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10月28日(月) 松田さんの半世紀を支え続けてきた友情の素晴らしさ [日常]

 世の中には、かくも素晴らしい友情があるのかと感心しました。それは「情」のみならず生活支援のための定期カンパなどの金銭、居住する高知への訪問や掃除などの行動も伴ったものですから、なおさら価値のあるものだと言えるでしょう。
 昨日、法政大学近くのアルカディア(私学会館)で「松田恒彦さんを支える会50周年の集い」がありました。集いにはご本人の松田さんを始め、松田さんの友人や先輩・後輩など約80人が出席され、私も特別スピーチを頼まれて話をしてきました。

 法政大学で起きた暴力事件と松田さんを支える会については、10年前の40周年の時にも顔を出して話をしています。その時、「暴力に抗した友情の絆―松田さんと「支える会」の40年に寄せて」という文章を書きました。その一部を、以下に再掲させていただきます。

 <法政大学には、悲しい負の歴史があります。一部の暴力学生が、他の学生に暴力を振るい、キャンパスから追い出したり、一生癒えることのない傷を負わせたりしたのです。
 松田さんの事件は、1970年1月21日に起きました。当時、法政大学文学部に在籍していた松田恒彦さんは、全共闘を名乗る暴力学生の襲撃によって瀕死の重傷を負い、今に至るも後遺症に悩まされています。この松田さんの裁判闘争や生活を支えるために「会」が作られました。それが、「松田さんを支える会」です。
 私は、ずっと以前から、この「会」に協力してきました。私も、都立大学在学中、暴力学生によって右目を失明させられた被害者だからです。この事件は1971年9月10日に起きましたが、そのときの様子は、拙著『概説・現代政治』(法律文化社)の「あとがき」に書きました。また、松田さんを支える会・1.21事件30年誌編集委員会編『法政大学70年1月21日-松田恒彦さんと「支える会」の30年』(こうち書房、2000年)にも、「『9.10事件』の被害者として」という一文を書いています。
 事件が起きてからは40年という長さですが、この本を出してからでも、もう10年経ってしまいました。この本は、事件を次のように描写しています。

 844番教室へは廊下の二つの入り口から、ベランダからは窓ガラスを鉄パイプで打ち壊して全共闘暴力集団は乱入した。松田恒彦君をはじめ、自治会役員、学生委員を飯島博は指さし「あいつは民青だ、やれ、殺してしまえ!」と叫び、命令に従って全共闘暴力集団は、鉄パイプ、角材、竹竿、チェーンを振り回し、無防備の学生に殺意を持って襲いかかり多数の負傷者をつくり出した。
 とくに、松田恒彦君に対しては、言語に絶する蛮行で、4階廊下に引きずり出し、頭部を中心に、顔面、大腿部をメッタうちにし、さらに凶器で乱打した。松田君はその場で血だらけの意識不明に陥らされてしまった。
 全共闘暴力集団は55年館、及び58年館の各教室、廊下で凶暴きわまる蛮行をはたらいた上、同校舎の各入り口、構内各所に完全武装の集団を立哨させ、威圧的に検閲し、「民青はいないか」と見回り、血だらけになった学生や自治会に結集する学生を見るや、鉄パイプで暴力を加え、無防備の自由な言動を圧殺した。
 彼ら暴力集団の恐るべき蛮行はとどまるところを知らなかった。大学の診療所に乱入し、頭頂部の裂傷を縫合中の法学部2年生……にたいして、看護婦の制止を振り切ってさらに鉄パイプで殴りつけた。
(中略)
 メッタ打ちにされた松田君は、救急車で代々木病院に搬送されたが、あまりの傷のひどさに処置できず、御茶の水の医科歯科大学病院に転院し、手術を受けた。松田君は頭部陥没兼亀裂骨折、頭蓋内出血、右脛骨骨折、顔面挫傷、右上肢打撲傷等で危篤に陥り、その後何度も頭部の切開手術を繰り返さなければならないことになってしまった。
 その他に自治会の学生委員をはじめ50数名の学生が重軽傷を負う大きな暴力事件となった。事件の3日後、Ⅱ部四学部各自治会は記者会見を行い、彼らの暴力の実態を訴えるとともに、彼らの犯罪を断罪すべく「告訴・告発」に踏み切った(14~16頁)。

 松田さんは、幸いなことに、一命を取り留めました。しかし、その後40年経つ今も後遺症は残り、不自由なままです。1970年1月21日に発生した暴力事件は、松田さんの人生を変えてしまいました。それから40年、松田さんはどのような思いで、生きてこられたのでしょうか。
 松田さんの悔しさ、辛さは、同じような暴力の被害を被った私にはよく分かります。事件のことはあまり思い出したくありませんが、しかし、あのときに味わった身を震わせるような強い憤りだけは、忘れることができません。>

 60年代後半から70年代初めにかけての学生運動については、全共闘運動を美化する捉え方が強く残っています。しかし、どのような立場のどのような評価であっても、上記に記されたような暴力を是とするようなものである限り、絶対に是認できません。
 この時代、暴力学生に抗して学園の自由と民主主義を守るために、身の危険を顧みず、徒手空拳で闘った学生たちも少なからず存在していました。そのことを歴史の真実として記録しておかなければなりません。
 松田さんも、そのような学生の一人でした。そして、脳に下された一撃で、人生を狂わされてしまったのです。

 私も、都立大学での一瞬のたった一突きで、右目を失ってしまいました。そのような暴力は、いかなる理由があろうとも許されず、正当化されないものです。
 しかも、そのような暴力によって政治を変えることはできず、かえって大きな阻害要因となることは、それからの半世紀を通じて明確に証明されました。全共闘や新左翼などの暴力学生は完全に過っていたのです。
 しかし、その過ちが明らかになったからと言って、そのために強いられた犠牲や後遺症がなくなるわけではありません。私は左目しか見えず、松田さんは身体の自由が利かず車いす生活を余儀なくされています。

 暴力のない世の中を実現することでしか、このような犠牲は報われません。元気で長生きすることによっても、暴力に屈しなかったことを示したいと思います。
 それこそが、「殺せ」と叫びながら存在を抹殺しようとした彼らに対する抵抗の証だと思うからです。発言し続けることもまた、口を封じようとしたことに対する反撃にほかなりません。
 このような意味で、暴力に対する松田さんと私の闘いは続いているのです。生き続け発言し続けることこそ、私たちにとっての闘いなのですから。

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10月27日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月27日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「最初から怪しい正体は割れていた メロン大臣起用の国民愚弄」

 菅原の経産相就任から辞任の経緯をたどると、こんな人事でも野党やメディア、さらには主権者の国民も騙せると踏んでいた政権側の想像を絶する思い上がりが浮かび上がる。法大名誉教授の五十嵐仁氏はこう言った。

 「十数年にわたって票をモノで釣るような行為が常態化していた政治家を平気で大臣に据えるとは、国民を見くびっているとしか思えません。菅原氏の『金品とは現金という認識だった』とのフザケた答弁からも、たとえバレてもウソとゴマカシで逃げ切れると踏んでいた節すらある。7年近くに及ぶ長期政権の緩みとおごりの表れです。しかも経産省は関電の高浜原発に絡む金品受領問題や、韓国との貿易問題など課題山積。かような人物に関電問題の幕引きを担わせたのは、あまりにも悪辣です。台風19号の被害からの中小企業の復旧や復興支援も始まったばかりで、経産相の突然の辞任で被災地支援も停滞しかねません。これまで以上に安倍首相の任命責任は重いのです」

 「ひとたび大臣の醜聞が噴出しても、安倍政権は早めに辞任させれば、国会に呼ばれず野党の追及をかわせると踏んでいます。メディアが騒ぐのも大臣の辞任直後の数日だけで、後は政権に忖度して話題にせず、国民もすぐに忘れると甘く見ているのです。実際に国民も物わかりが良すぎる。いくら政権がやりたい放題でも支持率はなかなか落ちません。この負の循環を止めるには、国民も厳しい視線で安倍首相の任命責任を徹底追及するしかありません」(五十嵐仁氏=前出)

 安倍の国民愚弄を考えれば、チンピラ大臣の任命責任だけでは済まない。舐められっ放しの国民は早急に内閣総辞職を迫るしかない。

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10月24 日(木) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月24日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「前例踏襲でも違和感 安倍首相の「天皇陛下万歳」」

 それなのに、政権内で検討らしきものはほとんどされず、今回も国民の代表を見下ろす玉座「高御座」に天皇が登壇するなど、国民主権に疑義が残る旧憲法下の大正、昭和の前例をかなり忠実に踏襲。逆に神々しい登場を演出する「宸儀初見」を復活させた。

 それでもNHKがその議論に触れたのは即位礼正殿の儀の終了後、ホンの申し訳程度の数分間に過ぎない。

 これでは三権分立の原則に反し、合理性も説得力もない「恩赦」に54%(朝日新聞調査)も反対する世論の方がよっぽどマトモに思えてくる。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「戦前の国家神道に皇室祭祀が利用された歴史を考えると、その連続性を断ち切る儀式にすべきでした。天皇の『高御座』と皇后の『御帳台』は高さも広さも異なるなど、男女同権にも反します。即位儀式の伝統の重さといっても、その大部分は明治以降につくられたもの。高御座と御帳台が新たにつくられたのも、大正天皇の即位の際です。安倍政権が明治からの伝統と連続性を断ち切らなかったのは意図的なサボタージュ。やはり、明治という『坂の上の雲』の時代への敬慕と回帰の表れでしょう。『身の丈に合った儀式』という秋篠宮殿下の意見には耳を貸さず、『令和にふさわしい憲法改正の議論を』などと、都合の良い時だけ天皇制を政治利用。元号が変わることと改憲は何ら無関係なのに、ひたすら天皇の権威付けに励み、聖なる者として国民に植えつける。神格化された天皇の威を借りて自らの権威付けを図るのが、安倍首相の狙いなのでしょう。その魂胆に公共放送が手を貸すとは、つくづく嘆かわしい実情です」

 慶事に水を差す気はないが、安倍政権下での「即位の礼」は皇族の意に反し、グロテスクさもまた際立つのである。

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10月21 日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月19日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「無理やり招致の自業自得 東京五輪に国民はもうドッチラケ」

 呪われた東京五輪は世紀の失敗イベントとして記憶されることになる。その後の日本は暗転。沈没への道。そんな言い知れぬ不安が漂う。10月からの消費増税を前にした経済指標の悪化は、既にその兆候を見せ始めている。この国が、借金漬けと社会保障削減の目もあてられない悪循環へ陥る予感は日増しに強まっている。

 この国はもう持たないのではないか。五輪を待たずに、安倍政権も急速に色あせていくのだろう。

 法大名誉教授(政治学)の五十嵐仁氏が言う。

 「やはり、東京五輪はやるべきじゃなかった、招致自体が間違いだった、という一言に尽きます。汚い裏金で勝ち取ってきた疑惑に加え、簡素でコンパクトもウソだった。競技会場は臨海部にとどまらなかっただけでなく、ついに北海道にまで広がったわけですからね。復興五輪も掛け声だけで、むしろ五輪準備のために被災地の資材を奪った。そんな偽りに満ちた五輪を無理をしてやろうとした結果、しっぺ返しを食らったのです」



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10月18日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月17日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「撤回で済むのか 二階幹事長「まずまず」発言は自民の本音」

 「平成の大合併によって身近な住民の声が届きにくくなり、住民の災害への危機感や要望の対応も鈍っています。台風15号の被害に見舞われた千葉南部では職員不足で罹災証明書の発行すら、ままならなかった。いざ災害が起きても、住民は行政に頼れず自己責任を押し付けられたようなものです。平成の大合併は『スリム化』『効率化』に名を借りた地方の切り捨て策に過ぎなかったのです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 自然の猛威が頻発する災害列島で切り捨てられる弱者と過疎地――。こうなると、台風19号の被害に関する自民党の二階幹事長の「まずまずに収まった」発言はやはり見過ごせない。

 二階が見ているのは大都市のような光の当たる世界の被害だけで、過疎地のような社会の負の側面には目もくれていないのではないか。単なる表現の問題ではなく、あくまで自己責任を強調し、弱者に冷酷な政権の本音が透ける。前出の五十嵐仁氏はこう言った。

 「たとえ亡くなった人の数が想定よりも少なかったとしても、一人一人の命は重い。人の命を数で測る人権軽視の発想は許されませんが、現に今の政権は社会保障など人命に関わる予算を削っています。東京五輪に巨額の税金をかけ、資材や人員不足に陥った東日本大震災の復旧や福島第1原発の廃炉は後回し。度重なる自然災害の猛威で塗炭の苦しみを味わう被災者を尻目に災害対策は二の次で、米国から兵器を爆買いです。その上、首相本人は改憲に躍起ですから、国民が望む予算の優先順位を明らかにはき違えています」

 オリンピックにカネをかけるくらいなら、今の日本でしなければならないことはたくさんあるはずだ――。1964年の問いかけは、日本の政治と国民の関係が55年前から何ひとつ進化していないことを物語るのだ。

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10月13日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月11日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「「桂太郎超え」の悪夢 正比例する政権長期化と国の劣化」

 アベノミクスの失敗を認めない安倍は、1強の驕りで聞く耳も持たない。社会保障カットなどで弱者の切り捨ても加速。庶民のサイフがカツカツになるのは当然で、消費が冷え込む中、景気はヘタって悪化、その兆しは今春にはクッキリ出てきていた。

 それでも消費増税を断行。無理をした揚げ句が、5・7兆円の新たな税負担を国民に強要しながら、一方で、景気対策として公共事業などに2・3兆円を投入、そこに2800億円近いポイント還元費用も含まれるという世紀の愚策。安倍は「消費税(の増税分)をすべて還元する規模の対策を講じる」と胸を張ったが、それってまっとうな政策と言えるのか。一体、何のための増税か。訳が分からない。

 「それだけの規模の景気対策で手当てをしなければならないのは、経済が悪化するのが分かっているからで、だったら消費増税なんてやらなきゃよかったのです。

 スローガンを次々掲げて『やってるふり政治』を続けてきましたが、結局、アベノミクスではデフレ脱却すらできなかった。消費増税をしても景気が悪化すれば、増税の意味がなくなるだけでなく、経済成長どころかマイナスの影響を与える。国民騙しにも程があります」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 それでも、党内は公認権を握る安倍を恐れて表立って批判しない。大新聞テレビも牙を抜かれて大本営発表を垂れ流すだけ。言論が死んでしまっているから、史上空前の口先ペテン政権にもかかわらず、長期化するのである。前出の五十嵐仁氏が言う。

 「『山高きがゆえに貴からず』です。首相が長く在任したからといって、中身が伴っていなければ評価されません。長期政権の要因として『安倍1強』という状況をつくった“政治技術”が手腕とされるかもしれませんが、実体は、隠す、ごまかす、嘘をつく、という手練手管で国民を騙したに過ぎない。

 嘘つき政治がどんなに長く続いても、日本政治の汚点にしかなりません。国民騙しの政治に、問題の本質を十分に伝えないマスコミが手を貸し、内閣支持率を安定させた。マスコミの責任も重大です。さらに、マスコミが安倍政権にひれ伏したことで、有権者は政治を諦め、無関心となり、投票を棄権した。結果的に安倍政権を応援したことになります」

 確かに、安倍を5回もの国政選挙で勝たせたのは有権者だ。安倍政権の長期化は、国民が自滅の道を選んでいるということに他ならないのである。

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10月11日(金) 日米貿易交渉で「ウィンウィン」と嘘をついて国民を欺いた安倍首相 [国際]

 これからは、安くて危なっかしい食糧がどっと入ってくるにちがいありません。安倍首相が大量に買い入れると約束した米国産の牛肉には成長を早めるホルモン剤が投与され、トウモロコシは遺伝子組み換えによって増産されたものだといいます。
 安いから日本の消費者は喜ぶだろうと言われています。しかし、こんなものが消費者のためになるのでしょうか。
 
 日米貿易交渉が妥結し、テンガロンハットをかぶった牛肉生産者たちを前にトランプ大統領が「日米交渉はアメリカが勝利した!日本のまずい牛肉より遥かに美味いアメリカ牛肉をジャンジャン日本へ輸出してやろう!」と大ハシャギしていたとき、その横で安倍首相は満面の笑みを浮かべていました。どこの首相なのか、と言いたくなります。
 トランプ大統領は貿易協定に署名するときも、主要な農業団体の幹部を集めてこう成果をPRしました。「今日の協定で、日本は米国の食品や農業輸出品への市場アクセスを劇的に広げると約束した」と。
 安倍首相は「ウィンウィン」の結果だったと言いましたが、どこが「ウィン」なのでしょうか。またもや、国民に向けて大嘘をついたことになります。

 日米貿易協定は日本側が一方的に譲歩し、牛肉や豚肉などの畜産物の関税を大幅に引き下げる一方、米国の自動車と自動車部品の関税削減は先送りされました。米国寄りの決着で、譲るばかりの結果だったことは明らかです。
 この協定が日本の農業にどれほど影響するかという試算についても、未だに明らかにされていません。これで国会での審議が可能なのでしょうか。
 しかも、この協定について最終合意した日米共同声明では、日米自由貿易協定(FTA)の交渉開始でも合意しています。これまで、日米FTAの交渉は行わないとしていた約束も嘘だったことになります。

 日本政府は関税引き下げの水準がTPPの範囲に収まったことを成果のように語っています。しかし、TPP水準の関税引き下げであったとしても日本の農業への被害は甚大です。
 かつて、自民党でさえ選挙のポスターに「TPP断固反対」と書いていたではありませんか。その公約を投げ捨てて日本の食糧安全保障をアメリカに委ねようとしているのが安倍首相です。
 自動車関税についても「関税の上乗せ回避」を成果のように宣伝していますが、目標は「関税撤廃」だったはずです。米国が公表した英語の協定文に「撤廃」という文字が入りましたが、「今後のさらなる交渉次第」との表現にとどまっています。

 さらに、今回の協定では貿易額ベースで「米国が約92%、日本が約84%」の関税が撤廃され、世界貿易機関(WTO)の水準をおおむねクリアできていると日本政府は主張しています。これも嘘です。
 これには撤廃されるかどうか分らない乗用車と自動車部品が含まれているからです。自動車分野は対米輸出額の約35%を占めますから、これらを除くと関税撤廃率は6割前後まで落ちてしまいます。
 WTOのルールでは、加盟国に対して9割程度の関税撤廃率が求められています。今回の協定は、この水準に達していません。

 結局、安倍首相はトランプ大統領に押し切られてしまったのです。日本の農業や食の安全、消費者の健康や食糧安全保障を守るつもりがなかったのだということです。
 安倍首相は国民に嘘をついて、トランプのポチ(飼い犬)として行動し続けました。これではトランプのペットではないか、やはり「トラン(プ)ペット」だったのかと言いたくなります。

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10月9日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月4日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「会長人事がらみかと怪情報 NHKで今何が起こっているのか」

 現経営委員長の石原進JR九州相談役もJR東海の葛西敬之名誉会長につながる“安倍人脈”。数年前まで日本会議福岡の名誉顧問を務めるなど思想的にも近い。

 「もはや経営委は、政権が派遣したNHKの監視役に成り果てています。間接的に人事権を握られた会長以下、副会長、理事らは政権との適度な距離を保ち、忖度しなければその地位は維持できない。政権がトップ人事を牛耳り、思い通りにNHKを操っている構図です」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 超が付く日本会議シンパの萩生田文科相が就任した途端、いきなり「表現の不自由展」への補助金を召し上げたのにも驚いたが、タガの外れた政権はもはや牙を隠さず、今後も表現の自由と報道にドンドン介入するに違いない。前出の五十嵐仁氏はこう言った。

 「文化庁は不交付決定の際の議事録を作成していませんでした。この政権は国民の知る権利を度外視し、検証の術を失わせて都合の悪い真実を隠すことが常態化しています。長期政権の弊害で何をやっても大丈夫と国民を見くびっている証拠です。だから、高市早苗氏を平気で総務相に再任させる。彼女は前回の総務相時代に放送法4条をタテに取り、政治的公平性に欠く放送を繰り返したテレビ局への『電波停止』に国会で言及した危うい人物ですよ。今回のNHK問題でも『放送法に反しない』と経営委の肩を持つ発言が目立ちます。政権側の露骨な開き直りに対抗できるのは、国民のしかるべき批判しかありません。政治介入を押し返し、外れたタガをはめ直して表現・放送の自由やNHKの独立性を取り戻すしかありません」

 いい加減、国民は言論統制政権の露骨な正体に気づくべきだ。


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10月7日(月) 第4次安倍改造内閣をどう見るか [論攷]

〔以下の論攷は、民商が発行する『全商連新聞』9月30日付に掲載されたものです。〕

「イタチの最後っ屁」内閣
改憲シフトのジレンマも

 改造内閣の人事を目にした時、異様なにおいが漂っているような気がしました。考えてみれば、安倍首相、麻生副首相、菅官房長官はいずれも再任です。第2次安倍内閣発足以来、ずっと同じ顔触れですから政権の中枢に変わりはありません。7年物の「古漬け」のようなものですから、すえた臭いがするのも当然です。

 衆院議員の任期はあと2年ですから、それ以内に解散・総選挙があります。これが最後の組閣になるかもしれないということで、安倍首相は世話になった側近らを処遇したいと考えたのかもしれません。そのために「イタチの最後っ屁」のような、異臭が立ち上ることになりました。
 この内閣の最大の特徴は安倍首相の盟友や側近などを重用した「お友達」内閣で、日本会議国会議員懇談会の幹部が顔をそろえているということです。安倍首相のお友達は日本会議ばかりですからそれも当然です。安倍首相自身や麻生副首相を始め、高市早苗総務相、橋本聖子五輪相、衛藤晟一1億総活躍相、加藤勝信厚労相、江藤拓農林水産相、西村康稔経済再生相、萩生田光一文科相に党4役まで含めれば12人にも上ります。
 異臭ばかりではなく、汚点もあります。森友疑惑や財務次官のセクハラ問題で責任を問われた麻生首相の留任、加計疑惑の当事者の一人である萩生田文科相の入閣、加計学園から献金を受けていた下村博文選対委員長の就任、口利き疑惑で辞任した甘利明元経済再生相の自民党税制調査会長への抜擢など、挙げればきりがありません。
 「滞貨一掃」の派閥順送り人事となった新入閣組も問題だらけです。田中和徳復興相、武田良太国家公安委員長、竹本直和科学技術相は暴力団との交際疑惑が指摘され、河合克行法相についてはパワハラ疑惑が報じられました。
 今回の改造内閣の最大の目玉は、小泉進次郎議員の初入閣です。5%ほどの支持率アップ効果が見込まれるとされていましたが、実際にそれくらいの上昇になりました。内閣に漂う異臭を消すための「消臭剤」、あるいは「目くらまし」として使われたわけです。

 改造内閣の発足に当たって安倍首相は「困難な挑戦だが、必ずや成し遂げる決意だ」と述べ、相変わらず改憲に向けての執念を示しました。自民党役員も改憲への意欲を語り、閣僚の顔ぶれも「改憲シフト」になっています。
 同時に、自民党改憲本部長に温厚な重鎮で安保法制を取りまとめた細田博之元自民党幹事長、衆院憲法審査会長に野党人脈が豊富なベテランである佐藤勉元国会対策委員長を起用しました。野党への懐柔を意識した布陣です。
 安倍首相は硬軟両様の挙党態勢で、改憲発議に持ち込むつもりのようです。しかし、首相の任期は2021年9月までですから、そのチャンスは2年後の通常国会までで、あまり時間は残されていません。
 急ごうとして無理強いすると野党が反発して動かなくなり、丁寧に合意を得ようとすると時間がかかります。このジレンマをどう乗り越えるのでしょうか。安倍9条改憲をストップするための正念場が近づいています。
 しかも、戦後最悪となっている日韓関係をはじめ外交は八方ふさがりで、10%への消費増税、年金問題や医療・介護などの「全世代型社会保障改革」に働き方改革など、内政も難問山積です。それに、2年以内には必ず解散・総選挙がやってきます。
 疾風怒濤の荒波が待っているからこそ、信頼できる「お友達」を配したにちがいありません。その力で航海を安全に続けつもりのようです。しかし、国民・中小業者に挑戦状をたたきつけるような消費税増税という最初の大波を乗り切ることができるのでしょうか。


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10月1日(火) 「原発マネー」をめぐる「原子力ムラ」の醜い構図が明らかになった  [原発]

 「やっぱりなー」と思った人も多かったのではないでしょうか。関西電力の高浜原発をめぐる多額の「原発マネー」をめぐる不透明な流れが明らかになったからです。
 舞台となった高浜原発には、私も京都で開かれた学会の後、見学に行ったことがあります。海の近くで漁港や海水浴場に隣接していて驚きました。

 報道によれば、この原発の関連工事を請け負っていた建設会社から地元の町の元助役を通じて関西電力の経営幹部ら20人に約3億2千万円が支払われていたことが分かりました。このような形で原発マネーが還流していたというのです。
 電力会社、関連工事を請け負う建設会社、地元自治体は「原子力ムラ」の根幹をなしています。これに議員などの政治家、原発推進に協力する学者・有識者、司法でお墨付きを与える裁判官、原発擁護・推進の情報を発信する記者やタレントなども、この「原発ムラ」の住民に含まれます。
 今回はこの根幹部分が「原発マネー」で結ばれている構図が暴露されました。「原発ムラ」を形作る有力な手段が薄汚い「原発マネー」であることが明らかになったのです。

 お金を受け取っていた側は「一時的に預かった」と言い訳しています。返したから問題ないとでも言いたいのでしょうか。
 贈収賄事件が発覚した時に繰り返された「記憶にございません」という言葉を思い出しました。今度は「一時的に預かっていたにすぎない」という言い訳です。
 国税調査などによって見つからなければ、ズーっと「預かって」いるつもりだったにちがいありません。こんな言い訳が通用すれば、どんないかがわしいお金だって言い逃れできてしまいます。

 関西電力は有力者である元助役と関係の深い建設会社に仕事を発注し、その会社からキックバックを受けた元助役は関西電力の経営陣個人に対して3憶2千万円の金品を送っていました。建設会社は急成長し、元助役や経営陣は私腹を肥やしていたというわけです。
 その原資は利用者から徴収された電気料金です。それが原発という必要でもない危険な施設につぎ込まれ、その一部が関係者の懐に入っていたことになります。
 福島の原発事故によって肉親を失ったり故郷を追われたりして今も避難生活を続けている人々は、どのような気持ちでこのニュースを聞いたでしょうか。きっと、腸が煮えくり返るような強い憤りを覚えたにちがいありません。

 全容の解明はこれからです。誰が、いつ、何を、どれくらい受け取ったのか、詳細は不明なままです。
 関西電力内の原発部門以外にも金品を受け取った人がいたのかも分かっていません。原発を抱えている関西電力以外の電力会社に、このような例があるのかについても調査する必要があるでしょう。
 それに、政治家の関与が疑われます。元助役はお世話になっているから資金を提供したと言っていたそうですが、お世話になっている政治家にもカネが流れたと考えるのが自然ではないでしょうか。

 この件について菅原一秀経産相は「言語道断」だと言っていますが、選挙で「脱原発」を唱えて当選したのに経産相になって「原発ムラ」の住民となった途端に「将来的に考えても現実的ではない」と裏切ったことこそ「言語道断」です。その菅原さんも公選法違反の疑いのある政治献金を受け取っていたのに、「返したから問題ない」と居直っているじゃありませんか。
 それに、原発企業である日立の会長である中西宏経団連会長は「八木さんも岩根さんもお友達なのでうっかり変な悪口も言えないし良いことも言えない」とコメントしています。「原発ムラ」の住民は、こんな人ばかりです。
 諸悪の根源は、原発という危険で不必要な「金食い虫」にあります。再稼働を許さず稼動している原発を停止させ、一日も早く「脱原発」を実現するべきでしょう。

 なお、以下のような講演などが予定されています。関係者の方やお近くの方に足を運んでいただければ幸いです。

10月5日(土)午後2時 佐原中央公民館:千葉県香取革新懇
10月7日(月)午後6時半 あーちぷらざ:板橋革新懇
10月12日(土)午後1時45分 盛岡市ユートランド姫神:労働者教育協会東北ブロック
10月14日(月)午後1時半 秩父梁山泊:コミュニティユニオン東京
10月20日(日)午前9時 兵庫県民会館:革新懇全国交流会分散会
10月24日(木)午後6時半 幸市民館:川崎市幸区革新懇
10月27日(日)午後12時 アルカディア市ヶ谷:松田さんを支える会50周年記念総会

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