SSブログ

11月11日(水) 沖縄の米軍普天間基地にはお引き取り願うしかない [国際]

 11月8日の沖縄では、普天間基地の県内移設に反対する大規模な県民集会が開かれました。その折も折、沖縄駐留米兵によるひき逃げ事件が発生しました。
 県民の憤激が高まるなか、明後日の13日(木)にアメリカのオバマ大統領が初めて来日します。普天間基地の移転問題は主要な議題にならないようですが、日米両首脳の対応が注目されます。
 普天間基地の辺野古への移転は「前政権の合意」だと言いますが、あくまでもそれは「前政権」にとってのことです。アメリカも日本も、ともに政権が交代したのですから、改めて新しい計画で合意し直せば良いではありませんか。

 沖縄の普天間基地の移転問題についての私の見解はすでに10月15日付のブログ「外交・安全保障政策でも根本的な転換を」で明らかにしたとおり、「唯一の解決策は、普天間基地を閉鎖することです」。県内移設はもとより、他の日本国内の都道府県への移設にも反対です。
 端的いえば、普天間基地はお引き取り願う以外にはない、ということです。グアムでもどこでも、アメリカの領土内に移設すればよいでしょう。アメリカ軍の基地なのですから……。
 もし、アメリカがこの基地を引き取っても置く場所がないということであれば、基地をなくせばよいだけのことです。この基地を利用して行ってきたベトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争の全ては誤りであり、この基地があったために沖縄は間違った戦争の出撃基地とされてきました。

 以上の基本的立場を明らかにしたうえで、この問題をめぐるこの間の経緯についての感想を書かせていただきます。

 まず第1に、鳩山政権の対応については、基本的に評価したいと思います。普天間基地が日米間で解決すべき大きな問題であるということを可視化させたからです。自民党政権であれば、辺野古沖への基地移設という日米合意に基づく「既定の路線」を押しつけるだけで、その他の選択肢は問題にならなかったでしょう。
 いまでは、辺野古以外への移設も現実的な選択肢として検討の対象になってきています。これは大きな変化です。普天間基地移設問題を政治的争点として再浮上させたことは、政権交代の重要な成果であったと言うべきでしょう。
 鳩山首相は、関係閣僚の様々な発言への世論の反応、アメリカの対応などを見ながら、時間稼ぎをしつつ“落としどころ”を探っているようです。しかし、沖縄県民が望んでいる“落としどころ”は、基地の県外撤去一つしかありません。そこに“落とす”ことができるかどうかという点で、鳩山首相の政治的手腕が試されています。

 第2に、日米関係の不均衡さが明らかになり、隠されてきた権力構造も可視化したということです。自国にある外国の基地をどうするかということについて自由な意見表明が咎められるというのでは、独立国とは言えません。
 10月20日に来日したアメリカのゲーツ国防長官は、岡田外相に「現行案が唯一実現可能なものだ。日米合意に従ってアメリカ軍の再編を着実に実施することが必要で、できるだけ早期に結論を出していただきたい」と迫りました。アメリカにこう言われて外相や防衛相の発言が右往左往してしまうところに、不平等な日米関係が明瞭に示されています。
 さらに、このような関係は、11月12日のキャンベル米国務次官補の発言に明らかです。2日前に北京で開かれた日中韓3カ国首脳会談の冒頭で、鳩山首相が「今までややもすると米国に依存しすぎていた。アジアをもっと重視する政策をつくりあげていきたい」と語ったことについて、キャンベルさんは武正公一外務副大臣に「米大統領まで報告がいくような重大問題だ。我々に相談もせずに、鳩山首相がこういう発言をするとはどういうつもりか」と怒りをあらわにしたといいます。アメリカに「相談もせずに」、日本の首相は発言してはならないというのでしょうか。

 第3に、オバマ政権の弱点やオバマ大統領が打ち出しているChangeの限界もまた、この問題をめぐって明らかになったということです。オバマさんはアメリカの軍事政策や対日外交をほとんど転換しようとしていないというのは誠に残念です。
 この限界を突破するために、鳩山さんはオバマさんに手を貸してあげるべきでしょう。イラク戦争は間違いだったことを明言し、アフガニスタンからも手を引くべきだということ、沖縄など海外の軍事基地を整理・縮小し、「世界の憲兵」のような役割を終わらせるべきだということを、率直にアドヴァイスしたらどうでしょうか。
 当初、12日来日の予定が13日にずれ込んだのは、米南部テキサス州のフォートフッド陸軍基地で13人の犠牲者を出した銃乱射事件の追悼式に出席するためでした。海外におけるアメリカの軍事的関与を減らし、このような痛ましい事件が起きないようにすることこそ、オバマ大統領がめざすべきことではないでしょうか。

 第4に、新聞などマスコミの対米従属性や植民地根性もまた、この間、きわめて明瞭になりました。「一体、どこの国の新聞なのか」と言いたくなるような体たらくです。
 天木直人さんが紹介しているhttp://www.amakiblog.com/archives/2009/11/07/#001524ように、「今日(11月7日)の新聞を見ただけでも『日米同盟を危うくしてはいけない』のオンパレード」でした。「同盟の弱体化を避けよ」(北岡伸一東大教授─日経)、「揺らぐ日米同盟」(古森義久─産経)、「日米の認識の落差を憂う」(香田洋二元海将─読売)、「(普天間基地移設合意の)遅れは同盟に影響」(ローレス前米国防副次官─毎日)、「首脳会談直前 きしむ日米」(朝日)などです。
 「これまで通りやれ」と恫喝するアメリカを批判するのではなく、逆に、「アメリカの言うことを聞け」という声ばかりが報道されています。これらのマスコミには、政治の転換を求めて政権交代を実現した国民の声が聞こえないのでしょうか。

 第5に、それでは、マスコミの言う「日米同盟」の「弱体化」「揺らぎ」「認識の落差」「影響」「きしみ」とは何かということです。それは、具体的には何を指しているのでしょうか。
 日米間の外交関係の断絶でしょうか、「核の傘」の撤回でしょうか、在日米軍の引き上げでしょうか、貿易関係の途絶でしょうか。そのいずれも、日本にとって以上にアメリカにとって不利益をもたらすものであり、現実的には考えられません。
 もし、アメリカが腹を立てて在日米軍を引き上げるのであれば、それこそ基地問題にとっては最善の解決策となるでしょう。「核の傘」を閉じれば、一方で核兵器の廃絶を言いながら他方で「核の傘」に守られているという日本政府の「ダブル・スタンダード」も解消されるにちがいありません。

 そもそも、日米は成熟した関係にあります。普天間基地の移設など部分的な問題でアメリカの言う通りにならないからといって、直ちに弱体化したり、揺らいだり、きしんだりするほど脆弱なものではないはずです。
 保守派の論客ほど、日米関係の強固な基盤に対する確信がないのは、どういうことなのでしょうか。「日米同盟」の確かさを信頼していないのでしょうか。
 鳩山さんが率直な発言をすれば、オバマさんが腹を立てるとでも思っているのでしょうか。腹蔵なく話し合え、相手がいやがることでも言いあえる間柄こそ、真の友人関係ではありませんか。

 「米軍基地がなければ日本の平和は保たれない」と言う方がおられます。先に見たように、マスコミのほとんどもこのような論調です。
 このような主張が成り立つためには、そのことが実証されなければなりません。もし、こう主張するのであれば、戦後日本の歴史において、米軍基地があったために保たれた平和とはどのようなものだったのかを、実例を挙げて具体的に検証するべきではないでしょうか。