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6月26日(火) 消費増税法案は衆院で可決されたが反対票を投じた民主党議員は57人に上った [政局]

 本日の衆院本会議で、消費増税法案の採決が行われ、賛成363票、反対96票で可決されました。民主党議員では、小沢グループを中心に57人が反対票を投じ、欠席・棄権を含む造反者は約70人になりました。

 消費増税法案は衆院を通過し、これからは参院での審議が行われることになります。注目された民主党の造反議員の数は、衆院での与党が過半数を失う54議席を3議席上回りました。
 厳正な処分を要求する自民党に従ってこれらの造反議員を全て除名して民主党から追い出せば、与党は衆院で過半数を下回り、少数与党となります。もし、そうすれば、民主党を分裂させ、消費増税法案の参院での成立後、内閣不信任案を提出して解散・総選挙に追い込もうという自民党の狙い通りの展開になるでしょう。
 民主党の分裂回避を最優先している輿石幹事長が、このような自民党の狙いに気づかないはずがありません。それが分かっているのに、輿石さんは造反議員を処分できるでしょうか。

 しかし、消費増税に反対した57議員に「お咎めなし」ということになれば、民主党内で賛成した増税推進派は執行部を突き上げることでしょう。「党議拘束がかかる」と答弁し、厳しい処分を匂わせていた野田首相に対する求心力は急激に衰えるにちがいありません。
 もっとも、「心から、心から、心から」と3度も繰り返してお願いしたにもかかわらず、少数与党になるかもしれない57人もの造反を出してしまったのですから、野田さんの求心力はすでに低下していたということもできます。
 そのように弱体化した執行部に、強硬な手段をとる力があるでしょうか。野田さんの前には、「置き石」となった輿石さんが立ちはだかるかもしれません。

 もし、民主党の執行部が毅然とした処分を行わなければ、自民党も黙っていないでしょう。谷垣さんは、民主党が造反者に対して曖昧な対応をとれば、参院での審議には協力できないと言っていました。
 9月には、自民党も総裁選を控えていますから、谷垣さんも後がありません。自民党内でも、すでに野田政権の延命に手を貸しただけではないのかという批判の声が上がっています。
 一方で、消費増税のために参院審議で部分連立を行いながら、他方で、野田政権を解散・総選挙に追い込むという難しい対応が迫られます。党内を掌握できない野田執行部を相手に、このような「曲芸」が可能なのでしょうか。

 さて、これから先、小沢さんはどう対応するでしょうか。採決後、国会内で開いた小沢グループの会合で、小沢さんは「本来の民主党に立ち戻るための努力をこれからもしていきたい」と結束を呼びかけたといいますから、すぐに離党して新党結成という可能性はあまりないと思います。
 当面は、離党をちらつかせながら、執行部の対応を見守るのではないでしょうか。私は24日のブログで、「いずれにしても、小沢グループが消費増税関連法案に反対票を投ずることは確実であり、いずれ民主党を飛び出すことになると思います。小沢さんは、そのための最も効果的なタイミングを図っているように見えます」と書きましたが、その見方は今も変わっていません。
 約70人の造反という数の力を最大限に生かしつつ、執行部に対する揺さぶりをかけ続けるように思います。ここでも、注目されるのは輿石さんの動向です。

 造反した議員の処分は、野田首相と輿石幹事長に一任されました。野田さんの力が強ければ除名、輿石さんが押し戻せば党員権停止、というところでしょう。
 党員権停止の場合は、その期間が問題になります。造反の内容によって、1ヵ月とか2ヵ月とかの長短を付けるでしょう。
 問題は3ヵ月になる場合です。民主党代表選の9月にまで及ぶかどうかで、輿石さんがどちらを向いているかが分かるでしょう。

 ということで、「政界三国志」の戦端が開かれました。永田町も暑い夏を迎えることになりそうです。

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6月24日(日) 消費増税3党合意をめぐる民主党の混乱をどう見るか [政局]

 いよいよ、民主党野田執行部、小沢グループ、自民党の「政界三国志」が佳境に入ってきたようです。6月26日に予定されている消費増税関連法案の採決を前に、民主党の動きが風雲急を告げ、小沢グループが造反して離党するのではないか、離党すれば何人が同調するのかが注目されています。

 民主党は、明日、臨時代議士会を開いて、党内の結束を固めるとしています。野田首相と輿石幹事長が出席して採決への協力を求め、造反の動きを止めようというわけです。
 これが功を奏するかどうかは分かりません。少なくとも、野田さんは厳しい批判と追及の声にさらされるでしょう。
 ガス抜きになるのか、さらにガスを充満させてしまうのか。これまでの会合と同様に、おそらく、混乱のうちに幕引きとなることでしょう。

 野田首相は、採決で反対した議員に対しては、除名など厳しい処分で臨むとしています。しかし、これは造反への動きを抑えるための脅しの意味もありますから、実際にそのような処分を行うかどうかは分かりません。
 小沢さんは、消費増税関連法案に反対票を投じた後、50人以上をひきつれて離党し、新党を結成する準備を始めたそうです。しかし、これも執行部の処分を牽制する意味がありますから、実際にそのような行動をとるかどうかは分かりません。
 ここでも、カギを握っているのは輿石幹事長と中間派とされるグループの動きです。党の分裂を避けることを至上命題に、厳しい処分を避けて分裂の動きを防ごうとするでしょう。

 いずれにしても、小沢グループが消費増税関連法案に反対票を投ずることは確実であり、いずれ民主党を飛び出すことになると思います。小沢さんは、そのための最も効果的なタイミングを図っているように見えます。
 このような小沢グループの動きに対して、覚悟の上での造反なのかと問う人がいます。しかし、民主党内で消費増税に反対する以上に覚悟が必要なのは、賛成票を投ずる方の議員ではないでしょうか。
 総選挙は近いと見られており、各議員の対応や行動は有権者の重要な判断材料になるからです。選挙に当たって、どうしてマニフェストに反する消費増税に賛成したのかと有権者から問われた場合、賛成した議員はどのように弁明するのでしょうか。

 消費増税だけではありません。おそらく小沢新党は原発の再稼働やTPPへの反対も争点として掲げるでしょう。
 これらの問題についても、「大義の旗」は小沢さんの側にあります。野田さんのマニフェスト違反や民意に反する原発再稼働などによって、「ダーティー小沢」は「大義の旗」を押し付けられたような形になったからです。
 小沢さんは、気がついたら「正義の味方」の役回りを演ずることになりました。選挙に向けても「大義の旗」を降り、野田さんに対抗する戦略を採り続けるでしょう。

 この場合、どちらに分があるかは明らかではないでしょうか。消費増税に賛成した民主党の候補者は、野田政権という沈みつつある「泥船」に乗って一緒に沈んでいくことになるでしょう。
 そのための覚悟があるのでしょうか。それが問われるのが、明後日の採決というわけです。
 議員は国民の代表ですから、「説明できる行動」が求められます。「釈明しなければならない行動」をとれば、次の選挙で痛い目に遭うことは確実です。

 今ほど、民意を見定めた行動が求められるときはありません。くれぐれも、「一体改革」によって「政治改革」「構造改革」の失敗を繰り返さないようにしてもらいたいものです。
 「二度あることは三度ある」ということになるのか、それとも「三度目の正直」ということになるのか。国民の一人として、私も事態の推移を注視したいと思います。

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6月15日(金) あまりにもタイミングの良すぎるオウム真理教・高橋容疑者の逮捕 [政局]

 やっぱり今日捕まりましたね、オウム真理教の高橋克也容疑者です。東京・蒲田の漫画喫茶にいたところ、よく似た男がいるとの通報によって警察が身柄を確保し、指紋を照合して本人と確認されたそうです。
 3党による税と社会保障の一体改革についての密室協議の期限とされているこの日に、多分、捕まるのではないかと思っていました。大飯原発の再稼働に向けて、大飯町長がゴーサインを出した直後でもありますし……。

 6月9日付けのブログ「秒読みに入った大飯原発の再稼働」で、私は次のように書きました。
 
 この再稼働決定の発表を目だ立たなくする秘策が密かに練られているという噂があります。まさか、オウム真理教の高橋克也の逮捕とぶつけるために泳がしている、などということはないでしょうね。

 これから数日間は、この高橋容疑者の逮捕の報道で持ちきりということになるでしょう。すでに、NHKとTBSは特別番組を組んで速報していました。
 私のブログでの記述は大飯原発の再稼働問題についてのものですが、結果的に、一体改革についての合意への動きも「目だ立たなくする」ことになるでしょう。大飯原発の再稼働についての最終判断を行う関係閣僚会議も明日にでも開かれるそうですから、まさに「煙幕」としては格好のタイミングになりました。
 これは、果たして偶然なのでしょうか。この絶妙のタイミングは、余りにも政権・与党にとって都合が良すぎます。

 原発再稼働や消費増税など国民が反対する愚策の強行に「ぶつけるために泳がしている」のではないかという「噂」は、必ずしも「げすの勘ぐり」ではなかったようです。このような「秘策」を駆使してまでも、原発の再稼働や消費増税を強行したいということなのでしょうか。


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6月13日(水) 民主党は自民党の軍門に下るのか [政局]

 税と社会保障の一体改革に向けての3党協議が煮詰まってきました。民主党はほとんどの点で自民党の要求を呑むようです。

 私は、5月3日のブログ「小沢無罪判決によって幕を開けるかもしれない『政界三国志』」で、次のように書きました。

 今回の判決によって、野田執行部は窮地に立たされることになりました。政治生命をかけるとしている消費増税法案を通常の国会運営によって会期内に成立させることはほとんど絶望的です。
 ここで「援軍」としてあてにされているのが自民党ということになります。こうして、野田さんは自民党との連携に「政治生命」をかけるかもしれません。
 そのための秘策は、「丸呑み」路線です。消費増税法案成立の一点を最優先し、その他の問題では自民党の言うことを全て聞いてしまおうというわけです。

 また、6月8日のブログ「国民不在の談合による政治決着は許されない」でも、次のように指摘しました。

 民自公3党は6月15日までの取りまとめを目指していますが、社会保障分野で意見の隔たりは大きく、協議は難航するとみられています。特に、民主党がマニフェストで掲げた最低保障年金や後期高齢者医療制度の廃止などをめぐって、民自両党の意見の隔たりには大きなものがあります。
 野田首相は、G20出席のためにメキシコに向かう前日の15日までに、消費増税法案の衆院通過を図りたい考えですが、充分な時間がありません。協議がまとまるかどうかは微妙なところです。
 唯一、可能な方法は、社会保障分野での協議を先送りすることです。一部で提案されている「国民会議」などを設置して社会保障改革については1年かけて議論しようという案がこれに当たります。

 これまでの3党協議で、消費増税と社会保障改革を分離して消費増税だけを先行決着させ、社会保障改革については「国民会議」に先送りするという「妥協案」が浮上しています。ほぼ、私の予想したとおりの展開になっていると言って良いでしょう。
 ただ、まだ「丸呑み」するには、自民党案の「骨」が大きすぎ、飲み込んだ後、ノドにつっかえるのではないか、腹痛を起こして身体をこわしてしまうのではないか、などの心配があります。参議院予算委員会で自民党が提示した社会保障制度改革基本法案を「受け入れる可能性も含めて仔細に検討したい」と答えたように、野田さんは覚悟を決めていても、周囲が決断できないという状況なのでしょう。
 他方で、民主党内での拒絶反応も強まっています。自民党の提案をそのまま飲み込んでしまえば、民主党は民主党でなくなり自民党になってしまうようなものですから、それも当然でしょう。

 こうして、民主党は自民党に乗っ取られようとしています。野田首相は消費増税実現のために、民主党を「開城」して引き渡すつもりのようです。
 民主党の議員や党員の皆さんは、これを座して見ているのでしょうか。政権交代の際の国民への約束は嘘だったのでしょうか。
 自民党政治からの転換を望んだ国民の願いと期待を裏切るつもりなのでしょうか。自民党と同じことをやるのであれば、一体、何のための政権交代だったのかと問われるのは当然でしょう。

 これほどの裏切りの後に、「国民の負託」や「政治への信頼」を口にできると考えているのでしょうか。自民党の軍門に下るのであれば、民主党は解党して国民に謝罪するべきでしょう。
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6月3日(日) 通常国会最終盤で急浮上してきた解散・総選挙の可能性 [政局]

 「先生は落研(おちけん)ですか?」と尋ねられました。昨日の日本民主法律家協会のシンポジウム「国会と選挙はどうあるべきか」が終わったときです。
 落語みたいな話だったということでしょうか。「面白かった」ということなら、それはそれで結構なことなんですが……。

 さて、注目の野田・小沢の再会談です。会談は午前11時前に始まり、輿石幹事長も同席しました。
 会談終了後、野田首相は記者団の取材に応じ、3者会談で「内閣改造も明日行うことを伝えた」、「(小沢氏に)賛同を得ることはできなかったが、今国会中に(社会保障・税)一体改革法案を成立させると言ってきた。政党間、特に自民党との協議は進めさせて頂くと伝えた」と述べました。協議にあたって、「小沢先生のご意向を踏まえることはない」とも語っています。
 予想通り平行線、というより「決裂」といった方が良いかもしれません。これで、野田首相は小沢グループを切り捨てて、自民党などとの連携路線を本格的に追求することになるでしょう。

 通常国会の会期は21日までですが、野田さんは18 日からG20出席のためメキシコを訪問し、帰国は早くても20日ですので、事実上、15日までがタイムリミットになります。この時までに、消費増税を含む「一体改革」関連法案の会期内での成立か、会期の延長か、結論を出さなければなりません。
 民主党の執行部からは、「消費税法案の採決は15日」との見通しも流されているそうです。その頃には特別委員会での審議も、野田さんが「採決のメド」としてきた100時間に達する見込みだからです。
 しかし、民主党内はまとまっていませんし、野党との協議も時間切れになる可能性があります。法案採決も会期延長も見通しが立っているわけではありません。

 野田首相から秋波を送られている自民党は、さしあたり様子見を決め込むのではないでしょうか。消費増税法案の成立に協力するか、それとも野田内閣を解散・総選挙に追い込むか、という二つの選択があり得るからです。
 修正協議で対案のハードルを低めれば、野田首相に丸呑みされ、増税法案に反対できなくなります。この過程で解散・総選挙が約束さえれるかどうかは不明で、消費増税の責任だけを分担させられるというリスクがあります。
 もし、民主党内での対立が高まり、小沢グループが明確な反旗を翻せば、内閣不信任案を提出するかもしれません。民主党内での亀裂が大きくなれば、可決される可能性が出てくるからです。

 小沢さんは、できれば消費増税法案の採決を先延ばしし、秋の民主党代表選挙で反転攻勢に転じたいと考えているでしょう。輿石幹事長は、その意を受けて、密かにサボタージュ戦術を実行しています。
 しかし、野田さんが自民党との連携に走り、採決を強行しようとすれば、真正面から激突せざるを得なくなります。自民党案の「丸のみ」などの妥協に抵抗し、早期の採決に反対するにちがいありません。
 野田さんが自民党に擦り寄ろうとすればするほど、この抵抗は強まり、反対派は小沢グループだけではなく鳩山グループや中間派に拡大する可能性があります。もし、内閣不信任案が提出されれば、それに賛成するかもしれません。

 こうして、昨年と同様のシーンが繰り返される可能性が出てきます。しかし、野田さんが退陣を約束して党内の結束を回復するというような「奇策」はもう通用しません。
 もし、採決を強行すれば、小沢グループは反対に回るでしょう。これらの人々を除名すれば、民主党は衆院での多数を失います。
野党はいつでも内閣を打倒できる力を獲得するわけです。除名された小沢グループは新党結成を模索し、政局は解散・総選挙含みで緊迫するちがいありません。

 ここでも、カギを握っているのは輿石幹事長です。野田さんは、この「置き石」を取り除いて、消費増税関連法案の採決強行へと突っ走ることになるのでしょうか。それとも、この「石」にけつまずいて転んでしまうのでしょうか。
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5月31日(木) 消費増税「政界三国志」の新局面が始まった? [政局]

 「消費増税は待ったなしだ。協力してもらいたい」
  「大増税の前にやることがある。賛成と言うわけにはいかない」

 野田さんはこう言って協力を求め、小沢さんはこう言って反対する考えを示しました。野田首相と民主党の小沢元代表との会談は、このように「平行線」を辿り「物別れ」に終わりました。
 まあ、予想通りの展開で、両者共に「想定の範囲内」の結末だったのではないでしょうか。両者の会談は形だけのセレモニーに終わりましたが、消費増税をめぐる「政界三国志」は新たな局面に入ったのかもしれません。
 というより、野田首相にとっては、新たな展開を開始するための一種の手続きだったと言うべきかもしれません。自民党に擦り寄る「免罪符」を手に入れるための……。

 一方の野田さんにしてみれば、「党内融和」に努めているとの姿勢を示して、輿石幹事長をはじめ小沢さんに近いグループの離反をできるだけ抑えたいと思っていたでしょう。他方の小沢さんにしてみれば、「話し合い」は拒否していないことを示して「小沢切り」の口実を与えないようにする狙いがあったと思われます。
 結局、両者、それぞれの思惑を秘めたセレモニーに終わったのはこのためです。しかし、明日からは6月で会期末は21日ですから、野田さんに残されている時間はそう多くありません。
 小沢さんからすれば、採決を先延ばしして9月の代表選で勝負をかけるつもりですから、まだ余裕があります。決裂を避けながら、時間稼ぎしたいところでしょう。

 ということで、「平行線」「物別れ」によって、事実上、追い込まれたのは野田さんの方です。新しいアクションに出る必要が生じました。
 一つには、野党との連携であり、早速、自民党との修正協議を指示したそうです。「丸のみ」路線に向けての行動開始と見て良いでしょう。
 もう一つは、このような協議のネックになっている問責2閣僚の交代に向けての動きです。近々、小規模の内閣改造によって、この「小骨」を抜くことになるでしょう。

 ここでカギを握るのが輿石幹事長と世論の動向です。輿石さんは、どこまで野田首相の意を汲んで汗をかくでしょうか。
 輿石幹事長は小沢さんに近いとされていますし、問責2閣僚を推薦したのも輿石さんでした。自民党や野党の対応次第では、輿石さんが政局展開を阻む「置き石」になってしまうかもしれません。

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5月11日(金) いよいよ民主党の「丸呑み」戦略が始まったのでは? [政局]

 いよいよ、始まりましたね。民主党の「丸呑み」戦略が……。

 政府・民主党は、原子力の推進と安全行政を担う行政組織をめぐって、政府案に盛った原子力規制庁よりも人事や予算面で独立性の高い国家行政組織法第3条に基づく「原子力規制委員会」を設ける方向で調整に入ったそうです。今日の『日経新聞』が伝えていました。
 この記事によれば、「自民、公明両党が提出した対案を事実上丸のみする」ということのようです。そのめざすところは、一つには、関西電力大飯原子力発電所の再稼働を急ぐためでしょう。
 「原発に対する規制組織が発足もしていないのに、再稼働とは何事か」という周辺住民や国民の批判をそらすための措置です。そして、もう一つは、野田首相が「政治生命」をかけるとしている消費増税を柱とした社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向けての条件整備のためでしょう。

 社会保障と税の一体改革関連法案は、8日の衆院本会議で審議入りしました。これについて、野田佳彦首相は「不退転の決意で今国会中に成立させなければならない。政治生命をかけると言った言葉に掛け値はない」と表明し、野党に「胸襟を開き、国民の立場に立って協議に応じるよう重ねてお願いする」と与野党協議を呼びかけています。
 これに対して、自民党は参院で問責決議を受けた2閣僚の対応を見ながら、対案の提出時期を探る構えです。あまり早く対案を出して、「丸呑み」戦略に取り込まれては困る、ということでしょう。
 5月3日付のブログ「小沢無罪判決によって幕を開けるかもしれない『政界三国志』」
で、私は次のように書きました。

 ここで「援軍」としてあてにされているのが自民党ということになります。こうして、野田さんは自民党との連携に「政治生命」をかけるかもしれません。
 そのための秘策は、「丸呑み」路線です。消費増税法案成立の一点を最優先し、その他の問題では自民党の言うことを全て聞いてしまおうというわけです。

 この「自民党の言うことを全て聞いてしまおう」という対応の最初の兆候が、今回の「自民、公明両党が提出した対案を事実上丸のみする」という形での「原子力規制委員会」の発足ということになります。
 おそらく、このような形での譲歩や「丸呑み」が、これからも続くことになるでしょう。それが、政治の後退ではなく、前進的な変化に結びつけば良いんですが……。

 さて、明日から、再び、ふる里の上越市に行きます。今回は帰省ではなく、仕事です。
 今度の日曜日(13日)の午後に、上越市の市民プラザで上越九条の会発足7周年記念講演会が開かれ、「命と安全を守るために、今こそ憲法を活かすとき」という講演をするからです。ふる里での講演は、昨年の秋に続いて2回目になります。
 上越市周辺の皆さん、沢山お出で下さい。当日、会場でお会いできるのを楽しみにしております。
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5月10日(木) 小沢民主党元代表の党員資格停止解除と東京高裁への控訴をどう見るか [政局]

 民主党の小沢一郎元代表の無罪判決をめぐって、二つの大きな動きがありました。一つは10日付けでの党員資格停止の解除であり、もう一つは検察官役の指定弁護士による東京高裁への控訴です。

 東京高裁での判決は来年2月頃に出ると見られています。その内容がどうなるのか、三つの可能性があります。
 一つは、限りなく黒に近い灰色という現在の「無罪」判決がそのまま維持される場合です。もしそうなれば、検察審査会のあり方や小沢裁判そのものが、大きな批判にさらされることになるでしょう。
 もう一つは、灰色ではなく真っ白になっての無罪判決です。政治資金収支報告書の虚偽記載について、今回の判決は小沢被告の「関与」を認めましたが「共謀」については証拠不十分だとしました。
 この「関与」自体、否定される可能性があります。もしそうなれば、小沢裁判や指定弁護士に対する批判はさらに大きなものとなるでしょう。

 第三の可能性は、一審判決が覆されて有罪とされる場合です。もしそうなれば、小沢被告は「真っ黒」だったということが認定され、政治生命を絶たれることになるでしょう。
 しかし、その可能性は、それほど多くはありません。もともと有罪の立証が難しいために検察は起訴を諦め、それを起訴すべきだと議決した検察審査会の判断材料には虚偽の証拠が含まれており、裁判でも供述証拠の多くは採用されず、今後、新しい証言など「共謀」を立証するに足る新たな証拠が得られるとは思われないからです。
 一審判決には納得できないという指定弁護士の気持ちは十分に理解できますし、小沢金脈に対する疑惑が解明されたわけではありません。しかし、だからといって控訴審の裁判官も同じように判断して事実認定を覆すでしょうか。

 今回の二つの動きは、今後の政局に大きな影響を与えることでしょう。
 第1に、小沢さんは、これで秋の民主党代表選に立候補できなくなりました。たとえ、民主党内でのイニシアチブを握ることができても表舞台には立てませんから、野田さんを追い落として首相になるという野望はほとんど潰えたことになります。
 第2に、小沢さんと民主党の対応に対する世論の批判は強まり、野党の攻勢も厳しいものになるでしょう。当面は、問責決議を挙げられた2閣僚の解任と小沢さんに対する証人喚問をめぐって、与野党の対立が強まるにちがいありません。

 第3に、野田首相にとっては、プラスになるかマイナスになるかは微妙なところです。民主党内での小沢さんの力や影響力が強まるのか、それとも弱まるのかが不明確だからです。
 少なくとも、秋の代表選での対抗馬として小沢さんが登場する心配がなくなったという点ではプラスかもしれません。しかし、党員資格を回復した小沢さんとそのグループが攻勢を強めることになれば、野田さんにとってのマイナスが大きくなります。
 小沢さんへの証人喚問要求などの野党からの攻勢も、直接には野田内閣に対してなされます。このような野党攻勢は小沢さんへの牽制として利用できる面があるとしても、与野党関係は厳しいものになるでしょう。

 税と社会保障の一体改革で自民党との協調路線を模索している野田さんにしてみれば、依然として視界不良の状況が続くことになります。北関東は竜巻が吹き荒れる嵐に見舞われましたが、永田町界隈でも、しばらく荒れた天候が続きそうです。

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5月3日(木) 小沢無罪判決によって幕を開けるかもしれない「政界三国志」 [政局]

 「陸山会事件」によって強制起訴された小沢一郎民主党元代表は、東京地裁の一審判決で「無罪」とされました。判決内容は「白」というよりも「黒」に近い灰色であり、小沢金脈に対する疑惑も解明されず、説明責任も果たされず、小沢さん自身の政治的道義的責任は残ります。
 とはいえ、この判決によって小沢グループは息を吹き返し、小沢さんの復権に向けての動きも始まりました。民主党の野田執行部と小沢グループとの亀裂と対立は深まる様相を見せており、これに自民党を加えた三つの勢力の争いは「政界三国志」の幕を開くかもしれません。

 今回の判決によって、野田執行部は窮地に立たされることになりました。政治生命をかけるとしている消費増税法案を通常の国会運営によって会期内に成立させることはほとんど絶望的です。
 ここで「援軍」としてあてにされているのが自民党ということになります。こうして、野田さんは自民党との連携に「政治生命」をかけるかもしれません。
 そのための秘策は、「丸呑み」路線です。消費増税法案成立の一点を最優先し、その他の問題では自民党の言うことを全て聞いてしまおうというわけです。

 もちろん、この「丸呑み」の最たるものは、消費増税法案そのものということになるでしょう。もともと消費税を10%引き上げるとの方針を掲げていた自民党に独自の対案を出させ、それをそのまま「丸呑み」してしまうかもしれません。
 もし、自民党が対案を出し、野田さんがそれを評価する動きを示せば、このような事実上の連携路線が動き出したと見て良いでしょう。その背後には、解散・総選挙の実施と消費増税法案の成立というバーター取引についての密約があるはずです。
 そうなれば、自民党は内閣不信任案を提出せず、通常国会の延長にも同意するでしょう。延長国会で消費増税法が成立し、密約に基づいて野田首相が解散・総選挙の動きを示せば、谷垣さんは秋の自民党総裁選で再選される可能性が出てきます。

 しかし、そう簡単にはいかないかもしれません。一つには、問責決議された2閣僚の扱いがあります。
 自民党は、これらの閣僚の交代を求めており、いまのところ、野田さんはそれを拒んでいます。自民党との間の「棘」となっているのが、この問題です。
 この「棘」が、いつ、どのような形で抜かれるのか、それとも曖昧にされるのか。この問題がどのように処理されるかが、一つの注目点でしょう。

 もう一つの問題は、小沢さんの証人喚問です。今回の判決では、疑惑とされた問題のほとんどが認定され、最後の「共謀」についてだけ、証拠が不十分だとして有罪とされませんでした。
 しかも、本人は無罪でも、秘書は有罪とされています。小沢金脈についての解明も弁明もほとんどなされていません。
 政治的道義的責任は免れず、野党は一致して国会で説明せよと要求しています。この問題がどう処理されるのか、自民党はどうするのかが、もう一つの注目点でしょう。

 しかも、野田執行部の中心にいて野党との折衝などを担当するのは、小沢さんに近い輿石幹事長です。この人が、野田さんの思い通りに動くでしょうか。
 輿石さんは、小沢さんの証人喚問を拒み続けるでしょう。消費増税法案の扱いについても、審議や採決を急がず、通常国会が延長されても継続審議に持ち込もうとするでしょう。
 小沢さんの復権を密かに後押しし、野田さんを牽制して自民党との連携にくさびを打ち込もうとするかもしれません。野田さんは、輿石さんを御しつつ、自民党との密かな連携を模索するという難しい政局運営を強いられることになります。

 他方、小沢グループの目標は、小沢さんの党員資格停止を解除し、何らかの役職を求め、党内での復権を果たすことです。そのために、鳩山グループなど反・非野田勢力の糾合に努めることでしょう。
 「小沢・鳩山連合軍」が形成されれば、小沢さんを処分した岡田副総理に対する責任追及など野田執行部への揺さぶりを強めるにちがいありません。消費増税法案やTPP参加方針などへの批判を強め、反対運動を高めようとするでしょう。
 今国会中の消費増税法案の採決を阻止し、9月の民主党代表選での野田追い落としを図ることになります。代表選で小沢さんか代わりの人が当選すれば、秋の臨時国会で消費増税法案を廃案とし、民主党をマニフェスト路線に復帰させるような政策転換を試みるかもしれません。

 小沢さんの狙いは、政権交代を実現した当時の路線に民主党を復帰させることであるように見えます。こうして、来年の任期満了まで選挙を先延ばしして民主党を立て直し、反消費税、反TPP、脱原発の政策で総選挙を戦おうとするでしょう。
 こうすることでしか、民主党の支持率を回復して「小沢チルドレン」を救うことができません。もし、そうしなかったなら、小沢という政治家もその程度の人物だったということになります。
 代表選で勝利し、民主党を「国民の生活が第一」路線に復帰させ、総選挙で自民党を叩きのめすことでしか、小沢さんは生き残ることができません。これこそが、小沢さんの言う「最後のご奉公」なのではないでしょうか。

 という見方は、あまりにも小沢寄りだという気が、私自身にもします。でも、野田執行部と自民党の連携という事実上の「大連立」による消費増税とTPP参加という最悪のシナリオを避けるためには、「小沢・鳩山連合軍」に望みを託すしかないのが、日本政治の悲しい現実なのです。
 もし、野田・自民「大連立」が成れば、小沢グループは民主党を飛び出して新党を結成せざるを得なくなり、他党や橋下大阪市長などを巻き込んだ政界再編が生じるでしょう。その場合には、今年の夏から秋にかけて総選挙ということになります。
 そのような選挙になっても、小沢新党は反消費税、反TPP、脱原発の政策を掲げる可能性が高いのではないでしょうか。小沢新党が生き残りを図ろうとすれば、そうする以外に道はないからです。

 かくして、日本の政治は「政界三国志」から天下大乱の「戦国時代」を迎えることになりそうです。いずれにしても、それが必ずしも明るい展望に結びつかないところに、小選挙区制によってタガをはめられた日本政治の閉塞状況が端的に示されていると言わざるを得ません。

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3月2日(金) 野田首相と谷垣自民党総裁の極秘会談をどう見るか [政局]

 とうとう、3月に入ってしまいました。春、間近というのに、法政大学の多摩キャンパスは、先日降った雪で今も真っ白です。

 このところ、『日本労働年鑑』の原稿集めと編集に忙殺されて、ブログに書く余裕がありませんでした。ご無沙汰してしまい、申し訳ありません。
 お陰様で、2月中に集めるべき原稿は全て揃い、編集作業は順調に進んでいます。執筆などでご協力いただいた皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。
 とはいえ、まだ、原稿を読んで調整したり、手を入れたりする作業が残っています。最終的には私が全て目を通して手を入れますので、しばらくの間、繁忙期は続きます。

 ところで、この間も日本の政治はどんどん悪くなっているように見えます。西に「思想調査」に執念を燃やす市長がいれば、東には「憲法破棄」を叫ぶ都知事がおり、その間には「南京虐殺はなかった」と断言する市長まで登場しました。
 地獄のふたが開いたということでしょうか。それとも、大阪での「橋下人気」に便乗して、この際だから言いたいことを言おうということなのでしょうか。
 「橋下ブーム」を生み出した大阪の人は、「どつき漫才」を見ているような気持ちで面白がっているのかもしれません。でも、そのうち、「どつかれて」いるのは自分たち自身だということに気づかされるにちがいありません。

 野田首相と谷垣自民党総裁の極秘会談という珍事もありました。両者ともに否定していますが、否定しなければならないようなことを、どうしてするのでしょうか。
 これも、小選挙区制の害悪の現れの一つで、2大政党の政策的接近という背景があります。しかも、野田首相が最大の課題としている消費増税では違いがなく、その他の政策でも民主党は自民党に急接近しています。
 民主党が掲げていた「政治主導」は破綻し、旧自民党時代の「官僚主導」に戻りつつあるからです。「王政復古」ならぬ「官政復古」によって民主党も自民党も同じ方向をめざすことになり、それを確認するための極秘会談だったということでしょう。

 しかし、このような2大政党の接近は、大きなジレンマを抱えています。小選挙区制ですから、選挙になれば互いに当選を競わなければならないからです。
 民主・自民の両党内からの反発が強まっているのは、消費増税への反対論とともに、このような選挙での不安があるからです。とりわけ、、「敗北必死」とされている民主党にとっては、総選挙が早まることは到底認められないでしょう。
 会談をどちらが呼びかけたのかは不明ですが、谷垣さんが投げたエサに野田「どじょう」が食らいついてしまったのかもしれません。もしそうなら、美味しそうなエサを投げて魚を釣り上げようという野田さんのやり方を、谷垣さんに真似されてしまったことになります。

 というのは、公務員の給与削減問題で、野田さんはこのようなやり方を取ったからです。多分、消費増税問題でも、同じようなやり方が取られるでしょう。
 公務員の給与削減は連合系の組合まで受け入れ、共産党以外の政党が賛成して改正法が成立しました。労働基本権の付与をエサにして給与削減を呑ませ、結局、削減だけを実現させたわけです。
 同様に、消費増税も、社会保障の改革をエサに呑ませ、結局、増税だけを実現しようとしているわけです。「一体改革」とは言っても先ず出てくるのは消費増税法案で、社会保障改革関連法案は、その後、順次に出すというのですから。

 いつまで、見え透いた手口に騙され続けるのでしょうか。原発の「安全神話」に騙されてきたことへの反省が迫られたばかりだというのに……。
 政権が交代すれば全てが上手くいくという「政権交代神話」、米軍基地がなければ安全は保たれないという「抑止力神話」、財政再建や福祉の充実には消費増税しかないという「消費増税神話」などなど、国民を騙す神話はまだまだその辺に転がっています。
 神話は、そう信じられているというだけで、真実ではありません。「神の国」の物語に惑わされることなく、人々が実際に暮らすこの「地上の国」をどうするのか、もっと真剣に考えるべき時に来ているのではないでしょうか。

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