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10月2日(月) 現代史のなかでの岸田政権をどう見るか(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.842、2023年10月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 人権と民主主義への逆行

 岸田首相は「法の支配」「自由で開かれたインド太平洋」「先進国との価値観の共有」を口にしています。これも全てウソばかりです。法の土台である憲法を無視し、メディアを規制し、人権と民主主義に逆行し、国連や他のG7サミット参加国から問題点を指摘され、改善を迫られているではありませんか。
 5月のG7広島サミットを前に、6か国とEUの駐日大使は連名で岸田首相に性的少数者(LGBTQ)の人権を守る法整備を促す書簡を送りました。サミット参加国のうち日本だけが時代に逆行し、価値観を共有していなかったからです。
 7月には、国連の人権理事会作業部会が日本に調査団を派遣し、ジャニーズ事務所をめぐる性加害問題を取り上げて注目されました。しかし、その調査内容は女性、性的少数者、障害者、アイヌなどの先住民族、被差別部落、労働組合など200項目を超え、ジャニーズ問題は5項目にすぎません。難民や技能実習生などを含めて、これらの人々が人権侵害のリスクにさらされているからです。
 先の通常国会では改定難民認定法や性的少数者に対する理解増進法が成立しました。しかし、これらも難民の人権を侵害し、性的少数者への差別を助長する内容でした。ジェンダー平等の点でも日本は146か国中125位という有様です。
 報道の自由度でも日本は26位でG7参加国では最低です。テレビ放送については総務省の内部文書が明らかになり、放送法の解釈変更によってメディア支配を強めようとしていた実態が暴露されました。マスメディアの権力監視や政権批判も弱体化する一方です。
 このほか、マイナンバーカードの導入やマイナ保険証への切り替え、福島第1原発「処理水」の海洋放出、消費税インボイス制度の実施、大阪での万博やカジノの推進、沖縄・辺野古での基地建設など、岸田政権は反対の多い施策を次々と強行してきました。「聞く力」は「聞き流す力」にすぎず、民意に寄り添う姿勢は全く見られません。

 続発するスキャンダルと辞任

 岸田政権はスキャンダルまみれで閣僚などの辞任が相次いでいる点でも特徴的です。昨年10月に山際大志郎経済再生担当相が世界平和統一家庭連合(統一協会)との癒着を批判されて辞任し、11月には葉梨康弘法務相が度重なる失言で辞任しました。また、寺田稔総務相も政治資金の不適切な処理などで辞任しています、
 12月には秋葉賢也復興相が事務所経費をめぐる問題で辞任し、杉田水脈総務政務官も女性や性的少数者などへの差別発言で辞任に追い込まれました。差別発言では、荒井勝喜総理秘書官も更迭されています。
 その後も更迭や辞任は続きました。岸田首相の息子である翔太郎首相秘書官が公私混同による不祥事で更迭され、木原誠二官房副長官も警察捜査への介入などの疑惑が報じられています。また、自民党女性局のパリ研修旅行でも不適切な実態や写真の投稿などが批判され、松川るい女性局長が辞任に追い込まれました。
 同じ8月には、秋本真利外務政務官が日本風力開発から多額の資金提供を受けた収賄の疑いで辞任し、自民党も離党しています。一時、大きな批判を浴びた統一協会との癒着やその深い闇の解明も放置されたままです。
 これらのスキャンダルの要因は本人の資質や常識・倫理感の欠如などによるものですが、それを任命した岸田首相にも大きな責任があります。同時に、構造的な背景にも注目しなければなりません。それは小選挙区制という選挙制度です。大政党有利で政治の固定化と世襲議員を生み出し、女性の進出を阻み、緊張感を失わせて政権に「あぐら」をかくことを可能にしているからです。

 諸悪の根源は小選挙区制にあり
 活路は野党共闘、労働組合への期待

 歴史を振りかえってみれば、自民党が試みたあらゆる改革は失敗の連続でした。構造改革はリストラと規制緩和を進め、行政改革は官の役割を後退させ、財政改革は国債の増大を招き、税制改革は企業減税と消費税の増税をもたらし、労働改革は非正規労働者を増大させました。年金改革は支給額を減らすだけで、社会保障改革も保険料の増加と福祉サービスを低下させ、大学改革や教育改革は教員の負担の増加と研究力・教育力の衰退を生み出しています。
 なかでも最も失敗したのが政治改革です。小選挙区制が4割台の得票率で7割台の議席をもたらし独裁体制を築くことは当初から明らかでした。私は1993年の拙著『一目でわかる小選挙区慰霊代表並立制』(労働旬報社)で「『死票』がゴマンと出る」「政党と議員の固定化がすすむ」「投票率が低下する」などを指摘しましたが、その後30年の経過はこれを裏付けるものとなりました。
 自民党に好き勝手を許している諸悪の根源は小選挙区制にあり、野党の分断はそれに手を貸す結果となっています。日本の政治をまともなものにするために選挙制度の改革は急務ですが、現状では野党の選挙共闘によって政権交代にむけての可能性を探るしかありません。活路は共闘にしかないのですから。どの野党も単独での政権獲得は不可能で、維新は共闘を拒否しています。
 野党共闘の再建に向けては、職場での労働組合の共同闘争や草の根での様々な市民団体・政党などの共同行動の積み重ねが重要です。そのうえで、中央段階で選挙共闘に向けて合意し政策協定を結ばなければなりません。形だけの候補者調整ではなく、「本気の共闘」が不可欠です。
 2021年の前回総選挙では野党共闘が実現し、小選挙区での統一候補の当選が62、惜敗率80%以上は54、1万票以内が31という成果を収めました。しかし、共闘が不調に終われば「30選挙区で当選ラインを下回る可能性がある」と『東京新聞』(23年8月27日付)は報じています。共闘しなければ現状維持すら難しい、というわけです。
 連合や傘下組合に対しては、共産を含む共闘に反対しないよう、イデオロギー的な偏見を捨て、労働者の利益になるかどうかで判断するよう働きかけることが必要です。実質賃金や最低賃金の引き上げ、労働条件の改善、働く者の人権の重視という点で共通しているのですから。
 一時、立憲民主党の泉代表は共産党を含めて選挙協力せずと発言しましたが、実情に応じて柔軟に対応するとの姿勢に変わりました。笹森事務局長時代の連合と全労連は、労働基準法改定反対の「花束共闘」、春闘リレー集会での舞台共用、法政大学大原社会問題研究所主催のシンポジウム「労働の規制緩和と労働組合」での同席など、接近の動きがありました。
 しかし、労働の規制緩和に歯止めをかけるには不十分で、非正規労働の拡大や雇用の不安定化、賃金の低迷をストップさせることができませんでした。この歴史の教訓に学び、労働運動における共同の再建と選挙共闘の確立を両輪に、労働者の要求実現と政権交代をめざして労働組合が大きな役割を果たすことを期待したいと思います。


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10月1日(日) 現代史のなかでの岸田政権をどう見るか(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.842、2023年10月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 『東京新聞』2023年5月28日付は「データでみる失われた30年」という特集を組んでいます。そこに掲載されている「企業の時価総額ランキング」は衝撃的でした。日本の企業は1989年にトップ10に7社も入っているのに2023年には1社もなく、トップ100でも39位のトヨタだけなのです。日本企業の凋落ぶりを象徴するようなデータでした。
 戦後の日本は復興を成し遂げ、高度経済成長によって1968年には国民総生産(GNP)でアメリカに次いで世界第2位となりました。『Japan as No.1』(ジャパンアズナンバーワン)という本が出版されたのは1979年です。それからの10年間が戦後日本の絶頂期だったのかもしれません。
 その後の「失われた30年」を経て、今の日本はどのような地点にあるのでしょうか。長い坂をダラダラと下り、とうとう崖っぷちにさしかかっているようにみえます。足を踏みはずせば、奈落の底へと真っ逆さまに転落してしまうような崖っぷちに。
 この危機的な局面を招いているのが岸田政権であり、その特徴と問題点を歴史的に位置づけて解明したいと思います。時事通信が行った8月の世論調査によれば内閣支持率は26.6%で危険水域に突入しました。崖っぷちに立っているのは、岸田政権も同様かもしれません。

 「新しい戦前」を招き寄せる外交・安保政策

 岸田政権の安保3文書に基づく大軍拡・大増税路線の欺瞞と危険性については、これまで何度も指摘してきましたので繰り返しません(『学習の友』6月号掲載の拙稿「ウクライナ戦争に便乗した『新たな戦前』を避けるために」参照)。ここで指摘したいことの第1は、既成事実を先行させて国会審議自体を影の薄いものとしてきた手法の問題です。
 岸田大軍拡は1960年の安保改定、2015年の戦争法制定に次ぐ第3の政策転換でした。安保改定は条約交渉と国会での審議・承認を必要とし、国民的な反対運動が巻き起こり、戦争法制定でも国会での審議を契機に大きな反対運動が展開されました。
 岸田首相はこれを避けようとして有識者会議での密室審議を優先し、閣議決定と3文書公表の後に防衛産業支援法と防衛財源確保法を通常国会に提出しています。順番を逆転させることで反対世論の高まりを避ける姑息なやり方をとったわけです。その結果、大軍拡についての国民の理解は深まらず、国会審議も低調に終わりました。
 第2は、対米従属の深化とNATOへの急接近です。日本との貿易摩擦に苦慮したアメリカは1980年代中葉から軍事分担圧力を強め、中曽根内閣はこれを受け入れます。イラク戦争で日本は自衛隊を派遣しますが、憲法9条の制約によって非戦闘地域や非戦闘業務にとどまりました。憲法によって守られていたのです。
 ところが、岸田首相は進んで軍事費増を表明し、専守防衛を踏み越える積極的能動的な従米路線に転換しました。しかも、ウクライナ戦争に乗じてNATOやヨーロッパ諸国との軍事的連携を強めています。これまでとは大きく異なる安保の変質が生じているのです。
 第3は、日米韓3か国による新たな軍事ブロック形成の危険性です。キャンプデービッド会談(23年8月)で結束を確認した3か国首脳は「共同声明」で安保協力の強化を目的に首脳・外相・防衛相・安保担当の政府高官それぞれによる協議体を設け、「定例化」して年1回以上開催することを約束しました。
 これは日米間の軍事協力をNATO並みに引き上げ、ギクシャクしてきた日韓の外交的軍事的連携を強化し、政権が変わっても揺らぐことのない枠組みを作り出そうとするものです。このような新たな軍事ブロックの形成は東アジアにおける分断と対立を深め、軍事対軍事の競争をエスカレートさせ、緊張を緩和するどころかますます激化させるだけです。

 生活を破壊する経済・財政政策

 戦前の日本は「富国強兵」政策を採用しました。今の岸田大軍拡は軍事大国化して貧しくなる「強兵貧国」政策です。これから戦争になるかは国際情勢いかんですが、貧しくなることは確実です。これまでも「失われた30年」によって下り坂を辿ってきたことはすでに指摘した通りです。
 国内総生産(GDP)は今年中にドイツに抜かれて4位になると予想されています。一人当たりGDPはさらに貧しく27位です。国際競争力は37位へと後退しています、実質賃金は低迷し続け、過去10年間で24万円の減少です、最低賃金(全国平均)が時給1000円を超えて騒がれていますが、オーストラリアの最賃2200円の半分以下にすぎません。
 このような経済の低迷を抜け出すとしていたのがアベノミクスでした。しかし、その「3本の矢」(金融政策、財政政策、成長戦略)は実現せず、マイルドなインフレになれば景気が回復するというリフレーション理論や、富める者が富めば貧しいものにも富が滴り落ちるというトリクルダウン理論は幻に終わりました。
 とりわけ深刻なのは異次元金融緩和の後遺症です。黒田日銀総裁の後を受けた植田和夫新総裁も脱出に苦慮しており、「誘導する長期金利は0%、めどは0.5%、上限は1%」というあいまいな方針しか出せず、継続か修正か分からない「日銀文学」だと皮肉られているほどです。
 今後も実質賃金や最低賃金の引き上げ、年金の増額は期待できません。コロナ禍の苦境を救うために世界103か国・地域で実施された消費税の引き下げもなく、インボイス制度の導入で実質的に消費税を引き上げようとしています。防衛財源確保法の制定で生活支援の財源は軍拡に回され、増税も予定されており、少子化対策の財源確保のために社会保険料も増額されようとしています。
 ウクライナ戦争を契機とした物資不足と値上げラッシュの下にある国民生活は異次元の金融緩和による円安のツケが回ってきて、まさに崖っぷちに立たされています。政治を変えて経済・財政政策を転換しなければ生活を守ることのできないギリギリの局面にあるのが現状です。

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9月29日(金) 〝タガ〟が外れた岸田政権で日本はどうなる?(後半部分の2) [論攷]

〔以下の講演記録は『東京非核政府の会ニュース』No.425、9月20日付に掲載されたものです。後半部分を2回に分けてアップさせていただきます。〕

 あの「読売」調査も支持率激減

 内閣支持率が一気に下落している。日経新聞でも8ポイントの下落。驚いたのは読売新聞。15ポイントも下がっている。わざわざ政府に有利になるように質問内容を変えてまで世論調査をする、あの新聞でさえも15ポイントも落ちた。
 閉会中審査ということで議論がなされるようだが、岸田さん、凍結を言うしかないのではないか。すべての責任を河野太郎に押しつけて、当面これは見送ると表明するしかないところに追い込まれているようにみえる。
 もう一つ、国際的な流れと逆行しているのが原発推進だ。ドイツは、もう原発をやめ再生可能エネルギーに切り替える方向に向かっている。ジェンダー平等だって、134カ国中125番目ですよ、日本は。ひどいもんだなと思いますね。
 こういう時代逆行が、なぜ今の政権、特に自民党で強まっているのか。この背後には統一協会と日本会議の暗躍があるということです。こういう闇の勢力の支援を得るために時代逆行の政策を続けている。早く辞めさせる、その政権をストップさせるということが非常に重要になっているのではないかと思います。

 国政の対立構図 

 現在の国政の対立構図は、自公対野党ではない。自公の与党に野党などの一部、維新と国民民主が加わった4党、「悪政カルテット」といわれていますけど、これらの勢力対、野党の中でもまともな立憲野党、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組。こういう対立構図になっている。
 しかも、自民党はどんどん右に行ってしまった。自民党内部のリベラル派といわれていた宏池会、岸田さんのところですけれど、右派勢力に妥協する形で右に行ってしまった。宏池会の岸田さんの前の会長、古賀誠さんは「憲法9条は世界遺産」という本を書いている。古賀誠さんや河野洋平さんは、岸田軍拡を批判しています。これらの人々の居場所はもう自民党の中にはない。国民民主党も右へ行ってしまった。維新なんて、ずっと前から右のほうに行っています。真ん中から左の方「中道左派リベラル」の政治空間がぽっかりと空いてしまった。

 戦争に反対するすべてを結集して

 言ってみれば陣地を明け渡したということ。ここに立憲野党は支持を求めて勢力拡大を図らなければならない。チャンスだと思う。保守的ではあっても戦争に反対する人は多い。軍事的な対応はリスクを高めるだけだ。軍事対軍事は安全を求めていても危険度を増すだけだ。しかも、これを解決する展望、ビジョンをまったく今の自公政権は持っていない。軍備増強一直線だ。対話、交渉というソフトパワーによって戦争を抑制する、防止する。恐怖ではなくて、信頼関係によって平和を実現するというビジョンはまったくない。ここに一番大きな問題がある。
 市民と野党の共闘の再建を急ぎ、中道左派リベラルの人々を巻き込んで、東アジアにおける平和ビジョンを掲げて、貧国ではなく富国への道を指し示し、国民に選択を求める。いま、それが極めて重要になっている。

 情報戦の時代 声を上げ続けることが大事

 現在は情報戦の時代であって、なかなか本当のことが伝わらない。しかも自民党は長い間、戦後民主教育を敵視し、学校教育に介入し、教育基本法を変えて、関連する三つの法律まで改悪することで、政権に忠実で言うことを聞く、そういう批判力のない若者を育成しようとしてきた。
 しかし、今の若者は変わりつつある。環境問題やジェンダー平等、貧困問題、働き方の問題などについて関心を高めている。最近では食べていけない若者も増えている。食料支援などの活動を通じて声を上げる若い人たちも増えてきている。
 民主教育をぶっ壊そうとして、自民党は教育そのものをぶっ壊してしまった。今、先生のなり手がどんどん減り、公務員のなり手も減っている。民間企業にみんな行ってしまう。自衛隊もこれからどんどん志願者が減ると思う。今でも中途退職者が増えており、防衛大学校の任官拒否、高止まりだ。
 入隊のきっかけは「人の役に立ちたい。災害起きた時に助けたい」と入っている人はたくさんいる。そういう人たちに「自衛隊に入れば人助けできますよ」と言って今まで「だから入りませんか」と話していたのが、自衛隊に入ったら「人殺しできますよ。だから入りませんか」と、こんなことで増えるわけがない。今の自衛隊のままでいいではないかと考える人にとっては、本当に戦う軍隊にしてしまおうという岸田大軍拡路線は営業妨害だ。「やめてくれ」と言いたい自衛隊関係者は沢山いるのではないか。そういうこともきちっと情報として伝えていかなければならない。
 メディアも惨たんたるものです。特にテレビのワイドショーは、重要な情報についてきちっと問題を解明しないで、どうでもいいようなことばかりやっている。ネットはもっとひどい。フェイクニュースが満ちあふれている。こういう情報戦に打ち勝つために、私たちは学び、可能な形での情報発信をしていかなければならない。諦めず、事実の力をなお信じて「だまされるな」という声を上げ続ける。
 非核の政府を実現するためにも自らが学び、そして情報を発信していく。これがますます求められていると思う。

 次世代に自信をもって手渡せる社会を

 最初に言ったが、私は今年72歳。うさぎ年生まれの年男。だんだん耳が遠くなって、補聴器を使ったりしている。目は学生時代に右目を失明し、左目しか見えない。耳も目もなかなか思うに任せなくなっているが声は出る。話もできる。皆さんも足腰立たなくても弁は立つ。
 この力を生かして情報を発信し、声を上げ続けていくことが必要なのではないかと訴えたい。
 とりわけ、私と同世代の人たちに言いたい。私たちは日本の歴史の中でもまれに見る幸せな時代を生きてきた。戦争とも無縁。これからの若者はどうなるかわからない。
 この幸せで、それなりに高度成長の下で経済的にも豊かな生活を送ることができた世代だ。
 このような日本を後の世代にも手渡していかなければならない。ぜひ長生きをして、岸田自公政権に一矢報い、若い時に理想を掲げたその生き方を貫いて、これなら孫や子どもたちに手渡すことができるという、そういうう世の中にしてからお迎えを待つというのが正しい生き方ではないだろうか。少なくとも私はそうしたいと思っている。
(質疑は省略)

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9月28日(木) 〝タガ〟が外れた岸田政権で日本はどうなる?(後半部分の1) [論攷]

〔以下の講演記録は『東京非核政府の会ニュース』No.425、9月20日付に掲載されたものです。後半部分を2回に分けてアップさせていただきます。〕

 7月1日に開催した東京非核政府の会第36回総会での記念講演の前号からの続きです。(編集部)

 暴走か民主か 逆行政治から人権を守る

 岸田政権は、経済無策でほとんどお手上げだが、景気を良くすることは簡単、給料を上げればよい。年金を増やす。そして支出を減らす。税金、特に消費税を半分。社会保険料を上げない。福祉を充実して、将来に対する不安をなくす。そうすれば使えるお金、可処分所得が増える。
 これに魅力的なイノベーション、サービスが提供されれば、どんどんみんなお金を使って景気は良くなる。今はまったくそれと逆のことがやられている。
 確実にこれから日本は貧しくなる。今は円安だが、日本全体が価値を減らしてしまっている。
そういう中で、「暴走か民主か」ということだが、岸田さんはG7の時に「価値観の共有」ということを強調した。日本は価値観を他のG7の国々と共有しているわけではない。
 プラス面とマイナス面がある。プラス面は何か。日本は9条を持っている。武力による威嚇や行使はしない。抑止力に頼らない。戦争を放棄している。そういう国だから紛争には直接関わらない。武器輸出もやらない。日本がウクライナに行かなかったのは、9条を持つ日本にとっては当然の対応だった。日本としては正しかったのだ。
 ところが岸田さん、ウクライナ支援をやって、広島にまで招待して、「一体となって支援する」という。深く戦争にコミットするという態度を示してしまった。逆に言うと、ロシアに対する敵対的立場を鮮明にしたことになる。
 岸田さん、領土問題をどうするんだ。戦争が終わってから頭かいて「いや、北方領土返してもらいたいんですけど」とプーチンに会いに行くのか。もう完全に領土問題は、国民に問うことなく放棄してしまった。
 安部さんは4島返還を2島返還に値切り、さらに岸田首相は2島返還どころかロシアとの領土交渉の手掛かりすら放り投げてしまった。

 次々悪法成立 岸田政権の「命取り」に

 数々の悪法成立への暴走が通常国会で繰り返された。原発推進法、入管難民法、改定マイナンバー法、LGBT理解増進法などなど。G7の他の国はジェンダー平等とか、性的マイノリティーに対する権利擁護あるいは同性婚実現のためのさまざまなルールや法制度を実現している。日本だけ実現していない。LGBTに対する差別について、G7の他の6カ国の日本駐在の大使が日本に対して、「ちゃんと法制度を作りなさい」と勧告する文書を出すぐらいひどい。
 自由で開かれた国だと盛んに強調して、自由で開かれたインド太平洋、法の支配に基づく国際秩序というが、岸田首相は法の支配に基づいていない。憲法を踏みにじっている。法の大本である憲法を守ろうとしていない。自由でもなければ、開かれてもいない。
 難民認定3回やって、まだ認定されない人は送り返してもよいという、そういう人権無視も甚だしい。LGBTについては、「国民が不安を覚えないような形にしなければならない。不当な差別はあってはならない」と法に定めた。正当な差別ならあってもよいのかということです。それなら。LGBTの人々は国民に不安感を持たせるような人たちなのか。まったく逆に内容が歪められてしまった。理解増進法ではなく、差別増進法ではないか。こう批判されている。
 マイナ保険証への切り替えも大問題。連日さまざまなトラブル発生が報道されている。信用できないという声が高まってきている。マイナ保険証を持って病院に行っても、問題が起きるかもしれない。だから念のために紙の保険証を持ってきてくださいと言っている。〝何だこれは?〟ですよ。だったら初めから紙の保険証だけでいいではないか。マイナ保険証というが、「ス」が入って「マイナス保険証」になっている。
 最近では、マイナンバーカードを返上する動きがどんどん広まっている。5月25日までに自主的に返納を申し出た人が45万枚、それから1カ月以上たっているのでもう100万枚ぐらいになっているかもしれない。保険証だから大切なものだ。間違ったら、例えば違う薬を処方されて飲んでしまったら、命に関わる問題が起こる。この問題は岸田政権にとっても「命」に関わるかもしれない。政権の命運を左右する可能性が出てきた。


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9月21日(木) 解散・総選挙を前にした情勢と課題 改憲を阻止し、今こそ活憲の国づくりをめざそう(その2) [論攷]

〔以下の講演記録は『生きいき憲法』No.84 、9月5日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 アメリカの思惑と狙い

 アメリカは何を狙っているのか。その目的は覇権の維持。どんどん中国に追い上げられているからだ。80年代から90年代には日本に追い上げられた。これを繰り返したくない。だから、勃興する中国の頭を押さえ低迷する日本の足を引っ張って、中国に覇権を奪われず日本が再びライバルにならないようにしなきゃならない。
 そのために、中国を包囲し日本に軍拡を焚きつけてきた。岸田首相がその思惑に乗って二階に上ったから、「もういいや」と梯子を外された。アメリカの国務長官や財務長官が中国に行って密かに手打ちしたじゃないですか。その前にCIA長官も行っていたんですよ。中国との関係を改善し、秋には習近平がアメリカに行ってバイデンとトップ会談をする予定だ。
 アメリカとしても、あまりに緊張が激化し自国が戦争に巻き込まれては困る。といって、緊張がなくなっても困る。なくなったら、日本や韓国、台湾に武器を売りつけることができなくなるから。適度な緊張の高まりとその継続が望ましいんです。
 台湾に武器援助するのだって、自国の軍需会社にお金を払っている。日本や韓国には高い武器を売りつける。在庫整理のために、トマホークや国内では調達を停止しているオスプレイなどを売りつけようとしている。
 日本はアメリカから最新鋭の武器を購入していますが、そのまま日本が自由に使えるわけじゃないんですよ。IC化された重要な部分は全てブラックボックスになっている。だから、中枢部分についてはアメリカの軍需会社、製作している会社に委ねる。トマホークだってアメリカの製作会社の許可がなければ発射できない。従属国そのものですよ。絵に描いたような植民地になっている。

 ウクライナ戦争こそ「専守防衛」

 さらに大きな問題がある。ウクライナでの戦争が今回の大軍拡のきっかけになっているわけですけれど、岸田首相が目指している戦争はウクライナ以上のものなんです。どういうことかというと、ウクライナが今戦っている戦争は、典型的な「専守防衛」型の戦争だからですよ。基本的にはウクライナの自国領土とその周辺だけで戦闘し、戦場になっている。
 アメリカはウクライナがロシアの領土を攻撃することを禁じ、NATOもこれに同調している。ゼレンスキー大統領はロシアの領土を攻撃しないことを約束して、アメリカやNATOから兵器の供与を受けているんです。
 アメリカはハイマースという長距離ロケット砲を供与しましたが、わざわざ射程距離を短くしている。イギリスもロシア領土を攻撃しないと約束させてストームシャドーという長距離巡行ミサイルを供与した。F16戦闘機は飛行機だからどこでも飛んでいけるけれど、ロシアの領空には入らない約束で供与された。現に、領空には入っていません。
 ウクライナの首都・キーウがミサイルで攻撃されたからといって、ウクライナはモスクワをミサイル攻撃していますか。長距離砲で砲弾を撃ち込んでいますか。巡航ミサイルやF16で爆撃していますか。やっていません。
 ところが、岸田首相は相手国領土にミサイルを撃ち込むという。そのために、当面間に合わないからトマホークを購入する。トマホークだって実際には役に立たないんですよ。20年前の兵器で時速880キロ、航続距離1,600キロです。1,600キロ先の目的に到達するのに2時間近くかかっちゃう。
 我々は全然これらのことを知らされていない。いや、本当は知らされているんだけど、ちゃんと認識していないんです。ウクライナ戦争こそが、9条に基づく国是である「専守防衛」型の戦争だと、誰も言わない。9条のないウクライナが専守防衛で戦い、9条を持つ日本が専守防衛を踏み越えた戦争を戦おうとしている。このことをテレビなどはちゃんと報道せず、評論家や解説者もその事を指摘しない。誰も言わないんです。
 なぜ言わないのか。岸田大軍拡の危険性や間違いが明らかになってしまうからです。ウクライナがやっていない、アメリカにさえやるなと言われている戦争を、岸田首相はやろうとしている。このことを、もっとみんなに知らせてもらいたい。国民の皆さんに知ってもらいたい。僕はそう思いますね。

 歴史的事実が示す9条のありがたさ

 歴史的事実が示す安保の危険性と9条のありがたさということについても、再度、ここで強調しておきたいと思います。アメリカの本質は軍産複合体なんです。アメリカは「死の商人」国家ですよ。戦争をやればやるほど、戦争があればあるほど儲かる。自国の富が増えるんです。
 自分の国が戦場になるのはさすがに困る。だけど、適度な緊張の激化、他国の戦争は「蜜の味」なんです、東アジアでの緊張の増大、日本にとっては困る、自国の安全に大きなリスクが生ずるから。でも、アメリカにとっては困らない。戦争の危機があればあるほど、兵器が売り込めるから。
 日本の利害や国益とアメリカの利害や国益とは違うんです。当たり前だ。別の国だから違うのは当然。岸田首相はそれが分かっていない。もう、頭の中がアメリカナイズされているから。脳みそがCIA化している。
 安保3文書を検討した有識者会議にもアメリカ帰りの人がたくさんいる。みんなCIAのエージェントじゃないのか。佐々江賢一郎座長は元外務事務次官で元駐米大使だからね。アメリカに行けばCIAに工作されちゃう。岸信介元首相や読売新聞社社主だった正力松太郎、自由党総裁の緒方竹虎だってCIAの関係者だった。
 こういう人たちに日本の政治を任せていることが間違いなんだ。日本とアメリカの区別がつかない。自国の利益ではなくアメリカの思惑に応えようとする。アジアの緊張を緩和し、日本の安全を確保するためのソフトパワーを増大させ、近隣諸国との友好関係、共存共栄の環境をつくることこそが日本の利益だということが理解できない。岸田さんは日本の首相なんだから、日本の立場に立って物を考えてもらいたいと思いますね。
 アメリカは今でこそ「正義の味方」みたいな顔をしているけれど、戦後78年のうち37年間は外国に軍隊を送って軍事介入していた。2年前まではアフガニスタンにも軍事介入していたじゃないですか。グラナダやパナマに侵攻したり、中南米やアフリカに軍隊を送ったりしてきた。クーデターで政府が倒れたニジェールには、今も米軍が駐留していますよ。
 トンキン湾事件をでっちあげて軍事介入したベトナム戦争で、アメリカは自国の若者5万8000人を犠牲にしてしまった。ベトナム人300万人以上の命を奪ったじゃないですか。ドルを垂れ流して経済的困難に陥り、国際社会での地位を低下させた。アメリカは大きな失敗を犯して撤退せざるを得なかった。
 このベトナム戦争で日本はアメリカの出撃・補給基地になった。安保があったから、断りきれなかったんです。米軍基地があったために不正義のベトナム戦争に引きずり込まれた。沖縄に基地があったから、米軍機が飛び立った。基地がなければ戦争を始めることも続けることも難しかったかもしれません。沖縄の米軍基地は、沖縄や日本にとってだけでなく、アメリカにとってもない方が良かったのです。
 しかし、自衛隊を送ることはなかった。なぜ自衛隊がベトナムに行かなかったのかと言えば、9条という憲法上の制約があったからですよ。韓国、タイ、フィリピン、ニュージーランド、オーストラリアなどの同盟国は軍隊を送った。9条がなかったからです。
 延べ30万人をベトナムに送った韓国は約5000人の自国の若者をベトナムで殺してしまった。民間人虐殺事件で生き残った1人の女性が裁判を起こし、その判決がソウル中央地裁であり、韓国政府は有罪になった。過去の話じゃない。今年の2月7日に判決が出たんだ。
 日本はそういうことをやってこなかった。やらずに済んだ。ベトナムで自衛隊員は1人も従軍していない。9条が守ったんです。9条の威力ですよ。安保があったから戦争に協力させられたけれど、9条があったから自衛隊は行かなかった。1人の死者も出さず1人も殺さなかったのです。
 しかし、イラクには行かされた。金だけじゃなく人も出せというアメリカからの圧力に屈してしまった。ペルシャ湾に海上自衛隊。バグダッド空港に航空自衛隊。イラクのサマーワに陸上自衛隊を派遣した。陸上自衛隊は行ったけれど、非戦闘地域だった。水を配ったり道路を補修したり、学校を建て直したりという非戦闘業務に従事しました。銃弾を一発も撃たなかった。
 なぜ、そういうところに行き、そういう業務を行ったのか。9条があったからですよ。自衛隊がイラクに引きずり出されたのは、安保があったからです。しかし、自衛隊を守ったのはまさに9条です。危険な戦闘業務から距離を置くことができたペルシャ湾の海上自衛隊も、バクダッド空港の航空自衛隊も、そしてサマーワに行かされた陸上自衛隊も、「9条のバリアー」によって守られていたんですよ。
 ドイツは戦後日本と同じような形で出発した、ほとんど非武装でした。海外派兵などできない。しかしその後、国防軍を再建して再軍備を始め、海外に軍隊を出せるようにしてしまった。憲法裁判所がこれを認めた。
 アフガニスタン紛争にドイツ国防軍が派遣され、輸送業務に従事していたとき、現地の武装勢力に襲撃されて55人のドイツ兵が殺されてしまった。同じように戦後出発したドイツは死者を出し、日本の自衛隊は出していない。ドイツに9条がなく、日本には9条があったからです。
 他方で、ドイツは原発政策や環境保護、人権や性的少数者の権利擁護、ジェンダー平等、ナチスの戦争責任の追及などでは、日本よりずっと進んでいます。周辺諸国との友好関係も日本より良好です。なぜなのか。ちゃんとした政権交代があったからです。日本ではそれが不十分だった。
 ドイツの戦争責任についても、国家指導者が明確に謝罪しています。私はワルシャワに行ったときユダヤ人を収容していたゲットーの跡地に行きました。そこにはレリーフがあった。西ドイツのブラント首相がワルシャワを訪問した際にゲットーを訪れ、ひざまずいて花輪を捧げ謝罪している姿がレリーフに刻まれ残されていた。
 ユダヤ人迫害に対し、ひざまずいて謝ったプラント首相。日本の首相はそういうことをやっていません。従軍慰安婦問題がなかったかのごとき言動を繰り返し、まともに謝罪していない。韓国に行ってナヌムの家を訪問して従軍慰安婦だった高齢女性に「ご苦労をかけましたね。申し訳ありません」とひとこと言いさえすれば、この問題は解決していたはずです。
 そうできるような政権を我々は持たず、そういう首相を生むことができなかった。これはドイツとの違いです。ドイツには9条がなく、日本にはきちんとした政権交代がなかった。これが両国における戦後史の違いを生んだ教訓です。ということで、9条こそ自衛隊を守ってきた安全保障の要だったということを再度指摘しておきたいと思います。

 9条こそ日本のソフトパワー

 この問題に関連して、最後に強調しておきたいことは、日本の安全を確保し東アジアの平和を守るという点だけで9条を評価してはならないということです。いわゆる「9条の経済効果」と言われている側面ですが、これも「経済」だけに限られない幅広い「効果」をもたらしてきたことに注目しなければなりません。
 9条という憲法上の「制約」によって、日本は軍事にお金をつぎ込まず、経済や産業発展、学術振興、福祉増進のために、経済成長の果実、国富をつぎ込んできた。高度経済成長を実現し、日本の国力を高めて豊かな社会を生み出すために9条の力が全面的に発揮されたということです。
 そして、日本という国の「平和国家」としてのイメージを生み出すうえでも、9条は非常に重要でした。この国家的イメージこそが、戦後78年かけて築き上げてきた日本の政治資産なのです。今、各国から観光客が来ているでしょ。インバウンドによる「観光立国」がこれからのビジョンであり、発展の道です。
 日本は世界中で憧れの国になっている。9条を持つ平和で穏やかな国としてのイメージ。加えて、自然が豊かで治安が良く親切で美味しい国というイメージが大きな力を発揮している。これこそが隣国との戦争を引き起こさない「抑止力」そのものです。そのような力を生み出す非軍事的な力、これこそがソフトパワーなのだということを強調しておきたい。
 それを次の世代に引き渡すことこそ、今に生きる私たちの最大の責務であり、歴史的使命なのです。来たる解散・総選挙をそのチャンスとして最大限有効に活かす、そのために市民と野党の共闘を再建し再構築しなければなりません。この課題の達成に向けて力を尽くしていただくことをお願いしまして、私の話を終わらせていただきます。ありがとうございました。

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9月20日(水) 解散・総選挙を前にした情勢と課題 改憲を阻止し、今こそ活憲の国づくりをめざそう(その1) [論攷]

〔以下の講演記録は『生きいき憲法』No.84 、9月5日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

司会 東京連絡会の8月の懇談会を始めたいと思います。岸田内閣はずっと改憲を唱え維新がそれにハッパをかけると、解散・総選挙もいつ行われるか分からないという状況の中で9条の力を高めて打ち破る。そのために今回は、五十嵐仁さんをお招きして講演をお聞きし、その後、抱えている問題とか今後の進め方などについてヒントを持ち帰られるような会になればと思っております。それでは始めたいと思います。五十嵐先生よろしくお願いいたします。

五十嵐 皆さんこんばんは。五十嵐です。よろしくお願いします。改憲、解散・総選挙を前にした情勢をお話ししたいと思います。ただし9条の会ですから、ここで改めて安保と9条の関係についてお話させていただこうと思っています。今の状況を考えるうえで、歴史を振り返ってどういう時点に差し掛かっているのかということをしっかり認識することが何よりも重要になっていると思うからです。
 講演の要請があったときは解散・総選挙が近いとされていました。しかし、今の状況ですと早くて10月の臨時国会冒頭解散あるいは終盤、11月から12月という可能性に変わりました。通常国会で予算が成立した後の3月か4月、あるいは通常国会の最終盤の東京都知事選挙と同じ7月、一緒にやるかもしれない。なぜ解散・総選挙かと言いますと、来年9月に自民党総裁選挙があります。ここで再選を狙う。それまでに選挙で一定の成果を収め、再選を確実にしたいと岸田首相は考えているからです。
 ただし、内閣支持率がどう推移するかによって、解散できるかどうかが左右されます。我々としては内閣支持率を下げて解散に追い込み、総選挙を勝ち取るという攻勢的な姿勢で取り組んでいく必要があると思います。そういう点からいっても、今の状況を明らかにし、岸田首相が狙っている大軍拡・大増税や安保と憲法9条との関連などについて、もう一度理解を深めることが何よりも重要になっているのではないかと思うわけです。

 「崖っぷち」にさしかかった日本

 レジュメに書きましたけれど、端的に言って歴史的岐路にさしかかってきている。というよりも、いよいよ「崖っぷち」ではないか。ダラダラと坂を下ってきたわけですけど、このまま奈落の底へ真っ逆さまという極めて危機的な転換点に直面しつつある。
 その大きな背景として、プーチンが仕掛けたウクライナ戦争があるわけです。昨年の2月に戦争が始まり、これによって世界中にきな臭い空気が漂った。それまで日本国民も戦争は嫌だという気持ちが強く、軍事にはあまり関わりたくないという気分があったわけですけども、ウクライナ戦争で変わりました。
 「日本は大丈夫なのか」という気持ち。岸田首相は「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と危機感を煽り、ウクライナ戦争という惨事に便乗して大軍拡・改憲路線を打ち出してきた。国民の不安が高まり、「軍備を強めなければならないんじゃないか、9条で平和や安全は守れるだろうか」と考える。
 軍事に対する忌避感情、嫌だという感覚が、だんだん薄れてきているのではないか。こういうなかで、再び9条の意義、その「ありがたさ」を確認する必要が生まれている。水や空気のように、あるから当たり前だと思っている、だからなくならないと分からない。
 しかし、なくならなくても歴史を振り返れば分かります。9条を大切だと思っている人の中でも、そのありがたさがしっかりと認識されていないんじゃないか。国民の多くは「安保があったから平和が保たれたんだ、日本は安全だったんだ」と思っていますが、逆なんです。
 安保があったから、日本は戦争に引きずり込まれた。9条があったからかろうじて踏みとどまってきたんですよ。後で詳しく話しますけれど、この関係をもう一度しっかりと見ておかなければならない。9条は「命綱」だ。これが切られてしまうんじゃないか。その意義、ありがたさが分かっていないから、9条を亡き者にしようという人が出てきてしまう。
 このような妄言にしっかりと反論できなければならない。そのためには9条を守らなければならないわけですけれども、必要なのはそれだけじゃない。守るだけでなく、活かさなければならない。憲法どおりの日本をつくる。このことが極めて重要になってきている。
 憲法どおりの日本になっていないから。G7サミットで日本は赤っ恥をかいた。G7のほかの国の駐日大使から日本は性的少数者の権利を促進し、同性婚を認める法的整備をしなさいと申し込まれた。岸田首相は先進国と価値観を共有していると言っているけれど。そんなことはないんです。
 LGBTQという性的少数者に対する人権保障も不十分。新しい理解増進法で「不当な差別はあってはならない」と定めた。じゃあ「正当な差別」はあっても良いのか。ジェンダー平等でも日本は146カ国中125番目です。人権、女性の権利、過去の戦争責任や植民地支配への反省などの点で。G7の他の6カ国よりずっと遅れている後進国だ。
 なぜかと言えば、憲法をちゃんと守っていないからです。憲法どおりの政治を行っていないからですよ。平和で豊かな社会、人権と環境を守りジェンダー平等を実現するという点で遅れているのは、日本国憲法が政治と生活に活かされてこなかったからだ。そのツケが回ってきているということを最初に言っておきたい。

 安保3文書のウソと危険性

 先ず、安保3文書についてお話します。これはもう何回も言われているのでよく分っていると思いますけれど。ウソだらけの文書だ。「安全保障政策の基本は変わっておりません」と岸田首相は言っている。変わっていないんだったら、3つの文書を出す必要はなかったじゃないか。大きく変えたから、有識者会議を開いて政策転換を決めて閣議決定したから3文書を出した。「変えましたよ」ということを国民に示したんですよ。変えてなかったら、なんであの3つの文書を出したのか。ここには大きなウソがある。
 敵基地攻撃能力を保有すると言っています。これもウソです。攻撃するのは「敵基地」だけではありません。「基地」だけじゃない。指揮統制機能を持つ中枢を攻撃すると言っている。日本で言えば、永田町や霞が関、市ヶ谷の防衛省ですよ。もちろん基地も攻撃する。基地プラス政治的軍事的中枢を攻撃すると言っているじゃないですか。「敵基地」じゃなくて「敵地」なんですよ。
 これを「反撃」能力と言い換えていますが、これもウソです。反撃とは、攻撃されてからするものです。攻撃される前の「着手」段階で攻撃する。反撃じゃない。この着手というのは、誰がどのように判断するのか? 日本にはそんな能力はない。アメリカの情報に頼るしかない。しかし、アメリカはウソの情報を流すかもしれない。ベトナム戦争ではトンキン湾事件をでっち上げて攻撃したアメリカですよ。そのアメリカに着手したかどうかの情報を頼る。こんな危険なことはない。
 北朝鮮がミサイル発射をしたことを知らせるJアラート。ミサイルが日本を飛び越えてから鳴らしている。これが現状ですよ。そんな日本にこれから発射するという着手段階で対応できるのか。それはミサイル発射実験ではなく実際に攻撃するための発射だと、誰がどのように判断するのか。
 攻撃じゃなくただの実験だったのに、着手したとアメリカに言われて日本がミサイルを発射すれば先制攻撃そのものですよ、これは。国際社会から見たら日本が攻撃を仕掛けたと判断される。こんなことをやったら相手から反撃される。日本全土が攻撃されます。南西諸島の要塞化など全く無駄。南西諸島を攻撃する必要がない。日本全土が標的になる。
 北朝鮮のミサイルは日本を飛び越えている。中国の中距離ミサイルだって射程圏内に入っている。スタンドオフミサイルなんていっていますが、射程圏外なんてどこにもない、日本には。政府だって分かっている、そんなことは。だから。全国の自衛隊基地283地区1万2636棟を強じん化、地下化するというわけです。なぜ地下に入らなきゃいけないのか。ミサイルが飛んでくるからですよ。こういうことを今やろうとしているということを我々はしっかりと認識しなきゃならない。
 防衛政策の基本は変わっていないとも言っています。半分本当なんですね。平和安全法制(戦争法)が制定された段階で変わっていたからです。日本が攻撃されていなくても、アメリカが攻撃されれば米軍防護ということで一緒に戦争できる。日本の存立危機事態であると認定すれば、集団的自衛権に基づいて参戦できます。これは2015年に既に変わっていたんです。
 ただし、それをやるための実力、実践的能力を自衛隊は持っていなかった。それを今、本格的に身につけようというのが、今回の安保3文書の趣旨です。枠組みや制度はできている。それを実際に、やれるようにしようというのが岸田大軍拡の狙いなんです。

 対米従属の変質と深化

 どういうふうにやるのか。集団的自衛権に基づいて、日米の軍事的一体化、融合するということですね。統合防空ミサイル防衛(IAMD)という新しい戦略的構想に自衛隊が組み込まれる。今の自衛隊は陸上・海上・航空に分かれています。この3自衛隊を一つにまとめて統合司令部を作る。そしてこの統合司令部とアメリカ軍が一体化する。アメリカ軍は今、ハワイにインド太平洋軍の司令部がある。これをハワイから横田に移し、自衛隊の統合司令部と合体し融合する。この計画はすでに発表されていて皆さんもご存じのはずなんですが、ほとんどマスコミで報じられていない。
 今まで対米従属と言ってきましたけれど、この従属のレベルが全く違ってきている。米軍と融合し一体化して自衛隊は米軍の傘下に組み込まれます。自衛隊の最高指揮官は首相ですが、その指揮権はなくなっちゃいます。日本の国家的自立、主権はどうなるのか。そんなものはみんな消えてなくなり、完全な従属国、植民地になる。
 今、この対米従属の質的転換が図られようとしています。1つは、その危険性が従来になく高まっていることです。今までも自衛隊は米軍と一緒に戦争に参加することが狙われ、海外派兵に向けて要請や圧力がかかってきました。そのときの戦場は中東地域です。今はそうじゃない。戦場は台湾周辺であり、東北アジアです。日本全土が戦争に巻き込まれ、戦場になってしまう危険性が生まれている。
 アメリカに言われて中国にミサイルを撃ち込んだりしたら、直ちに反撃されます。全面戦争になっちゃいます。アメリカと中国が戦えば、戦後初めて国連安全保障常任理事国同士の戦争になってしまう。第3次世界大戦あるいは核戦争に発展する大きなリスクがあることを、岸田首相は分っているのか。この戦争のリアリティに対する想像力が、岸田首相には決定的に欠けている。
 2つ目の問題は、北大西洋条約機構(NATO)への接近と連携の強化です。今、ウクライナはロシアと戦っていますけど、これは安全保障常任理事国同士ではない。ウクライナはNATOの一員でもない。ところが、日米軍事同盟・安保とNATOがドッキングしようとしている。
 岸田首相は盛んにNATO との接近を図ってNATO理事会に出席し、ヨーロッパの国々との軍事的連携を強めています。イタリアやイギリスと戦闘機の共同開発をし、フランスと合同軍事演習を行い、イギリスとも軍事協定を結んでいる。米中対立の場合、NATOと共に戦おうとしている。極めて危険な道を歩もうとしています。
 3つ目です。圧力の受け入れではなく、自発的な協力という形で従属の質が深まっている。今まで、アメリカから軍事分担圧力がかかってきても、9条があるからと断ることができた。受け入れる場合も、押し切られる形でした。しかし、安倍元首相や岸田首相はそうではない。自ら進んで、能動的に軍事同盟を強化しようとしている。
 バイデンは大統領選挙に向けての演説の中で、私は3回岸田と話して軍事費を増やすよう説得したと明かし、日本政府が「独自の判断だ」と申し入れた。そうしたらバイデンは訂正した。「首相はすでに決めていた。説得は必要なかった」と。岸田は自ら進んで軍事費増大を決めていたというのです。今までとは違うんです。
 安倍晋三元首相の回顧録にはなんて書いてあるのか。アメリカ・ファーストと言ってトランプが世界の安全保障から手を引こうとしたとき、「私は『国際社会の安全は米国の存在で保たれている』とトランプには繰り返し言いました。米国の国家安全保障会議(NSC)の面々と私は同じ考えだったので、NSCの事務方は、私を利用して、トランプの考え方を何とか改めさせようとすらしました」(179頁)。世界の警察官であり続けろと、安倍がトランプを説得したんです。こういう形に変化している。日米軍事同盟は変質し、その危険性が今まで以上に高まっていることを直視しなければなりません。

 やってはならずできもしない大軍拡

 このような中でアメリカと一緒に戦争しようとするのが岸田大軍拡の構想です。しかし、それはやってはならないことだ。憲法の制約があるからです。武力による威嚇を強め、国際社会の分断と対立を拡大するからです。資料として憲法前文、9条と防衛庁長官や首相などの言葉を掲載しましたが、これはもう皆さんよくご存じのことです。
 9条には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書いてある。戦争や武力の行使だけじゃない、「武力による威嚇」もやらないと書いてある。
 トマホークを400発も購入するというのは「武力による威嚇」そのものじゃないですか。やらないと言ったことをやろうとしている。しかも、トマホーク1発アメリカ国内では2億円だけど、対外有償軍事援助(FMS)で2.5倍の5億円で売りつけようとしている。だから2113億円もかかる。
 オスプレイだって、アメリカ国内ではもう調達停止している、なぜか? 落ちるからですよ。この前だって落ちた。構造的欠陥がある。こんな欠陥機、アメリカ国内で軍はもう買わない。在庫をどうしようかっていうことで日本に売りつける。良いお得意さんだ、日本は。佐賀空港の横に、オスプレイのための飛行場を作っているんだから。こういうばかなことをやっているんですよ。岸田さんは。
 それだけではない。岸田大軍拡を、そのまま実行できる可能性は極めて低い。そのための金がない、人がいない、技術もないからだ。1,000兆円を超える国債が積み上がっている。これから5年間で43兆円、実際には60兆円ものお金をつぎ込んで、世界第3位の軍事大国になる。軍事大国にならないというのも真っ赤なウソだ、
 軍事費の調達をどうやるのか。増税は必要になるけど開始時期は未定で、2025年以降に先送りされそうです。どうやって税金を集めるかは、まだ決まっていない。歳出改革や決算余剰金、国有財産の売却などの税外収入も当てにしているが、どれも確実な金額を出せるほど安定した財源にはならない。
 人がいないという問題もある。今、自衛隊の定員は24万7,000人ですが、1万人以上不足しています。なり手がいない。なってからもやめる人が多い。これからますます人材は奪い合いになります。企業・公務員・教員、みんな人手不足で、自衛隊員の募集は苦戦するにちがいありません。
 しかも、今までは「いや、人助けできますから」と言ってきた。「災害救助で自衛隊、頑張っているでしょ」と言ってね、お宅の息子さんどうぞ自衛隊に入れてくださいよと勧誘してきた。しかし、これからは戦争になるリスクが高まる。「いやあ、人殺しできますよ」と言って勧誘するのか。それで自衛隊に入れたいと思う親がいるのか。入りたいという若者がいるか。
 今でも中途退職者が増えている。防衛大学校も退学者や任官拒否者続出ですよ。かき集めた人たちの質も問題。同僚に銃をぶっ放すような人がいたり。パワハラやセクハラもある。自殺未遂や集団詐欺事件まで起こしていると防衛大学校の等松春夫という現役教授が実名で告発しています。電子化された最新鋭の兵器をかき集めても、兵器の山ができるだけ。管理し運用できるのかということです。
 その兵器だって国産で改良するという、これが3番目の問題で、そのような技術があるのか。一二式地対艦誘導弾や極超音速誘導弾とかを開発する技術力があるのでしょうか。三菱重工とJAXAに任せようとしているけど、三菱重工は中距離旅客機(MRJ)の自主開発を断念した。JAXAの宇宙開発も失敗だらけ。H3ロケットの発射は延期され、能代でやっていたイプシロンSのエンジン燃焼試験で爆発しちゃった。旅客機やロケットは駄目でもミサイルなら作れるのか。

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9月18日(月) 〝タガ〟が外れた岸田政権で日本はどうなる?(前半部分の2) [論攷]

〔以下の講演記録は『東京非核政府の会ニュース』No.424 、8月20日付に掲載されたものです。前半部分を2回に分けてアップさせていただきます。〕

 すべて憲法が禁じていること

 岸田首相が目指している大軍拡は憲法が禁じていることばかりで、憲法前文と9条に反していることは明らかだ。9条で禁じているのは武力の行使だけではない、武力による「威嚇」も禁じている。伊能防衛庁長官(1959年)や田中角栄首相(1972年)は、「脅威を与えるような兵器を持ってはならない。専らわが国土およびその周辺において防衛を行うということだ」と言っている。だから、岸田首相がやろうとしている敵領土を攻撃する武器を持ち、それによって敵を威嚇する政策は現行憲法の下では実行できない。
 それだけではない。今、ウクライナで戦われている戦争こそがまさに自国領土およびその周辺における戦争なのだ。つまりウクライナ戦争は典型的な「専守防衛」戦争ということになる。このことを誰も指摘していない。それを言えば、岸田首相が目指している「敵基地攻撃」論の間違いが明らかになってしまうからだ。
 ウクライナ戦争は、第三次世界大戦や核戦争を引き起こす大きなリスクを抱えている。だから、アメリカはウクライナに「ロシアの領土を攻撃するな」と言っている。アメリカはウクライナに対してハイマースという長距離砲を供与したが、ロシアに届かないように射程距離を縮めている。今度イギリスもストームシャドーという巡航型ミサイルを供与したが、これもロシアを攻撃しないという約束の下での供与だ。
 F16も戦闘機だからいくらでも空を飛んでいけるわけだが、ロシアを攻撃しないと約束してウクライナに供与されている。ロシアはウクライナの首都キーウにミサイルを撃ち込んでいるが、ウクライナはモスクワにミサイルを撃っていない。
 岸田首相が目指している大軍拡の方向は、ウクライナが行っていない戦争のやり方なのだ。これがいかに危険で過った道であるかが、この事実によって明らかだ。日本の安全を保障するどころか第三次世界大戦や核戦争を引き起こす恐れがあるということを、ウクライナ戦争の現実が示している。岸田首相には、この戦争のリアリティに対する想像力が完全に欠落している。

 人も,金も,技術もないのに

 しかも、このような大軍拡は実際には難しい。金も人も技術力もないから、できないのではないか。通常国会で防衛財源確保法が成立したが、増税は先送りされている。防衛財源の確保は簡単ではない。
 人もいない。人材の取り合いになる。今、自衛隊の定員は24万8000人で1万8000人が不足している。入隊した人達の中にもいろんな人がいる。最近、さまざまな事件やハラスメントが相次いでおり、自衛隊員の質が問題視されている。募集と人材の確保はもっと難しくなるだろう。
 兵器を開発する技術力にも不安がある。三菱重工とジャクサが中心になると期待されているが、MRJ(国産初の中距離ジェット旅客機)の開発断念、H3ロケットの発射失敗、イプシロンSの爆発事故などが相次いでいる。旅客機やロケットはだめでもミサイルなら大丈夫だと言えるのか。
 敵基地攻撃のためのミサイルがすぐには間に合わないから、アメリカから巡行式ミサイルのトマホークを購入するという。誰がそれを運用し、操作するのか。隊員不足で機能しなくなるかもしれない。価格もアメリカ国内では一発2億円なのに2.5倍の5億円で買うという。400発で2113億円。そんな金、どこにあるのかと言いたい。

 9条を変える愚かさ

 この問題を考える上で指摘しなければならないのは、安保体制や日米軍事同盟と憲法9条との関係のこと。安保という軍事同盟で日本は戦争に巻き込まれ協力させられてきた。ベトナム戦争やイラク戦争などだ。しかし、日本と自衛隊は9条に守られ、かろうじて犠牲者を出さずに済んでいる。
 ベトナム戦争で、日本は米軍の出撃・補給基地になった。しかし、9条があるために自衛隊を送らずに済んだ。この点が9条のない韓国などとの違いだ。韓国は延べ30万人をベトナムに派遣し、約5000人もの自国の若者を犠牲にしてしまった。民間人の虐殺事件まで引き起こし、今年の2月にソウル中央地裁で韓国政府への有罪判決が出ている。
 イラク戦争ではアメリカの圧力に屈して自衛隊が派遣された。しかし、陸上自衛隊が派遣されたサマーワは非戦闘地域で、給水や道路の補修などの非戦闘業務に従事していた。だから、誰も殺さず殺されず無事に帰ってこられた。自衛隊は憲法9条の「バリアー」によって守られていたのだ。
 「安保によって平和は守られてきた」という人がいるが、真っ赤なウソだ。実際には、安保によって戦争に引きずり込まれ、9条によって守られてきたのだ。9条は戦争への防波堤であり、自衛隊を守る「バリアー」だった、それを換骨奪胎しようとしている。なんと愚かなことか。自衛隊員の家族や関係者こそが、憲法調査会での議論を祈るような気持ちで見つめているに違いない。

 国も国民も貧しくなる大軍拡・大増税

 もう一つの大きな分かれ道がわれわれの前にある。戦争になるかどうかは国際情勢いかんで分らない面がある。しかし、岸田政権が進めようとしている大軍拡が貧しさに結びつくことは確実だ。
 日本は戦前、富国強兵政策を採った。今、岸田首相が採ろうとしているのは富国ではなく貧国、強兵貧国政策だ。戦争に国富をつぎ込んで貧しくさせてしまう貧国路線、これはすでに始まり、これまでも貧困と格差拡大の道を辿ってきた。それが奈落に向けて一気に加速されるだろう。
 かつて日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた。1979年のことだ。80年代に入って急速に経済が過熱しバブルとなった。それがはじけた90年以降は「失われた30年」。ずっと経済は低迷し続けてきた。
 1968年に日本は西ドイツを抜いてGNP(現在はGDP)で世界第2位になった。その後、中国に抜かれて3位。今年、またドイツに抜き返されて第4位になるのではないかといわれている。来年以降、近い時期にインドに抜かれて第5位になるかもしれない。
 1人当たりGDPはもっとひどい。世界で27位。国際競争力は35位だ。経済的・社会的に言えば、外国から攻撃される前にすでに日本は崩れつつある。経済も社会も内部から崩壊しつつある。
 先日発表された企業の時価総額ランキングで日本の企業は世界100社の中に何社ぐらい入っているか。たった1社しかいない。トヨタだけだ。あとは全部下のほう。日本はこういう国になっている。そういう状況の下で目論まれているのが軍拡のための大増税だ。
 防衛費増額のための財源確保法は成立したが、予算は年ごとに立てなければならない。年間5兆円のうちの1兆円ぐらいで、あと4兆円は別のところからかき集めてくる。中には増税の計画も入っている。たばこ税とか、あろうことか福島の震災からの復興税、国立病院を充実させるための積立金まで軍備増強に回される。兵器というのは役に立つのは戦争、役に立たなかったらまったくの無駄。こういうなかで国民の生活が犠牲になっていく。

 貧困か富国か 「どうする岸田」

 実質賃金は14カ月連続でマイナス。過去10年間でマイナス24万円となる。給料が上がらない。年金も減る一方だ。今、最低賃金についての審議が始まっている。間もなく決まるけれど、しかし日本の最低賃金は韓国よりも下で、1000円を超えても2200円のオーストラリアの半分以下でしかない。
 収入は少ない。年金も削られている。一方で税金は上がり、消費税もどんどん上がってきた。今度は子育て支援だということで社会保険料も上げて、みんなで負担しようという話。収入は減って。税金と社会保険などの社会保障関係費を加えた国民負担率は48%から49%。半分近くはいわゆるお上に召し上げられている。江戸時代の「五公五民」と同じだ。
 こういう状況の下で、社会保障サービスや高齢者福祉はどんどん削られる。将来が心配だから貯金する。収入は少ない。物価高で支出は増える。必要経費がどんどん高くなる。石油も上がっていく。そして、将来のための蓄え。いったいお金が使えるのか。可処分所得が増えなければ景気が良くなるはずがない。
 しかも、政府はもうお手上げ。イラク戦争やアベノミクスの異次元金融緩和による円安の影響を受けて値上げの波はどんどん高まり、押し寄せてきている。生活支援の対策はなく、まったく経済無策だ。政府はいったいどうするのか。「どうする家康」ではないが、「どうする岸田」と言いたくなる。

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9月17日(日) 〝タガ〟が外れた岸田政権で日本はどうなる?(前半部分の1) [論攷]

〔以下の講演記録は『東京非核政府の会ニュース』No.424 、8月20日付に掲載されたものです。前半部分を2回に分けてアップさせていただきます。〕

 7月1日に開催した東京非核政府の会第36回総会での記念講演を本号から2回に分けて紹介します。(編集部文責)

〝タガ〟が外れてしまった

 今度の通常国会は惨たんたるものだった。主なものだけでも原発推進、マイナンバーカードの強要、軍事産業を支援、軍拡財源確保があげられるが、負担を国民に強制する悪法だ。そして、入管難民法の改悪、LGBTQという性的少数者への理解を増進する目的で提出されたのにねじ曲げられてしまう。次から次へと悪法が成立していった。
 岸田政権の〝タガ〟が外れ、戦後最悪の暴走政権になった。あの安倍政権を上回る暴走ぶりはかなりのものだ。どうしてそうなったのか。ウクライナ戦争が深く影響を及ぼしている。
昨年2月24日、ロシアのプーチン政権が突如としてウクライナに侵略戦争を仕掛けた。これを利用して大軍拡・大増税の方向にかじを切ったのが岸田政権だ。
 安全保障環境の厳しさを理由に負担を国民に強い、命と健康、生業など、生活のあらゆる面で国民を危険にさらす事態を生み出している。性的少数者の人権、環境問題。原発の新増設・再稼働の動きなどの点で、民主主義や人権をめぐっても後ろ向きの対応をとり続けている。
 今の日本は大きな曲がり角に差し掛かっていると言える。戦争か平和か、貧困か富国か、暴走か民主主義か。こういう曲がり角で岸田政権はどの方向に向かうのか、きわめて危険な方向が示されている。ウクライナでの戦争を利用した「惨事便乗型」の大軍拡・大増税で、全般的な軍事化の始まりだ。あらゆる国民生活、公的業務が軍事のために総動員されるという傾向が強まっている。そのために国民生活が犠牲にされる。「新しい戦前」といわれているが、「いつか来た道」を再びたどり始めているとの懸念や危惧が強まっているのが現状だ。

 非核の政府を求める運動の出番

 非核の政府を求めるということで皆さんは活動を続けてきた。その出番がやってきたということだ。これまでの日本は非核三原則を掲げ、少なくとも「持ち込ませず」ということで核を国内に存在させてこなかった。
 今はどうか。ウクライナ戦争の影響で、核を使用する、核を抑止力として国内に持ち込む危険性が強まっている。核に頼らない、核兵器を国内に持ち込ませない、こういう運動がますます重要になっていることを最初に強調しておきたい。

 戦争の準備 急速に

 「戦争か平和か」という問題でも、「安保三文書」が発表され、急速に危機が高まっている。岸田首相は安全保障政策の基本は変わらないと言っているが、変わったからこそ新しい文書を出したのだ。変わらないのであれば、わざわざ新しい文書を出す必要はなかったはずだ。
 岸田首相はまず有識者で会議を開き、閣議決定を行い、「安保三文書」に基づいて国会に法案を出してきた。本来は逆でなければならない。国民の反対運動を引き起こさないために、あらかじめ内容を決めてしまったのだ。ただし、岸田首相の「変わらない」という発言は、半分はウソで半分は本当だ。ウソの部分は大きな政策転換があったということ。
 本当の部分は、集団的自衛権の一部はすでに行使できるようになっていて、今回初めて変わったわけではないということ。
 2015年の安保法制(戦争法)の成立によって、存立危機事態と認定すれば米軍防護という名目で一緒に戦争できる法的・制度的枠組みがすでにできていた。だが、それを実行する実際の力を自衛隊は持っていなかった。それを実際に行使できるような力を身につけようというのが、今回の「安保三文書」なのだ。これが大きな政策転換ということの意味にほかならない。

 ウソばかりの政策転換

 今回の政策転換はウソばかりだ。ごまかされてはならない。「敵基地攻撃能力」の保有というのはウソ。攻撃するのは「敵の基地」だけではない。敵の領土や中枢部分、指揮統制機能を攻撃する。これは「敵基地」ではなく「敵地」だ。相手国の領土全体を攻撃できる能力を身に付ける。
 しかも、これを「反撃能力」と言い換えているが、これもウソ。「反撃」は、攻撃されてからするもので、攻撃される前の「着手」した段階での攻撃は反撃ではない。国際社会からすれば明らかな先制攻撃だ。
 「軍事大国にならない」というのもウソ。軍事費をこれから5年間で43兆円に増やす。実際には60兆円に膨らむ。これをどんどん軍事につぎ込んでいく。世界第3位の軍事大国になることは明白だ。
 「国を守るため」というのもウソ、存立危機事態だと認定すれば日本が攻撃されていなくてもアメリカと一緒に戦うことができる。これが今回の新たな政策転換の内容だ。そのために日米が軍事的に一体化する。今、自衛隊は三つに分かれているが、これを統合して一つの司令部を置く。この統合司令部はアメリカ軍と一体化する計画だ。
 アメリカの方もインド太平洋軍の司令部は現在ハワイにあるが、これを横田に移す。横田のアメリカのインド太平洋軍の司令部と日本の統合司令部が融合して「防空戦略ミサイル防衛」の体制を確立しようという構想だ。自衛隊の最高指揮権は首相にあるが、その指揮権も日本の主権も失われてしまうだろう。

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8月5日(土) 行き詰まる岸田政権 総選挙に向けての課題 [論攷]

〔以下の論攷は『全国革新懇ニュース』第451号、7・8月合併号に掲載されたものです。〕

 地獄の蓋が開いたような通常国会でした。日本は平和を維持できるのか、貧しさから逃れられるのか、という岐路に差しかかっています。というより、もはや「崖っぷち」でしょうか。
 1980年代を頂点に90年代からの「失われた30年」の間、下り坂をたどってきました。中曽根康弘首相の時代を転換点に、米国からの軍事分担要請に応じて「不沈空母論」という軍拡路線に転じ、日米構造協議や年次改革要望書などで米国の要求に屈してきたからです。
 政治・行政、経済・貿易、農業や研究開発の各分野で偽りの「改革」を強行し、その行き着いた先が日本の国力低下と自民党の右傾化・劣化でした。米国に隷属した大軍拡と人権・ジェンダー平等の無視という時代逆行の政策も目に余ります。その背景には日本会議と世界平和統一家庭連合(統一協会)の暗躍がありました。

 出口が見えない行き詰まり

 通常国会での悪法のてんこ盛りは、岸田政権が行き詰まり、先進諸国と価値観を共有せず、東アジアの平和を守れないことを示しています。経済の破綻と物価高によって命と暮らしを危機にさらし、難民やLGBTQなどの人権を守れずジェンダー平等を実現する意思を持たないことも明らかになりました。
 核をめぐっても、日本は福島第1原発の過酷な事故を経験し、広島・長崎での唯一の戦争被爆国であり、核廃絶に向けて先頭を切るべき特別の地位と役割をもっています。それにもかかわらず、原発依存から再生エネルギーへ、核抑止への依存から核兵器なき世界へという歴史の流れに逆らい続けてきました。
 マイナンバーカードの強要とマイナ保険証への切り替えの義務化でも様々なトラブルを生み出し、破綻が明瞭になってきています。カードの返上が50万枚近くに達するなど国民の不安と反発は高まっており、このまま強行すれば政権の命取りとなるでしょう。
 深刻なのはこれらの困難を打開するビジョンがなく、トラブルに対する解決策をもちあわせていないことです。出口が見えないという点では正真正銘の行き詰まりだというほかありません。本当の失敗は、失敗したことが明らかになってもやり直しができないことではないでしょうか。
 米国に踊らされて大軍拡に転じた途端に米国は方向転換を始め、「日本が二階に上ったからもういいや」と梯子を外そうとしています。対決路線一辺倒ではやっていけません。中国との緊張緩和、北朝鮮のミサイル発射や核実験の停止などをどう実現するのか。東アジアにおける平和と共存共栄に向けてのビジョンが本格的に問われることになります。
 大軍拡の裏付けとなる国民負担と大増税も大きな問題です。物価高にあえぐ国民生活を直撃することは明らかで、さらなる貧困化は避けられません。少子化対策のための財源確保も増税や負担増に結びつきます。税と社会保障関連費の国民負担率は約5割に近づき、まるで「五公五民」の江戸時代に逆戻りしたようなものです。

 打開への唯一の活路

 これらの困難を打開する唯一の活路は「市民と野党の共闘」です。先の総選挙で、負ければ下野という危機に瀕した自公政権は全力で巻き返し、「第三極」が受け皿となって政権批判が途中下車する結果となりました。
 しかし、維新や国民などの「第三極」との連携では政権の「交代」ではなく政権「後退」になってしまいます。これしかない唯一無二の選択肢が市民と立憲野党の共闘にほかなりません。政権獲得は立憲単独は不可能で、維新は拒否しています。できるところと手を組むしかないでしょう。
 立憲を支持しながら共産党との共闘に反対している連合は、イデオロギー的な偏見を捨て、労働者の利益になるかどうかで判断すべきです。共産党と協力・共同の関係にある全労連とは、実質賃金や最低賃金の引き上げ、労働条件の改善、働く者の人権の重視という点で大きな違いはありません。
 通常国会では、防衛産業支援法以外のすべての法案で立憲と共産は共同歩調をとり、岸田内閣不信任案に賛成したのも立憲と共産だけでした。通常国会の審議では事実上の共闘が実現していたのです。
 これを次期衆院選でも選挙共闘として定着させなければなりません。一時、立憲の泉代表は共産党を含めて選挙協力せずと発言しましたが、立憲内で野党の一本化を求める動きが強まり、実情に応じて柔軟に対応するとの姿勢に変わりました。岡田幹事長も一本化調整を徹底的に追求すると言明しています。
 市民連合を介したなし崩しの連携では「本気の共闘」になりません。小選挙区での統一候補の当選が62、惜敗率80%以上が54、1万票以内が31という前回総選挙の実績を踏まえ、共闘の意思を確認して政策協定を結ぶことが必要です。そのための働きかけを草の根から強めることが総選挙に向けての最大の課題であり、そこにこそ行き詰まった政治の混迷から抜け出せる唯一の活路があります。

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5月26日(金) ウクライナ戦争に便乗した「新たな戦前」を避けるために──敵基地攻撃論の詭弁と危険性(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.838、2023年6月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 「防衛」ではなく集団的自衛権行使のため

 このような政策転換は、日本を「防衛」するためのものではありません。そもそも、今回の「安保3文書」によって名指しされ「懸念」が示されている中国・北朝鮮・ロシアは、日本を攻めると公式に表明したことは一度もなく、これらの国を「仮想敵国」とする根拠はありません。
 それどころか、中国との間では1972年の共同声明で「唯一の合法政府」と認め、2008年の共同声明などでも「たがいに脅威とならない」ことをくり返し確認してきました。北朝鮮も米朝首脳会談中はミサイルを発射せず、核実験を中断していました。ロシアとの間では北方領土問題での交渉や経済協力がなされてきたのは周知の事実です。これらの交渉や対話をなぜ継続したり、再開したりしないのでしょうか。
 政策転換の目的が日米同盟の強化であり、アメリカの対中戦略の転換に伴って最前線となった日本が集団的自衛権を行使できるようにするためだからです。「私は、小泉純一郎内閣の時に集団的自衛権の行使容認を何とか実現できないかと思っていたのです。小泉首相に、05年の郵政民営化関連法が成立した後、残り任期の最後の1年で行使容認をやりましょう、と言ったら、小泉さんは『君の時にやれよ』と仰った」(『安倍晋三回顧録』115~116頁)と書いているように、それは安倍晋三元首相の悲願でもありました。
 これを安倍元首相は平和安保法制(戦争法)の制定によって10年後に実現しましたが、それは「枠組みを整えた」にすぎず、実態を伴っていませんでした。今回は「実践面で大きく転換」することで集団的自衛権を実行可能にすることをめざしています。
その結果、「存立危機事態」と認定されれば、自衛隊は米軍と一体となって戦闘に参加できるようになります。
 具体的には、アメリカが地球規模で張り巡らす「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」に加わることが想定されています。台湾周辺で軍事衝突が生じれば、日本が攻められていなくても自衛隊は戦争に巻き込まれることになります。自衛隊が米軍と融合しその指揮下でたたかえば、自首相の指揮権も日本の国家としての主権も奪われることになるでしょう。

 軍拡大増税による生活破壊

 岸田政権は今年度から5年間の防衛費総額を約43兆円とし、2027年度には関連予算をふくめて国民総生産(GDP)比2%にすることを打ちだしました。この目標額は北大西洋条約(NATO)加盟諸国にアメリカが要求した額であり、必要経費を積み上げたものではありません。日本はNATO加盟国ではなく憲法第9条を有する平和国家ですから、NATOに追随するのは誤っています。
 新たに必要となる財源のうち、4分の3は歳出改革、決算剰余金の活用や東日本大震災の復興特別所得税の流用などの税外収入でねん出し、残りを法人・所得・たばこ税の増税で賄うとしています。この税外収入を積み立てて使う「防衛力強化資金」を新設する「財源確保法案」も審議入りしました。
 しかし、このような財源の確保や増税がそもそも必要なのか、なぜ防衛力を倍増させる必要があるのかが充分に議論されていません。復興のための税金を軍事に横流しして増税を押しつけ、医療や年金、社会保障費などを削減し、国債発行に手をだすという「禁じ手」だらけの暴挙にほかなりません。
 GDP比2%以上の軍拡は将来にわたって継続されます。そうなれば防衛費は11兆円となり、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国になります。年間5兆円超もの財源があれば、医療費の窓口負担の無料化などを実現できます。国民生活を破壊して防衛財源を絞りだすような政策は「富国強兵」ならぬ「強兵貧国」政策にほかなりません。

 むすび――歴史の教訓に学べ

 2023年2月7日、韓国のソウル中央地裁で一つの判決がありました。ベトナム戦争での民間人虐殺を生き延びた女性が韓国政府相手に提訴し、賠償額約310万円の有罪を勝ちとったのです。韓国政府は延べ30万人を派遣して自国の若者約5000人を犠牲にするという痛恨の誤りを犯しました。
 日本もベトナム戦争の出撃基地となるなど協力しましたが、自衛隊を送ることなくだれ一人殺すことも殺されることもありませんでした。韓国政府のような誤りを犯さずに済んだのは憲法の制約があったからで、第9条の威力のおかげです。
 イラク戦争では自衛隊を派遣しましたが非戦闘業務に従事し、犠牲者をだすことはありませんでした。このときも憲法第9条にまもられていたのです。第9条があったからこそ、韓国の悲劇を避けることができたのです。必要なことは、この第9条の威力を活かした外交力を発揮することではないでしょうか。
 歴史に学ぶことが必要です。岸田政権による「かげに隠れてこそこそ」作戦に対抗し、私たちは「光を当ててみえる化」作戦を実行しなければなりません。学び伝えることこそ、世論を変える力になります。岸田政権の詭弁と危険性が明るみにだされれば、戦争を望まない多くの国民が反対に転ずることは明らかなのですから。


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