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10月6日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』9月27日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:物価高放置、インボイス強行 経済対策になぜ消費税減税が入らないのか

 複数税率に端を発したインボイス(適格請求書)が導入されれば、消費税の納税が免除されてきた売上高1000万円以下の小規模事業者やフリーランスは、2択を迫られる。免税事業者のままか、課税事業者になってインボイスを発行するか。免税事業者を選択すれば、税負担が増す取引先から切り捨てられる懸念がある。

 年間売上高300万円の業者が課税事業者に転じた場合は、社会保険料など納付も差っ引くと、月額およそ7万円しか手元に残らないという。廃業に追い込まれるのは必至。いよいよ疑問だ。経済対策を言うのなら、なぜ消費減税がメニューに入らないのか。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「物価高騰に苦しむ国民生活をでき得る限り公平に支えるのであれば、消費減税が最も効果的です。いまや消費税は基幹3税のうち最大の税目で、財務省が大きな壁になっているのは間違いない。22年度の税収は過去最大の71.1兆円で、そのうち消費税はインフレ増税効果もあって23兆円に上った。一方で、生活苦から消費は落ち込んでいる。それこそ異次元の賃上げ、異次元の最低賃金引き上げ、異次元の消費減税。国民生活を第一に今までにない常識外れの施策を打たなければ、この非常事態にそぐわない。悪臭のもとを断たず、消臭剤をふりまくような経済対策では対症療法にもなりません」

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10月5日(木) 『しんぶん赤旗』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『しんぶん赤旗』10月4日付に掲載されたものです。〕

 岸田政権発足2年
 権力固執 暴走に拍車

 「岸田政権の特徴は、自民党内の派閥や霞が関の官僚の顔色をうかがって政治をしながら政権維持を最優先していることだ」―。こう指摘するのは、五十嵐仁法政大学名誉教授です。五十嵐氏は「岸田首相が国民に顔を向けて政治をしていないから、国民は首相が何をしようとしているのか、目標やビジョンが見えない」と語ります。

 五十嵐氏は「米国からの圧力があっても、これまでの自民党政権は『憲法上の制約』などを理由に、それなりに抵抗するという面があった。ところが、岸田政権は憲法には目もくれず能動的に米国に追随し、自ら大軍拡に突き進んでいる」と強調。「安倍政権下で自民党全体が右傾化したが、岸田政権でさらに拍車がかかっている」と、その暴走ぶりを指摘します。

 また、五十嵐氏は「戦前の日本は『富国強兵』政策を採用したが、岸田政権は軍事大国化しながら国民がますます貧しくなる『強兵貧国』政策を進めている」とズバリ。米国と財界にひたすら忠誠を誓う岸田政権の暴走は、自公政権の政治路線そのものの行き詰まりを表しています。

 安全保障でも、経済でも、人権問題でも深刻な行き詰まりを示す岸田政権。打開のカギはどこにあるのでしょうか。
 中野晃一上智大学教授は「やはり市民と野党が『変えることはできる』と選択肢を提示することが必要だ。解散権の乱用や民意を全く無視して進めるようなことの何が問題なのか。どう変えていくのかを示すことが求められている」と指摘します。

 一方、五十嵐仁法政大学名誉教授は「岸田首相は『聞く力』を自慢してきたが、実際には『聞き流す力』にすぎなかった」と指摘。「岸田政治の破綻は誰の目にも明らかだ。平和と生活、営業を守るためには、岸田政権を倒して政治を変えるしか道はない」と話しました。
 そこで、中野、五十嵐両氏が強調するのが、野党がまとまって選挙をたたかう「野党共闘」の必要性です。
 五十嵐氏は「市民と野党の共闘は失敗したかのように言われているが、きちんと成果を上げてきた点を見なければならない」「憲法にもとづいた平和で豊かな生活を守る、人権を重んじた希望の持てる政治を実現するために、野党は大道に立って共闘すべきだ」と強調します。


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10月4日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』10月4日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集:正しいことは一つ「解散できなきゃ岸田は終わり」 飛び交う憶測の真偽

 それぞれ選挙区事情があったのだろうが、地方と東京、2つの首長選で敗北したことは岸田自民には大打撃だったに違いない。

 春の統一地方選でも、都内の区議選では杉並区や渋谷区、大田区などで自民候補の落選が相次いだ。

 しかも、内閣支持率の低迷が示すように、岸田政権への国民の怒りはマグマのようにたまっている。毎日新聞の最新の世論調査では「(岸田首相に)早く辞めてほしい」が51%に上っているのだから、怒りは相当なものだ。

 いま、選挙をやったら、議席維持など到底無理なのではないか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「物価高への無策や軍拡増税、弱者イジメのインボイス制度、マイナカードの問題など……。国民が怒りを募らせているのは明らかです。次の衆院選では、投票率が上がる可能性があります。投票率が1%上がれば、約100万票が動くことになる。5%上昇して500万票が野党に流れれば、自民党はひとたまりもないでしょう。この状況で本当に岸田首相は解散を打てるのでしょうか」


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10月2日(月) 現代史のなかでの岸田政権をどう見るか(その2) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.842、2023年10月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 人権と民主主義への逆行

 岸田首相は「法の支配」「自由で開かれたインド太平洋」「先進国との価値観の共有」を口にしています。これも全てウソばかりです。法の土台である憲法を無視し、メディアを規制し、人権と民主主義に逆行し、国連や他のG7サミット参加国から問題点を指摘され、改善を迫られているではありませんか。
 5月のG7広島サミットを前に、6か国とEUの駐日大使は連名で岸田首相に性的少数者(LGBTQ)の人権を守る法整備を促す書簡を送りました。サミット参加国のうち日本だけが時代に逆行し、価値観を共有していなかったからです。
 7月には、国連の人権理事会作業部会が日本に調査団を派遣し、ジャニーズ事務所をめぐる性加害問題を取り上げて注目されました。しかし、その調査内容は女性、性的少数者、障害者、アイヌなどの先住民族、被差別部落、労働組合など200項目を超え、ジャニーズ問題は5項目にすぎません。難民や技能実習生などを含めて、これらの人々が人権侵害のリスクにさらされているからです。
 先の通常国会では改定難民認定法や性的少数者に対する理解増進法が成立しました。しかし、これらも難民の人権を侵害し、性的少数者への差別を助長する内容でした。ジェンダー平等の点でも日本は146か国中125位という有様です。
 報道の自由度でも日本は26位でG7参加国では最低です。テレビ放送については総務省の内部文書が明らかになり、放送法の解釈変更によってメディア支配を強めようとしていた実態が暴露されました。マスメディアの権力監視や政権批判も弱体化する一方です。
 このほか、マイナンバーカードの導入やマイナ保険証への切り替え、福島第1原発「処理水」の海洋放出、消費税インボイス制度の実施、大阪での万博やカジノの推進、沖縄・辺野古での基地建設など、岸田政権は反対の多い施策を次々と強行してきました。「聞く力」は「聞き流す力」にすぎず、民意に寄り添う姿勢は全く見られません。

 続発するスキャンダルと辞任

 岸田政権はスキャンダルまみれで閣僚などの辞任が相次いでいる点でも特徴的です。昨年10月に山際大志郎経済再生担当相が世界平和統一家庭連合(統一協会)との癒着を批判されて辞任し、11月には葉梨康弘法務相が度重なる失言で辞任しました。また、寺田稔総務相も政治資金の不適切な処理などで辞任しています、
 12月には秋葉賢也復興相が事務所経費をめぐる問題で辞任し、杉田水脈総務政務官も女性や性的少数者などへの差別発言で辞任に追い込まれました。差別発言では、荒井勝喜総理秘書官も更迭されています。
 その後も更迭や辞任は続きました。岸田首相の息子である翔太郎首相秘書官が公私混同による不祥事で更迭され、木原誠二官房副長官も警察捜査への介入などの疑惑が報じられています。また、自民党女性局のパリ研修旅行でも不適切な実態や写真の投稿などが批判され、松川るい女性局長が辞任に追い込まれました。
 同じ8月には、秋本真利外務政務官が日本風力開発から多額の資金提供を受けた収賄の疑いで辞任し、自民党も離党しています。一時、大きな批判を浴びた統一協会との癒着やその深い闇の解明も放置されたままです。
 これらのスキャンダルの要因は本人の資質や常識・倫理感の欠如などによるものですが、それを任命した岸田首相にも大きな責任があります。同時に、構造的な背景にも注目しなければなりません。それは小選挙区制という選挙制度です。大政党有利で政治の固定化と世襲議員を生み出し、女性の進出を阻み、緊張感を失わせて政権に「あぐら」をかくことを可能にしているからです。

 諸悪の根源は小選挙区制にあり
 活路は野党共闘、労働組合への期待

 歴史を振りかえってみれば、自民党が試みたあらゆる改革は失敗の連続でした。構造改革はリストラと規制緩和を進め、行政改革は官の役割を後退させ、財政改革は国債の増大を招き、税制改革は企業減税と消費税の増税をもたらし、労働改革は非正規労働者を増大させました。年金改革は支給額を減らすだけで、社会保障改革も保険料の増加と福祉サービスを低下させ、大学改革や教育改革は教員の負担の増加と研究力・教育力の衰退を生み出しています。
 なかでも最も失敗したのが政治改革です。小選挙区制が4割台の得票率で7割台の議席をもたらし独裁体制を築くことは当初から明らかでした。私は1993年の拙著『一目でわかる小選挙区慰霊代表並立制』(労働旬報社)で「『死票』がゴマンと出る」「政党と議員の固定化がすすむ」「投票率が低下する」などを指摘しましたが、その後30年の経過はこれを裏付けるものとなりました。
 自民党に好き勝手を許している諸悪の根源は小選挙区制にあり、野党の分断はそれに手を貸す結果となっています。日本の政治をまともなものにするために選挙制度の改革は急務ですが、現状では野党の選挙共闘によって政権交代にむけての可能性を探るしかありません。活路は共闘にしかないのですから。どの野党も単独での政権獲得は不可能で、維新は共闘を拒否しています。
 野党共闘の再建に向けては、職場での労働組合の共同闘争や草の根での様々な市民団体・政党などの共同行動の積み重ねが重要です。そのうえで、中央段階で選挙共闘に向けて合意し政策協定を結ばなければなりません。形だけの候補者調整ではなく、「本気の共闘」が不可欠です。
 2021年の前回総選挙では野党共闘が実現し、小選挙区での統一候補の当選が62、惜敗率80%以上は54、1万票以内が31という成果を収めました。しかし、共闘が不調に終われば「30選挙区で当選ラインを下回る可能性がある」と『東京新聞』(23年8月27日付)は報じています。共闘しなければ現状維持すら難しい、というわけです。
 連合や傘下組合に対しては、共産を含む共闘に反対しないよう、イデオロギー的な偏見を捨て、労働者の利益になるかどうかで判断するよう働きかけることが必要です。実質賃金や最低賃金の引き上げ、労働条件の改善、働く者の人権の重視という点で共通しているのですから。
 一時、立憲民主党の泉代表は共産党を含めて選挙協力せずと発言しましたが、実情に応じて柔軟に対応するとの姿勢に変わりました。笹森事務局長時代の連合と全労連は、労働基準法改定反対の「花束共闘」、春闘リレー集会での舞台共用、法政大学大原社会問題研究所主催のシンポジウム「労働の規制緩和と労働組合」での同席など、接近の動きがありました。
 しかし、労働の規制緩和に歯止めをかけるには不十分で、非正規労働の拡大や雇用の不安定化、賃金の低迷をストップさせることができませんでした。この歴史の教訓に学び、労働運動における共同の再建と選挙共闘の確立を両輪に、労働者の要求実現と政権交代をめざして労働組合が大きな役割を果たすことを期待したいと思います。


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10月1日(日) 現代史のなかでの岸田政権をどう見るか(その1) [論攷]

〔以下の論攷は『学習の友』No.842、2023年10月号に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 『東京新聞』2023年5月28日付は「データでみる失われた30年」という特集を組んでいます。そこに掲載されている「企業の時価総額ランキング」は衝撃的でした。日本の企業は1989年にトップ10に7社も入っているのに2023年には1社もなく、トップ100でも39位のトヨタだけなのです。日本企業の凋落ぶりを象徴するようなデータでした。
 戦後の日本は復興を成し遂げ、高度経済成長によって1968年には国民総生産(GNP)でアメリカに次いで世界第2位となりました。『Japan as No.1』(ジャパンアズナンバーワン)という本が出版されたのは1979年です。それからの10年間が戦後日本の絶頂期だったのかもしれません。
 その後の「失われた30年」を経て、今の日本はどのような地点にあるのでしょうか。長い坂をダラダラと下り、とうとう崖っぷちにさしかかっているようにみえます。足を踏みはずせば、奈落の底へと真っ逆さまに転落してしまうような崖っぷちに。
 この危機的な局面を招いているのが岸田政権であり、その特徴と問題点を歴史的に位置づけて解明したいと思います。時事通信が行った8月の世論調査によれば内閣支持率は26.6%で危険水域に突入しました。崖っぷちに立っているのは、岸田政権も同様かもしれません。

 「新しい戦前」を招き寄せる外交・安保政策

 岸田政権の安保3文書に基づく大軍拡・大増税路線の欺瞞と危険性については、これまで何度も指摘してきましたので繰り返しません(『学習の友』6月号掲載の拙稿「ウクライナ戦争に便乗した『新たな戦前』を避けるために」参照)。ここで指摘したいことの第1は、既成事実を先行させて国会審議自体を影の薄いものとしてきた手法の問題です。
 岸田大軍拡は1960年の安保改定、2015年の戦争法制定に次ぐ第3の政策転換でした。安保改定は条約交渉と国会での審議・承認を必要とし、国民的な反対運動が巻き起こり、戦争法制定でも国会での審議を契機に大きな反対運動が展開されました。
 岸田首相はこれを避けようとして有識者会議での密室審議を優先し、閣議決定と3文書公表の後に防衛産業支援法と防衛財源確保法を通常国会に提出しています。順番を逆転させることで反対世論の高まりを避ける姑息なやり方をとったわけです。その結果、大軍拡についての国民の理解は深まらず、国会審議も低調に終わりました。
 第2は、対米従属の深化とNATOへの急接近です。日本との貿易摩擦に苦慮したアメリカは1980年代中葉から軍事分担圧力を強め、中曽根内閣はこれを受け入れます。イラク戦争で日本は自衛隊を派遣しますが、憲法9条の制約によって非戦闘地域や非戦闘業務にとどまりました。憲法によって守られていたのです。
 ところが、岸田首相は進んで軍事費増を表明し、専守防衛を踏み越える積極的能動的な従米路線に転換しました。しかも、ウクライナ戦争に乗じてNATOやヨーロッパ諸国との軍事的連携を強めています。これまでとは大きく異なる安保の変質が生じているのです。
 第3は、日米韓3か国による新たな軍事ブロック形成の危険性です。キャンプデービッド会談(23年8月)で結束を確認した3か国首脳は「共同声明」で安保協力の強化を目的に首脳・外相・防衛相・安保担当の政府高官それぞれによる協議体を設け、「定例化」して年1回以上開催することを約束しました。
 これは日米間の軍事協力をNATO並みに引き上げ、ギクシャクしてきた日韓の外交的軍事的連携を強化し、政権が変わっても揺らぐことのない枠組みを作り出そうとするものです。このような新たな軍事ブロックの形成は東アジアにおける分断と対立を深め、軍事対軍事の競争をエスカレートさせ、緊張を緩和するどころかますます激化させるだけです。

 生活を破壊する経済・財政政策

 戦前の日本は「富国強兵」政策を採用しました。今の岸田大軍拡は軍事大国化して貧しくなる「強兵貧国」政策です。これから戦争になるかは国際情勢いかんですが、貧しくなることは確実です。これまでも「失われた30年」によって下り坂を辿ってきたことはすでに指摘した通りです。
 国内総生産(GDP)は今年中にドイツに抜かれて4位になると予想されています。一人当たりGDPはさらに貧しく27位です。国際競争力は37位へと後退しています、実質賃金は低迷し続け、過去10年間で24万円の減少です、最低賃金(全国平均)が時給1000円を超えて騒がれていますが、オーストラリアの最賃2200円の半分以下にすぎません。
 このような経済の低迷を抜け出すとしていたのがアベノミクスでした。しかし、その「3本の矢」(金融政策、財政政策、成長戦略)は実現せず、マイルドなインフレになれば景気が回復するというリフレーション理論や、富める者が富めば貧しいものにも富が滴り落ちるというトリクルダウン理論は幻に終わりました。
 とりわけ深刻なのは異次元金融緩和の後遺症です。黒田日銀総裁の後を受けた植田和夫新総裁も脱出に苦慮しており、「誘導する長期金利は0%、めどは0.5%、上限は1%」というあいまいな方針しか出せず、継続か修正か分からない「日銀文学」だと皮肉られているほどです。
 今後も実質賃金や最低賃金の引き上げ、年金の増額は期待できません。コロナ禍の苦境を救うために世界103か国・地域で実施された消費税の引き下げもなく、インボイス制度の導入で実質的に消費税を引き上げようとしています。防衛財源確保法の制定で生活支援の財源は軍拡に回され、増税も予定されており、少子化対策の財源確保のために社会保険料も増額されようとしています。
 ウクライナ戦争を契機とした物資不足と値上げラッシュの下にある国民生活は異次元の金融緩和による円安のツケが回ってきて、まさに崖っぷちに立たされています。政治を変えて経済・財政政策を転換しなければ生活を守ることのできないギリギリの局面にあるのが現状です。

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