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1月5日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』1月5日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「岸田政権はニンマリか “脱炭素”が原発の免罪符になる倒錯」

 EUは2050年までに温室効果ガス排出量の「実質ゼロ」を目指し、目標達成に合致する経済活動を「EUタクソノミー(分類)」という制度でリスト化。EUの「グリーンリスト」と呼ばれている。そこに原発と天然ガスを認定するというのだ。

 EU加盟国や専門家グループは今月12日までにこの方針について意見を提出。欧州委は今月中に正式に判断を示す見込みだ。「グリーン」な投資先の環境産業として欧州委が正式にお墨付きを与えれば、原発事業にマネーが流れ込む。ここに脱炭素の大きな欺瞞がある。

 「欧州委の方針に対し、すでに原発全廃を決めているドイツや、スペイン、オーストリアなど脱原発の加盟国は猛反対していて、そう簡単にはまとまらないでしょう。だいたい、放射性廃棄物など“核のゴミ”の行き場がないのに、原発のどこが持続可能なのか。環境破壊の恐れが大きく、SDGsに逆行するのが原発です。深刻な地球環境も投資対象にして原発にまだ投資を呼び込もうとする強欲資本主義には呆れるほかありません」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 発電中に二酸化炭素を放出しない原発は「クリーンエネルギー」という理屈なのだが、ウランを核燃料化する過程では大量の二酸化炭素を出す。原発の建設にだって膨大な二酸化炭素は放出される。

 しかも、原発は稼働させると高い温度の排水を海に流すのだ。その量は全国で年間1000億トンとも試算されている。海水は温められると二酸化炭素を大気に放出する。また、海面温度が上がったせいで集中豪雨などの異常気象が多発するようになったとも言われる。そういう原発のどこが地球温暖化対策になるのか。何がSDGsかという話だ。

 「原発回帰なんて倒錯している。地球環境を守るために、原発をゼロにして再生可能エネルギーにシフトしていくのが世界の潮流です。本来なら、過酷な原発事故を経験した日本が先頭に立って原発ゼロを推進しなければならないのに、腰が引けているのはなぜか。新型コロナウイルス対策でも『命より経済』の姿勢が顕著になりましたが、結局これが自民党政権の本質ということです。国民の安全安心よりもカネなのです。自民党政権にはできない原発ゼロやジェンダーフリーなどのSDGsな政治を野党に打ち出してほしいが、今はあまりに非力です。原発推進は連合も歓迎でしょうし、国民が声を上げなければ原発依存から抜け出せなくなってしまいます」(五十嵐仁氏=前出)

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