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10月13日(金) 暴走を続ける岸田大軍拡政権に引導を渡そう(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『東京革新懇ニュース』第486号、10月5日付に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 空振りに終わった内閣改造

 これほど評判の悪い内閣改造が、これまであったでしょうか。与党からも落胆の声が上がっているようです。「通常は『ご祝儀』を含めて改造で少しプラスになるものだが……。改造が評価されていない」と。
 毎日新聞の調査では26%あった内閣支持率が1ポイント下落して25%となり、過去最低に並んだと言います。ご祝儀どころか、罰金を取られたようなものです。いつまで続けてほしいかとの問いに「早くやめてほしい」との答えが51%で最多となっています。
 岸田首相は来年秋の総裁選挙に向けて、刷新感やイメージアップのために5人の女性閣僚を起用しました。しかし、麻生派会長の麻生太郎副総裁、茂木派会長の茂木敏充幹事長、安倍派幹部の松野博一官房長官ら「骨格」がそろって留任し、枝葉は変えても幹は変わらず同じ形に見えます。
 女性5人の起用について、岸田首相は「女性ならではの感性や共感力の発揮に期待したい」と述べ、個々人の資質や専門性を評価したものではなかったことを吐露しています。副大臣と政務官54人の人事では派閥順送りの推薦をそのまま受け入れたため、初めて女性がゼロになって大きな批判を浴びました。
 選挙対策委員長に小渕優子元経産相を起用したのも問題になっています。自身の政治団体をめぐる不明朗な会計処理が発覚し、秘書2人が有罪となって大臣を辞任した過去があるからです。このとき家宅捜索前にパソコンのデータを保存するハードディスクに電気ドリルで穴を開けたことが報じられ、「ドリル優子」などと呼ばれました。
 このように、岸田内閣の改造は不発に終わっています。自分の都合ばかり優先した内向きの人事だったからです。マイナンバーカードやマイナ保険証の強要、福島第1原発の汚染水の放出、事実上の消費増税となるインボイスの導入、県民の声を無視して強行している沖縄の辺野古新基地建設など、国民の声の無視も目に余ります。支持率が上がらないのも当然でしょう。
 特にマイナカードをめぐっては、別人の公金受取口座を誤登録して個人情報が漏洩した問題で、デジタル庁と国税庁が政府の個人情報保護委員会から行政指導されました。健康保険証の医療情報とのひもつけミスも8400件以上確認されています。トラブルは底なしで、制度の欠陥は明らかです。国民への強要を止め、保険証の廃止を撤回するべきでしょう。

 前のめりになっている改憲・大軍拡

 これほどひどい発言が、これまであったでしょうか。憲法違反の軍事と戦争への前のめりもこれまでになくひどいものです。自民党の麻生副総裁は台湾を訪問し、有事の際には実際に「戦う覚悟」が抑止力になると講演しました。戦争や武力の行使だけではなく武力による威嚇も「放棄」した憲法9条を持つ日本の与党幹部として、断じて許されない発言です。
 先の内閣改造でも、改憲・軍拡の推進に向けての布陣が鮮明になっています。これまで自民党の憲法改正実現本部事務総長代行を務め、安保3文書の取りまとめや殺傷兵器の輸出を主張してきた木原実氏を防衛相に起用し、自民党の憲法改正実現本部事務総長や衆院憲法審査会で与党筆頭理事として改憲の旗を振ってきた新藤義孝氏を入閣させました。改憲タカ派の高市早苗経済安全保障担当相と萩生田光一政調会長も留任しています。
 来年度予算の概算要求でも防衛費の突出は顕著で、今年度を1兆円も上回る7.7兆円に達しました。安倍政権時代の1.5倍にもなる額です。防衛予算は2020年に文部科学省の予算を上回り、来年度予算では1兆8000億円もの差がついています。教育より軍事を優先する岸田政権の姿勢を象徴する異次元の大軍拡予算になりました。
 しかも、額を明示しない「事項要求」が多用され、さらに増えることは確実です。全国の自衛隊施設の強靭化、陸海空3自衛隊の統合的な運用のための統合司令部創設、日米融合の統合防空ミサイル防衛(IAMD)の本格的な強化のための予算なども計上されています。実際に戦える自衛隊に向けて着々と手が打たれているというわけです。
 外交面では、8月の日米韓首脳会談で首脳・外相・防衛相・防衛担当者による会談を毎年定期開催することが合意され、3か国の軍事同盟体制の強化が図られました。岸田首相の北大西洋条約機構(NATO)への急接近、日米韓による「ミニNATO化」、イギリスなどNATO加盟国はじめオーストラリアやインドなどクワッド加盟国との軍事協力も進んでいます。
 改憲・大軍拡を阻止して憲法の平和原則を守る課題は、日本の安全を守るうえで急務になっています。同時にそれは、日本周辺の緊張を緩和して安全保障環境を改善するために不可欠の課題でもあります。岸田大軍拡の内容や実態を学び、保守層や無党派層を含め、戦争だけはだめだという人々を幅広く結集することが今ほど大切になっているときはありません。

 混乱と危機に瀕する国民生活

 これほど酷い混乱と危機が、これまで国民生活を脅かしたことがあったでしょうか。物価高の大波が押し寄せて国民の生活と営業を直撃しています。それでなくとも、コロナ禍による外出制限や行動抑制によって国民生活は大きな困難にさらされ、経済は大打撃をこうむってきました。
 世界も同様で、100以上の国や地域では消費税を引き下げて生活を支える措置をとっています。しかし、岸田政権は税金を下げるどころか、10月からは事実上の消費増税となるインボイス制度を導入しようとしています。個人事業主やフリーランス、零細企業は大きな打撃を受け、廃業や倒産が続出するのではないでしょうか。
 このような困難に拍車をかけているのがアベノミクスの失敗です。インフレになれば物が買われるから景気が良くなるというリフレーション理論や、富める者が富めば貧しい人にもおこぼれが回るというトリクルダウン理論は幻にすぎませんでした。日銀による異次元の金融緩和で円安が進行し、ウクライナ戦争による物資不足とも相まってガソリンなど生活必需品の価格高騰が止まりません。
 福島第1原発の汚染水放出に対して中国は日本の水産物の輸入を全面的に禁止する対抗措置を取りました。岸田政権が「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束を破り、福島の漁業者の了解だけでなく中国に対する根回しもせずに一方的に放出を強行した結果です。「風評」被害対策だけでなく、このような「実害」に対しても解決のための外交努力が欠かせません。
 このようななかで日本の国力は低下し続け、国内総生産(GDP)でドイツに抜かれて第4位になろうとしています。1人当たりではすでに27位と過去最低で、国際競争力では35位という有様です。実質賃金は低迷し、税金と社会保険料の負担は増すばかりで、貧困率は15.4%とG7加盟国で最悪になりました。
 これからも収入は増えず、軍拡のための大増税や少子化対策を名目とした社会保険料の引き上げが予定されています。これらを合わせた国民負担率は50%に近づいており、江戸時代の「五公五民」に逆戻りしそうです。
 食料自給率も38%にすぎずエネルギー自給率は12%、物価の高騰で食の窮乏化が深刻になっています。民間のフードバンクで命をつなぎ、子ども食堂に頼るのは子どもだけではありません。食料支援に学生や若者が列をなしています。衣食住などの生活必需品が満たされない絶対的貧困が再び頭をもたげ始めました、
 これからの日本は「物の豊かさ」ではなく「心の豊かさ」を求める時代に変わっていくと主張された時もありました。もはや絶対的貧困は解決され、これからの問題は相対的貧困だと言われていた時もありました。そんな時代が懐かしくなるような、深刻な貧しさが私たちの前に立ち現れつつあります。


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