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11月5日(木) 日本フェミニスト経済学会2009年度大会に対するあいさつ [挨拶]

 このところ忙しくて、まとまったものを書いている余裕がありません。ということで、今回もまた、以前に行ったあいさつでお茶を濁させていただきます。

 今回ご紹介するのは、4月18日(土)に法政大学市ヶ谷キャンパスのBT(ボアソナード・タワー)のスカイホールで行われた日本フェミニスト経済学会2009年度大会に向けての私のあいさつです。この研究大会を大原社会問題研究所も共催させていただいた関係であいさつしました。

日本フェミニスト経済学会2009年度大会に対するあいさつ

 日本フェミニスト経済学会の2009年度大会に際しまして、ひと言、ごあいさつを申し上げます。
 まず、共催させていただきました大原社会問題研究所といたしまして、大会の成功を共に喜びたいと思います。私も、午後の報告と討論を聞かせていただきましたが、多くの参加者を得て、活発な討論がなされる有意義な研究会であったと思います。
 今回の大会に当たりまして、当研究所の運営委員をお願いしております原伸子先生から、共催の申し入れがありました。フェミニストを自認しております私としては、直ちに承諾したわけですが、共催させていただいた理由はそれだけではありません。
 大原社会問題研究所は、その名称に「社会問題」とありますように、労働問題だけでなく、貧困や女性をめぐる社会問題につきましても、資料の収集や研究の対象としております。5月16日(土)には、Kaye Broadbent(ケイ・ブロードベント)氏による「Why women-only unions are necessary: The experience of Japan and Korea(女性ユニオンの必要性:日本と韓国の経験に基づいて) 」というテーマでの国際交流講演会が予定されています。会場は、この建物の19階D会議室です。
 また、当研究所が発行している『大原社会問題研究所雑誌』には、今大会での報告に関連するテーマの論攷が数多く掲載されていることは、皆様ご承知のとおりでございます。この機会に、フェミニスト経済学会に属する多くの研究者が、研究の成果を発表される場として、この『大原社会問題研究所雑誌』を活用されることをお願いしたいと思います。併せて、是非、『大原社会問題研究所雑誌』を定期購読されますよう、お願い申し上げます。
 私どもの研究所は女性労働問題、戦前では婦人労働問題ですが、戦前からこの分野の研究でも先駆的な業績を上げてきたという歴史を持っております。たとえば、戦前の研究員で、戦後は片山内閣の文部大臣になり、その後、広島大学の学長や中教審会長などを歴任された森戸辰男さんは、1918年12月に早稲田大学で開かれた社会政策学会第12回大会で、「本邦に於ける婦人労働問題」というテーマで報告され(《社会政策学会論叢》第十二冊『婦人労働問題』(同文館、1919年10月刊)による)、「戦前の社会政策学会のことを大内先生からおききしたとき、森戸辰男氏の婦人問題の報告は戦前の数多い報告の中で白眉のものだったというお話がありました」(《社会政策学会年報》第9集『婦人労働』(有斐閣、1961年5月刊)の「あとがき」)と、評価されているほどです。また、1932年には、「婦人労働の推進力」という論攷を『大原社会問題研究所雑誌』に発表されています。
 このような学問的伝統が、今日の大原社会問題研究所においてどれほど継承されているかという点では、いささか心許ない現状ではありますが、しかし、ここには皆さんがおられます。今日、このような学会が開かれ、このような形で研究が受け継がれている姿を目にすれば、泉下の森戸辰男先生も大いに満足されるにちがいありません。女性の社会的進出と差別の撤廃、女性労働者の労働条件改善のため、学問的研究を通じて力を尽くされている皆様に、森戸先輩に代わって厚くお礼申し上げる次第です。
 最後になりましたが、今後とも、わが国における女性の地位向上のために大きな成果を上げられることを祈念いたしまして、フェミニスト経済学会2009年度大会に対する大原社会問題研究所を代表してのご挨拶とさせていただきます。

11月4日(水) 大原社会問題研究所が『毎日新聞』の「余録」で言及された [大原]

 旅行中に貯まった新聞に目を通していましたら、嬉しい記事にめぐり合いました。大原社会問題研究所を取り上げたものです。

 それは、『毎日新聞』11月2日(月)の一面下のコラム「余録」です。そこには、大原美術館でのギャラリーコンサートが117回を数えることを紹介しながら、次のように書かれています。

 その美術館をつくった実業家、大原孫三郎の社会貢献は広く知られる。大原社会問題研究所も、業績の一つだ。今は法政大学の研究機関だが、90年前に大阪で生まれた。産業都市の先端を走る大阪は同時にスラム街を抱え、そこには資本主義のひずみの縮図があった。
 研究所はそのただ中で、暮らしに根ざした家計調査をはじめ「格差社会」の研究に真正面から取り組んだ。「げたと靴を片足ずつ履くのは難しい」。理想を追いつつも現実から目をそらさない孫三郎の仕事の軌跡がうかがえる。

 ここから先は、鳩山政権が行った貧困調査を紹介し、貧困問題の解決のために真剣に取り組むことを求める内容になっています。つまり、大原が研究所を作って貧困問題や格差社会の研究に取り組んだように、政治が貧困とまともに向き合うべきだというわけです。
 このような文脈で、大原孫三郎と大原社会問題研究所が言及されていました。「鳩山新政権には生半可でない救済策を着実に実行する責務がある。遅滞すれば、『子孫は先祖の誤りを正すためにある』と明言した泉下の孫三郎に笑われよう」と書かれていますが、まさにその通りでしょう。

 この「余録」を書いたコラム子に、お礼を申し上げたいと思います。このような形で、大原孫三郎と大原社会問題研究所を取り上げていただき、ありがとうございます。
 ただ、この研究所が、先ほど90周年を記念してフォーラムを開催したことにも言及して欲しかったと思います。恐らくご存知なかったのでしょうが、その点がいささか残念です。

 なお、明後日の11月6日(金)、「働き方ネット大阪」の主催で開かれる「第9回つどい」http://hatarakikata.net/で、「働 き 方 を ど う 変 え る か―民主党政権に注文する」という話をさせていただくことになっております。会場はエル大阪で午後6時半開会です。
 どなたでも参加できます。お近くの方に足を運んでいただければ幸いです。

11月3日(火) 国際労働シンポジウムへのあいさつ [挨拶]

 名古屋の金城学院大学で開かれた社会政策学会から、無事、戻ってきました。会場の金城学院大学は名古屋市の郊外にあるミッション系の女子大だということで、キャンパスは広く、建物は綺麗で、何となくゆったりとした清潔感が漂っているような雰囲気でした。

 学会からの帰りは、中央線を経由しながら、温泉に泊まって来ました。紅葉が始まっていて、赤いドウダンツツジ、白いススキの穂、真っ黄色の銀杏など、沿線の景色を堪能することができました。
 のんびりとした各駅停車の旅でした。心身共に、英気を養い、リフレッシュすることができたように思います。

 さて、このところ、各種の催しに対する私のあいさつをアップしています。ついでといっては何ですが、10月14日(水)に、UNハウス(国連大学)のエリザベスローズ・ホールで行われた第22回国際労働問題シンポジウムに対する私のあいさつも、ここにアップさせていただきます。
 何らかの参考になれば幸いです。

第22回国際労働問題シンポジウムへの挨拶

 ただ今、ご紹介いただきました大原社会問題研究所所長の五十嵐でございます。「第22回国際労働問題シンポジウム」の開会に当たりまして、ひと言、ご挨拶申し上げます。
 私ども大原社会問題研究所では、毎年、この時期に国際労働問題シンポジウムを開催してまいりました。早いもので、もう22回目を数えることになります。ということは、22年前からの恒例行事ということになります。
 最近では、ILO駐日事務所と共催で、交互に法政大学の市ヶ谷キャンパスとUNハウスを会場に開催しております。今年は、ここエリザベスローズ・ホールで開催することになりました。大変、立派な会場でありまして、シンポジウムの内容も、それに負けず劣らず、充実したものになることを願っております。
 さて、この国際労働問題シンポジウムは、毎年6月に開かれますILO総会の議題のなかから、日本との関係が深いもの、あるいは興味が持たれるものを選び出して、そのテーマとしてきました。
 今年は、ILO総会の特別議題(議題Ⅶ)である「経済金融危機の雇用・社会政策への影響」をテーマとして取り上げたわけでございますが、ILOがこのテーマを特別議題としましたのは、昨年9月のリーマン・ショックに始まる深刻な金融・経済危機が世界中の雇用・社会政策に大きな影響を与えたからです。その結果、失業、貧困、格差が増大し、企業破産も相次ぐなかで、景気の回復、仕事の創出、働く人々とその家族の保護と救済に向けての迅速な対応が求められるに至りました。
 わが国もまた例外ではなく、景気の低迷と雇用不安の拡大への対応が、鳩山新政権にとりましても大きな政策課題となっております。失業率は5%台後半で推移しており、これから年末年始にかけて、再び「派遣村」のような状況が生まれるのではないかとの懸念も生まれています。雇用問題への取り組みは急務だと言うべきでしょう。
 本日のシンポジウムでは、事務局長報告「世界的な仕事の危機に取り組む」と、特別議題の討議の結果採択された「グローバル・ジョブズ・パクト」(仕事に関する世界協定)について、政府、労働者、使用者側のパネリストおよび学識経験者によって報告・討論していただきます。また、この議題を担当されましたILO経済労働市場分析局長ダンカン・キャンベル氏による講演も予定しております。これらの報告と討論によって、「世界雇用危機にどう立ち向かうのか」との問いに対する何らかの回答が得られれば幸いです。
 なお、私ども大原社会問題研究所は、ILOと同様、今年2009年に創立90周年を迎えました。ILOと同い年ということでございます。
 来る10月27日(火)に、この創立90周年を記念いたしましてフォーラムを開催いたします。詳細につきましては、お手元の配布物の中にビラが入っておりますのでご覧いただきたいと思いますが、こちらにも、足を運んでいただければ幸いです。
 簡単ではございますが、最後までのご静聴・ご協力をお願いいたしまして、開会に当たっての挨拶とさせていただきます。