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10月30日(火) 暗雲漂うなかで船出した臨時国会 [国会]

 10月24日に安倍首相の所信表明演説が行われ、昨日から代表質問が始まりました。3選を実現して3期9年間という最長の任期を視野に入れて発足した第4次改造内閣ですが、その前途は容易ではありません。
 長期政権の驕りや緩み、安倍首相自身の焦りなどが随所で垣間見えるからです。臨時国会は暗雲漂う中での船出となりました。

 第1の暗雲としては漂流を始めた外交を挙げることができます。日中首脳会談と日印首脳会談を立て続けに開催するなど順調に進んでいるように見えますが、実はそうではありません。
 トランプ政権による米中新冷戦への対応に苦慮し、米中両国の板挟みにあっているからです。一方で中国との関係改善を進めながら、他方でインドとも関係を強化して中国包囲の姿勢を示すなど、安倍外交は揺れています。
 トランプ米大統領の顔色をうかがいながら中国に急接近する安倍首相に、外務省がストップをかけようとしたのが「3原則」をめぐる行き違いです。この先、朝鮮半島での南北接近と緊張緩和の進展や中国との関係改善がすすめば、安倍首相による北朝鮮や中国への「敵視政策」、安保法制・改憲、軍備増強・基地強化などの好戦的な軍事大国化路線との整合性が問われ、政策転換が迫られることになるでしょう。

 第2の暗雲は序盤から与野党が激突して本会議の開会が45分も遅れてしまったことです。そのきっかけを作ったのは、安倍首相の側近で衆院議院運営委員長に抜擢された高市早苗氏でした。
 衆院本会議に先立って開かれた理事会において、議運委員長名で高市氏が出した国会改革試案をめぐって紛糾したからです。この試案は政府提出法案の審議を優先し、一般質疑は会期末前にするとの内容を含んでいたため、立法府の役割や議運委員長の役割が公正公平で行政監視機能を果たさなければいけないということを理解していないなどと野党は強く批判し、試案の撤回と謝罪を求めました。
 森友・加計学園疑惑などで国会による行政監視が不十分で行政の私物化と暴走が大きな問題となっているときに、高市氏は政府寄りの提案をして安倍首相を援護射撃しようとしたわけです。中立であるべき議運委員長の立場を逸脱する暴挙で批判されて当然ですが、森友・加計学園疑惑や閣僚の資質などへの追及を恐れる安倍首相の焦りを反映したものだと言って良いでしょう。

 第3の暗雲は出入国管理法改正案をめぐる混乱です。これは外国人労働者の受け入れ拡大に向けて新たな在留資格創設を柱とするものですが、自民党内でも異論や懸念、反対、慎重意見などが続出して法務部会が紛糾し、議論は4時間も続きました。
 この問題は代表質問でも取り上げられ、「新たな移民政策ではないのか」という懸念を安倍首相は打ち消しました。しかし、与党内でも異論があり、自民党内で安倍首相を支えてきた右派議員からの批判もあって亀裂が生まれました。
 この改正案は内容だけでなく、来年4月からの実施を予定するというスケジュールについての異論も強く、臨時国会での審議の行方は不透明です。このような形で急ぐのも、早く成果を出したいという安倍首相の焦りの表れかもしれません。

 臨時国会はまだ始まったばかりですが、ここに挙げた問題以外にも10%への消費増税や「全世代型社会保障改革」など重要な課題が目白押しです。会期が12月10日までと短いことも、安倍首相の焦りを生んでいる要因かも知れません。
 それとも、6年間も政権を担当してきたのに、「売り物」だったアベノミクスも外交も上手くいかず、誇るべき成果が何もないことに気が付いたのでしょうか。このままでは、モリ・カケだけが国民の記憶に残ってしまうかもしれないのですから。

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10月24日(水) 臨時国会開幕を前に沖縄で始まった自民党と公明党の崩壊 [選挙]

 今日から臨時国会が始まりましたが、その開幕を前に沖縄で始まったようです。政党としての自民党と公明党の崩壊が。
 県知事選、豊見城市長選、那覇市長選と、沖縄で実施された地方選挙が野党系の3連勝に終わりました。しかしそれ以上に注目されるのは、県知事選と那覇市長選での得票差の大きさです。

 とりわけ那覇市長選で当選した城間さんと落選した翁長さんの得票差は、ほとんどダブルスコアになりました。投票率は48.19%でその低さも注目されましたが、自民党支持者の多くが投票所に足を運ばなかったからではないでしょうか。
 地元では、「こうも簡単に見捨てるのか」という声が上がっているそうです。政府・与党は劣勢を見越して立候補を辞退するように翁長候補に圧力をかけたといううわさも流れています。
 安倍政権は選挙戦に配慮する姿勢を示すこともなく、選挙終盤の17日に名護市辺野古の埋め立て承認撤回への対抗措置を打ち出すなど、県民の心を逆なでするような暴挙に出ました。「人海戦術が持ち味の創価学会員の姿が見えなかった」(県連関係者)そうで、公明党の締め付けも力を失ったように見えます。

 すでに県知事選でも、自民党や公明党では支持層離れが始まっていました。期日前投票の出口調査によれば、自民党支持者の2割、公明党支持者の3割が玉城候補に投票し、無党派層では7割もの人が玉城候補を支持したというのですから。
 今回の那覇市長選では、自民党支持者の多くが政府・自民党の対応に嫌気がさして棄権したように思われます。選挙が終わってから、自民党の国場沖縄県連会長が辞任しましたが、沖縄自民党の崩壊を象徴する出来事だったように思われます。
 公明党も深刻な状況に直面しました。県知事選や那覇市長選で創価学会信者の有力者が公然と三色旗を掲げて反旗を翻したからです。

 自民党が苦戦しているのは沖縄だけではありません。沖縄での勝利は本土の野党勢力を励まし、その流れが波及し始めています。
 10月14日の千葉県君津市長選と21日の兵庫県川西市長選でも与党系の候補が敗れました。京都の大山崎町長選では、共産党だけに支援された新人候補が、自公の与党だけでなく立憲民主や国民民主に支援された現職町長を破るという「奇跡」が起きています。
 今度の日曜日(28日)は新潟市長選の投票日ですが、ここでも野党支持の小柳候補が猛烈に追い上げています。沖縄の勢いを受け継いで、何としても勝利していただきたいものです。

 今日、臨時国会が始まって新たな与野党の論戦の火ぶたが切られました。その幕開けに際し、地方選での敗北が連続すれば安倍首相にとっては大きな打撃となることでしょう。
 「選挙の顔」としての安倍首相に不安が高まることになります。新たに選対委員長となった甘利さんの調整力にも不信感が高まります。
 第4次安倍改造内閣は暗雲漂う中での船出となりました。大きな政治の嵐を巻き起こし、早々に難破させたいものです。

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10月21日(日) 『日刊ゲンダイ』でのコメント [コメント]

 〔以下の私のコメントは、『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*10月18日付寛容特集「やらずブッタクリ 消費増税に庶民の反乱」
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
 「国民は『消費増税は社会保障のためだから仕方ない』と思わされてきましたが、これは安倍政権お得意の〝印象操作〟です。消費税は逆進性が強く、庶民から集めた税金が結局、富裕層に逆分配されているのが現実。『全世代型社会保障』にしても、若年層や子供向けの政策を増やす一方で高齢者向け福祉は削減されるわけで、世代間対立を利用したパイの奪い合いです。むしろ『全世代型社会不安』ですよ」

*10月20日付巻頭特集「安倍海造内閣 増税対応と閣僚醜聞で臨時国会は火ダルマ」
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。
「世論が最も求める社会保障対策はなおざりにし、増税で国民生活をさらに困窮させ、消費を停滞させ、景気を悪化させようとしているのが安倍政権です。その一方で国民が最も望んでいない改憲に躍起になっている。国民の怒りの炎に対し、平然と油を注いでいるようなものです。野党が増税阻止に向けて一丸となれば、世論はついてくる。安倍政権は臨時国会を乗り切ることすら難しい状況に追い込まれるでしょう」




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10月20日(日) 改造内閣で早々と爆発した片山さつき地方創生担当相と安倍首相自身の2つの「地雷」 [スキャンダル]

 ガラクタをかき集めた第4次安倍改造内閣は、沢山の「地雷」が敷設されていたようなものでした。そのうちの2つが、早々と爆発したようです。
 1つは片山さつき地方創生担当相の口利き疑惑であり、もう1つは安倍首相自身の「カジノゲート」疑惑です。前者は、かつて辞任した甘利さんとよく似たケースであり、後者はアメリカのトランプ大統領がらみの疑惑です。

 片山さつき地方創生担当相については、国税庁に対する口利き疑惑を『週刊文春』が報じました。会社経営者が税務調査を受けて税制優遇がある「青色申告」が取り消されそうになり、2015年に片山さんの私設秘書をしていた男性に働き掛けを依頼し、秘書からは文書で100万円を要求されたため指定口座に振り込み、片山さんが依頼に応じて国税庁関係者に電話をしたとされ、経営者本人も「片山氏の事務所に口利きを依頼して100万円支払ったことに間違いない」と証言しています。
 この受託収賄が事実なら刑事罰に問われるほどの重罪で、閣僚だけでなく国会議員も辞任すべき深刻な問題です。片山さんは「口利きをしたこともない。100万円を受け取ったことも全くない」などと疑惑を否定し、「週刊誌を名誉毀損で訴える準備を進めている」と反論していますが、「弁護士から止められている」として詳細な説明を避けています。
 通常、「文春砲」は第2弾や第3弾を準備して第1弾を発射しますから、今回も続報があり、さらに詳細な事実が明らかになるでしょう。来週には臨時国会が始まり、会期は短く改憲発議も狙われていますから、早々に「詰め腹」を切らされるかもしれません。

 もう1つの安倍首相に関する「カジノゲート」の方は、10月10日に公開されたアメリカの調査報道組織「プロパブリカ」の記事で明るみに出ました。この記事は、トランプ大統領が2017年2月の安倍首相による初の公式訪問の際に、世界的に最も強力なカジノであるラスベガス・サンズともう1つのアメリカのカジノ会社にカジノライセンスを与えるよう安倍首相に働きかけたと報じています。
 しかも、サンズは2014年5月に安倍首相も参加しカジノ法のモデルになっているシンガポールの統合リゾートへのツアーを手配したり、2016年11月のトランプタワーでの安倍首相とトランプ大統領との会談をアレンジしたりしていたといいます。これはサンズの経営者でラスベガスのカジノ王であるシェルドン・アデルソン氏がトランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏とのツテを通じて実現したそうです。
 これらの働きかけがカジノ法の成立やIR実施法での床面積の制限をなくす上で大きな意味を持ったのではないかというのが、「カジノゲート」と言われる疑惑の中身です。国内3カ所での候補地の選定などカジノ開設に向けての動きが始まっており、このような報道が事実なのか真相の解明と安倍首相への責任追及が急がれます。

 これ以外にも、柴山昌彦文部科学相が教育勅語をめぐる発言で批判されたり、工藤彰三国土交通政務官が代表を務める政治団体が会費制集会の収入を政治資金収支報告書に記載しなかったり、自民党沖縄県連会長の国場幸之助衆院議員をめぐっては女性問題が新たに報じられたり、渡辺博道復興相が代表を務める自民党支部が国の「間接補助金」が交付された企業から献金を受けていたことが発覚したり、次々にスキャンダルが明るみに出ています。
 説明責任を求める声が与党内からも上がっています。臨時国会ではこれらの真相解明が必要ですし、閣僚などの資質や適格性、安倍首相の任命責任などが問題になるでしょう。
 国会論戦では閣僚らへの追及が増えるのは確実で、政府・与党が危機感を強めるのも当然です。安倍首相は首を洗って待っていた方が良いのではないでしょうか。

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10月19日(金) 『日刊ゲンダイ』でのコメント [コメント]

〔以下の私のコメントは、『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*10月16日付巻頭特集「早すぎる「消費増税」表明 1年がかりで国民懐柔の悪だくみ」
 「もし、統一地方選や参院選の直前に消費税増税を決定したら、消費税が一大争点となり、自民党は大敗必至だったはずです。選挙前に“安倍おろし”が勃発した可能性もあった。その危険を回避するために、少しでも統一地方選や参院選と時期を離して消費税増税を決定しようとしたのは間違いないでしょう。かといって、総裁選が終わるまでは口にできなかった。実際、1年前に決定したことで、統一地方選でも参院選でも、消費税は争点にならない可能性が高い。さすがに、この秋の臨時国会では消費税増税の是非が議論になるでしょうが、日本人は新年を迎えると、昨年のことは忘れてしまいますからね。本来、“税”こそ“政治”ですが、このままでは国民は、消費税増税の是非について審判を下すタイミングをそらされる恐れがあります」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

*10月17日付巻頭特集「「消費増税」「小手先対応」何から何までデタラメの極み」
 「消費税を8%に引き上げた時も景気は落ち込みました。何兆円もの購買力を奪うのだから当たり前です。しかも、安倍政権の6年間で実質賃金は下がり、社会保険料の負担増や所得税の控除縮小で可処分所得は減り続けている。家計支出が低下している中で、消費税を上げればどうなるか。庶民生活は破綻してしまいます。どんな対策を講じたところで、小手先対応ではどうにもならない。ただでさえ、世界同時株安などで景気が底割れの懸念もあるのです。今はまだ2020年の東京五輪需要で持っていますが、五輪後の大不況は避けられません。そんな時に消費税を上げるなんて、狂気の沙汰です」(政治学者の五十嵐仁氏)

 「軽減税率と聞くと、税負担が軽くなるように錯覚しそうになりますが、現行8%に据え置くというだけの話で、軽減ではなく“継続税率”です。負担軽減策でも何でもない。生活必需品は非課税にするなら分かりますが、1000円の食料品を買って、支払いが1100円か1080円かの違いしかありません」(五十嵐仁氏=前出)

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10月16日(火) 森友学園疑惑も「まだ区切りはついていない」 [スキャンダル]

 「一件の国有地取引を、1年以上も掘り下げ続けてきた。しかし、売却額が妥当だったかどうかの検証は済んでいない。改ざんの詳しい経緯も、財務省の説明には違和感が残る。まだ区切りはついていない。」

 これは『朝日新聞』10月15日付に掲載された「新聞週間2018」の特集「記録を追う、歴史に残す」という記事にある記述です。ここで指摘されている「一件の国有地取引」というのは、森友学園疑惑のことを指しています。
 この疑惑には二つの問題がありました。一つは「売却額が妥当だったかどうか」、もう一つは土地取引に関する公文書の「改ざんの詳しい経緯」です。
 このいずれについても、真相は明らかにされていません。10月13日と14日に実施されたJNN世論調査で、森友・加計学園疑惑について安倍総理や政府のこれまでの説明に「納得できなかった」と答えた人が80%にのぼり、「納得できた」が11%にすぎなかったのも当然です。

 森友学園の国有地売却問題では、最近になって新たな疑惑が生じています。『朝日新聞』10月11日付朝刊が、8億2000万円もの大幅値引きの根拠となった地下のごみの深さについて、「3・8メートルまで」に存在する証拠とされた写真が、実際には「3メートルまで」を計測していた疑いを報じたからです。
 野党側は、この写真付き報告書を証拠として提出していた国土交通省に、事実関係を確認するよう求め、国交省は値引きの根拠となった「地価のゴミが見つかった深さ」についての新しい資料を国会に提出しました。
 この資料を基に行われた野党側のヒアリングで、国交省はホワイトボードの「深さ3m」という記載について、工事業者から「経験の浅い従業員が誤って書いたものだ」という回答を受けたとしたうえで、「3.8メートルという深さは、限られた時間の中で、当時の使いうる資料に基づいて積み上げ推計した」と説明しました。しかし、野党側からは「業者が撮影した調査の写真は不鮮明で、深さがわからない」といった指摘が相次ぎ、引き続き臨時国会で追及されることになるのは確実です。

 公文書改ざん問題でも、9月25日にテレビ東京で興味深い放送が流れました。「<森友公文書改ざん>自殺職員の父と財務省OBが決意の告白」と題して放送された番組では、公文書の改ざんをさせられ自ら命を絶った近畿財務局の職員の父親が登場し、財務省の財務局OB職員6人が実名でカメラ取材に応じています。
 父親は、「上司に言われることを反対するわけにもいかないし、上司に言われた通りに書き換えたと遺書に書いてありました。7枚か8枚のレポート用紙に書いてありました」と話し、「改ざんをさせられたことで亡くなったと考えているか?」との問いに、「そうそう。財務省に入った自慢の息子はなぜ死ななければならなかったのか、いまも問い続けています」と答えています。他方、財務局OBは「2人の職員から電話をいただいて、彼が改ざんの仕事をやらされる中で100時間を超えるような残業。追い詰められて顔が変わってしまった」と証言しています。
 財務省OBは佐川氏らの国会答弁を複雑な思いで見ていたと言い、「佐川さん、うそついたらあかん、文書っていうのはそんなもんじゃない。記録が全然ないなんてうそつくな、歯がゆい思いがして」などと話し、異例の土地取引や文書改ざんにはある力が働いたと見ています。「公務員の判断で文書の改ざんはありえない」とし、疑惑をすべて明らかにし、二度とこのような問題が起きないために6人は全国の財務局OBに協力を呼びかけています。

 24日から臨時国会が始まります。加計学園疑惑と同様、森友学園疑惑についても、まだ区切りはついていません。
 公文書改ざん問題では自殺者まで出ています。真相を明らかにし、麻生副総理兼財務相と安倍首相の政治責任を明らかにして断罪しなければ、自ら命を絶った職員は浮かばれないでしょう。

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10月14日(日) 6年間の安倍外交がもたらした国際社会における日本の孤立 [国際]

 外交は経済と並んで安倍首相の強みだと言われてきました。しかし、アベノミクスとともに、安倍外交も破たんし漂流を始めたようです。

 その外交で、これほど日本はのけ者にされているのかと思わせるような事態がまたもや生まれました。「またもや」というのは、5月24日に北朝鮮がプンゲリ(豊渓里)の核実験場を爆破して公開したとき、6カ国協議に参加している国の中で日本のメディアだけが除外され、代わりにイギリスの記者が招待されていたからです。
 今回も、日本は除外されました。モスクワからのロイター通信の報道によれば、「ロシア外務省は10日、朝鮮半島の緊張緩和のため、米国と韓国を交えた5カ国協議が必要だとの認識でロシア、中国、北朝鮮が一致したことを明らかにした」そうですから。
 「ロシア、北朝鮮、中国の外務次官が9日にモスクワで会談し、関係正常化のため5カ国協議に支持を表明した」というのです。ということは、6カ国協議に参加している国では日本だけが除外されたことになります。

 同盟国のアメリカとの関係でも、暗雲が漂い始めています。日米貿易戦争の始まりです。
 すでに明らかになっているように、安倍首相はこれまで受け入れないと言い続けていた2国間交渉を呑まされてしまいました。これはTAGであって物品だけの交渉だから、サービスなどを含むFTAではないと言い訳していますが、安倍首相の国会答弁につじつまを合わせるための真っ赤な嘘です。
 現に、ムニューシン米財務長官は13日、日本との新たな通商交渉で、為替介入をはじめとする意図的な通貨安誘導を阻止する「為替条項」の導入を要求すると表明したではありませんか。「物品」だけの交渉ではない新たな「火種」の登場であり、このような「攻勢」は今後も強まるにちがいありません。

 ロシアとの関係も予断を許さないものになっています。これまで安倍首相はプーチン大統領と22回も首脳会談を行い、自分の選挙区に招いて温泉に入るなどの「おもてなし」をして個人的な関係を築いてきましたが、北方領土問題を解決する点では何の役にも立っていません。
 かえって経済開発のお手伝いをさせられ、ロシアの実効支配を強めてしまっています。さらに、最近目立つのは軍事力の強化です。米ソ冷戦終結後、ロシアは「北方領土」の軍事力を大幅に削減しまたしたが、クリミア半島の併合やウクライナ問題でアメリカとの対立が激化したため、最近になって軍事力を再び強化し、日本との戦争を想定した作戦計画をたてて演習を行っているからです。
 外務省によれば、ロシア政府から10日から今月13日までの予定で、北方領土の択捉島の近海でロシア軍が射撃訓練を行うと日本側に通知があり、これに対して外交ルートを通じて抗議したところ、ロシア外務省は声明を発表し「われわれは国防能力を向上させる手段も含め、自国の領土であらゆる活動を行う権利がある」と主張したうえで、日本側の抗議について「2国間の前向きな雰囲気を作り出さないばかりか損ないかねないものだ。生じた懸念については儀式のような抗議ではなくすでにある政府間対話の枠組みを通して解決すべきだ」と反発したといいます。慌てた外務省は年内に2回も安倍首相とプーチン大統領との首脳会談を開いて事態を打開しようと躍起になっています。

 こうして、窮地に陥った安倍首相が助けを求めようとしているのが中国です。25日から北京を訪問して習近平国家主席との首脳会談を行うことが予定されています。
 このような形で友好関係が回復され、日中関係が改善されるのは結構な話です。しかし、これまでの中国敵視政策や「中国包囲網の形成」政策との整合性をどのようにして取るつもりなのでしょうか。
 最近でも、東シナ海で海上自衛隊の潜水艦訓練を公開し、米空軍の戦略爆撃機と航空自衛隊との共同訓練が行われ、離島奪還のための日本版海兵隊と言われる水陸機動団と米軍との初めての日本国内での共同訓練が種子島で実施されました。いずれも「仮想敵国」として想定されているのは中国です。一方で「米中冷戦」の開始とも言われるほど中国敵視を強めているトランプ政権や対中接近への警戒を高めている極右勢力への「言い訳」をしながら、他方で握手の手を差し伸べようとしているところに、安倍外交のジレンマとギクシャクぶりが象徴されていると言っても良いでしょう。

 ときとして、「強み」は「弱み」に転化するものです。「世界同時株安」が懸念される中で、安倍首相は来年10月1日からの消費税の10%への引き上げを表明するそうですが、そうなれば消費は大きな打撃を受け、景気はまたもや悪化し、アベノミクスは最終的に頓挫することになるでしょう。
 トランプ大統領との親密さやプーチン大統領との個人的な関係の構築は、かえって日本を「ノーと言えない」立場に追い込み、外交的交渉力を奪う結果になっています。経済でも外交でも漂流を始めた安倍首相に、もはや政権のかじ取りを任せておくことはできません。

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10月13日(土) 10月8日 『日刊ゲンダイ』でのコメント [コメント]

 〔以下の私のコメントは、『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*10月11日付巻頭特集「目に余る懇願だけの無策 拉致問題は自国で解決することだ」
 「長期政権の最大の強みは、やはり外交です。1年、2年の短期政権では、なかなか外交の成果は出しづらい。歴代の長期政権も外交実績を残しています。戦後在任期間1位の佐藤栄作は沖縄返還を成し遂げ、2位の吉田茂は講和条約を結び日本を国際社会に復帰させています。4位の小泉純一郎も、訪朝し拉致被害者を帰国させた。9位の田中角栄は、日中国交正常化という難事業を達成しています。ところが、在任期間3位の安倍首相には、これといった外交成果が見当たらない。6年間、なにをしていたのか。外交無策を証明しています」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

*10月13日付巻頭特集「改憲を隠れ蓑に進行 「人生100年」という弱者切り捨て」
 国にすれば年金も医療費も出費が減る一石二鳥だが、庶民はたまらない。75歳まで年金はもらえず、窓口負担も増えれば、オチオチ医者にもかかれなくなる。高額で知られる夢のがん治療薬オプジーボは、まさに「夢のまた夢」の薬となる。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った
 「ただでさえ、安倍政権は社会保障費を散々抑えてきたのに、まだケチるとは恐れ入る。トランプ米大統領に言われるがまま大量の兵器を購入し、防衛費を拡大させる一方で、今年度の社会保障費は自然増分を1300億円もカット。来年度予算は自然増分を従来の5000億円を下回るレベルに抑え込むつもりです。さらに予定通り来年10月には庶民に消費増税を押しつけながら、内部留保を貯め込み大儲けの企業の法人税は引き下げる。豊かな人々を助け、貧しき者からふんだくる。アベコベ政策の数々はデタラメの極みです」

 「全世代型社会保障改革の正体は、全世代型の貧困化です。いくら小泉元首相らに『できっこない』と批判されても、安倍首相が改憲に意欲を燃やしているのも、実は隠れ蓑かもしれません。できもしない改憲を騒ぎ立て、国民の危機感を引き付けているうちに、『本命』の総貧困化による財政支出削減を着々と進めるという目くらましです」(五十嵐仁氏=前出)

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10月12日(金) 米中間選挙でのトランプ・共和党の地滑り的大敗の兆候 [国際]

 世界同時株安の発生です。その引き金を引いたニューヨークの株式市場では一時800ドル以上の大暴落となりました。
 11月6日の投票日まで1カ月を切った上下両院の選挙で経済の好調さを誇っていたトランプ大統領にとっては、耳を覆いたくなるような悪いニュースです。それでなくても、この中間選挙で共和党が地滑り的な大敗を喫するかもしれないという兆候が生まれているのですから。

 もともと中間選挙では与党が不利だとされており、今回も下院では共和党の多数が失われると見られていました。しかし、その敗北は予想を超える地滑り的なものになるかもしれないという兆しが生じています。
 多数を維持するとみられてきた上院でも共和党は苦戦しているからです。接戦区とされている選挙区を民主党が制して多数が入れ替わるかもしれません。

 トランプ大統領は2回目の米朝首脳会談の開催について、中間選挙の後にすると発表しました。選挙の直前に華々しい外交ショーを繰り広げた方が大統領や共和党に有利になるはずなのに、どうして選挙戦後にしたのでしょうか。
 その理由は、選挙への取り組みを最優先にしなければならなくなったからです。北朝鮮との首脳会談に手が回らないほど、選挙情勢が危うさを増してきたということではないでしょうか。
 トランプ大統領自身についても暴露本が何冊も出版され、ロシア疑惑、セクハラ疑惑、脱税疑惑と疑惑がてんこ盛りです。追い詰められて選挙応援に駆け回っている大統領に首脳会談を準備する余裕が失われてきたということが、大敗するのではないかという兆候の一つです。

 もう一つの大敗の兆候は、米女性歌手のテイラー・スイフトさんによる民主党候補支持の表明と投票の呼びかけです。日本で言えば安室奈美恵さんが野党支持を表明して投票を呼びかけたようなものですから、トランプさんも慌てたでしょう。
 その効果はてきめんで、スイフトさんがインスタグラムにメッセージを掲載してから24時間で約6万5000人が新たに有権者登録を済ませたそうです。その多くは20代以下の若者で、これは今後もっと増えるでしょう。
 アメリカでは18歳以上の成人でも有権者登録をしなければ投票できません。このような形で新たに登録した若者が共和党ではなく民主党に投票するだろうことは明らかで、銃規制に反対する候補者の落選をよびかけている高校生の運動や民主党内の民主社会主義者への若者の支持の高まり、トランプ大統領の女性差別への反発と女性の立候補者の増加などとともに大いに注目される兆候です。

 さらに、ヘイリー国連大使の突然の辞任も、中間選挙に微妙に影響するかもしれません。この辞任によって、国際社会でアメリカがどのように受け取られ、扱われているかに国民の思いが至る可能性があるからです。
 ヘイリー辞任の理由は明らかにされていませんが、国連でのアメリカの孤立、地位や影響力の低下に嫌気がさしたのかもしれません。今回の辞任で、しばらく前の国連総会での演説でトランプ大統領が冷笑、失笑、嘲笑された光景を思い出しましたが、国連での会議や諸外国の外交官との接触で、ヘイリーさんは日常的にあのような対応に直面してきたのではないでしょうか。
 あの国連総会でのトランプ大統領は一人の喜劇役者にすぎず、かつての大国アメリカの大統領としての威厳は失われ、各国の反応にはひとかけらの敬意も尊敬も感じられませんでした。アメリカ国民からすれば大いにプライドを傷つけられたことでしょうし、国連でアメリカを代表していたヘイリーさんからすれば、なおさらそうだったにちがいありません。

 トランプ大統領の下で、アメリカは傷つき、孤立し、かつての威厳と覇権を失いつつあります。こんなアメリカを黙って見ているわけにはいかないという気持ちが、一人の女性歌手にすぎなかったスイフトさんを揺り動かしたのではないでしょうか。
 アメリカ国民は、自らが選んだ大統領がトランプでもジョーカーだったことに気付き始めたのかもしれません。もし、中間選挙で民主党が大勝するとすれば、勝たせたのはトランプ大統領その人だったということになるでしょう。

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10月11日(水) 来年の参院選で自民党が苦戦する4つの理由 [参院選]

 昨日のブログで、「このような誤算がこれからも続くとすれば、長期政権どころか来年の参院選を乗り切るのも難しいのではないでしょうか」と書きました。「このような誤算」が続かなくても、「来年の参院選を乗り切る」ことは、安倍首相にとってかなり難しい課題だと思われます。
 今のままでも、自民党の苦戦は避けられません。その理由を、とりあえず4点ほど指摘しておきましょう。

 第1は、昨日のブログで指摘したように、自民党役員人事と内閣改造の失敗です。これによって内閣支持率を高め、勢いをつけて臨時国会を乗り切るという「スタートダッシュ」を決められず、国民の不信と自民党関係者の不安を引きずったまま政権運運営を続けなければならなくなりました。
 しかも、安倍首相にとっては最後の任期で先がなく、後継者争いが始まって早晩「死に体(レームダック)」化が避けられません。すでに、禅譲を狙う岸田政調会長が福井で後援会を立ち上げるなどの動きが始まっています。
 改造による政権浮揚に失敗しただけでなく、逆に、失言や暴言、スキャンダルの発覚や答弁の失敗などでいつ「爆発」するかもしれない「地雷」を閣内に敷設するような結果になりました。昨日のブログでも指摘したように、片山さつき地方創生担当相、桜田義孝五輪担当相、平井卓也科学技術担当相、原田義昭環境相などいわくつきの面々が顔をそろえ、当選回数ばかり多くても閣僚として役に立つかどうかわからない初入閣組の「ガラクタ」が7人もいます。大丈夫なのでしょうか。

 第2は、「公明党神話」の崩壊です。これまで自民党は連立相手である公明党、その支持基盤である創価学会に助けられて選挙を闘ってきました。
 しかし、公明党支持者の3割前後がデニー候補に投票した沖縄県知事選挙に見られたように、創価学会に対する締め付けが効かなくなってきています。『週刊ダイヤモンド』編集部の「「最強教団」創価学会の焦燥、進む内部崩壊の実態」というレポートhttps://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181010-00181607-diamond-soci&p=1によれば、「会員の多くは学会の会員であると同時に“池田教”の信者でもある。「絶対平和主義」を掲げた池田氏のかつての言動と、執行部や公明党の方針に齟齬が生じれば、それは会員に「師匠の教えに背く反逆行為」と映る。実は全国各地で今、……幹部から「査問」を受けたり、役職を解かれたりする会員が急増している」といい、池田大作氏の直属の“親衛隊”ともいうべき人材グループで身辺警護や車両の運転に当たる「転輪会」メンバーの男性は、「池田先生がつくった学会は、完全に乗っ取られた。今の学会は宗教法人ではなく、単なる政治集団だ。師匠に反逆する執行部に対し、残されたわれわれ弟子たちが戦わなければならない」と語っているそうです。
 公明党は昨年の総選挙において小選挙区で1人落選させ、比例代表で初めて700万票を下回るなど敗北しました。来年4月の統一地方選挙や参院選を前に安倍首相に追随していると見られれば同様の苦戦は免れませんから改憲問題で距離を取らざるを得ず、自公の選挙協力にも陰りが生じているというわけです。

 第3は、これまでも触れてきた「亥年現象」というジンクスの存在です。12年に一度、統一地方選挙と一緒の年に戦われる参院選挙で、何故か自民党は苦戦するという結果が繰り返されてきました。
 事実、自民党結成後に実施された参院選で、1959年は唯一の例外ですが、71年、83年、95年に自民党は議席を減らしてきました。特に、前回の2007年参院選は第1次安倍政権の下で実施され、自民党の獲得議席は37議席と89年参院選以来の歴史的惨敗となって、60議席と躍進した民主党に初めて参院第1党の座を明け渡しました。
 このときの選挙では自民党と共に公明党も大敗し、神奈川県、埼玉県、愛知県の選挙区で現職議員が落選しています。市民と野党との共闘によってこの07年参院選を再現させることができれば、安倍政権に大打撃を与え安倍首相を政権の座から引きずり下ろすことができるかもしれません。

 第4は、16年参院選の実績です。3年前の参院選では32ある1人区で野党共闘が成立し、11選挙区で勝利することができましたが、これが繰り返されれば与党は3分の2の改憲発議可能な議席を失うことになります。
 この時の成績は、改選121議席のうち自民党が56議席で公明党が14議席と過半数を大きく上回りましたが、改選議席121の57.9%で3分の2を下回りました。自民党は3年前の参院選での当選65を9議席も減らしています。
 来年の参院選でも同じような結果になるとすれば、自民党の議席が減り公明党と合わせた与党全体としても3分の2の改憲発議可能な議席に達せず、この時まで発議できなければ、安倍首相の改憲野望は潰えることになります。前回参院選での野党共闘は2月19日の「5党合意」から始まり、投票日まで2ヵ月もない5月31日に一人区すべてで「1対1の構図」が確立していますから、それよりもずっと早く準備が可能な今回は、さらに強力な野党共闘の力を発揮できるはずです。

 来年7月の参院選まで、まだ10カ月もあります。しかし、もう10カ月しかありません。
 その時間を無駄にしてはなりません。野党間の共闘をどう強め、参院選をどう闘うのか、具体的な協議を始めてもらいたいものです。
 国民民主党を含めて、野党共闘に向けての態勢は整いつつあります。共産党の機関誌『前衛』での座談会や沖縄県の翁長前知事の県民葬での立憲野党代表の勢ぞろいなど、共闘に向けての機運は高まってきています。

 安倍内閣改造の不発と参院選での苦戦の予想が強まる中で、自民党内には来年の参院選で衆院選との「ダブル選挙」を行うべきだという声も出てきているようです。結構じゃ、ありませんか。
 衆参ダブル選挙で一挙に政権交代すれば、手間が省けます。その可能性も視野に入れた準備を、今から始めなけれなりません。

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