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4月24日(土) これで保てるのか、政治への信頼 [政局]

 せっかくの政権交代だったのに、それが政治への信頼を高めるのではなく、損なう結果となっているのは誠に残念です。しかも、それが、政権交代の先頭に立っていた鳩山首相自身によるものですから、ガッカリさせられるやら情けないやら、言うべき言葉が見つかりません。

 鳩山首相の「政治とカネ」の問題についての判決が、東京地裁でありました。首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の偽装献金事件で、政治資金規正法違反(虚偽記入)に問われた同会の元事務担当者で、首相の元公設第1秘書・勝場啓二被告に禁固2年、執行猶予3年(求刑・禁固2年)が言い渡されたのです。
 勝場被告の弁護人は控訴しない意向を示し、勝場被告は判決後、弁護人を通じて「犯した罪と社会的影響の重大さを痛感している。改めて心からおわび申し上げる」とのコメントを出しました。鳩山さんも、「政治家としての責任を痛感している。国民におわびしたい。このことは一生の戒めとしたい」と述べたそうです。
 でも、鳩山さん自身がどのように関与したのか、そのお金はどのように使われたのかなどについては、今も分かりません。国民の納得が得られるような説明を行わなければ、このモヤモヤ感は、いつまでもたっても払拭されないでしょう。

 同時に、指摘しておきたいことがあります。その一つは、「政治とカネ」の問題は、鳩山首相だけではなく、二階さんなどの自民党政治家や小沢さんについても残されているということです。鳩山さん同様、これらの人についても真相の解明や納得できる説明を求めるべきでしょう
 しかし、「政治とカネ」の問題は、重要ではあるけれども、政治が取り組まなければならない問題の一部だということです。この問題だけで鳩山政権の全てが否定されるということも、大きな間違いでしょう。
 さらに、この問題を何らかの制度改革に結びつけていかなければならないということです。企業・団体献金の禁止や政治資金の透明化などが実現されなければ、問題が真に解決されたということにはなりません。

 政治の信頼を損ねているという点では、このところの新党結成で生じている問題点も見過ごせません。自民党の候補者として比例代表選挙で当選した与謝野馨さん(衆院)、舛添要一さん(参院)の2人が、自民党を離党してそのまま新党結成に走ったからです。この点では、「自民党を離党するなら、議員を辞職するべきだ」と批判している谷垣自民党総裁の言い分が正しいと言うべきでしょう。
 また、政党結成のあり方としても、大きな問題が生じています。政党というものは、理念や政策中心に賛同者を募るのが本来のやり方だからです。

 しかし、最近結成された新党「たちあがれ日本」や昨日結成された「新党改革」は、そうなっていません。政党結成の本筋を逸脱していると言わざるを得ないものです。
 「たちあがれ日本」の場合、理念や政策の違いに目をつぶり、引退する予定だった議員まで引き入れて新党を立ち上げました。政党要件の国会議員5人を満たすために無理をしたわけです。
 「新党改革」の場合、既存の政党「改革クラブ」を舛添さんが乗っ取って代表に収まり、理念や政策の違いなどから反発する者を追い出すというやり方がとられました。参院選に向けて結党を急いだためで、政党交付金目当ての選挙互助会作りだとの批判は免れません。

 さらに、政治のトップリーダである鳩山首相の指導力のなさや発言の揺れも、深刻な政治不信を引き起こしています。『日経新聞』4月23日付の記事「『決められない』政権」は「決められない」「決まらない」として、「鳩山政権の意思決定の迷走」について指摘しています。
 ここで取り上げられている課題は、米軍普天間基地の移設問題や高速道路料金の改定の問題だけではありません。税制改革、高齢者医療、子ども手当、温暖化対策、郵政改革などが列挙されています。
 いずれの問題についても、鳩山首相は十分な指導力を発揮せず、発言が揺れているというわけです。国民は、何を信じて良いのか分からなくなっているのが現状です。

 このようななかで、鳩山内閣は大きなチャンスを逃したように見えます。沖縄返還に関する日米密約についての文書開示裁判での上告です。
 日米密約問題の調査と関連文書・資料の公開は、鳩山内閣が放った数少ない「長打」でした。ところが、せっかく「得点圏」に「ランナー」を進めたのに、「ファールフライ」を打ち上げてしまいました。
 どうして、密約開示請求訴訟で東京高裁に控訴なんかしたのでしょうか。東京地裁での判決を受け入れて再調査を行えば、得点をあげて政治への信頼を回復できる絶好のチャンスだったのに……。

 しかし、まだ「逆転ホームラン」を放つチャンスが残されています。それは、普天間移設問題での鳩山首相による指導力の発揮です。
 4月16日にテニアン島などからなる北マリアナ連邦上院議会が普天間飛行場の誘致決議を全会一致で可決するなどの動きが出ているそうです。鳩山さんにとっての「助け船」が、太平洋の彼方からやってきたというわけです。
 テニアン島などへの移設の可能性も考慮に入れつつ、アメリカに対して普天間基地の撤去を求めれば、5月末での「決着」は可能かもしれません。国内での適地を探すなどという「不動産屋」のようなことは止めて、「出て行って欲しい」と米政府にきっぱりと伝えるべきです。

 普天間基地の撤去と国外移設に向けての道筋を付ける。これこそ、鳩山内閣への支持率低下を逆転させ、政治への信頼を取り戻す最大の秘策であり、起死回生の「場外ホームラン」になること間違いないでしょう。
 政治家にとって、歴史に名をとどめることができるチャンスは、そうそうあるものではありません。鳩山さん、今こそ、そのための絶好のチャンスがめぐってきたのですよ。
 引っ越し先を探し回る不動産屋などさっさと廃業して、本来の政治家に戻りなさい。

2月28日(日) 鳩山政権と民主党をどう見るか [政局]

 今日の『日経新聞』の一面に、久しぶりに見る写真がありました。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という著書で良く知られているエズラ・ボーゲル先生です。
 ハーバード大学に留学したとき何度かお目にかかる機会があり、サイン入りの著書もいただきました。気さくで親しみやすいという印象の方です。

 そのボーゲル先生は、鳩山政権について「民主党は素人政治だ。選挙前は大衆迎合的なことを言っても、現実は複雑だ。もう少し責任を持って政権運営しないといけない」と、苦言を呈しておられます。もっともな指摘でしょう。
 私としては、「民主党は素人政治だ」ということに、中枢幹部が自民党出身で、旧体制の残滓を引きずっていること、新自由主義や構造改革に対する総括が不十分で、新福祉国家という将来ビジョンを掲げきれていないこと、官僚主導の政治運営から十分に脱却しきれていないこと、民主主義的な審議や運営について軽視する傾向があることなどの問題点も付け加えたいと思います。

 しかし、ここですぐに指摘すべきは、だからと言って、民主党は自民党と同じだというわけではないということです。自民党と民主党とは大きな違いがあり、自民党を政権の座から放逐したことは歴史的前進でした。
 この点では、自民党の下野と民主党政権の樹立は区別して考えた方が良いのではないかと思います。自民党の下野には大きなプラスがありましたが、それに代わって民主党中心の政権ができたことは、それほど大きなプラスではなかったということでしょうか。
 とはいえ、郵政民営化の見直しや母子加算制度の復活、高校の実質無料化など、自民党ではできなかったことも、着手されました。JRに不採用となった国鉄労働者の問題について政治決着が図られれば、これも自民党主体の政権との大きな違いを示すことになるでしょう。

 もう一つ指摘すべきは、民主党ですべての問題を解決するというのは無理のようだということです。やはり、中間段階の政権だということが、ますます明らかになってきていると言えるでしょう。
 自民党政治からのきっぱりとした転換ではなく、中途半端で及び腰の転換にすぎず、しかも、時間が経つにつれて揺れ戻しや継続も目立ってきています。
 問題によっては、政治を前に進めるより後戻りさせてしまう可能性さえあります。衆院比例区定数の削減や公務員の削減、国会審議の形骸化、原子力発電所建設の推進などが、その例です。

 したがって、今後、必要になることは、前進面を引き継ぎ弱点を克服することです。そのためには、「政治的なエンジン」を強化しなければなりません。
 3党連立政権内での社民党の発言力を強めることです。それをバックアップできるような政権の外からの牽制力を増大させることです。
 民主党は、参議院での単独過半数の獲得を狙って着々と手を打っていますが、やりたい放題できる状況は好ましくありません。この間の実績を見る限り、間違いや問題点も少なくなかったからです。

 自民党の失政に対するペナルティが、先の総選挙での大敗北の意味でした。同時に、政権を交代させるために野党第一党である民主党を使うしかなかったというのが、民主党大勝利の意味でした。
 しかし、選手交代した民主党も、期待していたほどではありません。深く静かに、失望感が広がっています。

 自民党を見限り民主党に失望した民意は、今、「支持政党なし」層となって空中を浮遊しているように見えます。これらの人々をどの政党が引き寄せられるのか、今度の参院選は、その争奪戦になるのではないでしょうか。

2月23日(火) 自分でぶっ壊しておいて直し方がへたくそだと文句を言うのか [政局]

 もう、いい加減にして欲しい、冬期オリンピック。NHKテレビは、まともにニュースを流すべきです。
 オリンピック放送で時間を取るのは、通常のニュースを流してからにしてもらいたいものです。NHKはいつからスポーツチャンネルになったのですか。

 『民主党が日本経済を破壊する』という本を買いました。麻生内閣で財務・金融・経済財政の経済3閣僚を兼務していた与謝野馨さんが書かれたものです。
 「自民党が日本経済を破壊した」という本の間違いではないでしょうか。与謝野さんは、日本経済を破壊した自分自身の責任を、全く感じていないのでしょうか。
 「『民主党型バラマキ政策』では瀕死の日本経済は救えない」と帯に書かれていますが、日本経済を「瀕死」の状態に追い込んだのは、一体誰なんでしょうか。自分でぶっ壊しておいて直し方がへたくそだと文句を言っているようなものではありませんか。

 長崎県知事選挙の結果は、民主党に対して厳しいものになりました。民主党も鳩山政権も、国民の期待を裏切っていることへの厳しい批判に応えなければなりません。
 せっかくの政権交代を無にしてはならないと思います。レッド・カードによって退場させられた自民党の復権を手助けしてはなりません。
 国民が求めた政策転換を、真摯に実行するべきでしょう。政治とカネの問題や普天間基地の移設問題を解決し、生活再建に向けて本格的な取り組みを始めて欲しいものです。

 民主党への追い風は止み、逆風が吹き始めています。民主党や鳩山首相、小沢幹事長自身の失態によるところの大きい逆風です。
 このままの状況が続けば、やがて小沢幹事長の進退が問われることになるでしょう。昨年の代表辞任以前の状況と似てきました。
 民主党の支持率を回復して参院選で民主党が単独過半数を獲得するためには、小沢辞任は有効な「カード」になるかもしれません。しかし、そうなっては困るという考え方もあります。

 衆参両院で民主党が単独過半数を獲得すれば、民主党の天下になってしまいます。連立政権は、たとえ維持されても有名無実となるでしょう。
 民主党のやりたい放題となります。それは、日本の政治にとって望ましいものではありません。
 共産党や社民党による批判・牽制力がそれなりの意味を持ち、民主党の動揺や暴走、過ちを防ぎ、政治を前進的に変えていくことができるような状況を生み出さなければなりません。そのためには、小沢さんが辞任せず、参院選で民主党が苦戦した方が良いということになるかもしれません。

 しかし、その場合でも、自民党の復調に結びつくようでは困ります。日本をここまでぶっ壊し、日本の社会と経済を「瀕死」の状況に追い込んだのは、自民党にほかならないのですから……。

 『日本労働年鑑』の編集や講演の準備などもあって、繁忙期真っ最中です。右肩が痛くなり右腕がしびれてきています。
 これまでのように、これからも、そう度々更新できません。しばらくの間、ご容赦いただければ幸いです。

1月25日(月) 小沢「政治とカネ」、沖縄普天間移設問題に見られる共通の構図 [政局]

 大きなニュースが、相次いでいます。土曜日には民主党の小沢幹事長の「政治とカネ」問題について東京地検特捜部による事情聴取が行われ、日曜日には沖縄の名護市長選挙で米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する新人の稲嶺進候補が当選しました。
 この二つの問題には、共通する面があるように思われます。事態を複雑にしているのは、このような構図が背景にあるからではないでしょうか。

 共通の構図の1つは、いずれも、新政権と旧体制(自民党・官僚・財界・アメリカ・マスコミによって構成されるアンシャンレジーム)との対抗関係が背後にあり、旧体制(アンシャンレジーム)による鳩山政権に対する反撃が強まっているということです。
 「政治とカネ」の問題で追及されているのは、民主党幹事長の小沢さんだけでなく、鳩山さんも同様です。この追及の先頭に立っているのは検察・司法官僚で、自民党は勢力のばん回と民主党のイメージダウンのためにこれを利用しています。
 新聞などによる捜査情報の「リーク」が疑われていますが、それが事実がどうかは分かりません。しかし、マスコミを通じて検察側しか知り得ないような情報が流れているのではないかとの疑いは濃厚だと言わざるを得ません。

 普天間問題でも、新政権と旧体制(アンシャンレジーム)との対抗関係が強まっており、アメリカ内の「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる「知日派」が暗躍しています。日本のマスコミは、これをアメリカ全体の動向であるかのように報じていることは、皆さんご存知の通りでしょう。
 日本の国内でも、外務官僚や防衛官僚は、一貫して辺野古沖への移転という「現行案」の実行をめざしています。自民党も、これまでは同様でした。
 今回の名護市長選は、このような暗躍に対する名護市民の明確な回答でした。他方で、5月までは日米首脳会談を拒むという形で、アメリカからの揺さぶりがかけられています。

 第2は、このような反撃を跳ね返すことができないような弱点を、鳩山政権が抱えているということです。新政権にはアキレス腱があり、そこが執拗に狙われているということでしょう。
 「政治とカネ」の問題では、鳩山さんも小沢さんも、全く問題なしと言えるような状況ではありません。安倍さんや福田さん、麻生さんなどと同様の「旧体制」出身である「世襲議員」としての問題を沢山抱えていたということでしょうか。
 鳩山さんが受け取った多額の「子ども手当」や小沢さんが行った不可解な資金処理は、庶民には理解不能な面が多々あります。国会で真相を解明し、政治的道義的な責任を明らかにすることが必要でしょう。

 普天間問題でも、新政権側には弱点があります。安保条約に基づく日米同盟の役割と「抑止力論」に拘泥し続けている点です。
 安保に基づく日米同盟を肯定的に評価し、米軍基地の存在を「抑止力」と考えている限り、袋小路から抜け出すことはできません。鳩山さんが野党時代に唱えていた普天間基地の「県外・国外移設」論は、選挙目当ての戦術的主張に過ぎなかったということになります。
 軍事力によって安全を確保しようとするパワーポリティクスや軍のプレゼンスによる抑止力論は、すでに破綻しています。このような論理を明確に払拭できなければ、鳩山首相自身や閣僚による発言の揺れは、いつまでも続くことになるでしょう。

 第3は、問題の根本的な解決のためには、旧体制の構造や論理から明確に離脱するしかないということです。政権交代によって国民が求めたのは、これまでの政策をきっぱりと転換することだということを、鳩山政権はもう一度かみしめるべきでしょう。
 今回明らかになったのは、「政治とカネ」の問題は「政治改革」によって解決されなかったということです。それなら、もう一度、「政治改革」の課題をやり直さなければなりません。
 その中心は、企業・団体献金の禁止です。自民党も政治腐敗を追及している今が、法律を制定するチャンスでしょう。

 普天間問題の根本的解決のためには、無条件撤去しかありません。その結果、閉鎖するか、グアムなどの日本国外に持っていくかは、アメリカに任せれば良いのです。
 在日米軍基地の全てを撤去せよといっているわけではありませんし、フィリピンでは二つの米軍基地が撤去されても、何の問題も生じませんでした。この問題を解決することは、1996年以来、日米関係に突き刺さったとげを抜くことにもなるでしょう。
 名護市長選挙の結果を受けて、直ちに国会で「普天間基地の無条件返還を求める決議」を挙げ、閣議決定を行ってアメリカとの交渉に臨むべきです。政権交代によって民意が示され、今回の市長選で名護市民の意思が明確に表明された今が、問題解決のチャンスでしょう。

 どちらの課題も難題であり、政権を揺るがす可能性があることは否定できません。しかし、今こそ、根本的な解決を打ち出せるチャンスでもあります。
 旧体制(アンシャンレジーム)の反撃の前に、グズグズして中途半端な対応を繰り返し、世論の支持を失って政権交代の意味を台無しにしてしまうのか。それとも、腐敗政治を一掃して普天間基地の返還を実現し、政権交代に託された国民の期待に応えるのか。
 果たして、鳩山首相はどちらの道を選ぶのでしょうか。

 というような話を、今週の木曜日に予定されている「国民学校一年生の会」の勉強会でしようと思っています。
 なお、この勉強会を含めて、現在までに決まっている講演の予定は以下の通りです。関係者の皆さん、よろしくお願いいたします。

1月28日 国民学校一年生の会(東京・新宿)
2月6日 福岡県社会保障学校(福岡・二日市温泉)
2月13日 金融労連春闘学習会(福島県・岳温泉)
2月25日 全国社研連(滋賀県・立命館大学びわこ・くさつキャンパス)
2月26日 八王子市史編纂室市民講座(東京・法政大学大原社会問題研究所)
3月4日 全国一般東京南部春闘学習会(東京・大崎)
3月5日 神戸地区労・神戸ワーカーズユニオン春闘学習会(神戸・三宮)
3月6日 三多摩革新懇談会(東京・立川)
3月12日 重税反対全国統一行動中央各界代表者集会(東京・国会)

 場所や時間、内容などの詳細については、それぞれの主催団体にお問い合わせ下さい。多くの皆さんにご参加いただければ幸いです。

1月7日(木) 藤井財務相の辞任は鳩山政権への打撃となるか [政局]

 藤井裕久財務相が辞任しました。健康問題が理由です。
 後任は、菅直人副総理が兼務することになりました。これは鳩山政権にとって大きな打撃になるだろうとの見方があります。
 しかし、そうでしょうか。私は、そうは思いません。

 以前、西松建設問題で小沢代表が辞任し、鳩山さんに交代したときも、同じように大きな打撃となるという見方がありました。しかし、小沢辞任は民主党にとって打撃になったでしょうか。
 かえって、民主党の看板を代えてイメージを好転させ、総選挙での躍進にプラスになったのではないでしょうか。辞任した小沢さんも背後に回って得意の選挙活動に専念でき、かえってよかったのではないでしょうか。
 確かに、追い込まれた形での辞任ではありました。しかし、辞めた小沢さんにとっても、代わりに代表になった鳩山さんにとっても、また、代表が交代した民主党にとっても、この代表交代は決してマイナスではなかったように思われます。

 今回も、同じようなことが言えるのではないでしょうか。少なくとも、通常国会での予算審議の最中に藤井さんが過労などでぶっ倒れるよりはましだったでしょう。
 いや、健康問題などではなかった、という見方もあります。小沢さんとの関係が悪化して、藤井さんが財務相の地位を投げ出したのだというのです。
 その場合でも、嫌気がさしてやる気をなくしていた人を続投させるよりはましでしょう。その後任が小沢さんとの関係の良い菅さんですから、なおさらです。

 予算決定のプロセスに問題があったのだという見方もあります。特に、ガソリンの暫定税率の問題をめぐる小沢さんとの確執です。
 藤井さんは、暫定税率の廃止を主張していました。これをひっくり返したのが小沢さんで、最終的に鳩山さんはこれに従いました。
 通常国会での審議では、当然、この点を追及しようとして、自民党などは手ぐすねを引いていたはずです。しかし、菅さんさんなら前言との矛盾に悩む必要はなく、自民党は肩すかしを食った格好になるでしょう。

 さらに、自由党時代の政治資金についての疑惑を指摘する意見もあります。これについて追及されるのを避けるための辞任だったというのです。
 これが本当だとすれば、藤井さんは先手を打ったことになります。自民党などは、この点でも攻め手を失ったわけです。
 民主党からすれば、これ以上、「政治とカネ」の問題を抱え込まずにすんだということになります。政権への打撃というよりも、それを避けるための方策だったということではないでしょうか。

 藤井さんの後任に、菅副総理が横滑りしたという点も重要でしょう。当初は、野田佳彦財務副大臣や仙谷由人行政刷新相の名前も挙がっていたようで、菅さんも何回か固辞されたそうですが、結局は引き受けました。
 ここでも考慮されたのは、小沢さんとの関係だったといいます。その結果、菅さんが起用されたため、かえって、鳩山・菅・小沢の「トロイカ体制」は磐石になったように見えます。
 これまで影が薄いとされてきた菅さんの出番も増え、指導力をふるえる体制ができたことになります。仙谷由人行政刷新相は国家戦略担当相を兼務することになり、負担は2倍になるかもしれませんが、行政刷新と国家戦略の作成という両機能は一体化することになります。

 菅さんにとって、この交代は青天の霹靂だったでしょう。と同時に、大きなチャンスでもあります。
 得意の弁舌によって通常国会を上手く乗り切ることができれば、「ポスト鳩山」の地位は確実となるにちがいありません。菅さんが、この試練をうまく乗り越えることができるかどうか、来るべき通常国会での予算審議に、もうひとつの注目点が付け加わったことになります。

6月25日(木) 問題噴出で「落城」寸前の自公城 [政局]

 政権党の瓦解前夜というのは、こういうものなのかもしれません。さすが、100年に一度の危機の下での、85年ぶりの本格的な政権交代です。思いもかけない出来事やドラマが満載で、目が離せなくなってきています。

 まず、相も変わらず、麻生首相の阿呆ぶりです。「沖縄県民斯く戦えり。県民に対し後世特別のご高配を賜らんことを」との電文を送った後に自決し、死後、中将に昇進した大田実少将のことを「大田大将」と言い、「良く知られている」はずの「鉄の暴風」を「鉄の嵐」と言ってみたり、先日のブログで書いたような「一般常識の無さ」が、またも立証されてしまいました。
 沖縄でも麻生さんは、知ったかぶりをして間違えるというみっともない姿をさらけ出しているというわけです。間違えるくらいなら、はじめから言わなければ良いのに……。

 この麻生さんと、本来なら一緒に沖縄に行くはずだった古賀誠日本遺族会会長は、急遽、予定を変更して宮崎入りして東国原宮崎県知事への総選挙出馬要請を行い、逆に、自民党総裁選の候補とすることなどの条件を出されました。
 元お笑いタレント特有の冗談かと思いましたが、ご本人は「いたって真剣」なのだそうです。溺れかかった自民党の古賀さんは「藁にもすがる思い」で東国原さんにアタックし、東国原さんは国政では何の経験も実績もないのに「総理の椅子」を求めたというわけです。
 政治家としての能力や実績、資質や政見よりも人気にすがって選挙を乗り切ろうというのが、安倍元首相以来の自民党のやり方です。その結果、不適格者が首相になってしまい、どれほど政治が歪み、総理の権威が傷つけられ、国民生活が混乱させられたか、分かっていないのでしょうか。

 もし、東国原さんの要求が通れば、比例区のトップに据えて総選挙の顔として利用することになるでしょう。与党が政権を維持すれば、東国原首相の誕生ということになるのでしょうか。
 勘弁してくださいよ。冗談は顔だけにして欲しいものです。
 東国原知事は、立候補の条件に、自分を総裁選の候補とすること、全国知事会の要望を次期衆院選の党政権公約に盛り込むことという二つの条件を示し、現在は、これについての回答を待っているところだそうです。これに対して、古賀さんは何と答えるのでしょうか。

 自民党政権の瓦解前夜における末期症状ということでは、さらに大きな問題が持ち上がっています。西松建設の献金と同様の構図を持った「政治とカネ」の問題ですが、それ以上に大きな激震となるかもしれません。
 何と言っても、時期が悪い。都議選の投票まで3週間を切っている時点での問題発覚ですから……。
 問題となった人も悪い。麻生内閣のナンバー2である与謝野馨財務・金融・経済財政担当相で、しかも、与謝野さんは多額献金の中心となった商品先物取引会社「オリエント貿易」が2000年に発刊した40年史に祝辞まで寄せています。

 これで、麻生さんは、民主党追求の唯一の武器だった「西松カード」を使えなくなってしまいました。おまけに、閣内で最も頼りにしていた与謝野さんを、逆にかばわなければならないはめに陥っています。
 今後の国会審議でも、野党からの追及がなされるでしょう。会期末を迎えつつある麻生内閣が、やむなく防戦に転ずることは明らかです。
 自民党内で「麻生おろし」に動こうとしている人々も困っているでしょう。ポスト麻生の最有力候補だった与謝野さんが疑惑の渦中に巻き込まれてしまったのですから……。

 この「オリエント貿易」による多額迂回献金事件の発覚は『毎日新聞』のスクープでした。各紙の記者は今、一斉に与謝野さんの周囲を洗っていることでしょう。
 今後、さらに新しい事実が出てくるかもしれません。まさに、自公城は「落城」寸前の様相を呈してきていると言うべきでしょうか。

5月14日(木) 『毎日新聞』の世論調査が示すもの [政局]

 今日の『毎日新聞』に興味深い調査が出ています。小沢辞任が表明された後の12日と13日に行われた緊急の世論調査の結果です。
 鴻池官房副長官の女性スキャンダルにからんだ辞任は、まだ発表されていません。これを報道した『週刊新潮』が発売されたのは昨日(13日)のことですから……。

 この調査でも、小沢さんの後任の代表にふさわしい人としては、岡田克也副代表との回答が最多の25%で、鳩山由紀夫幹事長の13%を12ポイントも上回っています。やはり、世論は岡田新代表を待望しているということになります。
 岡田さんについては、かつて消費税の増税を主張していたこと、背後に前原元代表が控えていることなど、大いに気がかりな点があります。しかし、当面の総選挙で自民党を政権の座から追い落とすためには、岡田さんを“利用”する以外にありません。
 将来に気がかりがあるとはいえ、当面の決戦を最優先せざるを得ない。そのためには岡田さんの方がよろしかろう、というのが私の判断です。

 これまで小沢執行部を支えてきた鳩山さんでは、変わり映えしません。「小沢後継」とされる鳩山さんを、自民党は「小沢に操られたロボットだ」と言い立てるでしょう。
 それに、鳩山さんも4代目の政治家で、ある意味では世襲議員の一人です。この問題で自民党を追及するどころか、本人が追及されてしまう恐れがあります。
 “新生民主党をアピールする”という点からいえば、鳩山さんでは役不足だといわざるを得ません。もっとも、“小沢亜流で良いんだ”というのであれば、話は別ですが……。

その小沢さんですが、世論の見方には厳しいものがあります。公設秘書の政治資金規正法違反事件に関する説明責任を十分果たしたと「思わない」との回答は8割以上(83%)にも上っています。
 また、「小沢代表の辞任を評価しますか」という問いへの回答は、評価する49%、評価しない47%と拮抗しています。「辞めるのが遅すぎた」という回答は7割弱(66%)もあります。
 つまり世論は、いまさら辞めるというのでは評価に値しないと考えているようです。せっかくの小沢さんの決断でしたが、世論の見方には厳しいものがあり、「小沢亜流」にも厳しい目が向けられる可能性があるということになります。

 他方の麻生さんですが、内閣の支持率は前回調査(4月10、11日)から3ポイント増の27%にすぎません。「上げ止まった」ということでしょう。逆に不支持率は、過半数以上(52%)のままです。
 注目されるのは、支持率の回復を狙ってバラ撒いた低額給付金への評価が35%と、前回調査より4ポイント低くなったことです。昨夜、衆院を通過した補正予算案に対しても、「評価する」と答えた人は37%にとどまり、半分以上(54%)が「評価しない」としています。
 きっと、麻生さんは頭を抱えていることでしょう。内閣支持率は伸び悩み、総額15.4兆円もの「大盤振る舞い」のバラ撒き経済対策の目途が付いたというのに評価されず、しかも、8ヵ月で4人目の閣僚辞任で内閣と首相の統治能力が問われる事態になっているのですから……。

 政党支持率では、自民27%、民主24%と自民が民主を上回りました。これは麻生内閣発足直後の08年9月の調査以来のことだそうです。
 でも、「次の衆院選で自民党と民主党のどちらに勝ってほしいか」という質問では、民主党が前回比3ポイント増の45%で、自民党は2ポイント増の34%にすぎません。民主党に勝って欲しいと望んでいる人は、11ポイントも多いということになります。
 この傾向は、昨年10月から一貫しているそうです。ということは、民主党を支持していない人も、次の衆院選では民主党に勝って欲しいと願っているということになります。

 このような願いに答えるのが、民主党の責任でしょう。そのために誰を看板にするのかが、今度の代表選の意味なのです。
 その点では、残念ながら、せっかくのチャンスを十分に生かしていないように見えます。せめて、投票日を16日(土)ではなく18日(月)にし、土曜日と日曜日には繁華街で街頭演説でもすれば良かったのに、と思います。
 そうすれば、マスコミは大きく取り上げ、もっと民主党を売り込むことができたでしょう。まだまだ、マスコミの利用や世論対策では、民主党は未熟だということでしょうか。

 もし、私が民主党の“策士”なら、月曜日を投票日にして土日を使い選挙戦を大いに盛り上げ、鳩山有利の情報を意識的に流し、月曜日の代表選には地方代表も加え、不利とされていた岡田さんを選出して世間をアッと言わせるんですが。その昔、自民党の総裁選で小泉さんが選ばれたときのように……。
 今の民主党には、そんな“策士”はいないんでしょうね、多分。

4月20日(月) 市長選の結果に示されている現状打破への願い [政局]

 昨日の日曜日、地方の首長選で興味深い事実が示されました。現状打破への願いがかくも大きなものとなり、政治と行政を変えたいという思いがマグマのようになって地表近くまで盛り上がってきているのではないでしょうか

 昨19日、全国で19市長選が投開票され、12市のうち6市で現職の落選が相次ぎました。25市長選が投開票された12日も9市で現職が敗れており、政治の現状に対する不満の広がりをうかがうことができます。
 青森市では自民、公明が事実上支援した現職が敗れ、社民党と共産党が支援していた元青森県議の鹿内博候補が当選し、長年の自公政権支配に終止符を打ちました。茨城県筑西市長選でも、元市議会議長の吉沢範夫候補が、自民党と公明党が推薦していた現職の冨山省三候補を破って初当選しました。
 長崎県西海市でも自公推薦の現職が落選し、無所属新人で元市議の田中隆一候補が当選しています。兵庫県の宝塚市長選では、社民党と共産党が支援した元社民党衆院議員の中川智子候補が当選し、石巻市長選でも元石巻専修大教授の亀山紘候補が初当選し、公明党推薦の現職の土井喜美夫候補を破っています。

 これらの結果には、注目すべき点が二つあります。

 一つは、これまでの地方選挙のパターンが崩れてきているということです。自民・公明に民主党なども加わって「総与党体制」ができ上がり、それをバックにした現職に対して異議申し立てという形で共産党が「大義名分」的に候補者を立てるというパターンが、これまで多くありました。
 このような選挙も、無意味だったというわけではありません。少なくとも、対立候補を立てて選択肢を提供し、選挙を成立させたということでは、大きな意義があったと思います。
 しかし、実質的な政治的競争の機会を提供するという点では不十分だったことも事実です。国政で対立していた野党が加わって「総与党」と言われるような体制が作られてしまっていたからです。民主党の側からこれを壊したのは小沢代表であり、そのリーダーシップは正当に評価されなければならないでしょう。

 もう一つは、現職に対して対立候補が果敢に挑戦しただけでなく、当選を勝ち取った例が多く出てきたということです。このような形で、現職に挑戦しようという候補者が出てきたという点を、まず、評価したいと思います。
 それだけでなく、このような候補者を当選させるだけの支持の広がりがありました。現職への挑戦も、それを当選させたという事実も、地方の現実がいかに多くの問題を抱えるようになってきているか、ということの証左でしょう。
 「このままではいけない。何とかしなければ」という思いが、それだけの広がりを獲得し始めているということでもあります。ここに、現状打破に向けての願いや熱い思いが示されているといって良いでしょう。

 このような形で現状打破の願いが盛り上がってきているときだからこそ、小沢さんの進退が大きな焦点となってしまうのです。野党第一党としての民主党は、この願いを受け止める受け皿としての大きな使命を担っているからです。
 世の中には、小沢さんの味方をするような振りをして、事実上、民主党の足を引っ張る「隠れ政権交代阻止派」もたくさんいます。しかし、小沢さん自身が言っているように、「政権交代のためにどうするのがプラスなのか」という点から、全ては発想するべきでしょう。
 そうすることこそが、現状打破を求めている国民の願いに答えることになるのではないでしょうか。いくら目の前に総理の椅子がぶら下がっているからと言って、保身を優先するべきではありません。

 なお、今日の『毎日新聞』のコラム「風知草」で、専門編集委員の山田孝男さんが、「同じ説明なら無意味だ」と題して、次のように書かれていました。私も、山田さんのご意見に同感です。

 ……小沢に依存するあまり、皆が口をつぐみ、小沢に取って代わろうというリーダーが一人として現れない。この停滞から民主党は抜け出せるのか。
 小沢が遊説でこれまでと同じ説明を繰り返しても国民は納得せず、むしろダメージが広がるだろう。……  

4月17日(金) 小沢代表辞任こそ、政権交代のための最大の武器 [政局]

 繁忙期を抜け出たという意識のせいでしょうか。新聞を読んでいても、気になるような記事が多く目に付くようになりました。

 本日付の『日本経済新聞』に、「40道府県で人口減 75歳以上が14歳以下超す県倍増」という記事が出ていました。
 総務省が発表した2008年10月1日現在の都道府県別、年齢別の推計人口によると、東京都など7都県で前年より人口が増えたものの、40道府県で人口減となったそうです。記事には、「人口減少社会」の本格的な到来と少子高齢化の加速がデータで裏付けられたと書かれています。
 また、その前の3月23日に総務省が発表した推計人口によれば、比較可能な調査を始めた1950年以来、外国人を含む女性の人口が初めて減少に転じたという報道もありました。子供を産むことのできる女性の減少は、深刻な問題だと言うべきでしょう。

 日本人の減少については、先日の外国特派員協会でのスピーチでも指摘したところです。4月13日付のブログで公開したレジュメには、次のよう書きました。
 問題は、さらに深刻化していると言うべきでしょうか。まさに、「日本社会は縮小再生産への道に入り込んでしまった」のであり、そこからどう抜け出すかが、最優先の政策課題とされなければなりません。

2,日本社会は縮小再生産への道に入り込んでしまった
①少子・高齢化という問題のとらえ方は間違っている
  少子化は問題だが、高齢化は問題ではない
②08年の出生数から死亡数を差し引いた人口の「自然増加数」はマイナス2万9811人
  人口減は2年連続で、戦後初めて減少に転じた05年を含め3度目
③07年から人口減少社会に、生産年齢人口(15~65歳)は97年がピーク
  98年以降、11年連続で3万人以上-33万人以上が自ら命を絶っている

 また、この日の新聞各紙には、「小泉チルドレン」と加藤紘一さんとの会合についての記事も出ています。これについて『朝日新聞』は、次のように書いています。

 小泉改革を批判する自民党の加藤紘一元幹事長と、05年の郵政総選挙で初当選した小泉チルドレンら約10人が16日、党本部で討論会を開いた。小泉元首相の影響力が後退する中、小泉路線の正当性を主張する声は少なく、チルドレンから「行き過ぎた改革」への反省も相次いだ。
 郵政民営化や道路公団改革について、「自民党として整理しないといけない」と問題提起した加藤氏に対し、小泉氏を積極的に擁護したのは、「小泉改革は当時最高の政治の進め方だった」と主張した中川泰宏氏くらい。清水鴻一郎氏は「医療崩壊などが目に見えて表れてきた」と指摘し、飯島夕雁氏も「(小泉時代の)反動で何かあると小泉改革が悪かったと言われる。あのときのブームと、いま見えてきた違いを検証したい」と改革の検証が必要との考えを強調した。
 討論会後、加藤氏は「小泉改革だけではダメだと(考えが)変わってきている。『チルドレン』が『高校生』くらいになりつつある」と記者団に感想を語った。

 拙著『労働再規制』でも紹介したように、加藤さんは早くから「小泉改革」を批判していました。最近も、「国民を熱狂させた劇場政治は終焉した」とする『劇場政治の誤算』という小泉批判の書を、角川書店から出したばかりです。
 この加藤さんに、「小泉チルドレン」が近づいたということになるでしょう。「小泉路線の正当性を主張する声は少なく、チルドレンから『行き過ぎた改革』への反省も相次いだ」というのですから……。
 小泉さんは過去の人になったということでしょう。それは、大変、結構なことですが、その小泉さんと一緒になって構造改革の旗を振った「チルドレン」の罪まで、「過去」のものにしてしまって良いのでしょうか。

 さらに、新聞各紙には、小沢民主党代表の活動再開という記事もありました。困ったものです。
 代表続投が理解されないのは説明が足りないからではなく、本来、禁止されるべき企業献金を大量に受け取っていたこと自体にあります。小沢さんには、どうしてこのことが分からないのでしょうか。
 それが理解されていないということもまた、小沢さんや民主党の評判を下げることになります。「やはり、小沢は金丸の子分にすぎなかったのだ。だから、旧型の政治家としての体質から逃れられないのだろう」と、思われてしまうからです。

 小沢さんは、昨日、連合の中央執行委員会に出席して、次の総選挙について「政治人生の最後の決戦の場と考えている。政権交代が実現できないと死んでも死にきれない」と語ったそうです。「政権交代を最大の目標にするという観点に立って、すべてを判断して参りたい」とも述べ、秘書が起訴された違法献金事件で浮上した自らの進退問題については、総選挙への影響を踏まえて判断する考えを改めて示したといいます。
 何を言ってんでしょうか。総選挙への悪影響なんて、誰の目にも明らかでしょう。それが分かっていないのは、小沢さんだけです。
それが理解できない程度の政治的センスしかないということでは困ります。小沢代表辞任こそ、政権交代のための最大の武器になっているということが、どうして理解できないのでしょうか。

 小沢代表の辞任を求めているのは、政権交代を望んでいる人々です。逆に、政権交代を阻止したいと願っている人々が続投を勧めているのです。その“悪魔のささやき”に耳を傾けてはなりません。
 昨日、民主党最高顧問の渡部恒三さんは「(小沢氏は秘書が起訴された3月)24日に辞めると思っていた」としたうえで、「遊説で歩くと、この1カ月、少しずつ民主党への期待感が薄れている感じがする」と指摘し、「衆院選で過半数をとって政権交代しないといけない。後世の人から『あの時小沢さんは立派な判断をした』と言ってもらえる判断をしてくれると信じている」と述べたそうです。小沢さんの自発的な辞任に期待感を示したわけです。
 私も、そうあって欲しいと思います。でも、総選挙まで、残された時間はそう多くありません。
 「決断の時」は、近づいています。「政権交代を最大の目標にするという観点に立って、すべてを判断」してもらいたいものです。「政権交代が実現できないと死んでも死にきれない」という思いは、何も、小沢さん一人のものではないのですから……。

 なお、本日の『しんぶん赤旗』の訃報欄に、「さくら・さくらんぼ保育園」の創設者で園長だった斉藤公子さんの死亡記事が出ていました。斉藤さんは、塩田庄兵衛先生との共編で『子どもたちの未来のために-歴史から何を学ぶか』という本を、1990年に創風社から出されています。
 実は、私は学生時代に、埼玉県深谷市にある「さくら・さくらんぼ保育園」を訪ねて行ったことがありました。当時、高校時代の友人がこの保育園で保母さんをしていたからです。
 その斉藤さんも、塩田先生の後を追うように、この世を去ってしまわれたというわけです。謹んで、お2人のご冥福をお祈りしたいと思います。

2月13日(土) 消費税率引き上げの時期明示をめぐる自公対麻与、与党対政府の対立 [政局]

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 拙著『労働再規制-反転の構図を読みとく』(ちくま新書)刊行中。240頁、本体740円+税。
 ご注文はhttp://tinyurl.com/4moya8またはhttp://tinyurl.com/3fevcqまで。
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 麻生さん、また、漢字を読み違えて、景気の「低迷」を「テイマイ」と言ったのだそうです。すぐに正しく言い直したものの、野党から「テイメイだろ!」とヤジが飛ぶと、麻生さんは「こういうヤジしか出なくなると悲しいですな。もうちょっとレベルの高(たけ)えヤジが聞けねえかな」と野党の姿勢を皮肉ったと報じられています。
 「悲しい」のは、こんなヤジを飛ばされることでしょう。自民党には「もうちょっとレベルの高(たけ)え首相が居ねえかな」と言いたくなります。

 それはともかく、またしても、政権を揺るがしかねない暗雲が漂い始めました。事態の推移によっては、今度こそ、麻生さんも終わりでしょう。

 それは、3年後に消費税を引き上げることを明示するかどうかをめぐる対立です。財政再建派の与謝野馨経済財政担当相は消費税の引き上げを持論としており、麻生さんもこれに同調しました。財源を明示することで「選挙目当てのバラマキだ」という経済対策への批判を回避したいというわけです。
 しかし、総選挙間近ですから、これが有権者にどう受け止められるかは微妙です。野党による追及の材料となることを恐れる公明党は、引き上げ時期の明示には大反対です。
 総選挙での有権者の反応が怖いのは自民党も同様です。というわけで、公明党に自民党が同調しました。

 その結果、奇妙な構図ができあがったというわけです。消費税の3年後の引き上げを明示させまいとする自民党と公明党に対して、明示したい麻生首相と与謝野経済財政担当相が対立するという構図が……。
 しかし、「3年後の消費税引き上げ」を明記するようにとの麻生首相の指示はまたも無視され、昨日決まった09年度与党税制改正大綱では消費税引き上げの時期や幅は明示されませんでした。さし当たり、自公側が押し切った形になったというわけです。
 これに対して、与謝野経済財政担当相は強く反発し、「与党の言う通りやっていたら、政府の存在意義はない。与党と政府の立場が違うことはあり得る」と述べ、政府が年末にまとめる税制抜本改革の「中期プログラム」に税率引き上げの時期を明記することに意欲を示しました。さらに、「自民党が責任政党として最後まで踏ん張れなかったということだ」とも指摘し、公明党に屈した自民党税制調査会にも怒りの矛先を向けたといいます。

 こうして、自公(自民・公明)対麻与(麻生・与謝野)の対立構図は、与党対政府の対立という構図に変わりはじめています。どうなるのでしょうか。
 与謝野さんは、この言葉通り、3年後の引き上げを明記するのでしょうか。指示を無視された形の麻生さんは、どちらに付くのでしょうか。
 政府の「中期プログラム」に税率引き上げの時期が明記されれば、公明党の与党離脱というリスクが生じます。逆に、明記されなければ、与謝野さんが内閣を飛び出すという可能性が生まれます。

 麻生さんは頭を抱えているでしょうが、このジレンマから抜け出すのは簡単です。消費税の引き上げ自体を諦めれば良いんです。
 大体、これだけ消費不況で生活不安が高まっているときに、庶民の懐に手を突っ込んで税金を巻き上げようなんて、「悪代官」もビックリの悪政ではありませんか。こんなことをしたら、ますます景気は悪くなり、生活は苦しくなります。
 橋本内閣時代の消費税率アップなど「9兆円の負担増」がどのような結果を招いたのか、麻生さんはご存じないのでしょうか。その翌年から過去10年連続で自殺者は3万人を越え、35万人もの人が自ら命を絶つような国に変貌してしまったことを、どう考えているのでしょうか。

 今、解決を迫られている時代の課題は、貧困の拡大と格差の増大です。これらの課題を解決することこそ、最優先で取り組まれなければなりません。
 そのためには、どうすべきなのでしょうか。
 それは簡単です。富めるものから取って貧しいものに分け与えれば良いんです。そうすれば、貧困は解決し、格差は是正されるでしょう。

 昔の鼠小僧だって分かるようなこんな簡単な道理が、何故、今の為政者には分からないのでしょうか。私にはそれが分かりません。