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8月9日(木) 「ノー」と言える小沢 [政党]

 小沢さん、なかなかやるじゃありませんか。シーファー駐日米大使との会談です。
 外交的手腕もなかなかのものです。見直しました。

 まず、会談の開かれ方が注目されます。いったん会談を断ったと、報道されていたからです。
 実際にそうだったかどうかは分かりませんが、もし相手が申し込んできた会談に難色を示せば、相手は譲歩します。会談が開かれる前から、イニシアチブは小沢さんの手に渡っていたということになるでしょう。
 しかも、会談は民主党本部で、マスコミに公開する形で行われました。民主党の外交路線をアピールする場として最も効果的なやり方であり、米側がそれを飲まされたのはイニシアチブを小沢さんに握られてしまったからです。

 会談の内容も重要です。小沢さんは、アメリカの言いなりにならない「タフネゴシエーター」としての姿を印象づけることに成功しました。
 アメリカの言うことなら何でもそのまま受け入れている安倍自民党との違いを鮮明にし、「ノー」と言える小沢をアピールしたわけです。このところ高まりつつあるナショナリズムや「反米右翼」への共鳴を計算していたのかもしれません。
 外交路線における自民党と民主党との違いを見せつけたという点でも、小沢さんは得点を稼ぎました。アメリカと対等にやり合う姿は、細川首相以来のものだと言って良いでしょう。

 もう一つ重要なのは、集団的自衛権と集団的安全保障との違いを明確にしたことです。シーファー米大使に、小沢さんは「アフガン戦争はブッシュ米大統領が『アメリカの戦争だ』と言って、国際社会のコンセンサス(意見の一致)を待たずに始めた。日本と直接関係ないところで、米国あるいは他国と共同作戦はできない」と述べ、「今年3月に採択されたアフガニスタンに関する国連安保理決議に、(活動部隊は)言及されている」との大使の指摘に対しても、「米軍中心の活動を、直接的に規定する国連安保理決議はない」と反論しました。
 つまり、一方では、「日本と直接関係ないところで、米国あるいは他国と共同作戦はできない」として集団的自衛権の行使を認めず、他方では、「国連安保理決議」があるかどうかを判断の基準にし、集団的安全保障への参加を認める意向を明らかにしているのです。
 PKOなどでの自衛隊の海外派兵については拒んでいないものの、多国籍軍型の派兵を拒絶した点は極めて重要でしょう。「専守防衛」の制約を踏み越えてアメリカと共に戦争できる国になろうとする安倍自民党の道を明確に拒絶しているからです。

 この小沢・シーファー会談によって、テロ対策特措法が臨時国会での最大の争点となることがはっきりしてきました。この問題をめぐって与野党が激突し、解散・総選挙となるかもしれません。
 そうなれば、日本の外交・安全保障をめぐっての大きな転換点となるだけではありません。在日米軍基地の将来や極東の国際情勢にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。
 この点でも、臨時国会でのテロ対策特措法についての審議が焦点になります。その際、さし当たり重要な問題は、以下の点でしょう。

 まず第1に、インド洋における海上自衛隊の活動実態が明らかにされなければなりません。海上自衛隊はインド洋で何をやっているのか、それにはどのような意味があるのかが明確にされる必要があります。
 少なくとも、どれだけの燃料が、どの国の艦船に提供され、どれほどの費用がかかっているのか、正確な情報が開示されなければなりません。シーファー大使は「(米英軍などは)テロに反対する国際的な活動部隊であり、日本の貢献は非常に重要だ。日本が燃料提供をやめたら、英国やパキスタンは参加できなくなる」と述べたそうですが、「テロに反対する国際的な活動」になっているのか、インド洋では日米英仏独パキスタンなど8か国の17隻が活動していますが、このうち米国以外の「英国やパキスタン」にどれだけの燃料が提供されているのかが分からなければ、この発言の正否すら判断できないでしょう。
 大使は「(小沢氏の)決断に必要な情報があれば、機密情報を含め、どんなものでも提供する準備がある」と述べたそうです。これまで秘匿されていた「機密情報を含め」、「必要な情報」の全てが明らかにされる必要があります。

 第2に、日本国憲法との関連について、このような自衛艦の派遣が許されるのかどうか、もう一度、原点から検討される必要があるでしょう。小沢代表は憲法9条で自衛隊派遣に制約があることを説明した上で、「ブッシュ大統領は国際社会の合意を待たずに米国独自で戦争を始めた。米軍を中心とした作戦には参加できない」と強調しました。
 憲法9条の制約や集団的自衛権行使との関連をどう考えるのか。これが、国会審議での焦点の一つです。
 与党が衆参両院で多数を占めていたため、この点についての十分な審議なしにテロ対策特措法が制定され、その延長も承認されてきました。この基本的な論点について、今一度、国会で深める必要があります。

 第3に、このような海上自衛隊の活動が、「対テロ戦争」に役立っているのかという論点もあります。アフガニスタンやイラクの現状は、ブッシュ大統領の掲げる「対テロ戦争」がいかに欺瞞に満ちたものであるかを明らかにしています。
 それはテロをなくすどころか、テロの温床を拡大し続けているからです。ブッシュ政権の行っている「対テロ戦争」は、目的と手段のミスマッチであり、テロの増殖と誘発をもたらすだけです。
 日本がそれに協力することは、テロの撲滅に役立っていません。石油などを依存している中東諸国との友好にもマイナスになるということをはっきりさせる必要があります。

 第4に、テロ特措法の延長を拒否すれば、「国際社会」から孤立し、「日米同盟」が破壊されるという主張もあります。それは本当でしょうか。
 「インド洋でのガソリンスタンド」役をやめれば、アメリカなどが困ることは明らかです。ただで燃料がもらえるのですから、これほど便利なものはありませんから。
 しかし、すでに「国際社会」の多くの国々はこのような活動から手を引いており、批判するのはアメリカに付き従う同盟国だけでしょう。日本が手を引くことでアメリカの「対テロ戦争」の遂行が不可能になれば、泥沼の戦争にあえいでいるアメリカ自身にとってもプラスになります。沈み始めている泥船・「ブッシュのアメリカ」に付き合うことをやめても、「日米同盟」が壊れることはないでしょう。

 秋の本格的な臨時国会の召集時期が8月31日になるかどうか、注目されています。この日にテロ対策特措法の延長案が出されれば、10月31日までの審議期間が61日間になるからです。
 参院で野党が法案審議を引き延ばせるのは60日です。そして、テロ特措法の期限は、11月1日になります。ギリギリの日程で、何とか法案を通したいというのが、「8月31日召集」という“秘策”なのです。
 しかし、8月27日の内閣改造直後で国会答弁の準備の時間が足りず、参院で野党が過半数を握り、慎重に検討すべきだとの主張が参院自民党や公明党などで広がっているといいます。31日の召集は可能なのでしょうか。

 もし、8月31日に召集できなかったら、安倍首相は緒戦で大きな打撃を被ることになります。秋の臨時国会での与野党の攻防は、すでにもう始まっているのです。