わったアベノミクス落第の通信簿でもあります」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

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8月27日(火) 『しんぶん赤旗』に引用されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは、『しんぶん赤旗』2019年8月25日付に引用されたものです。前後の記事と共にアップさせていただきます〕

 シリーズ共闘の力 政権合意「覚悟問われる」

 五十嵐仁法政大学名誉教授は、かつての民主党政権と野党共闘が目指す連合政権の相違について「民主党政権は一時的な風で、上だけの政党の連携でできた。草の根で支える十分な基盤がなかった。新しい野党連立政権は、各選挙区、地方、地域で市民と野党の草の根での連携、協力、信頼が営々として築かれたその上にできる連立政権だ」と強調します。
 そのうえで五十嵐氏は「重要なことは、共闘の機関車としての共産党がここに加わっていることだ。建物でいえば鉄筋コンクリート入り。共闘を追求するという点でも、市民との約束を守るという点でも、決してぶれない鉄筋です。草の根の共闘というしっかりした土台の上に、鉄筋入りの建物が立つ。民主党政権に問題があったとすれば、その教訓も踏まえて、市民と野党の共闘が発展している。民主党政権そのものとは全く違う」と語ります。


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8月25日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月25日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「この事態に「愚かな韓国」の大合唱 子供のような日本外交」
 とはいえ、「向こうがやったから、こっちもやるぞ」と同じ土俵に乗るのは「ガキのケンカ」と変わらない。ましてや、安倍政権は参院選直前に半導体素材3品目の輸出規制を打ち出すなど、世論の反韓感情をあおる手段として徴用工問題を政治利用。支持率目当ての政権浮揚に結びつけているのは、文在寅と同じだ。似た者同士、もっと仲良くできないのか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「互いに異なる利害関係を調整し、妥協を通じて一致点を探るのが外交の基本です。ところが、安倍政権は『ボールは向こうにある』と韓国を突き放すだけ。せっかく文大統領が8月15日の『光復節』の演説で『日本が対話にでれば、喜んで手を握る』とボールを投げ返したのに見逃し。この無反応がGSOMIA破棄の決定打となったのだから、話になりません。安倍政権が批判する『安保』を持ち出したのも、日本が先。歴史問題の報復として『ホワイト国』から韓国を除外する口実に『信頼喪失で安全保障上の問題が発生した』とスリ替えたのを、逆手に取られた格好です。安倍政権の対韓外交はあまりにも場当たり的で感情任せ。まるで『お子サマ外交』です」

 今後は飼い主のトランプがポチ首相を味方せず、いさめる展開もあり得るのだ。前出の五十嵐仁氏はこう言った。

 「安倍政権が抗議し、突き放しても、文政権が謝るわけがない。それと も文政権が自壊していくと読んでいるのなら、大甘です。むしろ、安倍政権が制裁を強めるほど韓国国内の反発を高め、青息吐息の文政権の支持率が上がる逆効果。韓国の野党にすれば『安倍首相が文大統領を助けている』との思いでしょう。韓国内の日本製品の不買運動でユニクロの閉店が相次ぎ、訪日韓国人客も激減。この事態を招いても、安倍政権は『自分たちの言い分が正しい』と韓国が譲歩するまで制裁を続ける気なのか。ただ、相手も国益を背負っている以上、『自分たちが正しい』と主張するのは当たり前。拳を振り上げている限り、泥仕合が延々と続くだけですが、安倍政権の出口戦略は全く見えません」

 こんな非生産的なガキのケンカに血道を上げる、お子サマ外交。還暦を過ぎた首相が「オレ様は正しい」と言い張る姿のどこが、「美しい国」なのか。

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8月23日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月22日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「みんなが「いいね」 韓国に居丈高な政治家が跋扈の背景」
 ところが、安倍政権が韓国を「ホワイト国」から除外したため、“政冷経熱”の関係までぶっ壊れはじめている。

 「戦後、日本外交は“政経分離”のスタンスを取ってきた。両国経済が強固に結びついていたから安心してケンカができた、ということもあります。ところが、安倍首相は“禁じ手”である経済制裁を発動してしまった。韓国経済も傷つくでしょうが、日本経済も無傷では済まない。なかには『韓国経済の方が打撃が大きい』とシタリ顔で解説している人もいますが、これは打撃の大きさの問題ではない。日本の国益が損なわれるということです。どうして『打撃が大きいのは韓国だ』などとうれしそうにしていられるのか。日本は冷静になるべきです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 安倍政権が火をつけた日韓対立は、誰も得をしていない。



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8月21日(水) 『しんぶん赤旗』に引用されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは、『しんぶん赤旗』2019年8月16日付に引用されたものです。前後の記事と共にアップさせていただきます〕

 「シリーズ 共闘の力 『信頼の発展』に結実」

 「『一定の成果』という人もいるが、『一定の』は要らない。3年前と比べても大きな成果だ」――。五十嵐仁法政大名誉教授はこう述べます。
 2016年の参院選挙で初めての野党共闘の時には現職候補が11人でしたが今回は30人が新人。それが連休明けになってようやくバタバタと決まっていく状況で、「簡単に言えば、野党は出遅れていた」(五十嵐氏)のです。与党側は16年の「反省」を踏まえ、大きく負け越した東北を中心に、早くから組織、業界の引き締め・締め付けを強めていました。与党側は知名度や組織体制の準備で大きくリードしていました。
 五十嵐氏は言います。「選挙は用意ドンで横一線でのスタートが普通だが、今回、野党共闘側は10メートルぐらい後ろからスタートして、途中で追いつき、追い越した。野党共闘がなければ、そして共闘の中身がより前進していなければこれだけの成果をあげることはできなかった」
 安倍首相は改憲勢力3分の2の維持のため、東北、新潟、滋賀などの激戦区に自らも繰り返し遊説に入るなど、権力総動員の攻勢を強めました。東北や新潟、滋賀などでの野党共闘の勝利は、その猛攻を打ち破っての勝利でした。
 五十嵐氏は「東北では前回に続き、今回も地殻変動が起こった。沖縄の場合は、オール沖縄の共闘のもとで何度も地殻変動が起きており、もう地形が変わっている。安倍首相も菅官房長官も、沖縄には一度も行けなかった」と述べます。

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8月15日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月15日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「金正恩は高笑い 北のミサイルで弄ばれる日韓対立の不毛」
 ところが、安倍政権が韓国を「ホワイト国」から除外してケンカを売ったために、74年かけて築いてきたウィンウィンの関係は、もはや風前のともしびである。

 「どうして安倍首相は、韓国をホワイト国から除外するような露骨なことをしてしまったのか。世界に向かって『韓国は非友好国だ』と宣言したのも同然です。韓国国民のプライドを傷つけたのは間違いない。戦後、日本外交は“政経分離”のスタンスを取ってきた。歴史問題などで関係が悪化しても、外交に経済を絡ませなかった。ところが、安倍首相は“禁じ手”である経済制裁を発動してしまった。ホワイト国から除外したら対立が激化することは分かっていたはずです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)


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8月13日(火) 自民敗北 原動力は共闘 [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、『しんぶん赤旗日曜版』8月11日・18日合併号に掲載されたものです。〕

 参院選の結果をどう見るか―政治学者の五十嵐仁さん(法政大学名誉教授)にききました。

 参院選の結果をマスメディア、とくに「読売」などは「与党勝利」などと報じましたが、自民党は「負けた」と私は思います。
 自民党は改選前より9議席減。比例代表の得票は240万票減です。有権者全体に占める絶対得票率は16・7%。この数字は安倍晋三首相が政権に復帰した2012年以来最低の水準です。
 議席を減らし、得票数を減らし、有権者比の得票率も減らした。三拍子そろっています。これを「敗北」と言わない方がどうかしていますよ。
 自民党は単独過半数割れとなりました。これまでだったら新聞に「自民敗北」という見出しが出てもおかしくありません。
 改憲をめざす安倍首相にとって重大なのは、改憲勢力が発議に必要な「参院の3分の2」を割り込んだことです。これまでならやれたことが、これからはできなくなったのですから。
 安倍首相は参院選で、「憲法を議論する政党か、議論しない政党か」と、これまでになく改憲問題を前面に押し出して演説しました。それへの回答が「3分の2」割れです。〝改憲はだめだ〟という国民の答が出たわけです。
 この結果を生み出した原動力は、市民と野党の共闘です。東北を中心に定数1の10選挙区で野党統一候補が勝利しました。
 3年前の参院選で野党統一候補が勝ったのは11です。その時に勝利した野党統一候補の多くは現職でした。今回はほとんどが新人。決まったのも選挙直前で、圧倒的に不利な中でのたたかいで、改選2議席の5倍です。
 「毎日」(7月6日付)の序盤の情勢分析では、自民優勢21、野党優勢5、接戦6です。接戦6のうち5を野党が制しましたから、終盤にかけて追い付き、追い越したことを示しています。
 とくに、元大臣、元副大臣、元首相補佐官など与党のベテラン議員に競り勝った意義は大きい。この逆転があったからこそ、「3分の2」も崩れたし、自民党の9議席減も起こったのです。
 今回の野党共闘の勝利を「一定の成果」としか評価しないメディアもあります。しかし、私は「画期的成果」「大勝利」といっていいと思います。

 共通政策も前進

 野党が合意した共通政策は今回、幅も数も、作成のプロセスも大きく前進しました。3年前の参院選での野党の共通政策は、政策的には安保法制の廃止だけでした。17年総選挙は7項目。
 今回の共通政策は13項目で、ほぼ倍増しました。「原発ゼロ」や「米軍新基建設の中止」、「10月からの消費税増税中止」、「LGBTsへの差別解消」など国政の重要問題はほぼ入っています。しかも共通政策は市民連合のみなさんが原案をつくり野党間で協議し、合意したものです。
 「本気の共闘」という点でも前回とは大きく変わりました。立憲民主党の枝野幸男代表は、共産党公認候補が野党統一候補となっている福井にも応援に入りました。
 野党統一候補の得票は、32の1人区のうち29で、共闘した野党の比例票の総計を上回りました。共闘効果は実証されています。

 共産党善戦、政治不満示す「れいわ」支持
 希望ある未来の扉開く

 日本共産党は低投票率の中、比例は1議席減らしました。しかし、足りなかったのはあと17万票ほどでもう少しです。複数選挙区では現有3議席を確保する善戦でした。
 安倍政権は、消費税10%増税でも、外交問題でも行き詰っています。れいわ新選組(山本太郎代表)が比例228万票で2議席を獲得したのは、政治の現状に対して不満や批判がいかにうっ積しているかを示しています。
 共産党には今後も野党共闘の推進力として頑張ってもらいたい。政策の方向性は同じですから新党の「れいわ」とも連携を強め、連立政権を実現してほしいと思います。選挙結果は総じて、希望ある未来への扉を開いたのではないでしょうか。

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8月11日(日) 改憲3分の2議席阻止に確信を持ち、総選挙で革新共闘の勝利を [論攷]

〔以下の論攷は、日本科学者会議の『東京支部つうしん』No.622、2019年8月10日号、に掲載されたものです。〕

 参院選の投開票日翌日の朝刊には、「与党勝利」(読売)、「自公改選過半数」「改憲勢力2/3は届かず」「野党共闘1人区10勝」(朝日)などの見出しが躍っていました。果たして与党は勝利したのでしょうか。
 自公両党で改選と参院の過半数を確保したのは事実です。しかし、自民党は9議席減らし、比例の得票は240万票の減、絶対得票率(有権者に占める割合)は18.9%で2割以下となり、単独過半数を維持できませんでした。これで「勝利」と言えるのでしょうか。
 しかも、自民・公明・維新の合計議席で、改憲発議に必要な3分の2に4議席足りません。選挙戦で安倍首相は「改憲」を「議論」にすり替えて支持を訴えましたが、それでも議席を減らしたのです。有権者は明確に「ノー」を突きつけたことになります。
 この結果は、安倍改憲「ノー」を訴えてきた人びとにとっては3度目の勝利ということになります。昨年の国会で改憲発議を阻み、3000万人署名で世論を変え、発議に必要な議席を割り込ませたのですから。
 このような勝利を可能にした要因は、市民と野党の共闘によって1人区で10勝したことにあります。改選2議席を5倍にしての8議席増ですから、自民党の9議席減の大半を1人区で実現しました。そのほとんどは新人候補で知名度に劣り、出遅れがあったにもかかわらず、平均27%増という「共闘効果」によって勝利することができました。
 参院での1人区は32ですが、衆院では小選挙区289すべてが1人区です。野党共闘を深化・発展させ、政策合意を基に相互の連携と支援を強めれば、さらに大きな成果を上げることができます。2年以内に総選挙は確実ですから、今から準備を始めなければなりません。
 野党では、立憲民主党が改選9から17へほぼ倍増、国民民主党が改選8から6へ2減、共産党は改選8から7へ1減、維新は2増の10、社民党は改選1を維持しました。比例代表での議席は与党26対野党24ですが、得票率では与党48.42%対野党50.12%と野党の方が多くなっています。
 「れいわ新選組」が2議席、「NHKから国民を守る党」が1議席獲得するなど、新しい動きもありました。政治の現状や既成政党への不満や批判が鬱積していることの表れです。れいわを糾合しつつ解散・総選挙を実現し、勝利することがこれからの課題です。
 与党は参院の過半数を確保したものの自民党単独では法案を通せなくなりました。ホルムズ海峡での「有志連合」への参加、米中貿易摩擦の影響、日米貿易交渉でのトランプ政権からの攻勢、日韓関係の悪化、イギリスのEU離脱など国際情勢は波乱含みです。
 景気が低迷している下での消費税10%への引き上げや「アベノミクス」の「出口戦略」による国債暴落などによる経済破たんのリスクもあります。疾風怒濤が渦巻く中での船出で政治の安定は難しく、レームダック化が避けられない安倍首相に乗り切れるのでしょうか。

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8月9日(金) 共闘の力、政権に「黄信号」  [論攷]

〔以下のインタビュー記事は、『東京民報』第2096号、2019年8月4日付、に掲載されたものです。〕

 日本の未来を問う選挙戦となった参院選(7月21日投開票)が終わりました。自民、公明、維新の改憲勢力が参院の3分の2を失う一方、安倍首相は「与党で過半数を維持した」と勝利を強調しています。結果をどうみるか、政治学者の五十嵐仁さん(法政大学名誉教授)に聞きました。

 自民党の「4つの敗北」

 ―安倍政権は、参院選で「国民の信任を得た」と語っています。

 投票率1%分で、約100万票が動くので、投票率が上がれば、与党敗北の大きな雪崩(なだれ)が起きると期待していました。残念ながら投票率は下がってしまいましたが、それでも「表層雪崩」は起きたと思います。
 その結果、自民党は4つの敗北を喫しています。一つは、改選前から9議席減ったこと。二つ目に、比例得票数を前回16年比240万票も減らしたこと。三つ目に、自民党単独過半数を参院で割ったこと。さらに、4つ目の敗北が、改憲勢力3分の2を失ったことです。
 4つも負ければ、十分でしょう(笑)。最初から「与党で過半数維持」という低い勝敗ラインを設定していたから、印象操作で「勝利した」と言っているだけです。

 次につながる健闘

 ―野党の結果は。

 野党共闘について、マスコミは「一定の効果」と書いていますが、実際は「大きな効果」です。1人区での野党勝利が、改選2議席から10議席に増えたことが、自民党敗北の大きな要因です。
 3年前の参院選での野党統一候補の勝利が11で、今回は10と横ばいだと指摘されます。数を見るとそうですが、中身が大きく違います。
 2016年選挙では、32の一人区のうち、野党の現・前・元職が11人いました。それが今回は前1、元1だけで、後は全て新人候補です。
 新人候補は知名度の点で、大きく出遅れていました。選挙戦を10メートル後ろからスタートするようなものです。それが新聞各紙の序盤情勢予測での野党候補の厳しさに現れました。
 その状況から追いつき、ゴール手前で追い越して10人が当選した。共闘効果なしには、生まれなかった成果です。

 ―共産党は7人の当選でした。

 比例選挙で改選から1減らしたのは残念でした。ただ、2017年の総選挙に比べて比例票を伸ばしていますし、2016年の参院選では比例と選挙区合わせた当選が6人だったのを、今回は埼玉で新たに議席を得るなど7人当選させたことも、重要な点です。全体として、次につながる健闘だったといえます。
 東京では、吉良さんがすばらしい選挙戦を繰り広げました。ブラック企業問題をはじめ、この6年間の実績に大きな期待が寄せられました。

 ―低投票率については、どう見ていますか。

 マスメディアで、選挙戦をほとんど報じない傾向が強まったことが大きな要因でしょう。政権側も、予算員会を開かず、改元フィーバーや米大統領来日などを政治利用して、参院選に関心が向かないように仕向けました。
 選挙後、メディアで低投票率が問題だと報道されていますが、だったら論戦をもっと伝え、選挙の関心を高めて投票率を上げるべきでした。

 充実した共通政策

 ―総選挙での野党共闘が、次の大きな課題です。

 今回の野党の共通政策は、量の面でも質の面でも非常に充実しました。
 野党の共通政策は、16年参院選での4項目の「5党合意」が始まりです。このときは、政策的な内容は「安保法制廃止」の1項目だけで、他は選挙での協力などでした。17年総選挙では、市民連合からの提案を各党が合意する形で、7項目に増えました。
 今回の合意は項目が13に増えて、内容の面でも、1カ月ほどかけて各党が原案をもとに練り上げて充実させました。
 参院の1人区は32でしたが、衆院は全国289の小選挙区がすべて1人区です。ここでしっかりとした相互支援、相互協力の共闘をつくり、共通政策も練り上げれば大きな成果が出るでしょう。

 ―「政治の安定こそ争点」として参院選をたたかった安倍政権の今後をどう見ていますか。

 参院で単独過半数を失い、自民党だけで法案を通すことは不可能になり、安倍政権の「安定」には黄信号がともっています。
 世界を見れば、日韓関係の悪化、日米貿易交渉でのトランプ大統領からの要求、米中貿易摩擦、ホルムズ海峡への「有志連合」派遣、イギリスのEU離脱など、世界と日本の政治・経済に大混乱をもたらしかねない要因が積み重なっています。
 しかも、経済の冷え込みが明らかにもかかわらず、消費税増税に突き進もうとしている。「アベノミクス」の異次元金融緩和からの「出口戦略」もいずれ必要になり、国債暴落など経済のメルトダウンも大きな心配です。
 「安定」どころか、疾風怒濤が渦巻く大揺れの中での船出で、前途多難というべきです。

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8月7日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』8月6日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「95%が支持?安倍外交より恐ろしい「嫌韓世論」異様な蔓延」
 ここまで関係が悪化した直接の原因は、安倍政権が、韓国をいわゆる「ホワイト国」から除外したことだ。韓国サイドが徴用工訴訟問題で仲裁委開催に応じなかったことへの報復第2弾として政令改正を閣議決定した。

 すでに安倍政権は、報復第1弾として、半導体素材の韓国向け輸出を規制強化している。第3弾も用意しているという。トランプ大統領とまったく同じやり方である。

 「これまで日本外交は“政経分離”のスタンスを取ってきました。歴史問題などで政治関係が悪くなっても、政治は政治として解決し、外交に経済を絡ませなかった。だから、決定的な対立も避けられた。政治家同士が対立しても、ビジネスの現場はつながっていました。ところが、安倍首相は“禁じ手”である、経済制裁を発動してしまった。引き返す橋を自ら燃やしてしまった形です。しかも、せめて半導体素材の輸出規制だけにとどめておけばよかったのに、“ホワイト国”からも除外してしまった。関係修復が難しくなることはわかっていたはずです。どうして、対立が決定的になるようなことをしてしまったのか」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)


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