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9月2日(日) さあ、どうする安倍さん  [内閣]

 「農水省は鬼門だ」と、安倍さんは考えていることでしょう。その「鬼門」のトップに据える人です。もっと慎重に選ぶべきだったでしょう。
 少なくとも、「一番最後まで残ったポストを私に割り振られたわけですから、参ったなと実は思いましたよ。ここだけはこない方がよかったというくらい」と本音を漏らすような人を据えるべきではありませんでした。

 その遠藤農水相の補助金不正受給問題です。その後も、批判は高まり続け、農水相の進退問題に発展することは避けられない情勢です。
 この問題について、安倍首相は「補助金の運用については公正でなければならない」とコメントしました。そのうえで、「(国民の)質問、疑問があればしっかりと答えていかなければならない」と、説明責任を果たすよう求めました。
 相変わらず、トンチンカンな受け答えです。補助金の運用が公正でなければならず、疑問があればしっかりと答えるべきことは当然のことでしょう。当たり前すぎて、答えになっていません。

 問題は、そのような公正な運用を行っていなかった人物を、その監督官庁のトップに据えてしまったことであり、その任命責任について、安倍さん本人がどう考えているかということです。遠藤さんは記者会見で疑問に答えていましたが、問題は、安倍さん自身がその説明で十分だと考えているかどうかでしょう。
 安倍首相は、自分が何を聞かれているのか分かっているのでしょうか。どう答えるべきか、判断できないのでしょうか。
 何を聞かれても他人ごとのような返答で、記者の質問にまともに答えることができない。問題を先送りして、自ら決断できないという安倍さんの弱点は、内閣の改造によっても、全く「改造」されていないようです。

 安倍さんが分かっていないことは、他にもあります。参院選で与党が大敗し、自らの進退が問われ、参院では野党が多数になったという情勢変化の下で、このような不祥事が発覚したという点です。
 公明党の太田昭宏代表は「次から次にこういう問題が出るのは残念で情けない。会計検査院から指摘されて3年間も放置していること自体、国民から見たら何をやっているのかとなる」と厳しく批判しました。このような公明党代表の発言は、この間の変化の反映です。
 公明党の太田さんも、選挙敗北の責任を追及された手前、このような問題に甘い顔を見せるわけにはいかないでしょう。まして、近々総選挙があるかもしれないというのであれば、「とばっちりを避けたい」と考えるのは当然です。このようなスキャンダルへの公明党の対応は、これまで以上に厳しいものにならざるをえません。

 「とばっちりを避けたい、自分の評判を落としたくない」という点では、「隠れた後継者」と目されている麻生自民党幹事長も同様です。麻生幹事長は「政治資金の話とは別だ。世間で通る説明なのかどうかが一番の問題だ」と強調したといいますが、その通りです。
 今回の遠藤さんの不祥事は、事務所費経費のような「政治とカネ」の問題とは異なっています。会計検査院によって摘発された補助金の不正使用であり、しかも、3年前から知っていて放置していたという問題です。
 「政治資金の話とは別」で、もっと悪質だと言うべきでしょう。しかも、そのような問題のある人物を監督官庁のトップに据えてしまったわけで、こんなことが「世間で通る」はずがありません。任命件者である安倍さんの責任で、直ちに解任するか辞任させるべきでしょう。

 野党の状況も、大きく変化しています。野党各党は一斉に農相辞任を求めていますが、この辞任要求は参院選前とは違った重みがあることを、安倍首相は理解しているのでしょうか。
 民主党の菅直人代表代行は、NHKの番組で「先日の農相の説明では納得できない」として、「必要なら証人喚問を含め、まずは国会で徹底的に事実関係を聞く。疑念が晴れず、農相として不適格の結論に達すれば問責決議案を出すことになる」と述べました。
 共産党の志位和夫委員長も「不正に税金をだまし取っていた。辞任、罷免に値する。できないのなら問責決議も考えなければならない」と指摘し、社民党の福島瑞穂党首は「重大なのは、農相が3年前に会計検査院の指摘を受けて知っていた点だ。説明した後に辞任すべきだ。辞めなければ問責決議でとことん追及する」と表明しました。

 安倍さんは、臨時国会が始まる9月10日以前に、農水相を交代させなければならないでしょう。この問題を放置すれば、臨時国会の主導権を野党に取られることは明らかです。
 国会審議で証人喚問が行われ、さらに新たな問題が出てきたりしたらどうするつもりなのでしょうか。問責決議が採択されてからの辞任ということになれば、内閣支持率の急落は避けられません。
 グズグズして問題を先延ばしすれば、事態はさらに悪化するばかりでしょう。そのことを、安倍首相はこれまでの経験で十分に学んだはずではありませんか。

 この週末に、上杉隆さんの著書『官邸崩壊-安倍政権迷走の一年』(新潮社、2007年8月)を読みました。安倍政権の官邸内部の無惨な状況が赤裸々に暴露されており、過去一年間の「迷走」状況が克明に記録されています。
 そのなかに、自殺した松岡農水相について書かれた一節がありました。自殺直前の松岡さんの問題への安倍さんの対応についての記述です。
 そこで上杉さんは、「守ることもせず、かといって何らかの決断を下すわけでもない。安倍のそうした曖昧な行為は、この政権にあって極めて象徴的であった」(195頁)と書かれていました。まるで、今の遠藤農水相に対する安倍首相の対応について説明したような文章です。

 「守ることもせず、かといって何らかの決断を下すわけでもない」という「曖昧な行為」を、今度もまた、繰り返すつもりなのでしょうか。そのような不決断が、結局は松岡さんを追い込み、あのような悲劇を生んだのではありませんか。
 そのような愚行を、またも繰り返すつもりなのですか。さあ、どうする安倍さん。