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9月3日(月) 安倍首相、「お前は、もう死んでいる」 [内閣]

 「お前は、もう死んでいる」
 この言葉は、1983年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった漫画「北斗の拳」の主人公、ケンシロウの決めゼリフです。まだ、息はしているものの、すでに致命的な打撃を与えられ死が避けられない相手に、ケンシロウはこう言います。
 そして、私も安倍首相に対して、こう言わざるを得ません。「お前は、もう死んでいる」

 とうとう、遠藤さんもアウトです。今日午前、遠藤農水相は組合長を務める農業共済組合の補助金不正受給問題の責任をとって安倍首相に辞表を提出し、与謝野官房長官は後任に若林正俊前環境兼農水相を充てることを発表しました。
 また、政治資金収支報告書への会議費の重複計上が発覚した坂本由紀子外務政務官も辞任しました。玉沢徳一郎元農相も政治資金収支報告書に添付した領収書のコピーを改ざんし、多重計上していた責任をとって衆院政治倫理審査会長を辞任していましたが、さらに今日、自民党を離党しました。もう、ボロボロですね、これは。
 内閣改造からわずか1週間で閣僚、政務官、衆院政治倫理審査会長が相次いで辞任したということになります。当然、これらの人々を役職に就けた安倍首相の任命責任や危機管理能力が問われなければなりません。

 このような事態が相次いだことに対し、官邸による「身体検査」の甘さが指摘されています。参院選の後、内閣改造まで時間をかけたはずではないか、一体、何をしていたのか、というわけです。
 しかし、問題は「身体検査」で見つからなかったということではありません。「身体検査」をクリアできるような健康体の人がいないということ、“スネに傷持つ”者ばかりだというところにこそ、本質的な問題があります。
 私は、8月11日のブログ「誰が『身体検査』をクリアできるのか」で、次のように書きました。遠藤さんも「健康体」ではなく、「『傷』の一つや二つ、すぐに見つかってしまう」ような人だったのに、すり抜けてしまったということになります。

 つまり、誰でも、過去においては「スネに傷」を抱えています。「身体検査」をすれば、このような「傷」の一つや二つ、すぐに見つかってしまうところに深刻な問題があります。
 その結果、「身体検査」をクリアできた人が誰もいなかったなどということになったら、どうするのでしょうか。安倍首相が抱えている悩みは、「身体検査」が不十分だということではなく、閣僚候補に健康体の人がほとんどいないということなのではないでしょうか。

 さて、今回の件で、野党は問責決議という武器の威力に目覚めてしまいました。早速、民主党の鳩山幹事長は、安倍首相に対する問責決議案提出の可能性を示唆しています。
 もし、参院に問責決議案が出されれば、ほぼ確実に成立します。衆院で可決される不信任決議とは異なって、問責決議には道義的な意味しかありませんが、参院で問責された首相が出席する国会に、野党は出てこなくなるでしょう。国会をボイコットする大義名分が与えられることになります。
 審議は全面的にストップし、テロ対策特措法などの重要法案は宙に浮いてしまいます。結局、安倍首相は辞職するか、解散・総選挙に打って出るか、どちらかを選択せざるを得ません。

 このようなシナリオを避けるためには、問責決議案によって「責任を問われる」ような事態を生まないように気をつける必要がありました。民主党などにしても、何の問題もないのに闇雲に決議を出すなどということは不可能だからです。
 問題は世論です。問責決議案を出すことを是とするか否とするか、世論動向を見極めなければなりません。
 そこで生じたのが、今回の遠藤農水相などの辞任です。安倍首相にとっては大きな失点であり、内閣支持率は急落するにちがいありません。そうすれば、問責決議案を出しても、世論の支持が得られる可能性があります。

 こうして、野党は大きな武器を手に入れました。その威力に目覚め、しかも、いつでも使えると判断しているようです。
 改造内閣の躓きによって、野党は安倍首相の息の根を止めることができる「生殺与奪の権」を手に入れたということになります。安倍首相に、「お前は、もう死んでいる」と言っているのは、私ではありません。野党です。

 安倍改造内閣が発足したばかりで、まだ臨時国会も始まっていないのに、「政権末期」という雰囲気になってきました。解散・総選挙は、予想以上に早まりそうです。