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9月11日(火) 大切なのは国民よりもアメリカなのか [国会]

 「安倍首相、『お前は、もう死んでいる』」と書いたのに、その安倍首相が、「言うこと聞いてくれなかったら、死んじゃうもん」と、脅しをかけてきました。懲りない人ですね。
 「もう死んでいる」人が、「死んじゃうもん」と言ってみても、「ああ、そう」と言われるだけでしょう。それが、この人には分からないようです。

 昨日、国会衆参両院の本会議で安倍首相の所信表明演説が行われました。参院選大敗について「深い反省」を表明したものの、自身に対する退陣論については「改革を止めてはならない」と続投の決意を示し、「改革の影の部分に光を当てる」と小泉前政権以来の成長重視路線の修正を示唆しました。インド洋での給油活動については、「国際社会における責任を放棄して、本当にいいのか」と、活動継続を訴えました。
 この国会開会日に話題をさらったのが、海上自衛隊の給油活動の継続に関して、「職を賭して取り組んでいく」、「私のすべての力を振り絞って職責を果たしていかなければならない。職責にしがみつくことはない」という安倍首相の発言でした。
 「職責」というのは「職務上の責任」を意味するもので、「職責を全うする」とは言いますが「職責にしがみつく」などという言い方はありません。多分、安倍首相は「職責」ではなく、「職席」と言ったのでしょう。

 私は9月6日付のブログで、「ヒョッとしたら、安倍首相はテロ対策特措法の延長を条件に自分のクビを差し出すつもりなのかもしれない」と書きました。また、この報道に接する前に書いた9月9日のブログでも、「『公約』が果たせなかった場合、首相を辞任するということでしょう」と指摘しました。
 したがって、安倍さんの発言は、私にとっては意外でも何でもありません。「やっぱりそうだったのか」と思っただけです。
 しかし、だからといって、この発言を見逃すことはできません。それは、以下のような重大な意味を孕んでいるからです。

 第1に、安倍さんの発言は、海自の活動継続に安倍内閣の命運をかけるという判断を行ったことを意味しています。それだけ、この問題は重要だと言いたいのでしょう。
 しかし、今度の臨時国会で審議される法案は数多くあるはずです。「政治とカネ」の問題、社会保険庁の在り方や年金問題、公務員改革、安倍さん自身が「改革の影の部分」と言った貧困と格差の拡大、あるいは、6ヵ国協議と北朝鮮による拉致の問題など、安倍内閣が取り組むべき課題は山積しています。
 これらの数ある問題と比べて、アメリカの軍艦にただで燃料をあげ続けることが、そんなに重要だというのでしょうか。これを今国会で取り組むべき最重要なものと位置づけた点に、国民生活を守ることよりもブッシュ大統領との約束を守ることの方を優先していることが明瞭に示されています。

 第2に、参院選の大敗によって、安倍退陣論が巻き起こったとき、安倍さんは何といったでしょうか。「改革を継続するためには、辞めるわけにはいかない」と言ったはずではありませんか。
 同様に、今回の所信表明演説でも、「『わが国の将来のため、子どもたちのために、この改革を止めてはならない』。私はこの一心で、続投を決意しました」と述べています。しかし、安倍さんが進退をかけると言っているのは、「経済・行財政の構造改革はもとより、教育再生や安全保障体制の再構築を含め、戦後長きにわたり続いてきた諸制度を原点にさかのぼって大胆に見直す改革、すなわち、戦後レジームからの脱却」ではなく、アメリカにただで油をあげることです。
 「改革のための続投」と言いながら、「改革」とは何の関係もない海自の活動継続に「職を賭して取り組む」というのは可笑しいじゃありませんか。安倍さんですから、この矛盾に全く気づいていないのは当然でしょうが、それにしてもお粗末な限りです。

 第3に、今回の安倍さんの発言は、参院選での大敗には責任を取らないけれども、アメリカ相手の「無料ガソリンスタンド」の閉店には責任を取るということを意味しています。安倍首相は、一体、どこの国の首相なのでしょうか。
 これは、参院選挙で示された民意よりも、アメリカの意向の方を尊重するという判断にほかなりません。この論理の転倒。対米追随もきわまれりと言うべきでしょう。
 安倍さんにとって、大切なのは国民よりも、アメリカなのでしょう。国民の言うことは聞かなくても、アメリカの言うことは聞くというのですから……。

 安倍さんの「職責にしがみつくことはない」という発言によって、インド洋での海自の活動継続問題が臨時国会での焦点に急浮上しました。国民生活にはほとんど関係のない問題に注目が集まることで、政治とカネ、社保庁職員の横領・着服、年金、貧困問題などが後掲に退いてしまう可能性があります。
 ヒョッとして、これは安倍さんの高等戦術だったのかもしれません。政府・与党の責任が問われ、不利になる問題から野党・マスコミや国民の目をそらすための……。