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7月7日(日) 統一地方選後の情勢と参院選の展望─「市民と野党の共闘」と憲法闘争の前進にむけて(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、2019年・勤労者通信大学・通信『活かそう憲法②』に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 ダブル選挙でも怖くない

 改憲をめぐる決戦が夏の参院選に先送りされる可能性が強まっています。安倍9条改憲を阻止するうえで、夏の選挙の意義はますます大きなものになりました。この選挙が衆参両院のダブル選挙になるかもしれないという報道もあります。
 しかし、消費税の増税を先送りし、改憲を争点としてダブル選挙になったとしても、恐れることはありません。衆参ともに前回の選挙(参院の場合は6年前の改選議席)で自公両党はかなりの好成績を収めており、今度の選挙で再現することはほとんど不可能だからです。実際には「減少幅をどれだけ減らせるか」ということになるでしょう。
 消費税再増税の先延ばしは歓迎すべきことですが、それは「アベノミクス」の失敗を公言することになり、野党の得点になっても与党にとって有利になるとは限りません。増税の準備や景気対策を組み込んだ今年度予算が可決されていますから、安倍政権への批判を招いて逆風となるリスクもあります。
 参院選での改憲の争点化も逆効果になる可能性があります。安倍首相の下での改憲には反対世論の方が多く保守勢力内にも改憲反対論が存在していますから、野党ではなく与党を分断して無党派層の反発を招くかもしれません。
 ダブルにすれば野党共闘を分断できると言われています。しかし、参院選1人区と衆院選小選挙区で与党との間で1対1の構図を作ることになれば、譲り合う選挙区の数が増えますから、かえって共闘に向けての話し合いがやりやすくなるという面もあります。

 カギは市民と野党との共闘

 ダブル選挙は生き残りを模索する安倍首相の自己都合から発していることで、解散の大義はなく二院制の趣旨にも反し、国民にとっては大きな迷惑で解散権の乱用は許されません。しかもダブルなら有利になるかといえば、衆参両院で改憲勢力が3分の2の多数を下回る可能性の方が大きいのです。
 今回、改選されるのは2013年に当選した参院議員です。この時は自民党が現行制度下で最多の65議席を獲得して6年ぶりに参院第1党に復帰し、自公両党は過半数を上回る135議席となりました。31あった1人区では29選挙区で議席を獲得するなど、望みうる最高の成績を収めています。しかし、3年前の参院選では32の1人区で野党統一候補は11人当選しています。
 参院の「会派別」では自民+公明+維新+希望の党で163となって定数242の3分の2を1議席上回っているにすぎません。参院選1人区ではほぼ全選挙区での統一候補の擁立に目途が立ちました。『東京新聞』3月15日付は17年の衆院比例得票を元に「16激戦区、野党一本化なら勝機」と報じています。
 2年前の衆院選は自民党にとって極めて有利な状況の下での選挙となり、選挙前と同じ284議席を獲得しました。衆議院解散前後に野党第一党の民進党が事実上分裂して希望の党と立憲民主党が結成され、野党勢力が分断されたからです。共闘は十分に機能せず、野党の自滅によって自民党が助けられたのです。
 3年前の参院選と2年前の衆院選は大きな教訓を残しています。1人区での統一候補を実現すれば与党を敗北させることができるということであり、分断を防いで市民と野党との共闘を実現すれば改憲勢力3分の2を阻止することは十分に可能だということです。

 ダブルになっても返り討ち

 安倍首相は2016年参院選でもダブル選挙を検討しましたが、決断できませんでした。今回も、最後まで迷うにちがいありません。自民党の現有議席維持の見通しはなく、公明党が抵抗しているからです。
 どうなるかは不明ですが、準備は必要です。奇襲攻撃を許さないためには、油断せず備えなければなりません。野党側が統一候補を擁立して迎え撃つ準備が整えば、安倍首相が決断できなくなる可能性もあります。
 もし、ダブル選挙になったら、堂々と受けて立てばいいんです。ダブルで挑んできたら、ダブルで跳ね返す。衆参両院でいっぺんに自民党を敗北させることができれば、手間が省けていいじゃありませんか。その結果、改憲勢力を3分の2以下に追い込めれば、安倍首相の改憲野望を最終的に打ち破ることができるのですから……。
(いがらし・じん/法政大学名誉教授・勤通大基礎コース階級闘争論教科委員)

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7月6日(土) 統一地方選後の情勢と参院選の展望─「市民と野党の共闘」と憲法闘争の前進にむけて(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、2019年・勤労者通信大学・通信『活かそう憲法②』に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 4月1日に新元号「令和」が発表され、5月1日には新天皇の即位がありました。これらを機に「改元・代替わりフィーバー」によるバカ騒ぎが巻き起こり、あたかも新しい時代になったかのような幻想がふりまかれています。
 その張本人は安倍首相です。これに便乗して視聴率を稼ごうとするマスメディアやひと稼ぎを企む商売人などが手を貸しました。「すべての道は選挙に通ず」ということで、安倍首相は夏の参院選に向けて「お祝いムード」を持続させたいと考えているのでしょう。
 改元や新天皇、米国大統領の訪日、大相撲観戦に至るまで、あらゆるものを政治利用する安倍首相のあくどさが際立っています。空騒ぎに巻き込まれて主権在民の本義を忘れることなく、権力を監視し声をあげなければなりません。憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と呼びかけているのですから……。

 安倍改憲をめぐる攻防

 統一地方選後の情勢において、焦点の一つとして浮上したのが改憲問題です。安倍首相が5月3日の憲法記念日の改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、2020年の新憲法施行について「今もその気持ちに変わりはない」と述べて執念を示したからです。同じ日、江東区でひらかれた安倍改憲に反対する集会には6万5000人が集まりました。
 自民党は衆院小選挙区での改憲本部の設置や草の根での運動の強化を打ち出しています。3000万人署名で追い詰められた結果です。安倍首相は夏の参院選で憲法改正を訴えるべきだとの考えを示し、参院選の公約案でも「憲法改正原案を国会に提案・発議し、国民投票を行い、早期の憲法改正を目指す」と明記する方針です。
 しかし、憲法審査会での議論は進んでいません。5月30日の衆院憲法審査会の幹事懇談会では国民投票でのCM規制などをめぐる国民投票法改正案の取り扱いを巡って協議しましたが折り合わず、成立には黄信号がともりました。
 自民党は改憲4項目(下記参照)の説明という「頭出し」だけでも行おうとしており、今後も予断を許しません。しかし、今国会の会期は1ヵ月を切り、衆参のダブル選もささやかれるなか与野党の対立は深まっています。安倍首相の執念と強気の姿勢はかえって野党の反発を強め、「数の力」で採決を強行すれば選挙での「逆風」を招きかねず、見通しは立っていません。

*自民党の「改憲4項目」とは?
 2017年12月20日、自民党憲法推進本部は、「憲法改正に関する取りまとめ」として「改憲4項目」をかかげました。「4項目」とは、①自衛隊について、②緊急事態について、③合区解消・地方公共団体について、④教育充実について、です。詳細は、改憲問題対策法律家6団体連絡会による『自民党改憲草案推進本部作成改憲案(4項目)「Q&A 」徹底批判』を参照してください。PDF版が以下のアドレスからダウンロードできます。http:// kaikenno.com/?p=1010 .




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7月5日(金) ブログ「五十嵐仁の転成仁語」へのアクセス数が1000万を突破した [日常]

 このブログへのアクセス数が1000万を越えました。昨日、何気なくアクセス数を見たら、すでに1000万2795アクセスになっています。現時点では、1000万4722です。
 気がつきませんでした。1000万を突破したのは一昨日だったのかもしれません。
 この機会に、日頃のご愛顧にお礼申し上げます。皆さんに読んでいただかなければ、何の意味もないのですから。

 今は「情報戦」の時代です。この闘いに打ち勝つためには、正しい情報が発信されなければなりません。
 「ポスト真実の時代」と言われ、「フェイクニュース(虚偽情報)」が飛び交っています。事実はどうなっているのか、何が本当のことかが、見えにくく分かりにくくなっています。
 しかも、安倍首相という権力者が、その権力を利用して意識的に事実を隠し、嘘を言い、ごまかすことに腐心しています。私のブログでの言説の発信はささやかなものではありますが、このような情報戦に打ち勝つための重要な武器なのです。

 日本国憲法12条には「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と書かれています。国民が黙れば民主主義は滅んでしまいますから、声を上げ続けることが求められているのです。
 国民は誰でも、可能な限り声を上げることが憲法の要請なのです。そうしなければ、「自由及び権利」は失われてしまうという警告を発しているのです。
 このような憲法12条の要請と警告に応える「不断の努力」の一環が、私にとってはこのブログの発信にほかなりません。できるだけ多くの方が、選挙での投票をはじめ、それぞれの方法で、可能な範囲で「不断の努力」を行うようにしていただきたいものです。

 とはいえ、ブログを書き続けるのは、そう容易なことではありません。できるだけ正確に、意を尽くして書こうとすれば長くなってしまいますし、書く時間も確保しなければなりません。
 適宜・的確な素早い発信と正確で長い記述とは矛盾する場合があります。どこかで妥協し、折り合いをつけなければなりません。
 しかし、読むことを楽しみにし、新しいブログのアップを待っている読者もおられます。講演などで「ブログを読んでいます」と声をかけてくださる方にお会いすることもあります。

 このように言われれば、やめるわけにはいきません。読者の皆さんの声が励みであり、やりがいでもあります。
 その声にできるだけお応えしたい。書き続けるのは大変ですが、ここまで来たら可能な限り続けたいと思っています。
 ただし、時々は休ませてもらいたいものです。気ままに気楽に書くことが長続きする秘訣だと思いますので。

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7月4日(木) 日本の命運をかけ、命とくらしを左右する参院選が公示された [参院選]

 いよいよ参院選が公示されました。7月21日の投開票日に向けて、激しい選挙戦が展開されます。
 この参院選は日本の命運がかかっているだけでなく、私たちの命とくらしが直接左右される重大な意義を持っています。棄権することなく投票所に足を運び、与党ではなく立憲野党の候補者に一票を投じていただきたいと思います。

 参院選の争点は過去6年半にわたって続けられてきた安倍首相による政治運営の総体にあります。この「安倍政治」を受け入れ、その継続を望むのか否かが最大の争点ではないでしょうか。
 アメリカのトランプ大統領と日本の安倍首相によって世界と日本の政治・経済はめちゃくちゃになってきています。この2人こそ世界のかく乱要因であり、それを除去することなしに世界と日本の将来はありません。
 そのためにはまず、この日本で安倍首相を断罪し、その退陣に向けての道すじをつけ、続いて来年のアメリカの大統領選挙でトランプの敗北を実現することが必要です。その最初の関門である参院選が公示され、闘いの幕が開きました。

 トランプ大統領の下で、アメリカは覇権国としての威信を失墜させ、国際社会から尊敬と信頼を受けるどころか、蔑みと警戒心を抱かれるようになりました。世界最強のソフトパワーを失ってしまったのです。
 安倍首相の下で日本も戦後築き上げてきた平和国家としての信頼を失いつつあります。東アジアにおける安定した民主国家としてのイメージは急速に低下し、国際秩序のかく乱者として警戒されるようになってきています。
 トランプ大統領の真似をして力づくの政策に転じ、韓国に対する「貿易戦争」を仕掛けるという過ちを犯してしまったからです。アメリカと日本の2人の指導者は、道義と見識、倫理と節度、慎みと自制などという価値観や生活態度とは無縁な世界に入り込んでしまいました。

 このような安倍首相によって導かれてきた過去6年半の政治運営の総体が、参院選での審判の対象とされなければなりません。自らの利益と政権の安定を最優先に、利用できるものなら何でも利用し、政治の土台を切り崩して信頼を失わせてきた「安倍政治」こそ、今回の選挙の最大の争点なのです。
 だからと言って個々の政策がどうでもよいというわけではありません。何よりもまず、安倍政権への幻想を生み出し長期政権を支えるための武器とされてきた外交と経済の二本柱への審判が必要でしょう。
 7月2日のブログ「G20首脳会議で露呈した『外交の安倍』の無残な姿」で指摘したように、「外交の安倍」は破綻して日本外交は漂流を始めました。経済政策の金看板であったアベノミクスにしても、厚生労働省が7月2日に発表した「国民生活基礎調査」で1世帯当たりの平均所得が2017年に「約551万円」と4年ぶりに前年を下回り「生活が苦しい」と感じている世帯が全体の57%に上ったことが分かったように大失敗しています。この二本柱の破綻は、もはや覆い隠すことができないほど鮮明になりました。

 これ以外の個別課題でも、安倍政権の行き詰まりは明確です。9条改憲の是非を正面から打ち出せずに憲法論議の是非へと争点をずらし、突如として大争点に浮上した年金問題に怯えて言い訳とごまかしに終始し、消費税の再増税という負担増を強いる政策を真正面から問わなければならない羽目に陥りました。
 安全保障問題でも壁にぶつかっています。イージス・アショアでは地元の不信を買い、沖縄辺野古での新基地建設の無理強いには強い反発が示されました。
 同盟相手のアメリカからはトランプ大統領の「日米安保条約破棄」発言という「弾」が背後から飛んでくる始末です。不公平だから破棄するというのなら、米軍は日本から出て行ってくれと言えばいいじゃありませんか。

 これ以外にも、今回の参院選には隠れた重大争点があります。存亡の危機に立たされている地方都市や農山漁村を救うことができるのかという問題です。
 安倍「農業改革」による兼業・小零細農家の淘汰、JAいじめ、種子法の廃止、TPP11や日欧EPA(経済連携協定)による農産品の関税引き下げ、漁業権を地元漁協だけでなく企業にも与えた漁業法改正、山林を荒廃させるリスクの高い森林法改正など、これまでも地方の荒廃をもたらす制度改革が重ねられてきました。郵政民営化による地方の郵便局の整理・廃止や日銀の異次元金融緩和による地方銀行や信用金庫など金融機関の経営不振などもあって、地方の産業と経済、生活と営業は青息吐息の状態になっています。
 これに追い打ちをかけると見られるのが、トランプ大統領が手ぐすねを引いている日米貿易交渉による事実上のFTAであり、農産品関税引き下げの大攻勢です。加えて、下がり続ける年金への不安と消費税の増税が地方の生活と営業にとって大打撃となることでしょう。

 これまでも地方の都市や農山漁村は苦難の連続で、すでにシャッター街は珍しくありません。消滅の危機に瀕した「限界集落」どころか、もう人が住んでいない「無住集落」まで現れています。
 すでに疲弊し崩壊し始めている地方を救うことのできる最後の機会が、今度の参院選なのではないでしょうか。「安倍政治」の方向転換を図るこの機会を逃せば、地方の都市や農山漁村を救う道は閉ざされ、この国に未来はありません。

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7月3日(水) 安倍首相による憲法論議の争点化は9条改憲という真の争点を隠すためのごまかしだ [参院選]

 参議院選挙に向けて、安倍首相は新しいごまかしを画策し始めたようです。それは憲法論議の争点化です。

 通常国会が会期末を迎えた最終日の6月26日、安倍首相は記者会見を開いて「憲法の議論すらしない政党を選ぶのか、国民の皆さまにしっかり考えを示し議論を進めていく政党や候補者を選ぶのか、それを決めていただく選挙でもある」と発言しました。また、 与野党6党首が6月30日にインターネット動画サイトの討論番組に出演して論戦を交わした際、憲法改正について「しっかり議論するのか、しないのかを問うのがこの参院選だ」と述べています。
 こうして安倍首相は、憲法の議論をする政党か、議論すらしない政党か選ぶことを参院選の主要な争点にする考えを打ち出しました。改憲論議の争点化です。
 しかし、果たしてそれが争点になるのでしょうか。別にある真の争点から国民の目を逸らすために、安倍首相がひねり出したごまかしなのではないでしょうか。

 この安倍首相の主張に対して、同じ与党である公明党の山口那津男代表は7月1日の日本経済新聞などのインタビューで「争点としての熟度が浅い。議論しないと公然と主張する政党はあまりない」と述べ。参院選後、改憲に前向きな勢力だけで議論することにも「数の力で押し切るのは良くない」と語ったそうです。その通りではありませんか。
 安倍首相が言う「憲法の議論すらしない政党」は存在していません。与野党6党首が6月30日にインターネット動画サイトの討論番組でも、安倍首相を含めて憲法についての議論がなされたではありませんか。
 「憲法の議論すらしない」ということで、席を立った政党はいませんでした。このような党首も政党も存在しないのに選べと言われても、存在しないものを選ぶことはできません。

 それなのに、「憲法の議論すらしない政党」があたかも存在するかのように強弁しているのは、安倍首相が二つのすり替えとごまかしを行っているからです。改憲問題についても、相変わらずの「隠す、ごまかす、嘘をつく」という3原則が貫かれているということでしょうか。
 一つのすり替えは、憲法論議の場を国会内に限定し、さらにそれを憲法審査会に狭めていることです。憲法論議の場は国会内や憲法審査会だけに限られず、街頭演説やテレビの討論会など沢山ありますが、憲法審査会での議論に参加しなければ「憲法の議論すらしない政党」だというのが安倍首相の言いたいことなのです。
 もう一つのすり替えは、憲法論議の内容を改憲賛成意見だけに限定し、さらにそれを自民党の改憲4項目や9条改憲への賛成に狭めていることです。憲法論議の内容は9条改憲への賛成論だけに限られず、それに反対する議論もありますが、改憲賛成の立場でなければ「憲法の議論すらしない政党」だというのが安倍首相の言いたいことなのです。

 実際には、改憲論を主張する自民党や維新の会以上に、改憲に反対し立憲主義を主張する野党の方が積極的に論陣を張り、9条改憲に反対する3000万人署名をもって国民的な議論を巻き起こしてきました。街頭や各家を回っての署名活動、演説やスタンディング、討論会や学習会などを通じて、草の根での地道な「憲法論議」を巻き起こしてきたからこそ、安倍首相の下での改憲には反対だ、9条を守れと言う声が多数になり世論を変えてきたのではありませんか。
 憲法論議を国会の内外で最も活発に展開してきたのは立憲野党です。自民党改憲4項目を支持する言論活動を行ってきたのは自民党の中でも安倍首相の周辺に限られます。
 安倍首相にしても、これまでの国政選挙では公約に改憲を掲げてあるのに演説ではほとんど触れてきませんでした。2020年改憲志向の表明にしても、国会内での答弁などではなく日本会議関連の改憲団体へのビデオメッセージにすぎなかったではありませんか。

 その安倍首相が今になって突然、憲法論議の是非を争点に押し出してきたのは、自民党改憲4項目にある9条への「自衛隊明記」の評判が悪く、改憲論議の必要性の方が多くの支持を得られると判断したからです。9条改憲の是非を憲法論議の是非にすり替え、9条に自衛隊を書き込むべきか、書き込んではならないかという真の争点を隠し、ごまかすためなのです。
 共同通信社は参院選の立候補予定者を対象に政策アンケートを実施し、6月30日までに269人から回答を得ましたが、9条への自衛隊明記には55.4%が反対し、賛成した30.1%を大幅に上回りました。また、改憲論議の是非については「必要」が62.5%で、「不要」の30.5%の倍以上となり、参院選後に優先すべき政策課題(複数回答)でも最多だったのは社会保障改革の54.6%で、憲法改正は7.1%にとどまっています。
 安倍首相の方針転換の背後には、このような現実があったのです。さし当り、9条改憲を含む改憲そのものより改憲についての議論への賛否を争点にした方が、有権者の支持を得られるという計算が働いたにちがいありません。

 そのために、巧妙なすり替えを行ったというわけです。このようなすり替えやごまかしに騙されてはなりません。
 憲法についての議論の是非は選挙の争点にはならないのです。憲法論議に反対する政党が存在しないのですから。
 真の争点は9条を含む現行憲法を変えるのか否か、特定の立場から自民党改憲4項目を押し付け、9条を無きものとしようと狙っている安倍首相の野望を許すかどうかという点にあります。この真の争点に対する審判をキッパリと下すことによって安倍首相の改憲策動を打ち砕くことこそ、今度の参院選の最大の課題にほかなりません。

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7月2日(火) G20首脳会議で露呈した「外交の安倍」の無残な姿 [国際]

 「G20の集合写真動画は衝撃的だ。前列中央に陣取る安倍さんの前を、各国首脳が次々と素通りするのだ。安倍さんがウラジミール、ドナルドと呼ぶ人も完全無視、他国の首脳と握手ハグを交わす始末だ、たった1人オランダのルッテ首相が握手を求めてきたが、それすらおざなりだった。どこが「外交の安倍」なんだ!」

 立川談四楼さんは、こう指摘されています。その通りです。
 この動画は、私も見ました。安倍首相の孤立ぶりが、映像によってはっきりと示されています。
 誠に無残だと申せましょう。これが「外交の安倍」の本当の姿だったのです。

 このG20首脳会議でも全体会合では何の成果も出せず、安倍首相の誤算は続きました。首脳宣言には2年連続で反保護主義の文言を盛り込むことができず、環境分野での地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の扱いではアメリカと、それ以外の参加国との姿勢の違いが鮮明になっています。
 結局、首脳宣言を出すことだけが自己目的化し、G20の空洞化をさらけ出す結果になりました。安倍首相のリーダーシップなどはどこにも示されず、トランプ大統領に気を遣う「ポチ」ぶりが際立つ結果になりました。
 そのうえ、夕食会のあいさつで大阪城の再建に当たってエレベーターを付けたのを「大きなミス」と発言し、バリアフリーの意識の欠如をさらけ出す始末です。この安倍首相の発言こそ「大きなミス」だったと言うべきでしょう。

 トランプ米大統領は大阪市で記者会見し、日米安保条約について「不公平な合意なので改定しなければならないと安倍首相に伝えた」と述べ「彼には半年も前からこの話をし続けて来た。彼も十分に理解しており異議などないはずだ」と明らかにしました。安倍首相はこのような話は出なかったと否定しています。
 両者の言い分は食い違っており、どちらかが嘘をついていることになります。安倍首相にしてみれば、信じられない驚愕の発言であり、政府内に激震が走りました。
 「スネ夫」にちやほやされた「ジャイアン」が付け上がって新たな嫌がらせに出たようなもので、貿易交渉をめぐる密約で弱みを握られた日本側にさらなる揺さぶりをかけてきたというところでしょう。この先、何を言い出すのか、どのような要求が飛び出すのか、安倍首相としても気が気ではないでしょう。

 そのトランプ大統領はG20後に韓国に行って板門店を訪問し、3回目の米朝首脳会談を行いました。軍事境界線を越えて北朝鮮領内に入った最初の現職大統領という歴史的な足跡を残したことになります。
 停滞していた非核化交渉の再開に向けて動き出すきっかけになるかもしれません。大統領選挙に向けたパフォーマンスだとしても、朝鮮半島の緊張緩和と平和促進に役立つのであれば高く評価されるべきです。
 安倍首相も米朝プロセスを歓迎すると言っていますが、心の中は複雑でしょう。同じ「仲介外交」でも、アメリカとイランの仲立ちをした安倍首相のイラン訪問は逆効果になったのに、G20で安倍首相が首脳会談を拒んだ韓国の文在寅大統領による「仲介」は大きな成果を収めたからです。

 このG20を機に一挙に決着をつけようと狙っていた北方領土返還交渉も、逆に暗礁に乗り上げてしまいました。北方領土問題の打開のために打ちだした「新しいアプローチ」も「2島先行返還」も、事態を打開する策にはなっていません。
 逆に、プーチン大統領にうまく利用されてしまいました。北方領土の帰属を曖昧にしてロシアによる実効支配を強化するために協力させられる結果になっています。
 北朝鮮との関係では日本だけがのけ者とされ、拉致問題の解決に向けて一歩も前進していません。中国との関係が改善の方向に向かい始めたことが唯一の救いですが、それなら中国を「仮想敵」とする南西諸島の要塞化は直ちに中止するべきでしょう。

 「外交の安倍」を売り込むために諸外国をせっせと訪問して50兆円以上もの対外資金をばらまいてきた結果が、この外交破たんです。何とも無残な姿ではありませんか。
 NHKの岩田明子記者などを利用してフェイクニュースを振りまいて幻想を与えてきた安倍首相のやり方も、もはや限界に達したということでしょう。G20首脳会議で勢いをつけて参院選になだれ込むという当初の作戦は挫折し、国際社会からの孤立ぶりを露呈して逆風を強めるという全く逆の結果となってしまいました。
 もう、ボロボロではありませんか。メデイアを操作して国民は騙せても、世界は騙せないということでしょうか。

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7月1日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは6月30日付の『日刊ゲンダイ』に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「G20大誤算 最大の見せ場で露呈した「外交の安倍」正体」
 これでハッキリわかったのは、ペテン首相の口先が通用するのは国内だけということだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏は言う。

 「“戦後外交の総決算”を掲げながら安倍首相は理解していないようですが、大規模な国際会議を日本で開催できるのは、戦後一貫して歩んできた平和国家ゆえです。安倍首相が毛嫌いする憲法9条のおかげなのです。安倍首相は憲法改正の参院選争点化を狙っていますが、トンチンカンもいいところ。国際的な役割を振る舞うことができているのは、9条あってこそ。アベ外交の成果では決してありません」

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