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9月13日(木) 安倍辞任の背景  [首相]

 安倍首相の突然の辞意表明について、さまざまな憶測が飛び交っています。その後、いくつかの事実や事情も明らかになりました。
 何故、安倍首相はこの時点で辞めたのでしょうか。最悪のタイミングでの「敵前逃亡」は、どうして生じたのでしょうか。

 私は昨日のブログで、「シドニーでの記者会見でも、安倍さんはなんだか憔悴した感じでしたし、昨日は風邪をひいて早めに引き上げたそうです。それに、週刊誌で「隠し子問題」なども報じられていました。まさか、新しいスキャンダルの発覚などということはないでしょうね」と書きました。健康問題やスキャンダルも関連しているかもしれないと思ったからです。
 その後の報道によれば、これらの問題も深く関わっていたことが明らかになりました。ということは、安倍さんの辞任会見での説明は、ほとんど嘘だったということになります。

 安倍首相の辞任の意向をいつ知ったのか、と問われた麻生幹事長は、10日(月)の夕方、所信表明演説の後だったと証言しました。3日間、その「決意」が変わらなかったのだろうとも。
 ということは、民主党の小沢代表から党首会談について色よい返事がもらえなかったことが、辞任の主たる理由ではなかったということになります。それよりも3日も早く、「辞めたい」という意向を漏らしていたのですから。
 このような事情がありながら、辞任会見であのようなデタラメな説明を行った安倍首相は、最後まで国民を愚弄したということになるでしょう。辞意を漏らされていながら何の手も打たず、かくも異常な混乱状態を生み出したという点で、麻生幹事長も責任を免れません。

 安倍さんは、臨時国会が始まった時点で、すでにほとんどやる気を失っていたわけです。与謝野官房長官は健康問題を辞任の理由に挙げていましたが、憔悴していたことはテレビの画面からも明らかでした。
 安倍首相が疲れて気力が萎えていたことは事実でしょう。所信表明演説での読み飛ばしは、一つの兆候だったと思われます。
 しかも、内閣改造で「お友達」が周辺から去り、政権運営の中枢も麻生幹事長と与謝野官房長官に握られ、孤独感が募っていたとも言われています。国会開会日には「小泉チルドレン」の議員から厳しく批判され、首相の求心力低下を、またもや思い知らされました。

 これで、臨時国会が乗り切れるのだろうかと、安倍首相は大きな不安に襲われたに違いありません。「もう、辞めたい」という思いを募らせていたとき、ショッキングな事実を知りました。
 これが、『週刊現代』による、新たな金銭スキャンダルについての取材です。伝えられるところによれば、取材の申し出は火曜日にあり、水曜日までに質問への回答を求められていたそうです。
 その回答期限は、安倍首相が辞任会見を行った9月12日(水)の午後2時だったといいます。「政治とカネ」の問題で苦労し続けてきた安倍首相は、自分自身にそのような問題が持ち上がることを知った時点で、観念したのではないでしょうか。

 そこに飛び込んできたのが、民主党が党首会談に注文を付けているとの報告です。これなら上手い口実をつけて辞められるかもしれないと、おそらく安倍首相は判断したのでしょう。
 一方では、インド洋での自衛隊の給水活動の継続に進退をかけたという「大義名分」を得ることができます。他方では、「悪いのは小沢だ」と責任を相手に押しつけることもできます。
 急転直下、安倍首相は辞任表明を決断したのでしょう。こうして、辞任会見に臨んだ安倍首相は、国民の見ている前で大嘘をついたのです。

 安倍首相の辞任そのものは、「お前は、もう死んでいる」と書いてきた私からすれば、あまりにも当然のことです。本来なら、参院選の投開票日であった7月29日に辞任するべきでした。
 所信表明演説後で代表質問が始まる直前の時点での辞任は常軌を逸しており、許されるものではありません。国民と国会を馬鹿にしています。
 あまりにも、遅きに失した決断だと言わざるを得ません。安倍さんとしても、参院選で大敗した時に辞任していれば、このような醜態を演ずることも、日本の政治史にこれほどの汚点を残すこともなかったでしょう。

 いずれにしても、今回の政変は先の参院選の結果がもたらしたものにほかなりません。国民の審判が、最終的には安倍首相を追い込んだということです。
 民主主義が正常に作動した結果であるとも言えるでしょう。選挙の審判を無視して居座ろうとした安倍首相ですが、結局はその結果に従わざるを得なくなりました。
 今頃、安倍さんは民意の怖さをかみしめているに違いありません。もっと早く、そのことに気づきべきでした。それが分からなかったところに、安倍さんの政治家としての決定的な弱点があったのではないでしょうか。

 さて、今後の政局です。後継総裁の最有力者は麻生さんだと見られています。というより、参院選投票日の官邸での密談で、麻生さんは安倍さんに「後はあなたに」との密約で釣られたのでしょう。
 自民党幹事長への就任も、このときの密約に基づくものだったと思われます。ただ、あまりに早く、あまりにも異常な形で辞めることになったために、安倍さんは麻生さんに禅譲する力を失ってしまいました。
 後は、麻生さんが自力で総裁の椅子を掴むしかありません。しかし、誰が後継者になっても、前途の道が「地雷原」のような多難なものであることに変わりないでしょう。

 安倍さんの辞任によっても、局面が転換することなどあり得ません。報道されるであろう安倍さん自身のスキャンダルもあります。
 新しく構成される内閣は、閣僚の「身体検査」などやっている余裕はないでしょう。「政治とカネ」の問題は収まらず、年金問題でも新しい事実が暴露される可能性があります。
 自民党総裁選の投票日は9月23日になりましたから、審議時間が少なすぎてインド洋での海上自衛隊の給油活動の継続は、ほぼ不可能になりました。国会審議で給油活動の実態が明らかになれば、活動継続の意味自体が問われることになるかもしれません。

 後継政権が、いずれは「地雷」を踏むことになるのは避けられないでしょう。それが大きな爆発となって国民生活に害を及ぼす前に、解散・総選挙による「人心一新」を図って欲しいものです。