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5月23日(日) 普天間基地の無条件即時撤去を目指す新しい政権が必要だ [在日米軍]

 沖縄の普天間基地の移設問題で、日米が合意するそうです。それを踏まえて、鳩山首相はもう一度沖縄に行くといいます。

 これほど愚かだったとは……。驚いてしまいます。
 全くガッカリです。元の木阿弥で、移設案がブーメランのように戻ってきてしまうなんて、何のための政権交代だったのでしょうか。
 結局は、歴史に巨大な汚点を残すことになるでしょう。それは鳩山さんにとっても大きなマイナスだと思うのですが……。

 現行案は、自民党政権時代であっても、実現することができませんでした。連立政権内での反対があり、沖縄の県民の反対運動が高揚し、地元の知事や市長が反対しているのに、ほとんど現行案と変わらない案が実行できると、本気でそう思っているのでしょうか。
 針の穴を通すほど難しかったのに、鳩山さんは、その穴をさらに小さくして障害物を置いたわけです。それでも通り抜けるつもりなのでしょうか、どうやったら、それが可能だと考えているのでしょうか。
 基地利権をエサに、地元を分断しようというのでしょうか。それもまた、沖縄の苦悩と悲しみを拡大することになるというのに……。

 どうせ苦労するなら、初めから無理なことが分かっていることにエネルギーを費やすのではなく、できるかもしれない可能性に賭けてみたらどうですか。鳩山さん。
 どうせ説得するなら、沖縄にではなくアメリカに行って、仲井間知事とではなくオバマ大統領と談判したらどうですか。鳩山さん。
 犠牲を無理強いして実現しても、恨まれるだけです。そんな愚かな努力は、さっさとやめるべきでしょう。

 それよりも、本気で「県外移設」に取り組んだらどうですか。沖縄の人々の願いを携えてアメリカに向かうというのであれば、国民こぞって歓迎し、応援するにちがいありません。
 それでダメでも、「良くやった、鳩山」と言ってもらえるでしょう。国を代表する立場であれば、国民の願いをこそ、一身に背負うべきではないでしょうか。
 辺野古の美ら海を埋め立てるなど、実現しても恨まれるだけです。無条件撤去への道は、たとえすぐに実現しなくても、誰も批判しないでしょう。

 しかし、鳩山さんは、恨まれる道を選ぶようです。それなら、普天間基地の無条件即時撤去を要求し、その実現を目指すような新しい政権と交代させなければなりません。
 民主党中心の連立政権に、それが可能でしょうか。もちろん、自民党中心で有象無象の「タケノコ新党」をかき集めた政権では、それが絶対に不可能なことは明らかですが……。

 なお、現在、新著『18歳から学ぶ日本の政治(仮題)』を執筆中で、「用語解説」を300項目ほど書かなければなりません。ブログに書きたいことは多々ありますが、その時間的な余裕は皆無です。
 ということで、しばらくの間、ブログの更新を中断させていただきます。新著の原稿を脱稿するまで、お待ちいただければ幸いです。

5月6日(木) 鳩山首相は「戦艦大和」になってしまった [在日米軍]

 5日間のご無沙汰でした。皆様、連休はいかがだったでしょうか。

 今年の連休は、「高遠長」の傾向だそうですが、私は絵に描いたような「安近短」でした。30日(金)に、研究所から自宅まで歩いたのが、唯一の運動です。
 「外出」といっても、横浜の叔父さんの家にご機嫌伺いに行ったくらいで、「遠く」には行きませんでした。レジャーと言えば、毎日、阪神-巨人戦、阪神-中日戦を見て、騒いでいたくらいです。
 この連休中に、阪神タイガースは巨人に3連勝し、やっと首位に躍り出ました。と思ったら、巨人戦で燃え尽きてしまったようで、元気なく、中日に2連敗してしまいました。

 毎年、5月4~5日は、南浅川にかかる陵東橋の周辺で「長房ふれあい端午まつり」が行われます。八重桜が咲き誇る川の周辺に鯉のぼりを立てるのですが、今年は普通ののぼりが目立ちました。
 鯉のぼりを集めるのが、難しくなっているのでしょう。青空を吹き渡る薫風に勢いよく泳ぐ鯉のぼりは勇壮で、いかにも春らしい景色で大好きなのですが……。
 この祭りにも、ちょっとだけ顔を出しました。以前、町会の役員をやっていたときには、焼きそばを焼いたりしたものです。

 あとの時間は、ひたすらパソコンに向かい、法律文化社から出す予定の新著の原稿を書き続けていました。もう少しで終わります。
 政治学の入門書で、大学1~2年生を対象にしたものです。できるだけ分かりやすく、と心がけて書きました。夏休み明けの頃に刊行されるかもしれません。
 日本の政治は、今、大きな転換期にあります。それを理解し、少しでも良い方向に変えていくために、この新しい本が役立つことを願っています。

 ところで、この連休中、普天間基地の移設問題で、進展がありました。というより、鳩山首相は動き回りましたが、ますます膠着状態に陥ってしまったと言った方がよいかもしれません。
 鳩山首相は「戦艦大和」になってしまったようです。見通しもないのに、沖縄に向けて突っ込んで行ったからです。
 そして、「大和」と同じように、「撃沈」されてしまいました。全く、ガッカリです。命をかけた腹案が、こんなものだったなんて……。

 「後手ばかりで、成算があるとは思えない。どう動いても、手は尽くしたという言い訳が透ける。そもそも沖縄で安保を説く前に、この島の重荷を米国に説くのが先ではないか。その上で、駐留米軍の見直しについて話し合うべきではないのか▼こんな時に本音を言い合うための「同盟」であろう。……命がけと言うなら、沖縄と徳之島の子どもたちのためにかけてほしい。ゆめゆめ米国の代理人として、あてもなく南の島を訪ね歩くことなかれ。それでは子どもの使いである。」

 これは5月5日付の『朝日新聞』一面下の「天声人語」です。ようやく、このような記述が現れるようになりました。
 『朝日新聞』の「天声人語」が、「五十嵐仁の転成人語」に近づいてきたというところでしょうか。でも、こんなことは誰だって分かることです。
 分かっていないのは、鳩山首相と側近の大臣連中だけでしょう。早く、気がついてもらいたいものです。

 それにしても、鳩山さんは、本気で現行案を修正した桟橋案が最善だと思っているのでしょうか。一部を徳之島に移設すれば、地元の理解が得られると、本気でそう考えていたのでしょうか。
 「このことを学べば学ぶにつけて、やはりパッケージとして、すなわち海兵隊のみならず、沖縄に存在している米軍の存在全体の中での海兵隊の役割というものを考えたときに、それがすべて連携をしていると。その中での、抑止力というものが維持できるんだという思いに至ったところでございます」と、鳩山さんは言っていました。そのような「思いに至」らせたのは誰なのでしょうか。
 『朝日新聞』5月4日付に、「米軍がいなくなったら、日本を守るものがいなくなる。現実的じゃない」という意見が報じられていました。移設されるのは普天間基地の部隊だけであって米軍全体がいなくなるわけではないこと、問題になっている普天間基地の米軍は日本を守るためにあるのではないこと、軍事力によっては平和と安全は守られないことが、全く理解されていない発言です。

 桟橋案について、地元の名護市と沖縄県の理解を得ることはできませんでした。部分移設先の徳之島も反対しています。
 連立政権内では、与党の社民党がはっきりと反対を表明し、アメリカも受け入れ困難との態度です。鳩山さんが命をかけると言った腹案は、実現不可能です。
 こうなると、道は二つしかありません。責任を取って辞めるか、別の実現可能な案(例えば、テニアンなどへの国外移設)を採用するか。

 それとも、「地元が反対したからダメでした」と、頭を掻いて居座るつもりなのでしょうか。それでは、沖縄県民はもとより、国民が許さないでしょう。

4月30日(金) やっと大マスコミに現れてきた普天間基地の「国外」移設案 [在日米軍]

 「テニアン島 『普天間歓迎』」「経済効果狙い誘致決議」

 やっと出てきましたね、このような記事が……。これは、『朝日新聞』4月29日付で報じられたものです。
 『東京新聞』4月28日付1面下のコラム「筆洗」にも、次のような指摘がありました。「まだ遅くない、かどうか微妙だが、妙案がない以上、今からでも『国外』で腹をくくってはどうか」というものです。

 ……すっかり“国内問題”になってしまったが、政府にとって、この問題の本来の交渉相手は米国のはずだ。しかも、三月の世論調査によれば、移設先として最多の回答を集めたのは「国外」なのである▼米国は猛反発しようが、あの後段がなく端(はな)から「国外」に的を絞っていれば、政府は少なくとも本来の「日本対米国」の構図で、世論の後押しも受けた交渉ができたろう。まだ遅くない、かどうか微妙だが、妙案がない以上、今からでも「国外」で腹をくくってはどうか▼かりそめにも国民が決断した歴史的政権交代で最初に誕生した首相だ。“国内問題”に終始し、肝心の米国には、国民の本音ひとつ言えぬまま詰め腹を切らされることになってはいかにも惨めではないか。鳩山さんが、ではない。われわれ国民が、である。……

 『朝日新聞』は「テニアン島」の誘致決議を紹介し、『東京新聞』は、「国外」案で米国と交渉してはどうかと提案しています。ようやく、「国外・県外移設」を求める沖縄県民の願いに添った論調が現れてきたようです。
 しかし、まだ及び腰で、「腹をくくってはどうか」という程度のものにすぎません。本当なら、「腹をくくれ」と書いて欲しいところです。
 『朝日新聞』の記事にしても、掲載されたのは国際欄の8面です。確かに、「テニアン島」は外国ですが、「普天間」は沖縄の基地で、この日の『朝日新聞』の一面には「辺野古に桟橋滑走路」「徳之島へ最大1000人の部隊移転も」「普天間、首相案固まる」という記事が出ていたのに……。

 普通なら、1面の記事の横や2面に出してもおかしくないものです。それが、あまり目立たない8面に出ているのは何故でしょうか。
 理由は、おそらく、あまり目立たせたくないからなのでしょう。『朝日新聞』の考えている解決案は、「国外」ではなく「県外」にすぎないからです。
 同じ『朝日新聞』29日付の朝刊の社説「普天間移設―首相、遅すぎた南の旅へ」は、次のように書いていました。「本格的な解は、……『本土』を探ることにある」というのです。

 「県外」を模索することはいいとしても、沖縄と同様、戦後の一時期、米国に占領された歴史を持つ徳之島で、米軍基地に抵抗感が強いのは当然である。そういう徳之島を安易に「県外」と位置づける発想に、そもそもの疑問を禁じ得ない。本格的な解は、時間と大変な労力をかけてでも「本土」を探ることにあるのではないか。

 これで、問題は解決するのでしょうか。「本土」で受け入れ可能で、地元の合意が得られる場所などあるのでしょうか。
 もし、『朝日新聞』がそのような候補地に心当たりがあれば、そのような「本格的な解」について、具体的に提案するべきではないでしょうか。そのような対案もなしに鳩山首相を批判する「発想に、そもそもの疑問を禁じ得ない」と言わなければなりません。
 朝日の社説子は、「本格的な解は、時間と大変な労力をかけてでも『国外』を探ることにあるのではないか」と書くべきだったと思います。そして、東京新聞のコラム「筆洗」子と同様に、「妙案がない以上、今からでも『国外』で腹をくくってはどうか」と提案すべきだったのではないでしょうか。

 先に紹介した『朝日新聞』の「テニアン島 『普天間歓迎』」という記事は、「だが、日米両政府内では『非現実的』との見方しか聞かれない」として、いくつかの問題点を挙げています。しかし、辺野古桟橋方式の現行修正案と比べて、一体どちらが「非現実的」なのでしょうか。
 たとえば、「最大の課題は、沖縄を海兵隊の拠点とすることを前提とした米軍再編計画自体の抜本的見直しが必要になる点だ」といいます。抜本的に見直せばいいじゃありませんか。そもそも「沖縄を海兵隊の拠点とする」という「前提」自体が間違いなのですから……。
 「先端通信設備や学校などのインフラをゼロから整備するのは非常に不経済。生活の質を確保するのも容易ではない」という意見も紹介されています。アメリカ軍の部隊の駐留経費やインフラの整備、生活の質の確保は、アメリカ自身が行うべきもので、沖縄の人々の土地を奪い、日本国民の税金を使ってやってきたこと自体が間違いなのです。このような意見が出ないようにするためにも、“米軍引き留め効果”を生み出している「思いやり予算」は廃止されなければなりません。

 さらに、驚くべき理由も示されています。「ほかにも米軍の懸念材料として、広島、長崎に原爆を投下した爆撃機が発進したテニアンへの移転は、日本の国民感情を刺激しかねない▽環境影響調査など準備にさらに時間がかかる、ことなどが挙げられている」というのです。
 敗戦間近の地上戦で多くの県民が犠牲となった沖縄に広大な基地を置いていること、都市のど真ん中に基地があって常に危険にさらされていることが、「日本の国民感情を刺激しかねない」とは考えないのでしょうか。「広島、長崎に原爆を投下した爆撃機が発進したテニアン」であればこそ、日米関係に突き刺さった最大のトゲを抜き、沖縄の人々の苦しみを和らげるために役立つことは、大きなプラスになるのではないでしょうか。
 普天間基地の移設を受け入れれば、「テニアン島」という名前の印象も好転するにちがいありません。それは、「日本の国民感情を刺激しかねない」どころか、和らげることになると思いますが、いかがでしょうか。

 「準備にさらに時間がかかる」と言うにいたっては、呆れてものが言えません。アメリカの主張する辺野古埋め立ての現行案なら、すぐに実施できるとでも考えているのでしょうか。それを修正した桟橋案なら、「非現実的」ではなく、「準備にさらに時間がかかる」ことはないとでもいうのでしょうか。
 どうして、これまで現行案が実施できなかったのか、胸に手を当てて考えていただきたいと思います。日米両政府が合意し、沖縄県知事が受け入れ、地元の名護市長も賛成派だったにもかかわらず、それは実現できませんでした。
 その理由は、はっきりしています。鳩山首相の言うとおり、「辺野古の海が埋め立てられることは自然に対する冒涜と感じる。受け入れるという話はあってはならない」からです。では、貴重な珊瑚礁のある海に数千本の杭を打ち込んで桟橋を建設し、そのうえに滑走路を建設する「杭打ち桟橋(QIP)」方式なら、「自然に対する冒涜」にならないというのでしょうか。

 鳩山首相は、5月4日に沖縄を訪問するそうです。現行修正案という県内たらい回しに反対する沖縄県民の抗議の声に包まれるにちがいありません。
 どうせ努力するなら、初めから無駄だと分かっているようなことはやめるべきです。説得に向かうなら、沖縄ではなくアメリカでしょう。
 「妙案がない以上、今からでも『国外』で腹をくくってはどうか」と、『東京新聞』が書くとおりです。「本格的な解」は、時間と大変な労力をかけてでも「国外」を探ることにしかないのですから……。

4月28日(水) 実現不可能な案の検討や折衝で時間を空費するべきではない [在日米軍]

 「立川市が多摩地区の『都心』として発展できた原点は、旧米軍基地の拡張計画を住民が止めた『砂川闘争』にあります」

 これは、「かつて市域の中心部を広大な米軍基地が占めていた立川市は、基地とその跡地にどう向き合ってきたのか」という「問い」に対する青木久前立川市長の回答です。昨日の『朝日新聞』第2多摩版に掲載されていた記事「発展の原点は『砂川闘争』/誘致合戦の末、記念公園」をご覧下さい。
 やがていつの日か、次のような談話が新聞の紙面を飾るかもしれません。「宜野湾市が中部沖縄地区の『都心』として発展できた原点は、旧米軍基地を国外に移設させた『普天間闘争』にあります」と……。

 「砂川闘争」によって、「広大な米軍基地」は、「拡張計画」をストップさせただけでなく、日本に返還されました。現在は、国営昭和記念公園、市役所の庁舎、裁判所や国の研究機関などになっています。
 その結果、「基地がなくなって困る人たち」が増えたでしょうか。「米軍の『抑止力』」が低下したでしょうか。
 立川の米軍基地の拡張反対や普天間基地の国外移設を求める運動は、そのまま「米軍出て行け」という運動ではありません。この違いを理解できないのが、「普天間闘争」を冷ややかに眺めている人の「限界」でしょうか。

 ところで、未だに、こんな案を検討しているとは驚きです。米軍普天間基地の移設先についての現行修正案です。
 県内や国内が対象である限り、どのような案であっても、もはや受け入れる場所はないというのに。無駄な作業で時間を空費するべきではありません。
 こんなことをしていては、自ら袋小路に入り込んでいくことになります。県内や国内移設案には「出口」がないのですから……。

 キャンベル国務次官補は4月25日、「日本側からの真剣な提案」があったことを明らかにしました。鹿児島県徳之島と現行案の修正を組み合わせたものだそうです。
 『朝日新聞』4月27日付は、「首相の心には、いま桟橋案がある」という「首相側近の一人」の話を報じています。「最近マスコミで、くい打ち方式の話が出ている。そういうことにならないように」と平野官房長官に「くぎを刺した」稲嶺名護市長の発言とともに……。
 この修正案については、福島社民党党首も、「回り回って修正案ということであれば、それは政治ではない」と強く反発しています。『朝日新聞』が解説しているように、「連立三党の合意を得た『政府案』としてまとめるのは絶望的な状況」です。

 辺野古沖合への移設という現行案は、これまでも実現できませんでした。それよりも状況が厳しくなった現在、それをそのまま実行することが不可能だということは、誰にでも分かることです。
 くいを打って桟橋を作り、その上に滑走路を建設する桟橋案(くい打ち案)という形で修正しても、基本的に事情は変わりません。これに、訓練の一部を徳之島などに移すとしても、反対運動が飛び火するだけでしょう。
 名護市辺野古での反対運動と徳之島での反対運動とに挟撃され、ますます身動きが取れなくなるにちがいありません。結局、問題は先送りされ、現状が固定化して、鳩山さんは責任を取らされることになります。

 唯一実現可能で、5月中に「決着」できるのは国外移設案です。この案の最大のメリットは、交渉相手がアメリカだけだという点です。
 日本国内での合意は必要ありません。いや、合意を求めれば、誰だって両手を挙げて賛成するでしょう。
 そのための道筋を5月中につけることは十分にできます。実現不可能な辺野古修正案などで時間を空費しなければ……。

 そのために必要なことは第1に、鳩山首相自身の決断です。「辺野古の海が埋め立てられることは自然に対する冒涜と感じる。受け入れるという話はあってはならない」という自分の言葉に忠実に、普天間基地の国外移設を明言しなければなりません。
 第2は、閣内の統一です。平野官房長官、北沢防衛相、岡田外相の足並みをそろえ、内閣の意思統一を行い、国外移設要求を閣議決定するべきです。
 第3は国論の統一です。これを形で示すためには、国会で決議をあげるのが最善ですが、県民大会にはほとんどの政党の代表が出てきていますから、県民大会と同様の決議を全会一致で挙げることも不可能ではありません。

 こうすれば、日本の国論は統一されたことになります。これは、アメリカに対する大きな交渉力となるでしょう。
 こうして、日本政府を代表して、鳩山首相がオバマ大統領と直談判すればいいんです。このときには、米軍が移る可能性がある北マリアナ連邦の議員やテニアン、グアム、ハワイなどの自治体の代表にも加わってもらえば、よりスムースに事が運ぶでしょう。

 以上のプロセスのうち、何が一番重要かと言えば、最初の鳩山首相の決断です。まず、一歩を踏み出すことが肝心です。
 そうでなければ、二歩、三歩と歩み出すことはできません。それだけの決断力とリーダーシップを発揮することができるでしょうか。
 いよいよ、正念場が訪れようとしています。ここで決断できるかどうかという点で、政権交代の意味と鳩山首相の真価が問われることになるでしょう。

4月26日(月) 普天間基地移設問題をここまで紛糾させた鳩山首相の「功績」 [在日米軍]

 ユーストリームを使って配信された現地からの生中継で、沖縄県民大会の様子を見ました。読谷村の運動広場に集まった人の数は9万人、八重山や宮古での大会参加者を合わせれば9万3700人だそうです。
 カンパは、500万5005円集まったといいます。県民大会は、大変な盛り上がりで大成功しました。

 超党派による普天間移設の大会は初めてで、仲井真弘多知事も初参加しました。沖縄の全ての市町村長も出席していました。
 沖縄は一つになったのです。オール沖縄の声として、高らかに普天間基地の県外・国外移設が要求されました。
 私は、4月13日のブログで「国民的大闘争を生み出したのは岸元首相のこだわりだったのでは?」と書きました。その伝で言えば、「普天間大闘争を生み出したのは鳩山首相の迷走だったのでは?」と書きたくなります。

 政権交代と鳩山首相の対応がなければ、このような状況は生まれなかったからです。その理由は、3つあります。
 一つは、普天間基地移設問題に対して国内外の注目が高まったことです。自公政権の下では、内外世論のこれほどの盛り上がりは考えられませんでした。
 第2は、沖縄県民の基地撤去に向けての要求が爆発したことことです。これまであきらめていた沖縄の人々が、政府や政治家まかせにせず、自らの問題として解決に向けて立ち上がりました。
 第3に、現行案では埋め立てられるはずだった辺野古沖の美しい海が守られたことです。鳩山首相が辺野古沖の埋め立てに反対し、社民党の福島党首が現行案でもその修正案でも連立を離脱するとの見解を示しているように、もはや辺野古沖に基地を作ることは不可能になりました。

 大会では、主催者あいさつで、高嶺善伸県議会議長が「鳩山総理の『最低でも県外』という約束に、県民は大きな期待を寄せている」と力説しました。仲井真知事も「沖縄の過剰な基地負担を大幅に軽減すべきだ。普天間の固定化は絶対に許してはならない。県民に対し、(鳩山政権は)公約通りの解決、責任ある解決を示さなければならない」と訴えています。
 大会決議は「県民の生命・財産・生活環境を守る」として「普天間を早期に閉鎖・返還し、県内移設を断念して国外・県外に移設することを強く求める」と宣言しました。この決議を持って、明日から100人が上京して政府要請行動を行うそうです。
 こうなったら、県外に移す以外にありません。しかし、県外でも地元の同意を得られるところはありませんから、国外への移設案しか残されていないことになります。

 マスコミなどでは、鳩山首相が追い込まれているように書かれています。局面打開のために衆参同日選があるかもしれないなどという観測まであります。
 内閣支持率の低下が続けば、鳩山辞任もあるかもしれない。小沢幹事長も一緒に辞めるかもしれない、などという思惑もあります。そうなれば、参院選で民主党は惨敗するにちがいないというわけです。
 最近の「新党ブーム」は、それを当て込んでの駆け込み結党にほかなりません。鳩山首相は行き詰まり、民主党は苦境に陥るにちがいないと思い込んでいるわけです。

 しかし、そうでしょうか。それほど、鳩山さんは追い込まれているのでしょうか。
 普天間基地移設問題の「決着」に向けて、次第に一つの方向が浮かび上がってきているのではないでしょうか。そのうえ、今回の県民大会のように、基地撤去に向けての大きな世論のうねりが政治を動かそうとしています。
 このような中で、移設先の候補地としてテニアン島が急浮上してきました。北マリアナ連邦議会の上院が誘致決議をあげたことは、このブログでも紹介したとおりです。

 ここまで世論をまとめ上げた「功績」は、実は鳩山さんにあります。あきらめに似た気持ちから、渋々現行案を受け入れざるを得なかった名護市の人々に、「何とかなるかもしれない」と思わせたのは鳩山さんです。
 そして、沖縄の人々が自ら立ち上がったのも、鳩山さんがグズグズしていたからです。このまま首相や政府に任せておく訳にはいかないと考えたからではないでしょうか。
 国外移設の候補地が登場してきたのも、鳩山さんが迷走していたからです。なかなか移設先をまとめられず、具体的な候補地を示すことができなかったからではないでしょうか。

 こうして結果的に、鳩山首相と内閣の迷走は県内・国内候補地での反対世論を高め、その可能性をつぶしてきました。これもまた、鳩山さんの「功績」と言って良いでしょう。
 二転三転、紆余曲折した結果、県内・国内移設案は行き場を失ってしまいました。こうして、唯一の解決策として国外移設案しかないという状況が生まれたのです。
 そのための運動は高揚し、世論の一致が生まれつつあります。今後必要なのは内閣の合意と国会での意思表明であり、それをアメリカが受け入れさえすればよいのです。これこそ、見事な「決着」への道筋ではありませんか。

 鳩山首相の手によるこのような「決着」を最も恐れているのは、自民党の谷垣総裁です。参院選目当てに新党を次々と立ち上げている与謝野さんや舛添さんたちも、現政権による普天間問題の「決着」を恐れているにちがいありません。
 もし、鳩山首相の手によって国外移設の道筋がつけば、内閣支持率は逆転し、参院選に向けての情勢は大きく変化することでしょう。今日のNHKの7時のニュースでは、テニアン島のテの字も放送されませんでしたが、テレビや新聞などのマスコミが北マリアナ連邦議会での誘致決議を全く無視しているのは、そうなっては困ると考えているからです。
 沖縄県民の負担を軽減し、その苦しみを取り除くことよりも、鳩山政権を追い込むことの方を優先させようというわけです。なんという自分勝手で歪んだ発想でしょうか。

 鳩山首相は、ここまで問題が紛糾し、運動が盛り上がるのを待っていたのかもしれません。もし、鳩山さんが初めからこのような展開を狙って意識的に迷走を繰り返していたとすれば、恐るべき「策士」だったということになります。
 はたして、そうだったのか、そうではなかったのか。これからの展開が注目されます。
 いずれにしましても、5月末には、結論が出ることになっています。普天間問題での「決着」がつかなければ鳩山さんはお終いですが、逆に、もし「決着」がつけば、鳩山さんの政敵は全て壊滅的な打撃を受けることでしょう。

 来月1ヵ月間における普天間問題をめぐる動向次第で、これらの人々の運命が決まります。その結果によっては、普天間基地の行く末のみならず、鳩山首相や内閣の命運、民主党や日本の政治の前途が大きく左右されるにちがいありません。


4月25日(日) 普天間飛行場の国外・県外移設を求める県民大会の大成功を願う [在日米軍]

 いよいよ今日になりました。沖縄で、普天間飛行場の国外・県外移設を求める県民大会が開催されます。
 この大会に向けて、琉球独立論争誌「うるまネシア」を発刊し続ける仲間からのメールが届いたそうです。次のような内容です。

*沖縄現地へは、できるだけ来ないでください。ヤマトからの「動員」で、10万人集会ができても意義は「半減」します。あくまでも、ウチナーンチュ(沖縄人)が主体となって頑張り抜きましょう。

 本土の助けを借りずに、沖縄県民だけで10万人を集めようというわけです。見事な決意と覚悟ではありませんか。
 でも、本土からの応援があっても良いでしょう。沖縄に行く人がいて、東京などでも集会を開いて、沖縄県民のみならず日本国民がおしなべて普天間基地の撤去を求めているのだということを示せば良いのですから……。
 いや、日本国民だけではありません。次のような「4.25行動に向けたJUCOの在米国メンバーからの連帯声明」が届いていることも、ネットなどで紹介されていました(部分)。

 我々は今日、沖縄を支持する県知事、市町村長、メディア、辺野古のお年寄りたち、100万人の沖縄県民、3万人の徳之島住民、そして日本全国何十万人にもおよぶ国民と共にあることを、誇りを持って宣言する。太平洋を経た地より、彼らの米軍普天間基地の閉鎖と沖縄そして徳之島におけるいかなる新たな基地建設への反対の要求を支持する。
(中略)
 我々は米軍の最高司令官であるオバマ大統領に対して、沖縄から米軍普天間基地を取り除きたいという県民の民主的決断と、県内における一切の新たな基地建設に反対するという彼らの意志を尊重するよう求める。

 いよいよ、国際的な動きにもなってきました。日本だけでなく、アメリカや世界の世論を動かすことも必要でしょう。
 このような形で、沖縄米軍基地の現状が、日本のみならずアメリカや世界に知れ渡って行くことを願っています。今日の県民大会は、そのための大きな契機となるにちがいありません。

 本日の県民大会が大成功することを願っています。そして、オバマ大統領が普天間基地の沖縄県内や日本国内での移設を断念することを望みます。
 オバマさん、たった一言でいいんです。「ああ、テニアンでもいいよ」と言いさえすれば、それで問題は「決着」するんです。

4月16日(金) 米軍普天間基地移設問題の「決着」とは何か [在日米軍]

 鳩山首相は昨日の朝、沖縄の米軍普天間飛行場移設問題で自ら公約した「5月末決着」について、米国と、移設先の地元自治体の双方の合意を得た形で移設先を決めることだとの考えを改めて明言しました。首相は、記者団に「『5月末決着』とは、米国と地元の合意を得られた唯一の案が発表されることか」と問われ、「決着は決着だから、その通りだ。『これで行こう』という方向が(米国、地元ともに)互いに認められた状況を何としても作りたい。オバマ米大統領にも直接協力を求めた」と述べたからです。
 これに対して、「5月末決着」は不可能で絶望的だと、新聞などでは騒ぎ立てています。この場合、「決着」とは、何を指すのでしょうか。どのような事態になったら、「決着」したと言えるのでしょうか。

 第1の可能性は、鳩山首相が明言したように、「米国と地元の合意を得られた唯一の案」を発表することです。鹿児島県徳之島や沖縄県名護市のキャンプ・シュワブ陸上部へのヘリコプター部隊の移設、鹿児島県馬毛島への移設案などが報道されていますが、その場合の前提は地元の同意です。
 今の時点で、米軍基地の移設に合意する地元は見あたりません。鳩山首相がどのような移設案を提示しても、それが国内であれば地元の同意を得ることは困難で、それを前提条件とするアメリカの合意を得ることも極めて難しいでしょう。

 第2の可能性は、国外移設案への合意を得ることです。具体的には、社民党が提案している、グアムや北マリアナ諸島のテニアンなどへの移設です。
 とりわけ、テニアンへの移設案は、基地の誘致を掲げている地元の同意を得やすいと思われます。アメリカが合意すれば、実現可能性のある案だと言えるでしょう。

 第3の可能性は、全ての提案をアメリカが拒否することです。そうすれば、初めからアメリカが主張しているように、辺野古沖への移設という現行案が再浮上することになります。
 第1の沖縄県内・県外を組み合わせた移設案も第2の国外移設案も、最終的にはアメリカが受け入れなければ実現できません。かといって、現行案はこれまでも実行できなかったもので、これだけ沖縄の反対世論が沸騰し、沖縄県知事の態度も変わり名護市長が移設反対派になった以上、ほとんど実現可能性のないものになっています。

 第4の可能性は、結局、事態は動かず、膠着状態に陥ってしまうことです。そうすれば、普天間基地がそのまま使用されることになります。
 しかし、それは日米関係にとっても、日米同盟を大事に考える人々にとっても、決して好ましい状態ではないでしょう。
 そもそも、普天間基地の移設が課題となったのは、1995年の米海兵隊員による少女暴行事件を契機に基地反対の世論が高まり、都市のど真ん中で極めて危険な状態にある現状をそのままにしておくことはできないという状況判断があったからです。

 第5の可能性は、閉鎖・撤去を決断することです。どこにも移す場所がなければ、閉鎖するしかありません。
 普天間基地は海兵隊のためのものであり、訓練や中東地域などへの出撃拠点として使用されています。なにも沖縄でなければならないというわけではなく、日本の防衛とは無関係です。

 こう考えてきますと、結局、第2の可能性と第5の可能性以外では、いずれの場合も問題が残ることになります。もちろん、鳩山首相の言うように、「『これで行こう』という方向が(米国、地元ともに)互いに認められた状況」が作られれば、それも「決着」でしょうが、それは絶望的だと見られています。
 そうなってくると、「決着」をつけるためには、二つの可能性を追求する以外にないということになります。
 その一つは、テニアンなど、「来ても良いよ」「是非、来て欲しい」と言っている場所への国外移設です。もちろん、国外のどこにもっていくかはアメリカが決めることですから、基本的にはアメリカ自身の選択に任せればよいことです。
 もう一つは、基地の閉鎖・撤去です。この場合も、撤去後の部隊の処遇については、日本が関知するところではありません。
 アメリカに任せればよいことです。アメリカの軍隊なのですから……。

 「5月末」に、このような方向での打開策が可能かどうかは不確定です。しかし、いずれは、そうなる以外に「決着」がつかないということは明らかでしょう。
 アメリカの主張する現行案は、これまで同様、問題を「決着」させることはできません。もし、強行しようとすれば沖縄や日本国民を敵に回すことになり、日米同盟全体の不安定化をもたらし、日米関係を悪化させるでしょう。
 普天間基地の継続使用も同様です。現状のままですから、何らの「決着」をも意味しません。もし、米軍による新たな事故や事件が起きたら、普天間基地だけの問題にとどまらない大問題に発展するでしょうし、アメリカはそのことを恐れています。

 つまり、「決着」とは、普天間基地を閉鎖して、そこに駐留している部隊を米国内に引き上げる以外にないということになります。そのことをアメリカに理解させることができるかどうかが、今後のポイントでしょう。
 引っ越し先を探す不動産屋のようなことをやめ、普天間基地に居る部隊を国外に移す以外に方策のないことを、日本政府がアメリカ政府に理解させることです。安保条約改定50年という節目の年に、日米同盟をさらに安定させるつもりなら、それを危殆にさらす可能性が高まっている普天間基地問題という大きなトゲを抜かなければならないということを、オバマ大統領に納得させなければなりません。

 そのような説得を受け入れるかどうかは、アメリカ次第ということになります。そして、そのような方向にアメリカを動かすためには、世論の力を借りることです。
 その世論を背景に、鳩山さんがオバマ大統領と直談判するしかないでしょう。それも、「協力を求める」ということではなく、「退去を求める」という形で……。
 それが実現できなければ、「退去」を求められるのは鳩山さんの方だということになるでしょう。

4月14日(水) 在沖縄海兵隊の定数1万8000人という数字には根拠がない [在日米軍]

 先日、『毎日新聞』4月8日付のコラム「記者の目」で書かれた小倉孝保記者の「大先輩・大森実さんの『遺言』」を紹介しました。この日の『毎日新聞』には、もう一つ、重要な記事が出ています。

 「在沖海兵隊『1万8000人』、米軍幹部『日本が言った数字』」というのが、その記事です。記事には、次のように書かれています。

 「在沖縄海兵隊は定数1万8000人という数字の根拠は何か」。4月5日、沖縄県北谷町など4市町村にまたがるキャンプ瑞慶覧。沖縄等米軍基地問題議員懇談会会長の川内博史衆院議員が、在沖米軍トップのロブリング4軍調整官に尋ねた。「1万8000人」とは、現行計画でグアムに移転する「約8000人」に、政府が移転後に残るとしている「定数1万人」を足した数字だ。沖縄県の調べでは在沖海兵隊は1万2400人(08年9月末時点)。さらに北沢俊美防衛相が2月に「イラク、アフガニスタンに行っているので実数は4000~5000人」と述べるなど、数字の根拠があいまいなことへの追及だった。
 「1万8000人は守屋(武昌元防衛事務次官)が出してきた数字だ。そのまま信じるわけにいかない」と畳み掛ける川内氏に、ロブリング氏は「I agree(その通り)」と同意しながらも答えられず、「部下に答えさせる」と退席。代わった在沖縄米海兵隊外交政策部(G5)のエルドリッジ次長は「それは日本政府が言った数字だ。私たちの責任ではない」と言い放った。
 政府は2日に閣議決定された答弁書で「1万8000人」を「06年5月の日米合意に至る協議の中で米側から説明を受けた」としたが、エルドリッジ氏の発言はこれを真っ向から否定するものだった。川内氏は「1万8000人にまったく根拠がないと米側が認めた」と語る。

 これまで政府は、沖縄の海兵隊は1万8000人だと説明してきました。しかし、この数字には根拠がないというのです。
 それなら、実際には、どれほどの海兵隊がいるのでしょうか。この海兵隊の処遇が問題になっているわけですから、何人いるのかは重要な問題です。
 先の記事は、「沖縄県の調べでは在沖海兵隊は1万2400人(08年9月末時点)」だと書いています。「さらに北沢俊美防衛相が2月に『イラク、アフガニスタンに行っているので実数は4000~5000』と述べ」ています。

 つまり、1万8000人もいないということになります。沖縄県の調べた数字は「1万2400人」で、北沢防衛相が挙げた数字は「4000~5000」人にすぎません。
 「現行計画」でグアムに移転するのは「約8000人」ですから、北沢さんの数字が正しければ、沖縄に海兵隊はいなくなってしまいます。代替基地など必要ない、ということです。
 そもそも、現状でも「4000~5000」人しかいないということは、基地の必要性はその程度だということを示しています。沖縄の海兵隊は紛争地域への出撃基地であって、日本を防衛するものではない、ということは、この点からも明らかでしょう。

 沖縄の海兵隊が何のために存在しているのか、それはどれほどの数なのかということは、普天間基地の移設問題を考えるうえでの基礎的前提ではないでしょうか。それがこれほど曖昧なままであるということに驚いてしまいます。
 政府は、代替地探しであくせくするよりも、きちんとした事実を調べて国民に明らかにするべきでしょう。舞台裏での密約や勝手に作った「シナリオ」によって国民を騙すような、これまでのやり方を繰り返してはなりません。


4月12日(月) アメリカに媚びへつらう政治家や官僚の姿 [在日米軍]

 昨日に続いての「ぬかるみ」の話です。沖縄の毒ガス兵器撤去についても、日米間の密約がありました。これも「ぬかるみ」の一つでしょう。

 大森さんについての記事が報じられた同じ日の4月8日、朝のNHKニュースで衝撃的な事実が放映されました。沖縄に貯蔵されていた毒ガス兵器を移送するための道路建設費20万ドルを、日本側が自ら申し出て負担したというのです。
 わざわざ、そのためのシナリオを作成してアメリカ側と打ち合わせていたと言います。何ということでしょうか。
 費用負担を沖縄の屋良朝苗行政主席からアメリカ側に要求させ、それをアメリカに断らせ、やむを得ないということで日本政府が代わりして負担する形にしたそうです。アメリカが求めたわけでもない道路建設費用を国民の税金を使って負担する、そのために屋良主席を利用し、屋良さんと国民を騙していました。

 実は、これについては、『沖縄タイムス』3月29日付も「道路建設費 日本が負担 71年米軍毒ガス移送」「県公文書館に密約示す文書 政府がシナリオ」という表題で詳しく報じています。その記事は、次のような内容です。

 嘉手納基地知花弾薬庫で見つかった大量の毒ガス兵器を移送する1971年の米軍の「レッドハット作戦」で、現在のうるま市と沖縄市を通過する第2次移送道路の建設費20万ドルを日本側が肩代わりする日米の密約を示す文書が、県公文書館に保管されていることが28日までに、分かった。文書には日米間で琉球政府の要請を受けて日本政府が支出する体裁を整えるよう、示し合わせた内容が記されている。米国の軍事行動に、日本側が資金を出すことへの国民や住民の反発をかわすのに腐心する当時の政府の姿勢を示す貴重な資料となる。(上地一姫)

 文書は、統治下の沖縄における最高責任者である高等弁務官が米陸軍省にあてた71年4月22日付の電文。「レッドハット代替道路費負担に関する日本政府のシナリオ」と題した報告書にまとめられている。同文書は、日本政府が肩代わり負担に同意した経緯について、当時の吉野文六外務省アメリカ局長と山中貞則総務長官による「シナリオ」を前提にしていたと明記。
 シナリオは(1)屋良朝苗行政主席が、米国の建設費負担を高等弁務官に要請(2)米側が費用負担を拒否(3)これを受け、屋良主席が日本政府に支出を求める―という流れをふまえることになっている。日本側は、米側に屋良主席の要請を拒否するよう促す一方、「主席が納得できる理由で要請が却下されることを期待する」とし、屋良主席の面目を保つことも求めている。
 屋良主席の要請を受け日本側は負担を決定した。文書には、日本側が米側に「日本政府が費用負担に同意したことを(屋良)主席に知らせないでほしいと強く要望した」とも記されている。
 同文書について識者は「日米の外交交渉で、事をうまく運ぶためにシナリオを作ることはよくある」と現代にも通じる手法であると指摘している。

 この毒ガス移送は、沖縄施政権返還の1年前、1971年に実施されました。「レッドハット作戦」と言います。
 1969年に嘉手納基地の知花弾薬庫で毒ガス漏れ事故が発生してガスの存在が発覚し、住民の反発を受けたため、この移送作戦が実施されることになりました。貯蔵されていた、マスタード、GB(サリン)、VXガスなど、約150トンの毒ガス兵器を米国領土のジョンストン島に輸送するため、旧具志川市の天願桟橋まで運んだわけです。
 輸送は71年1月と7月から9月の2次に渡って実施されました。移送ルート周辺の住民は約2カ月間、避難を余儀なくされたといいます。

 このとき、市街地を通過させるわけにはいかないということで、新しい移送ルートを造ることになりました。そのための道路建設は、当然、アメリカが負担すべきものです。
 だって、まだ沖縄の施政権はアメリカにあったのですから。日本に復帰する以前の沖縄での道路建設なのですから。しかも、アメリカの軍需物資を輸送するための道路ではありませんか。
 しかし、当時の自民党の政治家と外務官僚は、そうは考えませんでした。吉野文六外務省アメリカ局長と山中貞則総務長官が「シナリオ」を作って、アメリカ側と相談していたのです。この時の秘密合意文書には、「日本側が米側に『日本政府が費用負担に同意したことを(屋良)主席に知らせないでほしいと強く要望した』とも記されている」といいますから、呆れてしまうではありませんか。
 「金を出すから、ばれないようにしてくれ」と、アメリカに頼んでいたのです。何という属国根性でしょうか。

 アメリカの意を忖度し、媚びへつらうために国民の税金を平気で使う売国的政治家と外務官僚の姿が、この「第2次移送道路の建設費20万ドルを日本側が肩代わりする日米の密約を示す文書」には、はっきりと示されています。このような「つかみ金」こそ、「思いやり予算」の本質なのです。
 これこそ、「日本はまだ、米国から完全に独立していない」という大森さんの指摘そのものではありませんか。「戦争の清算は済んでいないんだ。そろそろ真の独立をするべきだね」という大森さんの「遺言」を実行するためには、日米間の密約の全てを明らかにすること、「思いやり予算」を廃止すること、不平等な米軍地位協定を改正すること、普天間基地の無条件撤去をはじめ、在日米軍基地の整理・統合を進めることが、最低限、必要でしょう。

 それにしても、『沖縄タイムス』の記事の最後に書かれていた「識者」の言葉が気になります。この方は、「『日米の外交交渉で、事をうまく運ぶためにシナリオを作ることはよくある』と現代にも通じる手法であると指摘している」そうです。
 普天間基地の移設問題でも、「事をうまく運ぶためにシナリオを作る」ようなことが行われているのでしょうか。自民党の政治家と官僚が、鳩山首相の提案を拒むよう米政府に頼んでいるのでしょうか。
 そして、アメリカ側に送られた秘密文書には、こう書かれているかもしれません。「鳩山首相が納得できる理由で要請が却下されることを期待する」「我々がこのシナリオに同意していることを、鳩山首相に知らせないでほしいと強く要望した」と……。

4月11日(日) 大森実の「遺言」 [在日米軍]

 大森実という戦場ジャーナリストの草分けがいました。元毎日新聞の記者で、ベトナム戦争についての報道で脚光を浴び、その後、世界を舞台に活躍された方です。
 『泥と炎のインドシナ-毎日新聞特派員団の現地報告』、『戦後秘史』全10巻や『激動の現代史五十年-国際事件記者が抉る世界の内幕』などの著作には、多くのことを教えられました。3月25日に88歳で亡くなられましたが、私の尊敬する国際ジャーナリストの一人です。

 この大森さんについての記事が『毎日新聞』4月8日付のコラム「記者の目」に出ていました。小倉孝保記者の書いた「大先輩・大森実さんの『遺言』」です。
 小倉さんは、ニューヨーク特派員として赴任した8ヵ月後、ロサンゼルス郊外の大森さんの自宅を訪れました。2000年に心臓まひを起こして、医者から「臨終宣告」されたものの手術で一命を取り留めた大森さんは、酸素を送り込むチューブを鼻に入れていたそうです。
 記事は、この時のインタビューの様子を紹介したものでした。記事の最後は、次のように締めくくられています。

 別れ際、大森さんからの遺言のつもりで、「日本人に言っておきたいことはありますか」と聞くと、答えは間髪を入れず返ってきた。「日本はまだ、米国から完全に独立していない。戦争の清算は済んでいないんだ。そろそろ真の独立をするべきだね」

 戦後、国家の安全保障を米国に委ねる一方、米国の世界支配の一端を担い続ける日本。ベトナムからイラクまで、米国の政策に翻弄(ほんろう)される祖国に、両国を熟知するジャーナリストとして、強いいら立ちを感じているようだった。

 4月7日のブログで私は「普天間基地の移設問題は、このような対米従属と不作為から抜け出す絶好のチャンスです。普天間基地の『無条件撤去』を選択肢の一つとして提起するところから、本当の『独立』に向けての歩みが始まるのではないでしょうか」と書きました。小倉さんの記事によれば、「日本はまだ、米国から完全に独立していない。戦争の清算は済んでいないんだ。そろそろ真の独立をするべきだね」というのが、大森さんの「遺言」だったというのです。
 もちろん、大森さんが、私と同じような意味で「独立」を口にされたとは限りません。しかし、「日本はまだ、米国から完全に独立していない。戦争の清算は済んでいないんだ」という大森さんの指摘は、普天間問題をはじめとした在日米軍基地や日米同盟のあり方にこそ、最もよくあてはまるのではないでしょうか。
 だからこそ、小倉さんは「普天間問題などで揺れる日米関係を、大森さんならどう考えただろう。答えが聞けない今、失ったものの大きさを改めて感じている」と書いたのではないでしょうか。大森さんの衣鉢を継ぐ国際ジャーナリストとして、小倉さんには是非、「普天間問題などで揺れる日米関係」についてどう考えるべきか、その「答え」を探していただきたいものです。

 なお、4月7日付ブログ「対応すべきは『幻の脅威』か『現実の被害』か」で紹介した米兵裁判権についての日米秘密合意の存在が、外務省の調査でも明らかになりました。『読売新聞』4月10日付の記事「『米兵裁判権を放棄』日米の秘密合意明らかに」は、次のように報じています。

 日米地位協定の前身にあたる日米行政協定で、日本に駐留する米兵らの犯罪について、米側に実質的に裁判権を譲るとした日米間の「秘密合意」が存在したことが10日、外務省の調査で明らかになった。
 日米行政協定では、米兵らの公務外の犯罪は日本に裁判権があると規定していたが、研究者らが米国の公文書で秘密合意の存在を発見、指摘してきた。日本側でこの点が判明したのは初めて。
 文書は、1958年10月4日に当時の岸信介首相、藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日米大使らが日米安全保障条約の改定交渉をした際の「会談録」。外務省が昨年、日米間の核持ち込みなどの「密約」に関して調査した際に見つかった。

 在日米軍をめぐっては、国際問題研究者の新原昭治氏が2008年、米国の国立公文書館で、日本側が日米合同委員会で「日本に著しく重要と考える事件以外では、裁判権を行使するつもりがない」との見解を示した文書を発見した。今回の文書はこれに符合する。
 日米間の「密約」を検証した外務省有識者委員会の坂元一哉阪大教授は、「外務省の他の文書などから、この日米申し合わせは、60年の安保改定時も引き継がれたと理解している」と指摘し、60年に発効した日米地位協定下でも適用された、との見方を示す。現在は米兵が日本で起訴される例はあるが、「法務省の統計上、米兵の起訴率は同じ犯罪での日本人の起訴率より低い」との分析がある。

 どこまで続く「ぬかるみ」ぞ、という気がします。日米間の密約という「ぬかるみ」は、まだまだ続いているにちがいありません。