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6月29日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは6月28日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「参院選の最大争点 権力を弄ぶ異常な首相の暴走を許すのか」
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「安倍首相とトランプ大統領は、よく似ています。ワシントン・ポスト紙によると、トランプ大統領は1日に平均15回、嘘をついているそうです。安倍首相も嘘が多い。例えば、辺野古基地の新設について『土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している』と、後からバレる嘘を平気でつく。異常なのは、嘘をついても後ろめたさを感じていないことです。国民を敵と味方に分断させる政治手法や多様性の否定、自分を批判するメディアを敵視する姿勢まで、トランプ大統領とソックリです」

 参院選の最大の争点は、イカれた首相を野放しにしていていいのかどうかだ。

 「安倍首相の異常さは、トランプ大統領と同じく、越えてはいけない一線を躊躇なく越えてしまうことです。目的のためには手段を選ばない。例えば、長年積み重ねてきた憲法解釈を百八十度変え、集団的自衛権の行使を『違憲』から『合憲』に変更してしまった。しかも、内閣法制局長官の人事に恣意的に手をつけることで実現させています。戦後の日本政治が避けてきた“禁じ手”を平気でやっている。国会のルールも堂々と破っています。野党がルールにのっとって臨時国会の開会を要求したのに、平然と無視し、国会を開いたと思ったら、解散してしまった。森友事件以来、公文書の作成もやらなくなり、金融庁の審議会が作成した報告書も受け取らない。日本の政治は、この6年間ですっかり壊されている。もし、自民党が参院選で勝利したら、ますます安倍首相はやりたい放題になり、さらに常軌を逸していくはずです」(五十嵐仁氏=前出)


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6月28日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは6月27日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「唖然の国会 三原じゅん子が野党を「恥を知れ」と罵る異常」
 こんな前時代的な議員による言論の府を形骸化する演説をメディアはどこも批判しない。それどころか、一部メディアは「ド迫力」などと持ち上げる見識のなさだ。

 「今のメディアは安倍政権の異常さが伝染し、完全に麻痺しています。ネトウヨのような三原演説もまるで見慣れた光景のような感覚となってしまい、『何だ、アレは』と思える正常な感覚が失われているのでしょう。この異常さが世の中全体に浸透し、異常が異常でなくなるレベルに達するのが怖いのです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)


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6月25日(火)  『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは6月23日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「「2000万円不足」受け取り拒否の主犯は逆ギレした安倍首相
 隠蔽に躍起になって自ら国民の怒りに火を注ぐ安倍こそ正真正銘の「大バカ者」ではないか。

 「冷静に国民に説明すべき年金問題を感情に任せて激怒し隠すなんて、政策の中身以前に政治家のモラルの問題です。参院選で問われるべきは政権の悪しき体質そのもの。これまで有権者も選挙に勝ちさえすれば何でも許されると居直りを決め込む政権を甘やかし、許してきましたが、今度こそは選挙を通じて、この国をむしばむ病理を取り除かなくてはいけません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

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6月24日(月) かつてない逆風の下で参院選を闘うことになった安倍首相 [選挙]

 通常国会は明後日で幕を閉じます。このままだと、7月4日公示、7月24日投開票という日程で、予定通り参院選が実施されることになります。
 すでに投票日まで1カ月を切り、街にはポスターの掲示板も設置されています。いよいよ日本の命運と私たちの生活を大きく左右する「天下分け目の決戦」が始まろうとしています。

 今回の参院選は、安倍首相にとっては5回目の国政選挙ということになります。過去4回の選挙で勝利を重ね、それを大きな武器として「一強」体制を構築してきた首相にとって今回はかなり勝手の違うものになってきました。
 「こんなはずじゃなかった」と、そう思っていることでしょう。これまでの4回の国政選挙とは異なり、数々の誤算が積み重なって大きな逆風に直面しているからです。
 安倍首相としては、新元号「令和」の発表、天皇代替わり、新天皇初の国賓としてのトランプ来日などを最大限利用し、「改元フィーバー」や「奉祝ムード」を盛り上げG20首脳会議でも外交成果を上げて参院選になだれ込む作戦だったと思われます。しかし、この作戦はある時点で齟齬が生じ、「潮目」の変化が生まれました。

 安倍首相の「得意の絶頂期」は5月26日だったと思われます。トランプ大統領と一日中、ゴルフに大相撲観戦、夫妻との炉端焼きでの歓談など「TOKYOの休日」を楽しんだからです。
 しかし、翌27日、思いもかけない誤算が生じました。共同記者会見でトランプ大統領が「8月には素晴らしい発表ができるだろう」と、日米貿易交渉での「密約」をばらしてしまったからです。
 このとき依頼されたとされる安倍首相のイラン訪問でもタンカー襲撃事件が発生して「仲介外交」が失敗し、イランとアメリカの板挟みとなって窮地に陥りました。トランプという信用できない大統領を信じ、その口車に乗ってしまった安倍首相の痛恨の失敗でした。

 国内問題でも、突然の暴風に見舞われます。年金問題に関する金融審査会の市場ワーキンググループ報告書の発表です。中身はこれまで言われてきたこととそれほど変わりませんが、それを2000万円の「赤字」と明確にし、投資による資産形成を前面に打ち出した点が異なっていました。
 これまでごまかしてきた「不都合な真実」が衝撃的な表現で選挙の直前にばらされてしまったわけです。安倍首相は「金融庁は大バカ者だな」と「激怒」して火消しに回り、麻生副総理兼金融担当相は「受け取らない」と口走り、森山国対委員長は「もうないわけですから」と居直りました。
 これらの対応や発言が「火に油を注いだ」形になったのは、皆さんご存知のとおりです。このような過剰な反応を行ったのは、過去の忌まわしい思い出が安倍首相や麻生副総理などの脳裏をかすめたからにちがいありません。

 それは、12年前の第1次安倍政権のときでした。統一地方選挙と同時に実施される参院選には「亥年のジンクス」があり、ただでさえ自民党は苦戦すると言われていますが、この2007年の参院選で自民党はかつてない逆風に見舞われ、歴史的な惨敗を喫しました。
 選挙前の通常国会で「消えた年金」問題や「政治とカネ」をめぐるスキャンダルが次々に発覚し、7月の参院選で自民党は37議席の当選にとどまって民主党に参院第一党を譲ったのです。これによって衆参はネジレ状態となり、9月の臨時国会での所信表明演説後、安倍首相は病気を理由に辞任に追い込まれました。
 後続の福田政権も麻生政権もネジレ状態の下での国会運営に苦慮してわずか1年ずつしか政権を維持できず、当時の麻生首相は解散・総選挙に追い込まれて民主党中心の野党政権が樹立されます。安倍首相は政権を投げ出した張本人、麻生副総理は野党への政権交代をもたらした責任者でしたから、自民党にとってこの2人はいわば「戦犯」なのです。

 この「戦犯コンビ」が、またもや今回の逆風を招き寄せることになったのは歴史の皮肉と言うしかありません。過去の忌まわしい「トラウマ」がこの2人の脳裏によみがえったために、大慌てで過剰な反応を行ってしまったのでしょう。
 しかも、今度の選挙をめぐる誤算と逆風はこれだけではありません。ダブル選挙による不意打ち作戦は不発に終わり、改憲発議は失敗し、消費増税を真正面から掲げて選挙を闘う羽目に陥り、加計学園疑惑と同様の国家戦略特区をめぐる疑惑も再燃し、G20には暗雲が漂っています。
 安倍首相が獲得議席目標について「自民党、公明党の与党で過半数を確保することだ」と発言したのは、このような逆風を意識していたからです。低めの数字を掲げて予防線を張らなければならないほど、「向かい風」は強まっているということでしょうか。

 野党からすれば過去4回の国政選挙とは異なって大きなチャンスが生まれていることになります。市民と野党の共闘も、かつてないほどの発展を見せています。
 このチャンスを生かして与党を過半数割れに追い込み、安倍退陣への道すじをつけることができるかどうか。野党共闘にとっても、その真価が問われることになるでしょう。

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6月17日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは6月16日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「向こう見ずな首相のイラン訪問 取り返しのつかない大失敗」
 最悪なのは今回、安倍が“日本外交の遺産”を食いつぶしたことを百も承知のくせに、まったく指摘しないことだ。

 「イランが安倍首相の訪問を受け入れたのは、もともと“親日国”だったからです。安倍首相の力量とは関係ない。イランだけでなく、中東の多くの国が、日本に親近感を持っている。それは、戦後70年間、アメリカの同盟国でありながら、アメリカと一定の距離を保ち、中東の紛争に介入しなかったからです。なのに今回、安倍首相はアメリカ側に立って、イランに注文をつけている。恐らく中東諸国は、日本への評価を下げたはずです。戦後、日本が築いてきた外交遺産が、安倍首相に食いつぶされている形です」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

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6月16日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは6月15日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「「2000万円不足」に打つ手なし なかったことにする唖然」
 読んでもいない報告書を誰かの受け売りで評価し、バッサリと切り捨てる無定見にはあきれるが、選挙前の火消しのためなら何でもアリ。この人物に見識や知見を求めること自体、ムリなのだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「『政府の政策スタンスと異なる』からと、審議会の報告書を受け取らないとはムチャクチャです。時の政権に耳の痛い意見でも具申して政策に生かすのが審議会制度の本質で、その意見を聞き入れるのが諮問した政府の役目です。政策スタンスを理由に答申が拒否されれば、審議会はますます御用学者だらけの忖度集団になってしまう。審議会制度に悪しき前例を残すだけだし、そもそも、今回の報告書は本当に『政府の政策スタンス』と異なるのか。国民の資産形成にNISA奨励といった『自助努力』を求めるなど、報告書の根幹は今の安倍政権と自民党の考えと一致しています。年金の“不都合な真実”を有権者の目にふれさせたらマズイと、目先の選挙のことしか考えない愚かな発想で、第1次政権時代の07年の参院選に『消えた年金』で大敗したトラウマが、よっぽどこたえている証拠です」

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6月15日(土) 本当の受け皿への一歩 [コメント]

〔以下の談話は、『しんぶん赤旗』6月12日付、に掲載されたものです。3面の記事「市民と野党の共闘進化」の中でのコメントも、併せてアップさせていただきます。〕

 安倍内閣「支持」の最大の理由は、「他の政権よりよさそう」とみられていることです。これに対抗するには、安倍政権よりよさそうだと思ってもらうことです。受け皿と認められれば一気に流れが変わる可能性があります。不満も不信も大きいのです。
 野党が顔と数をそろえたというだけではだめ。共通政策ができたことは、市民と野党の共闘が本当の受け皿になるための大きな一歩です。そして市民と野党がしっかり足並みをそろえて選挙に取り組めるか、勝負はこれからです。

 共産党エネルギー

 法政大学の五十嵐仁名誉教授は「『共産党を除く』が当たり前の状況が、『共産党を含む』が当たり前の状況になってきている。『共産党アレルギー』より『共産党エネルギー』だ。共産党が加わることで大きな力が発揮される。政策と組織も含め、牽引力・機関車として認められるようになった」と述べます。


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6月14 日(金) 野党共闘は参院選全1人区で成立しただけでなくバージョンアップした [選挙]

 今度の参院選は、野党にとってはチャンスだと書きました。しかし、それは野党が共闘した場合であって、バラバラで戦ったのではチャンスを逸することになります。
 参院選という政治転換のチャンスを生かすためには、市民と野党が共闘して安倍暴走政治に代わる「受け皿」を作らなければなりません。それが安倍政権よりましなもう一つの選択肢であると有権者に認知してもらい、支持を集めることができるかどうかにかかっています。

 その市民と野党との共闘は大きく前進しました。「野党は共闘」という声が上がったのは4年前の2015年で、この時から共産党を含む野党共闘への動きが始まり、それが具体化したのは2016年2月の「5党合意」で、わずか3年前にすぎません。
 この年の7月の参院選で1人区での野党統一候補が出そろったのが5月31日、投票日が7月10日です。今回は6月7日の鹿児島を最後に32選挙区での統一候補が出そろい、今のままなら7月21日投票となります。
 前回は投票日の40日前、今回は44日前に統一候補が出そろったことになります。市民と野党の共闘のテンポは、3年前よりわずかですが早まりました。

 統一地方選挙が実施された4月の段階では、野党共闘の動きはそれほど進んでいませんでした。野党第一党の立憲民主党の枝野代表が地方組織の再建を優先し、統一地方選挙での県議などの当選に力を入れたからです。
 しかし、統一地方選挙での旧民主党の県議の当選者は、立憲民主党(118議席)と国民民主党(83議席)の両者を合計しても201議席で、63議席も減ってしまいました。これが枝野さんの危機感を高めたのではないでしょうか。
 統一地方選挙後半戦が終わった段階で、枝野党首が野党各党に共闘の申し入れを行ったのはそのためだと思われます。国民民主党の玉木さんが自由党との合流を決め、小沢さんを受け入れたのも、同様の危機感からだったと思われます。

 こうして、5月の連休後に野党共闘に向けての話し合いがスピードアップすることになりました。野党に対する脅しとして流され始めた「ダブル選挙」の噂も野党内での危機感を強め、かえって共闘に向けての追い風になったように見えます。
 参院での立候補を予定していた候補者が辞退する際、代わりに衆院での立候補を視野に入れて譲歩するという例が生まれたからです。鹿児島で社民党の候補者が辞退して国民民主党に譲るとき、社民党は衆院鹿児島4区での立候補に配慮することを条件としたように。
 統一のために立候補を取りやめた共産党候補が衆院の選挙区に回るという例も生まれています。ダブル選挙になった方が野党共闘を促進する面があるというのは、このような例を指しています。

 3年前に比べれば、市民と野党の共闘は特別なことではなく、当たり前のことになったのも大きな前進です。この共闘で市民連合が大きな役割を果たし、共産党が含まれるのも当たり前の光景になりました。
 その共産党の候補者が統一候補になるのも、3年前は香川の1選挙区だけでしたが、今回は、福井、徳島・高知、鳥取・島根の3選挙区になっています。しかも、後の二つ選挙区では、衆院補選の大阪12区での「宮本方式」を踏襲して無所属で立候補することになりました。
 政策合意も7項目から13項目に増え、幅が広がり内容が豊かになっただけでなく、市民連合や野党間での協議を経て練り上げるという形で、作成のプロセスも大きく前進しました。これを基に、それぞれの選挙区でもさらに内容を発展させ豊かにした政策協定を結ぶ動きが続いています。

 3年前の参院選での野党共闘は初めての試みでした。市民と野党、野党各党の間でも初対面であったり、初めてメール・アドレスを交換したりということで、しっくりこない場面も多かったと思います。
 しかし、それから3年の間に、共同行動や連携は当たり前のことになりました。衆院小選挙区レベルで市民連合が結成されたり、集会で相互のあいさつやエールの交換がなされたりする中で、顔見知りになって仲良くなり、人間関係ができて信頼も強まるなど、草の根での共闘は大きく発展しています。
 市民と野党の共闘は、人間的なコミュニケーションとネットワークの形成という大きな成果に支えられて成長してきました。これが3年前との大きな違いであり、このような経験と実績こそが、市民と野党の共闘がバージョンアップされたということの意味にほかなりません。

 安倍政権の暴走政治は、その暴走の酷さゆえに市民と野党の共闘を生み出し、結果的に鍛え育てる役割を果たしてきました。その共闘がどれほどの威力を持っているのか、目にものを見せるチャンスがやってきます。
 安倍首相の繰り出す悪政の数々にたじろいで「しょうがない」などと思ってはなりません。「しようがある」、やりようはあるのです。
 7月の選挙で、怒りを込めて一票を投じさえすればよいのです。そのための「受け皿」として市民と野党の共闘、立憲野党が国民に認知されれば、自公の与党勢力を敗北させることは十分に可能なのです。

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6月13日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは6月12日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「もっと怒れ 無策・搾取の末に「2000万円稼げ」の責任転嫁」
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が「もっと国民は怒らなきゃいけない」とこう続ける。

 「少子化によって若年人口が減っているのは、今の日本が子供を産み育てる環境にないからです。『子どもは3人産め』などと簡単に言う政治家がいますが、少子化は政策の失敗が原因。幼児教育の無償化など小手先ではなく抜本的な政策転換が必要です。そして国民は政府に対し、『2000万円貯められるような給料にしてくれ』と言うべきです。老後の心配をしなくていいように国が面倒を見るのが年金制度。『自己責任でよろしく』なら政府は要りません」

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6月12日(水) ダブル選挙はほぼ無くなったようだが嘘つき安倍の「やめたふり解散」に警戒を [選挙]

 夏の選挙はダブルではなく、参院選だけになりそうです。安倍首相が単独でも有利に戦えると判断し、衆参同日選を見送る方向で与党との最終調整に入ったと報じられているからです。
 もしそうであれば、通常国会は26日に幕を閉じ、参院選は7月4日公示、21日投開票で実施されます。野党の選挙準備が整わないうちに衆院を解散し、ダブル選挙を強行することで衆参両院の国会議員をフル回転させようとした安倍首相の自分勝手な目論見は失敗したことなります。
 しかし、1986年には「考えていないと」と断言した中曽根首相の「死んだふり解散」によるダブル選挙がありました。今回も「やめたふり解散」に打って出るかもしれず、野党の虚を突いた奇襲攻撃への警戒を怠ってはなりません。

 もともと、ダブル選挙には解散権の乱用だとの批判がありました。2院制の趣旨に反し、憲法7条の恣意的な運用であるという問題があるからです。
 今回も安倍首相による恣意的で自己都合の解散だという批判が強くありました。前回の選挙からまだ2年もたっていず、解散して民意を問うべき大義もないのですから、国民の理解が得られないのも当然でしょう。
 「解散風」が吹き始めたのは「参院単独では勝てないかもしれない」と考えたからで、それがやんできたのは「参院単独でも勝てるかもしれない」と考えるようになったからです。どちらにしても、選挙での勝敗が判断基準になっていることに変わりありません。

 しかし、ダブル選挙にすれば与党に有利で野党に不利だというのは、思い込みにすぎないものです。野党にとっては、32ある参院の一人区だけでなく289の衆院小選挙区も含めれば共闘がやりやすくなる面があり、解散ということになれば統一候補は一挙に決まるでしょう。
 確かに過去2回のダブル選挙で自民党は勝ちましたが、それは中選挙区制の下でのことで選挙制度は並立制に変わり、野党共闘も大きく前進しています。亀井静香さんが『朝日新聞』6月8日付のインタビューで述べているように、「解散は蜜の味」ですが「その甘い蜜には、毒が入っているかもしれ」ず、しかもそのことは選挙で負けてからしか分からないのです。
 今回の参院選は現行制度下で最大の議席を得た6年前の議席の改選であり、衆院選も2年前の「希望の党騒動」によって野党が分断されるという「敵失」で得た多数議席でした。衆参両院ともに望みうる最大の議席を確保しており、甘利自民党選対委員長が言っているように、次の選挙でもそれを維持することは「至難の業」です。

 したがって、安倍首相がダブル選挙でなければ勝てないという判断を行ったとしても不思議ではありませんでした。実際には、「勝つ」というより「負ける」のを減らすということになったでしょうが。
 もし、ダブルでなくても勝てると考えたのだとしたら、内閣支持率の高さに幻惑された慢心と油断だと言うべきでしょう。「改元フィーバー」や天皇の代替わり、トランプ大統領の訪日などを政治利用した効果を過信したのかもしれません。
 野党にとってはチャンスです。消費増税と改憲を選挙の争点として挑みかかろうとしている安倍首相と、真正面からがっぷり四つに組んで対決すれば良いのですから。

 とはいえ、安倍首相は「やめたふり」をして野党を安心させ、突然、解散に打って出るかもしれません。このような不意打ちに対しても備えが必要です。
 用心しなければなりません。何しろ相手は、「騙す、誤魔化す、嘘をつく」という3原則に基づいて行動している安倍首相のことですから。

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