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6月30日(火) 都知事選最終盤に向けての情勢調査をどう見るか [選挙]

 東京都知事選挙の最終盤に向けて、選挙情勢についての世論調査の結果が報じられていました。東京新聞の記事では「小池氏リード 投票率3割弱未定」と出ており、朝日新聞には「都知事選 小池氏が安定」「宇都宮・山本・小野氏ら苦戦」という見出しがついています。

 都知事選挙をめぐる現時点での情勢は、現職の小池候補が安定しており、それに宇都宮・山本・小野候補が、この順番で続いているようです。ほぼ選挙前の予想通りということでしょうか。
 選挙前から小池さんが圧倒的に有利だと見られていました。現職の2期目は強いと言われていますし、コロナ禍の政治利用によって有利な状況をつくり出してきたからです。
 選挙が始まるまではテレビでスポットを流して名前を売り込み、選挙が始まったら「リモート選挙」だということで街頭演説などをやらずに都民の前から姿を消してしまいました。コロナ危機を口実に顔と名前を売り込むのも、街頭での選挙運動を行わずに論戦から逃げるのも、どちらもコロナ禍の政治利用という点では共通しています。

 東京新聞の調査では、都の新型コロナウイルスの感染症対策について「ある程度評価する」と「評価する」が合わせて70.7%になっています。「アベノマスク2枚」や犬とくつろぐ動画の配信、持続化給付金スキャンダルなど、安倍首相による対策があまりにひどいために、都の対応が相対的にましに見えているのではないでしょうか。
 しかし、それは「やっているフリ」に惑わされた「錯覚」にすぎません。東京アラートは都庁とレインボーブリッジを赤くしただけで実効性はなく、それを解除したのも選挙のためであって感染者数が減ったからではありません。
 アラート解除後も感染者は増え続け、昨日は58人、その前は60人に達しています。このような形で感染者が増え続けていること自体、都の感染症対策が効果を挙げていないことを示しています。

 東京新聞によれば「宇都宮氏は、共産支持層の6割を押さえるが、立民支持層の支持は2割にとどまる」とされています。朝日新聞も「宇都宮氏は、支援を受ける立憲民主支持層への浸透は不十分で、共産支持層もまとめ切れていない。無党派層の支持も1割ほど、60代以上の支持が比較的厚い」と書いています。
 宇都宮さんが小池さんの後塵を拝しているのは、支援している野党や無党派層の支持をまとめ切れていないからです。宇都宮さんを応援している立憲・共産・社民の各党の支持者をまとめれば勝機が生まれます。
 宇都宮さんは過去2回立候補していますが、いずれも約100万票を得票しており、19年参院選で立憲・共産・国民・社民の野党候補が獲得した票の合計は220万票でした。これをまとめ切れていないということは、最終盤にむけての伸びしろが大きく残されているということでもあります。

 宇都宮さんは「日本のサンダース」と言われていますが、アメリカでの「サンダース旋風」は70代の高齢者と若者のコラボによって生じたものでした。日本でも同じような高齢者と若者との連携が生まれれば、大きな「旋風」を起こすことができるにちがいありません。
 私も今日一日、「全国・首都圏革新懇行動デー」に加わって宇都宮さんへの支持を訴えるつもりです。最後まであきらめずに闘い抜いたものだけが、勝利を手にすることができるのですから。

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6月29日(月) 都知事選挙の最終盤にあたり反貧困・人権派弁護士への支持を訴える [選挙]

 注目の都知事選挙も、7月5日の投開票日まであと1週間となりました。すでに期日前投票も始まっています。
 都知事選挙の最終盤に当たって、反貧困・人権派弁護士への投票を呼びかけます。周りの方にも、ぜひ「日本のサンダース」への投票を薦めていただきたいと思います。

 都知事選挙が公示されてから、私も全国革新懇・東京革新懇の代表世話人、革新都政をつくる会呼びかけ人会議の呼びかけ人代表の1人として様々な活動に参加してきました。
 25日には、エデュカス東京で開かれた「宇都宮健児さんの勝利をめざす全国・首都圏・東京 労組・民主団体決起集会」であいさつしました。私は、この集会を主催した3つの団体のいずれでも、代表する立場にあったからです。
 また27日には、「全国・首都圏革新懇行動デー」でもあいさつし、新宿駅南口での宣伝とスタンディングで訴えさせていただきました。同様の行動は、30日の午後にも予定されています。

 他方、東京でのコロナ感染者の数は、アラート解除後も減ることなく、かえって増え続けているようです。最近も、55人、48人、54人、57人と連日感染者数が50人前後を数え、昨日はとうとう60人になってしまいました。
 小池都知事による「東京アラート」解除は、感染が収まったからではなく知事選挙への立候補を表明するためのものだったということは、このような経緯からも明らかです。その「東京アラート」にしても、都庁とレインボーブリッジを赤く染めるだけで具体的な対策はありませんでした。
 今ではアラートさえも発動されず、「自粛から自衛へ」と呼びかけるだけです。このような「やってるフリ」だけのコロナ対策を転換するためにも、都知事を変えなければなりません。

 現職の小池都知事については、石井妙子さんが書いた著書『女帝 小池百合子』が話題を呼んでいます。私も読みましたが、「こんなに酷い人だったのか」と認識を新たにさせられました。
 それだけではありません。葉上太郎さんが書いた『都知事、不思議の国のあるじ』という本も注目を集めています。青島以来の5人の都知事を取り上げて比較した葉上さんは、今の都庁を「小池ワンダーランド」だと評し、都知事は鶏のとさかで目立つことをやりたいだけでその究極が小池さんだというのです。
 「職員との乖離は史上最低」だとも書いています。都の職員のアンケートでは都知事1期めについての評価は46.4点で、『都政新報』の編集長は「正直言って、ここまで点数が低いとは思いませんでした。及第点とはいえないにしても、私の実感としては、50点は超えるかと……。小池都知事がいかに都職員たちから信頼を得ていないか、ということが明らかになりました」と語っています。

 それもそうでしょう。『女帝』では「政治家としてやりたいことはなく、ただ政治家をやりたいのだ」という池坊保子さんの小池評が紹介されていますが、同様に「都知事としてやりたいことはなく、ただ都知事をやりたいのだ」という本質が見破られているからです。
 先の総選挙での「希望の党騒動」でも明らかなように、小池さんは総理大臣をめざしており、都知事は通過点にすぎないのです。このような人が真面目に仕事をしている職員の信頼を得られるはずがありません。
 れいわ新選組の山本太郎さんも以前から総理大臣をめざすと公言しており、都知事はそのための通過点にすぎないようです。いずれにしても、都民の命と生活が懸かっている都政を総理大臣になるための「踏み台」とするのはやめていただきたいと思います。

 小池都政を批判する人々の中で山本太郎さんに対する期待があるのは理解できます。しかし、市民と野党の共闘を実現したいと思い、赤坂にあるれいわ新選組の事務所まで出かけて要請と懇談を行ってきた私としては、共闘を拒んでれいわ新選組の代表として「後出しジャンケン」的に立候補したことには大きな問題を感じています。
 4年前の都知事選挙でも野党から宇都宮さんと鳥越さんが立候補する動きがあり、最終的に宇都宮さんが辞退して鳥越さんに一本化されました。前回の宇都宮さんは野党共闘を尊重して身を引き、今回の山本さんは野党共闘を拒んで勝手に立候補したように、共闘に対する姿勢という点で決定的に異なっています。
 れいわ新選組と山本太郎さんは野党共闘の仲間だと思いますし、総選挙に向けての共闘に加わってもらいたいと願っていますが、そのためにも共闘の力を知っていただく必要があります。自分と自分の仲間だけの力で何とかなるということであれば、総選挙に向けても同じような分裂行動に出る可能性がありますから。

 それを防ぐためにも、市民と野党の共闘によって支援されている候補が勝利する必要があります。都知事選挙の結果は、解散・総選挙の時期だけでなく対決構図にも大きな影響を与えるにちがいありません。
 都政のみならず、日本の政治全体の行く末を左右するものになってきています。この選挙で宇都宮けんじさんが勝利すれば、末期症状に陥っている安倍政権に引導を渡し解散・総選挙に向けて明るい展望を切り開くことができるにちがいありません。

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6月28日(日)  『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月28日付に掲載されたものです。〕

*記事「小池都知事“やってるフリ”が招いた「感染爆発 重大局面」」

■カラカラになるコロナ対策費

 「小池知事は都の昨年度収支の黒字1403億円の一部を新たなコロナ対策に充てるとしています。しかし、すでに1兆円をつぎ込み、コロナ対策の財源である財政調整基金は9割以上減少して、残りは約800億円。以前と同じ対策が打てない状況なのです」(都政関係者)

 再びアラートを発動し自粛を再要請すべきという声も強いが、選挙中に発動したら「なんで出馬表明直前に解除したのか」とブーイングを浴びるだけに、やりたくてもやれない状況なのだろう。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「自分が出演するテレビCMを垂れ流したり、出馬表明の直前にアラートを解除したりと、小池さんはコロナ危機の政治利用が目に余ります。結局、やったことといえば、都庁とレインボーブリッジを真っ赤に染めただけです。連日、感染者が50人というこの感染拡大は、小池さんが効果的な対策を打たなかった証左ですよ。都民は小池さんの『やってるフリ』のツケを払わされるのだから、たまったものじゃありません」

 こんな知事に、再び都政を任せていいのか。

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6月27日(土)  『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月27日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「専門家vs安倍政権 責任なすりあいで“空中分解”の今後」

 大体、安倍政権は検証に不可欠な記録を後世に残すつもりさえない。コロナ対応を公文書管理の指針に基づく歴史的緊急事態に指定したのに、専門家会議を「政策を決定・了解する会議」と認めず、発言を箇条書きにした議事概要にとどめたままである。

 「加えて首相や閣僚が対策を議論する『連絡会議』の議事概要には、首相の発言は一切、記載されていなかった。モタモタ対応を見かねて、前面に出た専門家会議の背後に政権が隠れ、ピント外れのコロナ対策の責任を押しつけたとみられても仕方がない。だから、専門家会議も責任の矢面に立つのはごめんとばかりに、見解の文言削除や修正など政権側の横やりを暴露。“最後っ屁”でケツをまくったように感じます」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 感染増加の真っただ中に迷走コロナ対策の責任のなすり合いで、政府と専門家会議が空中分解……。国民には嘆息しかないのではないか。

 その上、安倍は民主党政権時代に成立した「新型インフルエンザ特措法」の適用に難色を示し、法改正の手続きを経たため、緊急事態宣言も遅れた。対象を絞った30万円給付のあまりの評判の悪さに、閣議決定済みの補正予算を急きょ組み替え、一律10万円給付に変わったものの、こちらも支給は遅れている。前出の五十嵐仁氏が言う。

 「安倍首相は専門家を使いこなせず、彼らの助言よりも側近官僚の思い付きを重視。『全国民の不安はパッと消えますよ』との進言に食いつき、布製アベノマスク2枚を配布する大失態を演じました。犬を抱いた動画配信も同様で、国民の信頼は地に落ちています。首相が痛感すれど、取ろうとしないため、責任の所在も曖昧模糊とし、覚悟にも欠け、十分な政治決断も下せない。コロナ禍が可視化したのは、『ないない尽くし』のガバナンスの欠如です」

 安倍も小池も今なお五輪優先の失態を認めようとしない。なぜPCR検査の件数は少ないのか。海外の全自動検査システムなどは日本の技術が支えているではないか。当然の疑問に医師会も答えず、権威主義で非を認めようとしない。


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6月26日(金)  『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月25日付に掲載されたものです。〕

*記事「地方の怒り表面化 沖縄と長野で「内閣支持率18%」の衝撃」

 国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長は10月中に東京五輪開催の可否を判断すると明言している。11月3日には米大統領選がある。「五輪中止」や「トランプ敗北」が決まると、安倍首相のパワーはますます低下する。解散するならその前しかない。しかも、年明けからは景気が一気に悪化すると予想されている。コロナ第2波襲来の恐れもあり、解散は打ちにくい。

 しかし、支持率20%割れでは、とてもじゃないが9月に解散は打てない。

 琉球新報などが沖縄県民を対象に実施した世論調査(6月13~14日実施)では、内閣支持率は18・73%、不支持率は66・33%に上った。また、信濃毎日新聞によると、長野県内の世論調査(5月30~31日実施)の内閣支持率は18・6%だった。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「安倍内閣の支持率が地方で1割、2割なのは、当然の結果です。30%台が出ている全国メディアの数字は、東京、名古屋、大阪など都市部を含む全国平均の支持率です。地方経済はコロナ禍に直撃されています。観光産業などはモロに影響を受けました。それでなくとも、この7年間、都市と地方の格差は広がり、地方にはアベノミクスの恩恵は及ばなかった。内閣支持率が下落する一方、石破茂さんの人気が上昇しているのも地方の怒りの表れです」

 自民党議員は地方の怒りをどこまで分かっているのか。


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6月25日(木) 安倍首相 また任期中に改憲 [コメント]

〔以下のコメントは『東京新聞』6月23日付の「こちら特報部」に掲載されたものです。〕

なぜ今?コロナ禍なのに
「第2波対策に専念を」

 法政大学名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は「首相は政治的なレガシーとして誇れるものがない。結党以来誰も成し遂げられなかった改憲をやってみたいのだろう」と、レガシーがないゆえの暴走を懸念する。
 アベノミクスは、異次元の金融緩和で株価をつり上げて好景気の雰囲気を出しただけ。「結局、庶民はその恩恵を受けられないばかりか、消費税増税とコロナ不況で悲惨な結果に終わった」。北朝鮮の拉致問題や北方領土問題でも成果がなく、「外交の安倍」は有名無実。せめて改憲だけは、というわけだ。

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6月24日(水) 都知事選 湧きあがる共闘 [コメント]

〔以下のコメントは『しんぶん赤旗』6月22日付に掲載されたものです。〕

全小選挙区に市民と野党合同選対
自発的な動き

 市民と野党の共闘で小池都政の転換を求める「呼びかけ人会議」の五十嵐仁法政大学名誉教授は、市民の動きについて「上意下達ではなく、草の根からの自発的な共闘の動きとして生まれてきている」と指摘。「この間のいろいろな市民と野党の共闘の実績が生きている」と述べます。

足並みに激励

 立民の枝野代表が新自由主義との決別を表明し、新自由主義反対が野党共通の旗印となりつつあります。
 その流れの中で新自由主義とのたたかいの先頭に立ってきた宇都宮さんを共闘候補とする決断がなされました。
 高田氏は「枝野代表が新自由主義批判に踏み切り、野党が足並みをそろえていることに、私も大変激励された」としつつ次のように述べます。「宇都宮さんを共闘候補とすることができたのは、共闘の積み重ねがあったからこそ。昔なら、共産党が積極的に推薦する候補には『やりにくい』という反応が常に出てきたが、今はほとんど見えない」と指摘。五十嵐氏も「私も各政党に『共闘してほしい』と要請に回ったが『この間、高知で(知事選を)一緒にたたかった』など各地でのたたかいが次々と話題に出てくる。政党間での付き合い、人間的なふれあいの中で培われてきた信頼関係が力になっている」と語りました。

共同で勝利を

 日本共産党の志位和夫委員長は、昨年秋以来、自ら精力的に他党党首との会談に臨み、草の根の共同、国会の共闘を発展させ、一つひとつの選挙を共同で勝ち抜くと表明し、共同発展の取り組みを強めてきました。
 五十嵐氏は、新自由主義からの決別の動きについて「個々の政策ではなく、どういう社会や政治を目指すのかという骨太の将来構想の幹になるようなものが形づくられ、共通の旗になりつつある」と指摘。共闘の「バージョンアップ」への期待を述べます。
 都知事選での共闘の画期的発展は、共闘を追求してきたからこそ生まれたものです。この共闘を安倍政治転換の力へとさらに発展させる―。都知事選はその大きなステップでもあります。


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6月23日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月23日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「国民は疑心暗鬼 移動・営業自粛解禁、景気底打ちの空騒ぎ」

 都の“女帝”が3月下旬、いきなり「ロックダウン(都市封鎖)」に言及して不安をかき立てた時の感染者数が40人台だった。今と変わらない人数だ。なぜ今回は静観なのか。アラートを発しなくても大丈夫だと言えるのか。

■「100年に1度の危機」から一転

 「東京アラートには何の意味もありませんでした。小池知事の選挙向けパフォーマンスに使われただけです。自粛要請の解除も、経済を回した方が都知事選に有利だという政治的判断からでしょう。東京アラートも“やってる感”を演出していただけで、科学的な根拠に基づくものではない。
 経済活動を全面再開してからの感染者増が表出するのは2週間後ですから、その頃には都知事選も結果が見えている。選挙期間中は、自分がコロナを抑え込んだから経済活動が再開できたという幻想を振りまき、じわじわと感染者数が増えている現実は見て見ぬふりで乗り切るつもりなのでしょう。何もかも自分に都合のいいように決めているのです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学) 

 コロナの選挙利用は悪質だが、輪をかけてひどいのが政府の対応だ。

 安倍首相は国会閉会を受けた18日の記者会見で、「19日から社会経済活動のレベルを引き上げる。都道府県をまたぐ移動も全て自由。各地への観光旅行にも、人との間隔をとることに留意しながら、出掛けていただきたい」と呼びかけた。

 そして当初の予定通り、移動や経済活動を全面解禁すると同時に、景気の基調判断を2年5カ月ぶりに上方修正したのだ。

 「コロナ感染拡大には目をつぶって、経済活動に舵を切ることにしたのでしょう。コロナ対策で議論すべきことは山積みなのに、17日に国会を閉じたから、何か起こっても首相が責任を追及される場はない。経済活動の全面再開には、これ以上の補償はしたくないという政府のホンネも透けて見えます。これまでも、都や政府のコロナ対策は、専門家の意見や科学的知見を“参考程度”にとどめ、政治的な思惑で歪めてきた。全国的な休校要請や、緊急事態宣言は必要なかったという見方もあります。小池都知事も『自粛から自衛へ』と言っていましたが、世界的な感染症流行の対策を自己責任に丸投げなんて、政治の責任放棄ですよ。“ウィズコロナ”などと言って、もう補償はしないから自力で何とかしてくれと突き放している。新自由主義のコロナ版であり、無責任極まりない。こんな都知事や政府に国民の命と安全を預けられるでしょうか」(五十嵐仁氏=前出)

 政府のコロナ対策では、アベノマスクや休業補償など、実情にそぐわない愚策を繰り出してきた政治家・官僚の失態が次々と明らかになっている。自己都合優先で専門家の意見にも耳を貸さず、サイエンスに基づかない政府の方針はまったくもって信用できないのだ。


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6月22日(月) 安倍政権のコロナ対策を検証する(その2) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』No.803 、2020年7月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

3、「ポストコロナ社会」に向けて

 感染者数の減少とともに、各国において収束後に向けての「出口戦略」や「ポストコロナ社会」についての議論がはじまっています。感染防止と経済再建は「命」にかかわる問題としては共通しています。両者を結合してバランスを取りつつ、感染状況に応じて対策の重点が変化することになるでしょう。
 第1に、当面の対策が重要です。これについては、PCR検査を拡充し、希望する人は誰でも検査を受けられるようにしなければなりません。また、医療関係者に対する支援を強め、「医療崩壊」を招かないようにすることも大切です。さらに、自粛や休業の長期化による生活苦や経営難にたいする補償も欠かせません。そのための第2次補正予算の成立は急務です。情報通信技術(ICT)を利用したテレワークはすでに始まっており、それは今後も続くでしょうが、「現場」を持つ仕事や直接「人」に向き合う感情労働などでは限界があります。
 第2に、新自由主義的政策やアベノミクスの見直しが急務です。コロナ禍は現代社会における貧困化や格差、社会的弱者の存在を可視化しました。その多くは新自由主義の下で蓄積されてきたものです。アベノミクスの下での金融緩和や非正規化の推進、消費増税などによって、問題は解決されるどころか深刻の度を増してきました。大型開発優先で福祉や医療を軽視し、収益性や効率性だけで評価するような政策判断を是正する必要があります。
 第3に、長期的には資本主義的な経済システム自体が変革の対象とならざるを得ません。貧困化と格差、自然環境の悪化、未知の感染症の拡大など、人類が直面する大きな問題の解決に無力なだけでなく、それを拡大し促進してしまうからです。地球規模で深刻な「コロナ恐慌」が襲い、日本も2四半期連続でマイナス成長となっている現在、そこから脱け出すだけでなく、これらの問題を解決し国連のかかげる持続可能な開発目標(SDGs)を達成できる新しい経済社会システムが模索されなければなりません。
 今、問われているのは「元通りの社会」を取り戻すことではなく、これを好機として「より良い社会」への扉を開くことです。利潤やお金儲けより健康や命を大切にし、富の集中を是正して自然環境の保全や人に投資する社会へと作り替えていくことが必要です。経済効率最優先ではなく福祉の充実、医療・介護・教育・保育などが優先される社会への転換こそが求められているのではないでしょうか。

むすび

 コロナ禍の下で新たな社会の姿が生まれています。感染防止のための行動制限、感染ルートを特定するための監視と統制、「自粛警察」などという同調強制の動きも生じました。人々はお互いの接触を避け、国々は国境を閉ざして交流を遮断し、都市封鎖によって自宅に閉じこもりました。米中間の対立が激化し、分断と孤立の新しい社会と行動様式が現れたのです。
 しかし、他方で、コロナの恐怖にさらされながら患者を救済する医療関係者の奮闘、それへの感謝と連帯、自粛と休業によって生活と営業の危機に直面する弱者や小零細企業への支援、文化・芸術関係者や個人事業者への援助、新型コロナウイルスに対するワクチン製造をめざす国際協力などの動きもあります。連帯と共同の新しい行動様式の萌芽も生じたのです。
 また、労働や教育、文化・芸術活動などでのインターネットの利用拡大が新しい可能性を開いています。政治や社会運動の面でもツイッターなどによる「ネット・デモ」が注目を集め、定年延長という人事によって検察支配をねらった検察庁法改定案の成立を断念させました。ネットなどによって可視化された民の声が政治を動かしたのです。
 コロナ以前に戻るのか、新たな社会へと踏み出すのか。分断と孤立か。連帯と共同か。強いリーダシップを求める強権的な政治か、個人がイニシアチブを発揮する新しい市民社会か。「ポストコロナ社会」のあり方として、どちらをめざすのかが問われています。その答えを出すのは私たちです。未来の社会に向けての選択は、主権者である国民1人1人に委ねられているのですから。

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6月21日(日) 安倍政権のコロナ対策を検証する(その1) [論攷]

〔以下の論攷は、『学習の友』No.803 、2020年7月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

はじめに

 新型コロナウイルスが人類にとっての新た脅威として急浮上しました。5月30日現在、世界全体で感染者数は586万7727人、死亡者数は36万2238人、回復者が246万2386人となっており、日本国内では感染者数1万6759人、死亡者数882人、回復者数1万4254人と報告されています。
 現状では、感染の最盛期が過ぎピークアウトしたと見られています。世界では中国や欧米諸国などをはじめ、日本国内でも「出口戦略」が模索され、感染防止から経済再建へと重点が移りつつあります。しかし、再流行のリスクは高く、流行の第2波・第3波が訪れる可能性も少なくありません。ワクチンが開発されるか国民の多くが抗体を獲得する「集団免疫」の状態にならない限り、新型コロナウイルスの脅威が消え去ることはないでしょう。
 このコロナ禍に対して安倍政権はどう対応してきたのでしょうか。その背景や問題点はどこにあるのかを検証したいと思います。また、これが収束した後の「ポストコロナ社会」に向けて、私たちはどのような選択に直面しているのでしょうか。

1、失敗続きの新型コロナ対策

 安倍政権のコロナ対策における最大の問題は、感染防止を最優先できず命と健康を守ることを貫けないという点にあります。習近平国家主席の訪中を控えていた中国との関係、欧米などを含むインバウンドへの配慮、五輪・パラリンピック中止や企業の経済活動への懸念など、さまざまな政治的思惑によって対策は歪み、ブレ続けてきました。
 その結果、当初の水際対策やクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」内での感染拡大の防止などで後手後手の対応に終わっています。その結果、緊急事態宣言を出さざるをえなくなり、それでも感染拡大を防げず、約1カ月も延長することになりました。当初の水際対策が成功していれば宣言は必要なかったはずで、二重の失敗だったと言えます。
 具体的な根拠の乏しい一斉休校、巨額の国費を投じたアベノマスク2枚の配布、歌手とのコラボ動画の配信など、効果が不明で失笑を買うような対策が続きました。困窮世帯に30万円を条件付きで支給するという案も反発の高まりで撤回し、国民1人当たり10万円の支給に変更されています。
 このように、安倍政権は不手際続きの対応に終始し、緊急事態宣言も自粛と休業の要請や指示という緩い規制で、諸外国のような「都市封鎖」や強制措置を伴っていません。それにもかかわらず、欧米諸国より感染のスピードは遅く、感染爆発(オーバーシュート)は発生しませんでした。
 それは安倍首相というリーダーが愚かでも、日本国民の対応が賢かったからです。国民の高い倫理性と責任感が、要請にすぎない自粛や休業への主体的で積極的な協力を生み、清潔好きで室内では靴を脱ぎ、あいさつでは基本的にハグや握手をせず、手ではなく箸を使い、普段でもマスクをするという生活習慣、BCG接種や国民皆保険という制度が感染拡大を防ぎました。
 日本国民の同調性の高さや横並びの意識も、密閉・密集・密接 という「三密」を避けるような生活様式を生み出しています。ただし、このような行動規制への同調は自主的に選択されるべきもので、それを強要したり過剰な同調を求めたりすることは避けなければなりません。「自粛警察」のような対応は社会の活力をそぎ、新たな差別と偏見を生み出すことになるからです。

2、コロナ禍が深刻化した背景

 コロナ禍が深刻化した背景には二つの側面があります。一つは世界に共通する問題であり、もう一つは日本独自の問題です。日本の場合は、この二つが重なっていますが、すでに述べたような理由で、それでもなお相対的に感染者数と死者数が少数にとどまっています。ただし、PCR検査の数が少なく、これがどこまで実態を反映しているかは疑問です。
 世界に共通する問題としては、第1に資本主義という経済システムがあります。利潤最優先での競争とグローバル化、市場の拡大、開発などによって新たな害悪が生じました。資本主義にはもともと恐慌の発生という大問題があり、貧困化と格差の増大、市場拡大のための開発、生態系と地球環境の破壊が進められてきました。その結果、未開の地が市場に組み込まれ、グローバル化によって未知の感染症がまたたくまに世界中に拡大することになったのです。
 第2に、新自由主義の悪影響も深刻な結果をもたらしました。ショックドクトリン(惨事便乗型資本主義)によって惨事を防ぐのではなく資本の支配と活動のために利用しようとするからです。その結果、資本主義の害悪は増幅され、官から民へというかけ声による公共の撤退と民営化、自己責任論による福祉・医療・介護の削減、医療費の抑制策、非正規労働者の増大などが進められてきました。その結果、新型感染症への抵抗力を削ぎ、脆弱な社会を生み出してしまったのです。
 日本独自の問題としては、トップリーダーが安倍首相だという不幸があります。トランプ米大統領への追随、科学的知見と専門家の意見を軽視する反知性主義に加えて、世論工作のために多用してきたネット利用も逆効果になりました。23カ国・地域を対象にして4月にオンラインで実施された政治指導者についての国際比較調査で日本が最下位となったように、安倍首相への信頼感の欠如と説得力のなさは際立っています。
 政策決定においても秘書官などの側近主導での不透明さが目立ちました。国民の協力を得て一丸となってコロナ禍を乗り切るためには、隠さず、嘘をつかず、信頼され、近隣諸国と連携できる誠実なリーダーが不可欠です。しかし、モリ・カケ問題、桜を見る会、検察庁法改定などでの公文書の隠蔽・改竄や国会答弁で嘘をつき、韓国を敵視する安倍首相にはどれも不可能です。