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8月28日(火) 「自民党レジーム」の「終わり」の終わり? [内閣]

 安倍改造内閣の姿が明らかになりました。「トカゲのしっぽ切り」どころか、「トカゲの胴体切り」によって頭だけしか残らない新しい内閣の出発です。
 とはいえ、18人の閣僚のうち、留任したのは安倍首相を含めて6人いました。新任は7人にすぎません。残りの5人は再任で、「人身一新」というわけにはいきませんでした。

 この安倍内閣の改造を、各紙は次のように報じています。

読売新聞:政権浮揚へ重厚布陣
朝日新聞:延命へ改革路線修正
毎日新聞:派閥・世論配慮の「挙党」
東京新聞:重鎮起用 地方格差も重視
産経新聞:安倍改造内閣、重厚な布陣に 挙党態勢の構築目指す
日経新聞:「挙党」掲げ重鎮起用

 この朝刊各紙の見出しには、安倍改造内閣に対する見方や評価が明瞭に反映されています。「重厚」や「重鎮」というのは、昨日のブログでも指摘したように、派閥のトップや幹部が相次いで党役員や閣僚に就任したからです。
 また、「挙党」にカッコが付いているのは、これらの「重鎮」を各派からかき集めたにもかかわらず、谷垣派からの入閣者は一人もいなかったからです。安倍首相は、一方では、派閥や世論を配慮して「挙党」をめざしながらも、他方では、さりげなく谷垣、古賀、福田などの「反安倍」を排除していたのです。
 とはいえ、「改造内閣の陣容については、『重厚な布陣』という評価の一方で、『挙党態勢という名の派閥均衡』との批判もあろう」(特別編集委員橋本五郎『読売新聞』8月28日付)との評もあるように、基本的には「挙党態勢という名の派閥均衡」というべきものになっています。旧態依然とした古い姿への復帰と言って良いでしょう。

 ところで、自民党が長期政権を維持してきた秘密は、端的に言えば、「振り子の論理」に基づく「疑似政権交代」の演出にありました。毛色の異なった派閥間での政権のキャッチボールに国民は騙され、それがあたかも政権交代であるかのような幻想を抱いてしまったのです。
 その結果、新しい政治が始まるのではないかと期待し、新政権への支持率が上がります。これが、新政権発足への「ご祝儀」でした。
 このような「ご祝儀」が、安倍改造内閣に与えられるのでしょうか。改造後の内閣支持率が注目されます。

 このように、「自民党レジーム」を支えてきた「振り子の論理」ですが、次第に錆び付き、やがて機能しなくなります。その上、「派閥」の弊害が目立ち、「派閥の解消」や「派閥政治」からの脱却が掲げられるようになりました。
 内閣の構成でも「派閥均衡」は否定され、小泉前首相は派閥による入閣候補者の推薦を拒否しました。小選挙区比例代表並立制の導入という「政治改革」や省庁の再編・統合による官邸機能の強化という「行政改革」もあって首相の権限が強まり、竹中治堅さん言うところの「首相支配」が成立します。
 「自民党をぶっ壊す」と言って「構造改革」を進めた小泉さんに国民は惹き付けられ、郵政選挙での圧勝によって、結果的に自民党は息を吹き返したように見えました。しかし、それは、そう見えただけで、実際には「自民党レジーム」の崩壊は進行していたのです。

 その結果が、今回の参院選でした。幹事長に就任した麻生さんが、「(自民党を)ぶっ壊すと言った人(小泉純一郎前首相)を選び、事実ぶっ壊された。ぶっ壊された後の自民党をどう立て直すのかが三役に与えられた仕事」だと語ったように、小泉さんは「構造改革」によって自民党の支持基盤に打撃を与え、「自民党をぶっ壊す」という「公約」を実行したのです。
 その後を引き受けた安倍さんは、小泉さんが駆使した武器を利用できませんでした。「首相支配」が可能であるような構造が存在したにもかかわらず、「支配」する能力も経験も無かったからです。
 今回の自民党役員・閣僚人事は、このことをさらに明瞭にしました。各所に「重鎮」を配したため、実際には「挙党態勢という名の派閥均衡」の復活となったからです。人事において、安倍さんが「首相支配」を貫徹できなかっただけでなく、今後もそのようなことは不可能でしょう。

 こうして、自民党は「振り子の論理」を働かせることも、「首相支配」を貫徹することもできなくなりました。そのために、安倍改造内閣は、最後の自民党政権になるかもしれないという哀感を漂わせながらの出発となっています。
 こうして、「自民党レジーム」は黄昏時を迎えることになりました。それは、小泉前首相と安倍現首相の共同作業の結果にほかなりません。
 小泉前首相によって「自民党レジーム」の「終わり」が始まりました。今、安倍首相によって、その「終わり」が終わろうとしているのではないでしょうか。

 国民生活のためには、このような「政治の移行期」は、可能な限り早く終わった方が良いでしょう。そのためにも、一日も早く解散・総選挙が実施され、本格的な政権交代が実現されなければなりません。