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10月27日(土) 「原発をどうするかはささいなこと」と放言する石原都知事に国政関与の資格はない [政党]

 今日の『東京新聞』の一面に、「尖閣購入 理由作れず」という大きな見だしが出ています。石原都知事が購入構想を打ち上げたものの、都と無縁の尖閣諸島を購入する理由をひねり出すために事務方が苦慮したというのです。
 尖閣諸島の購入という都の事業は、必要性に基づくものではなく、石原都知事という「暴走老人」(田中真紀子文科相)によって「トップダウンで示された難しい政策」だったというのですから呆れてしまいます。このような人は、もともと都知事としても、その資格が問われるべき人物でした。

 その『東京新聞』一面の下には「筆洗」というコラムがあります。そこには次のように書かれていました。

 ……原子力規制委が出した事故による放射能拡散予測を見て、慄然(りつぜん)とした人も多いだろう。原発三十キロ圏内に住む人は四百六十万人以上。政府と電力会社は、本当にその生活を守りきれるのか▼福島の事故では今も十五万人以上が避難生活を送る。思い出と切り離されて生きるつらさ、むなしさ。怖いのは電力不足より想像力の不足だ。

 原発がいったん事故を起こせばいかに多くの人を巻き込むことになるのか、そして今もどれだけ多くの人が多大の犠牲を強いられているのかを、この「筆洗」子は告発しています。そして、こう指摘しています。
 「怖いのは電力不足より想像力の不足だ」と。

 この「想像力」が最も不足しているのは、この人であるに違いありません。石原都知事です。
 同じ『東京新聞』の対抗社会面(27面)に、石原さんの次のような発言が報じられているからです。
 「永田町にいる人間は視野が狭い。原発をどうするかはささいなこと。もうちょっと大きな視点で考えられないか」

 この発言を、今もなお避難生活を送っている15万人以上の人々は、どう聞いたでしょうか。事故が起きれば放射能被害を被る可能性の高い460万人以上の人々にとって、「原発をどうするかはささいなこと」と言えるのでしょうか。
 これは都庁での定例会見での発言です。翌日に定例の会見が予定されていたにもかかわらず、昨日、石原さんはわざわざ緊急の記者会見を開いて辞職と新党結成を発表しました。
 たった1日しか違わないのに定例ではなく緊急の会見を開いたのは、メディアの注目度を高めるための「策略」だったと思われます。重大ニュースであるかのように慌てて号外を配布した新聞は、まんまとこの石原さんの「策略」に乗せられてしまったということになるでしょう。

 石原さんは、「僕ちょっと約束があるんだ。これで失敬します」と言って、この定例会見を打ち切りました。その「約束」というのは、自身が製作総指揮を務めた映画「青木ヶ原」の舞台あいさつだったのです。
 ここに駆けつけるために、都知事としての最後の職務を放り出したというわけです。最後まで自分勝手で公職をないがしろにするような人物に、国政に関与する資格はありません。
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10月26日(金) 石原新党「立ち上がれ」と言われて立って立ち枯れるかも? [政党]

 昨日、東京都の石原慎太郎知事は午後3時から緊急記者会見を開き、都知事を辞任して新党を結成し、国政への復帰をめざすことを明らかにしました。以前から出ては消えていた「石原新党」の噂ですが、ようやく具体的な形を取り始めたというわけです。

 まずは、めでたい。これで東京都政も少しはマシになり、オリンピック招致などという無駄もなくなる可能性が出てきたわけですから、都民の1人として石原さんの都知事辞任を歓迎したいと思います。
 これで、国政復帰などという色気を出さず、誰かさんのように伊豆の山にでも籠もって静かに茶碗でも焼いてくれれば、さらに大歓迎なのですが。もう80歳なのですから、「最後のご奉公」などと言わず、悠々自適の引退生活に入ったらどうなのでしょうか。
 でも、傲岸不遜と「生臭さ」が背広を着て歩いているような石原さんです。新党結成や国政復帰などということで、この先まだまだ沢山の人に迷惑をかけるんでしょうネー。

 そもそも、石原知事は昨年の都知事選の直前まで引退を考えていたと言われています。それを翻して突然の出馬表明となり、「後出しジャンケン」で当選しました。
 今回、都知事としての任期を半分以上も残して投げ出すことになったわけです。それなら、昨年の知事選挙に立候補すべきではなかったでしょう。
 都知事としての職を中途半端で投げ出すのは無責任であり、それを国政に向けての踏み台にするというのも身勝手です。この点については、都民の1人として怒りを覚えます。

 そもそも、石原知事は都知事としてどれほどの実績を残したのでしょうか。一枚看板であったオリンピック招致に失敗し、日の丸・君が代を強制して教員を処分するなど、東京の教育を混乱させました。
 特別養護老人ホームへの補助の打ち切り、老人医療の有料化、シルバーパスの削減、医療や福祉の民営化、人員削減などが進められました。こうして生み出された資金は巨大プロジェクトや新銀行東京のために浪費され、汚染した豊洲への市場移転も推進されたのです。
 このような教育、福祉、文化の破壊と巨大プロジェクトの推進が、石原都政の実態です。それを国政レベルでも実行しようというのが、今回の国政進出の意味にほかなりません。

 都知事辞任を発表した会見で、石原都知事は現行憲法の廃棄と新憲法の制定、硬直した官僚制のシャッフルを主張していました。しかし、このような大まかな方向性だけで、具体的な政策は示されていません。
 それは、これからの「第三極」形成のために連携や連合を模索する日本維新の会やみんなの党への配慮があったからでしょう。これらの党と石原新党とは、憲法問題、原発政策や消費増税、TPPへの参加などで政策的に必ずしも一致していないからです。
 とはいえ、理念や政治的スタンスの点で、石原新党も極右であることは明瞭です。みんな右に寄ってきているのが現在の日本の政党状況であり、同じ極右である安倍自民党が橋下「維新」新党の支持者を奪い、石原新党がこの安倍自民党の基盤を脅かすということになる可能性があります。

 石原都知事は、平沼さんや亀井さんに早く立てとせっつかれ、息子の伸晃が自民党総裁選で落選したために遠慮する必要がなくなり、総選挙の可能性が強まってきたこともあって、ようやく新党結成に踏み切ったものと思われます。しかし、「たちあがれ日本」をはじめ、新党に参加するメンバーを見ると皆さん70歳前後から80歳のご老人ばかりです。
 そのエネルギーとバイタリティーには感心しますが、政策を含めて「新」と言うにはあまりにも古くさい。古色蒼然たるお年寄りによる「新党」が、どれだけ有権者に受け入れられるでしょうか。

 必ずしも一致していない政策を曖昧にしての「野合」ということになれば、もう一つの「選挙互助会」の誕生を意味するにすぎません。「たちあがれ」と平沼さんたちに尻を叩かれて結成される石原新党ですが、「あ」が抜けて「たちがれ」になってしまう可能性も少なくないと言うべきでしょう。

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10月4日(木) 新党「日本維新の会」は政界の「アウトレット・モール」なのか [政党]

 最近はやりの「アウトレット・モール」は、若者に人気があるそうです。というのは、「傷もの」や流行遅れの商品、「半端もの」「訳あり品」「棚ずれ品」などの商品を引き取って安く売っているからです。

 最近、政界でも、そのような「アウトレット・モール」が店開きしたようです。お店の名前は、新党「日本維新の会」と言います。
 「傷もの」や流行遅れの商品、「半端もの」「訳あり品」「棚ずれ品」などの国会議員や立候補予定者をかき集めて大売り出しを始めようというわけです。自民党や民主党などの「老舗」だけなく、若者向けに開店していたみんなの党などからも、「商品」がかき集められました(中には、引き取りを拒まれた「商品」もあったようですが)。
 古くなったラベルを貼り替え、新しい装いで並べてもらえば売れるのではないかと期待してのことです。しかし、そう上手くいくでしょうか。品質が悪くても包装紙で騙されるほど、消費者は愚かなのでしょうか。

 『週刊新潮』10月4日号には、「日本維新の会 『橋本徹』と脛に傷の仲間たち」という特集記事が掲載されています。「脛に傷」があるというのですから、「アウトレット」に最適です。
 ここで名指しされているのが、「日本創新党」を解党して維新の会に合流する方針を決めた山田宏前杉並区長と中田宏前横浜市長です。どちらも醜聞やトラブル、カネに関する疑惑などを抱えていることが紹介されています。
 また、現職の国会議員では、松野頼久元官房長官と石関貴文衆院議員の名前が挙がっています。これらの人々も、「日本維新の会」という新しい包装紙を求めて蝟集してきた「傷もの」商品ということになるでしょう。

 4ヵ月前、次期衆院選の比例代表で「大阪維新の会」に投票するという答えは28%で、自民16%、民主14%を上回っていましたが(『毎日新聞』6月4日付)、今では、自民30%、民主17%に対して、「日本維新の会」に投票するという人はたったの4%です(『朝日新聞』10月3日付)。政党支持率も2%にすぎず、一時の勢いは失われ、公明党並みの普通の政党になってしまったようです。
 また、東京の国会議員団と橋下徹代表の間で生じたさや当てなど、政党化に伴って新たな問題も生まれつつあります。国会議員団幹事長に内定した松浪健太衆院議員は自身のブログで「よほどのことがない限り、国政における決定は国会議員団ですべきことを代表も認めた」と書き込んだのに対して、橋下市長は「大きな方針や戦略は今の国会議員団よりも僕の方がたけている」と、大阪主導を譲らない考えを示しました。
 「僕の方がたけている」と胸を張る自惚れにも呆れますが、東京の国会議員団を大阪から操縦することが可能だと考えているのでしょうか。市長としての日常業務に忙殺されながら……。

 橋下さんの「啖呵売」の勢いに押されて、商品が飛ぶように売れた時期もありました。しかし、すでに「橋下現象」は過去のものになろうとしているようです。
 メディアの寵児だった橋下さんですが、これからその怖さを知ることになるでしょう。天国まで持ち上げて一商売、そして、地獄まで引きずり下ろしてもう一商売という、メディアのやり口の怖さを……。

 なお、九州大学で開かれる日本政治学会に出席するため、明日から福岡に行きます。しばらくこのブログをお休みにしますので、ご了承下さい。

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9月27日(木) 「国民政党」から「右翼政党」への変質を決定づけた自民党総裁選挙 [政党]

 野党時代を経て、自民党は大きく変わってしまいました。キャッチ・オール・パーティーから部分政党へ、「国民政党」から「右翼政党」へと変質したようです。
 そのことを決定づけたのが、今回の総裁選挙だったのではないでしょうか。前途に光が見えてこないのは民主党だけではなく、自民党の前途にも新たな闇が黒々と広がっているように思われます。

 26日に投開票された自民党総裁選挙は、決選投票の結果、1回目の投票で2位だった安倍晋三元首相が石破茂前政調会長を破り、第25代総裁に選出されました。2位候補の逆転は56年ぶりで、安倍さんは2007年以来、5年ぶり2度目の総裁就任となります。自民党の総裁経験者が返り咲くのは初めてになります。
 総裁選は地方票300票と国会議員票198票の合計で争われました。都道府県連ごとに開票された党員・党友投票に基づく地方票は、石破さんが過半数の165票を獲得し、2位の安倍さんは87票でした。
 国会議員の投開票は党本部で行われ、石原伸晃幹事長が58票でトップ、次いで安倍さんが54票、石破さんが34票で続きました(棄権1)。合計で石破さんが199票と1位になりましたが、当選に必要な過半数に届かなかったため、141票で2位に入った安倍さんとの決選投票になったわけです。

 自民党の総裁選挙には5人が立候補しましたが、事実上「3悪人」の闘いで、「より小さな悪」を選ぶしかないという「不毛な選択」でした。「軍事オタク」の石破さんが落選したのは良かったと思いますが、「極右無責任男」の安倍元首相が返り咲いたのにはガッカリです。
 「3悪人」の中では、石原伸晃さんが「より小さな悪」だったように見えます。しかし、自身の失言に加え、尖閣諸島の問題で危機感が高まったために、より強硬な路線を打ち出した石破・安倍に支持が集まり、決選投票に残ることができませんでした。
 尖閣諸島をめぐる緊迫化の背後には石原慎太郎都知事の画策がありましたから、結果的に、石原伸晃さんは父親によって足を引っ張られたことになります。まさに、因果応報ということになるでしょう。

 ところで、新総裁になった安倍さんは、総裁選挙中の「公約」をそのまま実行するつもりなのでしょうか。内政では、原発の維持、消費増税についての3党合意の順守、オスプレイの配備と訓練の強行、普天間基地の辺野古移転などは、いずれも民意との乖離を拡大するにちがいありません。
 また、外交政策でも、日米同盟の強化と集団的自衛権の容認、自衛隊の増強と南西諸島への配備、改憲の準備、従軍慰安婦問題での「河野談話」の見直し、靖国神社の参拝などを主張していました。このような政策を実行すれば、中国や韓国など周辺諸国との関係が改善されるのでしょうか。
 選挙中に出された尖閣諸島についての石原都知事の公開質問状に対して、安倍さんは漁船の一時避難所などの整備に賛成し、「公務員が常駐する施設設置なども検討」すると回答していました。もし、そうなったら中国がどう反応するか、想像できないとすれば、政治家失格でしょう。

 野田内閣は、20%台の支持率にも示されているように、国民の厳しい批判を浴びています。それに取って代わることを目指している自民党ですが、大きな勘違いをしてしまったようです。
 野田政権への批判や支持率の低下は、右傾化や保守化、端的に言えば「自民党化」に対するものでした。いわば、自民党に代わるべき民主党が、右に寄りすぎて自民党に近づいたために批判されたわけです。
 安倍新総裁の政策は、これをさらに右に引っ張ろうとするものです。民意や国際社会との乖離は拡大こそすれ縮小することはなく、その断絶は民主党政権以上に大きなものとなるでしょう。

 安倍総裁と新執行部の下に出発する新しい自民党は、アメリカで言えば共和党の右翼である「ティー・パーティー(茶会)」のようなものになってしまいました。かつて自民党内にもあった「良質な保守」が駆逐され、「悪質な保守」だけが残ってしまったことを示したのが、今回の総裁選挙の結果だったのではないでしょうか。
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9月22日(土) 始まった途端に終わっていた民主党の代表選挙 [政党]

 やはり、予想通りの結果でした。民主党の代表選挙で、現職の野田首相が再選されたからです。

 21日午後に行われた民主党代表選投票の結果は、国会議員、党員・サポーター票などを合わせた合計で1231ポイントのうち野田首相が818ポイント(66.5%)を1回目の投票で獲得しました。次いで、原口一博元総務相が154ポイント(12.5%)、赤松広隆元農相が123ポイント(10%)、鹿野道彦前農相が113ポイント(9.2%)の順になっています。
 内閣支持率が20%台で、新宿駅西口の街頭演説では「ウソツキ」「カエレ」と罵倒された野田首相が、民主党内では3分の2の圧倒的多数によって支持されるところに、民意と民主党との乖離が象徴的に示されていると言うべきでしょう。
 民主党の代表選挙は9月10日に告示されましたが、反野田勢力が70人以上も離党していましたから、この時点ですでに野田首相の優位は明らかでした。しかも、対抗馬が3人に分裂したため、こうなることは当初から予想されていたことです。

 多少の波乱が予感されたのは、細野原発事故担当相の名前が登場したときでした。しかし、細野さんは立候補を辞退しました。
 このときに、代表選挙の無風が決まったと言って良いでしょう。同時に、民主党の明日も費えたということになりましようか。
 たとえ、細野さんが立候補しても勝てたかどうかは分からず、細野新代表になっても総選挙を乗り切れるかどうかは疑問です。だから、細野さんは短期間での「使い捨て」を警戒して身を引いたのでしょう。

 今回の結果で注目されるのは、第1に、選挙への関心の低さです。党員・サポーター票の投票総数は約11万票にすぎず、投票率は約34%にとどまりました。
 野田首相に対する有力な対抗馬が存在せず、当初から無風であった今回の選挙戦を象徴するような数字です。党員や支持者も冷ややかな目で代表戦を眺めていたということになります。
 民主党の活力の衰退は、ここからもうかがい知ることができます。地方や党員レベルでも、土台が崩れてしまったということでしょう。

 第2に、国会議員のレベルと地方議員や党員・サポーターレベルでの得票の違いです。どちらも野田首相がトップになっていますが、対立候補のポイント獲得順が逆になっています。
 対立候補として立候補したのは3人で、消費増税や原発政策をめぐって最も対立点を鮮明にしたのが原口さんで、次いで赤松さん、鹿野さんの順でした。この3人を比較すると、国会議員票では、鹿野86ポイント、赤松80ポイント、原口62ポイントの順ですが、地方議員票では、原口20ポイント、赤松18ポイント、鹿野10ポイント、党員・サポーター票でも、原口72ポイント、赤松24ポイント、鹿野17ポイントと、国会議員票の順番とは逆になっています。
 反野田勢力の支持分布という点でも、国会議員と地方議員や党員・サポーターとは一致していません。国会議員は党内世論からさえ隔絶してしまったということでしょうか。

 第3に、国会議員で反野田に投じた人が100人を超えていたということです。対立候補となった3人の得票は合計で114人(34%)ですから、3分の1を上回りました。
 これに無効票6人と投票しなかった5人を加えれば、反野田勢力は125人になります。これが、今後の「離党予備軍」ということになるでしょう。
 70人以上もの人を追い出しても、なおこれだけの反野田勢力が党内に残っていたということでもあります。前述のように、地方や党員レベルであれば、野田首相に対する批判の度合いはもっと高くなります。

 野田さんが新しい代表に選ばれたからといって、民主党の前途に光は見えてきません。政権運営の厳しさは増すばかりで、新たな闇が黒々と広がっていると言わざるを得ないでしょう。
 「近いうちに」総選挙もあるでしょうから、この際、反野田勢力は民主党を離れ、野田民主党とは異なる「新民主党」を結成した方が良いのではないでしょうか。国民にとってはその方が分かりやすくなるように思われるのですが、いかがでしょうか。
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9月15日(土) 本当はゴミやガラクタをかき集めた「日本復古の会」ではないのか [政党]

 これでは「維新」ではなく、「復古」と言うべきではないでしょうか。超新自由主義的な政策を除けば新しいものは少なく、すでに手垢が付いた古くさい政策の寄せ集めですから。
 前回9月13日のブログで紹介した「維新八策」には、首相公選制、道州制、国民総背番号制、TPP参加、日米同盟基軸、PKO強化などが列挙されていました。これまでも一部の政治家や財界などが主張してきたものばかりです。

 そればかりではありません。新党の党首となった橋下大阪市長は、日本の集団的自衛権について「基本的に行使を認めるべきだ。権利があれば行使できるのは当たり前だ」と述べ、行使を容認すべきだとの立場を初めて明言しました。
 また、靖国神社参拝についても「日本の歴史をつくってきた人に対して礼を尽くすのは当然」と述べ、参拝する意向を示しました。焦点の消費税増税については、「最終的な方向性が消費税の地方税化だとはっきり示されれば、当面の財源不足を補うための増税はやむを得ない」とし、条件付きで消費増税を認める考えを示しています。

 新党の幹事長となった松井大阪府知事も、共同通信のインタビューに対して、「構造改革を続け、規制緩和で日本の経済構造を根源から見直すことができていれば、日本への投資は集まった」と答え、破綻が明確となった小泉構造改革路選を継承することを明らかにしています。
 また、憲法改正について、「自民党が実際に取り組むなら賛成する。まず(改憲発議の要件である衆参議員の賛成)3分の2以上を過半数に改正し、国民を巻き込んで憲法(の条文)を変えていけばよい」と述べています。憲法改正をめざすこと、そのために自民党とも連携することを明らかにしたわけです。

 問題は政策や方針だけではありません。新党の結成メンバーも各党からかき集められたゴミやガラクタのような議員ばかりです。
 新党に加わったのは、松野頼久元官房副長官(民主)、石関貴史衆院議員(民主)、水戸将史参院議員(民主)、松浪健太衆院議員(自民)、小熊慎司参院議員(みんな)、上野宏史参院議員(みんな)、桜内文城参院議員(みんな)の7人でした。松野さんを除けばほとんど名前が知られていない、選挙に不安を抱える若手で政治的な野心家ばかりです。
 これらの議員たちは、これまで民主・自民の与野党に分かれていたり、その民主・自民が加わった「3党合意」を厳しく批判して内閣不信任案や問責決議案を出したみんなの党からの出身者です。理念や政策が一致して新党に参加したというのであれば、これまでの相違や対立をどう説明するのでしょうか。

 さらに、応援団やブレーンとされる人々では、堺屋太一元経済企画庁長官や竹中平蔵慶應大学教授、東国原英夫前宮崎県知事に中田宏前横浜市長、山田宏前杉並区長などの名前が挙がっています。これらの人は、今後の選挙の「目玉候補」として擁立されるかもしれません。
 しかし、どの人も使用済みのダシガラのようなもので、ただの目立ちたがり屋ばかりです。「昔の名前で出ています」というところでしょうが、どれだけ有権者にアピールできるかは疑問です。
 これで、安倍晋三さんが総裁選挙で負け、自民党を飛び出して合流するようなことになれば、もっと分かりやすくなるでしょう。もともと安倍さんには橋下さんが党首を打診していたわけですから、その可能性も皆無ではありません。

 でも、その時には、誤解を招かないようにちゃんと改名した方が良いのではないでしょうか。「日本維新の会」から「日本復古の会」へと……。


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9月13日(木) 橋下新党「日本維新の会」がめざすのは超新自由主義による強権独裁国家と弱肉強食社会にほかならない [政党]

 こんな政党に期待と幻想を抱く人が、まだまだ多くいるということが信じられません。それだけ、日本の政治についてのまともな知識も識見もない人が多いということなのでしょうか。
 それとも、民主・自民の2大政党が完全に破綻してしまい、政治閉塞からの出口を求めている人が殺到しているということの表れなのでしょうか。出口を求めることは間違っていませんが、その方向が正しいようには思えません。

 昨日、橋下徹大阪市長は自らが代表となる新党「日本維新の会」の結党を正式に宣言しました。橋下さんが「自立」「競争」「自己責任」を新党の理念として強調していたように、この政党は明らかに新自由主義の立場に立っており、基本的には格差拡大や医療・介護現場の崩壊などを社会問題化させた小泉構造改革路線を引き継ぎ、さらにそれを拡大・推進する超新自由主義政党だといって良いでしょう。
 このような政党が国政に進出しても、現状より悪くなることはあっても良くなることはありません。民主・自民の2大政党に幻滅して橋下新党に殺到した人々は、いずれ、もう一つの幻滅を味わうだけです。

 橋下新党「日本維新の会」が掲げる綱領としての「維新八策」は、一言で言って子供じみた妄想の羅列ですが、それが依拠しているのは小泉政権以上の超新自由主義であり、目標としているのは強権独裁国家による弱肉強食社会です。その内容を詳しく知れば、現在の民主党政権でさえ、ずっとまともに見えてしまうほどのものです。
 以下、その内容がどのようなものか。今後、問題とされるであろうような項目を摘出して、以下に掲げておきましょう。
 なお、この「維新八策」の全文は、『日本経済新聞』9月1日付http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC3103B_R30C12A8000000/に掲載されています。関心のある方は、そちらをご覧下さい。

・首相公選制
・現在の参議院廃止を視野に入れた衆議院優位の強化
・条例の上書き権(憲法94条の改正)
・地方財政計画制度・地方交付税制度の廃止
・消費税の地方税化と地方間財政調整制度
・道州制が最終形
・大阪府・市方式の徹底した行財政改革
・国民総背番号制の導入
・衆議院の議員数を240人に削減
・歳費その他の経費の3割削減
・企業・団体献金の禁止、政治資金規正法の抜本改革(全ての領収書を公開)
・大阪府・市の公務員制度改革(頑張ったものは報われる、能力、実績主義、職位に見合った給料)を国に広げる
・官民給与比較手法(総額比較)の抜本的改正、人事院制度の廃止
・地方公務員も含めた公務員の総人件費削減
・大阪府・市職員基本条例をさらに発展、法制化
・公務員の強固な身分保障の廃止
・公務員労働組合の選挙活動の総点検
・公務員の関係首長選挙活動の制限
・自立する国家、自立する地域を担う自立する個人を育てる
・あしき平等・画一主義から脱却し、理解ができない子どもには徹底的にサポートし、理解できる子どもはぐんぐん伸ばす、個人の能力を真に伸ばす教育ヘ
・教育委員会制度の廃止(首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視)、教育行政制度について自治体の選択制
・公立学校長の権限の拡大・強化、校長公募など、学校マネジメントの確立
・国立大学長の権限拡大・強化、大学マネジメントの確立
・教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機会を拡大するとともに教育機関の切磋琢磨を促す
・大阪府・市の教育関連条例をさらに発展、法制化
・教職員労働組合の活動の総点検
・自立する個人を増やすことにより支える側を増やす
・自助、共助、公助の役割分担を明確化
・社会保障給付費の合理化・効率化
・(1)努力に応じた、(2)現物支給中心の、最低生活保障制度を創設
・所得と資産のある個人への社会保障給付制限
・国民総背番号制で所得・資産(フロー・ストック)を完全把握
・現物支給中心の生活保護費
・支給基準の見直し
・有期制(一定期間で再審査)
・医療扶助の自己負担制の導入
・受給認定は国の責任で
・公的保険の範囲を見直し混合診療を完全解禁
・公的医療保険給付の重症患者への重点化(軽症患者の自己負担増)
・競争力を重視する自由経済
・産業の淘汰を真正面から受け止める産業構造の転換
・イノベーション促進のための徹底した規制改革
・TPP参加、FTA拡大
・民民、官民人材の流動化の強化徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)
・ニーズのない雇用を税で無理やり創出しない
・日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備
・日米同盟を基軸とし、自由と民主主義を守る国々との連携を強化
・国連PKOなどの国際平和活動への参加を強化
・憲法改正発議要件(96条)を3分の2から2分の1に
・憲法9条を変えるか否かの国民投票

 なお、ここには「企業・団体献金の禁止」が掲げられていますが、橋下さんは「新党は企業献金を受け取らないのか」との記者の質問に、「選挙はただではやれない」「受け取らないというのなら、どうやって選挙をするのか」と胸を張って答えています。「綱領」を発表した途端に、それを破ることを表明したわけで、「維新八策」には「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」などの政策も掲げられていますが、それがどこまで本気で信用できるものか、分かったものではありません。
 日本国民は、すでに新自由クラブ、日本新党、新進党、そして民主党と、新党に期待をかけては裏切られるという経験を積み重ねてきました。橋下新党「日本維新の会」の本質と危険性を見極めることができなければ、この裏切りの歴史に、もう一つの新しい経験が付け加わることになるだけでしょう。
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8月4日(土) 内閣不信任案提出で「踏み絵」を踏まされる自民党と公明党 [政党]

 参院での消費増税法案の採決前に、野田内閣不信任案が提出されることは確実になりました。野田内閣は「まな板の鯉」になるわけですが、それと同時に「踏み絵」を踏まされる自民党と公明党はどう対応するのでしょうか。

 昨日の午後、共産党や新党「国民の生活が第一」など野党7党は国会内で党首会談を開き、消費増税関連法案の成立を阻止するため、参院での法案採決前に野田内閣に対する不信任決議案を提出する方針で一致しました。提出時期は幹事長・書記局長レベルで詰めるということですが、参院特別委員会の中央公聴会が終わる7日にも共同提出する方向で調整が進む見通しです。
 これに対して、野田佳彦首相は民主党の輿石東幹事長と首相官邸で会談し、消費増税関連法案について10日の参院採決を目指すよう指示しました。党執行部側は20日以降の採決方針を示していましたが、お盆前採決を求めた自民党側は強く反発しており、自公両党の不信任案への同調を回避するために採決日程での譲歩が必要と判断したようです。
 この指示に基づいて、民主党の城島光力国対委員長は自民党の岸田文雄国対委員長と会談し、特例公債法案などへの協力を条件に消費増税法案の採決を10日とすることを提案しましたが、岸田国対委員長は条件付きに難色を示し、回答を留保しました。

 内閣不信任案の提出は、消費増税法案の成立をめざす野田首相にとって大きな「壁」となるでしょう。それとともに、3党合意によって「同じ船」に乗った自民党と公明党にとっても、対応に苦慮する「踏み絵」を意味します。
 もし、不信任案に賛成すれば3党合意は雲散霧消し、消費増税法案の成立は不可能になります。もともと、消費税10%への引き上げは自民党の案ですから、これまでの苦労が水の泡となります。
 もし、不信任案に反対すれば3党合意は守られ、消費増税法案は成立します。しかし、自民党と公明党は、反対できるのでしょうか。

 第1に、不信任案に反対した場合、解散・総選挙は遠のきます。同一国会での「一事不再議」のルールがあるため、消費増税法案採択後に不信任案を出すことができなくなるからです。
 第2に、一年以内に任期満了を迎えて実施される総選挙において、民主党と共に自公両党は消費増税の共同責任を問われ、「火の粉」を浴びることになります。とりわけ、支持者に消費増税反対論が多い公明党は、このような「火の粉」を振り払うことができるのでしょうか。
 第3に、不信任案の採決に際して、内部からの造反が生じて分裂状態に陥る危険性があります。3党合意を破棄して否決し、今国会で野田政権を衆院解散に追い込むべきだとする緊急声明を出した小泉進次郎青年局長ら自民党の中堅・若手の衆院議員は不信任案に賛成するかもしれません。

 こうして、民主党だけでなく、自民党と公明党もまた、苦境に立たされることになりました。それも当然でしょう。
 参院での審議において、3党合意のデタラメさが明らかになり、消費増税は、「社会保障と税の一体改革」ではなく、「公共事業と税の一体改革」のためであることがはっきりしてきたからです。
 今も、世論の半数以上は消費増税関連法案の成立を望まず、強い反対運動が展開されています。そこに、タイミング良く提起されたのが、今回の共産・社民・みんな3党のイニシアチブによる野田内閣不信任案でした。

 今日と明日、国会議員は選挙区に帰るでしょう。Eメールや電話などで議員個人に働きかけたり、地元の個人事務所に要請に赴いたりすることが効果的ではないでしょうか。
 民衆による意思表示は、何も首相官邸前や国会周辺でなければならないということはありません。選挙区の地元で個々の国会議員に働きかけることも、民衆運動の一つの形であると言うべきでしょう。
 下から政治を動かしていく好機でもあります。その大きなチャンスが、今、訪れました。

 消費増税関連法案の成否をめぐって、激しい攻防が展開されようとしています。それは「日本の暑い夏」として、後世の歴史に記録されるかもしれません。


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7月12日(木) 新党「国民の生活が第一」が反消費増税・脱原発を掲げて出発 [政党]

 新党の党名は「国民の生活が第一」だそうです。野田首相のお陰で「国民の生活が台なし」になりそうですので、是非、それを阻んでもらいたいものです。

 民主党を除名された小沢一郎元代表と小沢グループの議員は昨夕、新党「国民の生活が第一」の結党大会を憲政記念館で開きました。これに参加したのは、消費税増税法案に反対した衆院議員37人と離党した参院議員12人の計49人です。
 新党の代表には小沢さんが就任し、選対委員長を兼務しました。次の衆院選をにらんで反増税勢力の結集を図ろうというわけです。
 衆院では三番目、参院では四番目の勢力をもつ反消費増税政党の誕生によって、野田首相の政権運営は一層厳しくなるでしょう。しかも、党内には小沢グループの「残党」や鳩山グループなどの「別働隊」も存在しているのですから……。

 新党は「国民の生活が第一」を基本理念に、消費税の増税を先行させることに反対して消費増税法案の修正・撤回を求めて攻勢を強めることでしょう。また、脱原発も掲げましたので、毎週金曜日に首相官邸前で繰り返されている「紫陽花革命」に合流する可能性もあります。
 岩国へと向かっているオスプレイの配備や訓練にも反対するでしょう。8月にも参加を表明するかもしれないとされているTPPにも、抵抗するものと思われます。
 このところ、野田政権は集団的自衛権容認に向けての政府内での協議開始表明など、自民党政権以上に右傾化を進めているように見えます。新党がこのような危険な動きに明確に対峙し、様々な分野で展開されている民衆運動と連帯・共同しながら強力なブレーキ役を果たすなら、国民の支持と期待を集めることができるでしょう。

 当面、野田首相は、遮二無二、民自公三党合意に基づく消費増税法案の参院での成立をめざすことになるでしょう。しかし、その審議の過程でも、首相の嘘は次第に明らかになり、多くの批判を浴びざるを得ません。
 もし、消費増税法案が成立したとしても、小沢新党は他の小政党と連携して直ちに内閣不信任案を提出するでしょうし、そうなれば自民党や公明党も同調するでしょう。民主党は総選挙を望んでいませんから、野田内閣は総辞職して岡田副総理か細野原発事故担当相が後を引き継ぐかもしれませんが、少数与党に転落すれば長持ちするわけがありません。
 秋から来年にかけて、確実に解散・総選挙になるものと思われます。消費増税、脱原発、オスプレイ配備、TPP参加を争点に総選挙が実施されれば、国会の勢力分野は大きく変容することでしょう。

 梅雨明け間近で、いよいよ「日本の暑い夏」がやってきます。日本の前途と進路を左右する「暑い夏」になりそうです。

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5月21日(月) 加藤宣幸さんによって語られた驚きの証言 [政党]

 日曜日の法政大学市ヶ谷キャンパスは人影も少なく、閑散としていました。昨日、研究所のプロジェクトである社会党・総評史研究会があり、日曜日のキャンパスに足を踏み入れたというわけです。

 この日の研究会は、加藤宣幸さんからの聞き取りです。加藤さんは、元社会党の国会議員で片山内閣の労働大臣をやったこともある加藤勘十氏の息子さんで、1946年から69年までの23年間、日本社会党の書記局で活動された方です。
 今年、88歳になられたそうですが、お元気で矍鑠たるものです。この年代の方は、しっかりしている方が多いという印象ですが、加藤さんもそのようなお一人でした。
 実は、加藤さんにお会いしてお話をうかがうのは、今回で2回目になります。以前、研占領期の青年運動についての原稿を執筆するときにお話しをうかがい、この原稿は研究所叢書『「戦後革新勢力」の奔流』に収録されました。今回は、1960年前後の「構造改革」問題についてお聞きしました。

 加藤さんのお話には、興味深い事実がたくさんありました。なかでも驚いたのは、58年頃、東京の四谷で開いていた研究会のメンバーとして、中林賢二郎先生や北川隆吉先生のお名前が出てきたことです。
 中林先生は私の大学院時代の指導教授で、北川先生も法政大学大学院におられて、そのゼミに出たことがあります。しかし、「構造改革」についてのお話をうかがったことはなく、私としては意外でした。
 この研究会は事務局を初岡昌一郎さんが担当され、佐藤昇・松下圭一両氏の指導を受けながら、月1回で約1年くらい続いたそうです。研究会には、他にも田口富久治、増島宏、上田耕一郎氏などが顔を出していたということですが、私はどなたも見知っており、これらの方がメンバーであったことは不思議ではありません。

 これ以外にも、「エッ?」と思わされるようなお話しがありました。その一つは、構造改革論という用語についてです。この言葉はイタリア共産党第8回大会のテーゼにあった「構造的改良の道」に由来しますが、これを改良主義と攻撃されるのを恐れて「構造改革」と「造語」したのは加藤さんだったというのです。
 もう一つ、成田知巳元社会党委員長のいわゆる「成田三原則」のゴーストライターも加藤さんだったと仰っていました。これは、社会党の欠陥として、日常活動の不足、議員党的体質、労組依存の三点を指摘したもので、1964年1月1日付の『社会新報』に掲載されましたが、その原案を書いたのは書記時代の加藤さんだそうです。
 さらに、驚くべき証言もありました。いわゆる「江田ビジョン」を提言したのは竹中一雄氏で、当時の江田書記長がこれを発表する記者会見の前夜、神田・駿河台の丘の上ホテルの会合の席での発言に江田さんが即座に賛成し、翌日、これを発表したのだそうです。

 というように、興味深い重要な事実が、加藤宣幸さんの口から次々に飛び出してきました。お話をうかがっていた私たちは、大いに驚き、また啓発されたものです。
 今回の聞き取りの内容は、いずれ『大原社会問題研究所雑誌』に掲載されることになると思います。楽しみにお待ち下さい。


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