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9月12日(水) 安倍辞任は「無責任、極まれり」  [内閣]

 職場の研究所に、『東京新聞』の記者から電話がかかってきました。先日、自宅まで取材に見えた方です。
 「テレビのニュース、ご覧になりましたか」「エッ ニュース? 見てませんけど」
 「安倍首相が辞意を表明しました。辞めるそうです」「エエッ!?」

 驚きました。この時点での総理辞任なんて、思いもよりませんでした。
 感想を聞かれ、辞任の原因について問われました。インド洋での給油を継続する新法の問題で、小沢さんから党首会談を断られたのが一番大きいんじゃないかと答えました。
 シドニーでの記者会見でも、安倍さんはなんだか憔悴した感じでしたし、昨日は風邪をひいて早めに引き上げたそうです。それに、週刊誌で「隠し子問題」なども報じられていました。まさか、新しいスキャンダルの発覚などということはないでしょうね。

 ということで、テレビで午後2時からの安倍首相の記者会見を見ました。疲れ切ったような表情です。
 安倍首相の説明した最大の辞任理由は、やはり、新法成立の見通しが立たないことでした。まともに行けば時間がかかり、給油活動の中断は避けられません。そこで、党首会談を開いて、民主党の言い分を聞いて自分のクビを差し出すから、何とか新法の早期成立に協力して欲しいと裏取引をするつもりだったのでしょう。
 ところが、小沢さんは会談を断ってしまいました(民主党側は会談を申し込まれていないと言っているようですが……)。しかも、その理由は安倍さんが民意の支持を失っているということです。つまり、総理・総裁が安倍さんであるうちは、民主党との党首会談による密室での取引は不可能だということになります。

 こうして、安倍さんは新法成立の最大の障害が、自分自身であると思い込んだのでしょう。給油活動の中断を避けるためには、できるだけ早いうちにこの障害を取り除くべきだと決断したわけです。
 ということであれば、小沢さんは、またしても「壊し屋」としての威力を発揮したことになります。羽田連立政権を潰し、新進党を解党し、小渕元首相の突然死の一因となり、今度は、安倍首相の辞任を引き出しました。
 今度ばかりは、こう言いましょう。「小沢さん、良くやった。これからも妥協したら駄目ですよ」

 しかし、理由はどうあれ、このようなタイミングで、このような形での辞任が許されるのでしょうか。『東京新聞』の記者に感想を問われた私は、「無責任、極まれり」と答えました。
 だってそうでしょう。APEC首脳会議でブッシュ米大統領に給油継続を「国際公約」し、帰ってきて臨時国会を召集したのは安倍さん自身ではありませんか。月曜日に所信表明演説を行い、今日からは本会議での代表質問が始まろうとしていました。
 軍隊でいえば、隊列を整えて指揮官が突撃命令を出したということになります。両軍が激突して戦闘が始まるその直前、突然、指揮官が「俺は辞めるぞ」といって戦線を離脱し、敵前逃亡したようなものではありませんか。

 最悪のタイミングでの辞任表明だと言って良いでしょう。しかも、それはあくまでもインド洋での給油活動を中断させないための方策です。
 安倍さんにとっては、「アメリカ、命」ということなのでしょう。アメリカと勝手に「国際公約」を行って日本政府を縛り、その実行を確実にするために自らの職を投げ出したわけですから……。
 安倍首相にとっては、国民の審判や「改革の続行」などよりも、アメリカとの約束の方が大事だったのです。国民のために犠牲になるよりも、アメリカのために首相の地位を投げ出す道を選んだわけですから……。

 「私のクビを差し出しますから、新法を通してください」と、安倍さんは小沢さんにメッセージを送ったつもりなのでしょう。しかし、「壊し屋」としての本領を発揮し、「そうは問屋が卸さない」ということを示してもらいたいものです。
 頼みますよ、小沢さん。