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9月18日(火) 過ちをただす絶好のチャンスではないのか  [国会]

 研究所で、珍しい(と、言ったら悪いかもしれませんが)ところから取材を受けました。『週刊プレイボーイ』の記者の方です。取材のテーマは、テロ対策特措法の延長問題です。
 おそらく、『東京新聞』での私のコメントを読んだのでしょう。わざわざ、多摩キャンパスの研究所まで足を運んで下さいました。

 安倍首相の突然の退陣に伴うどさくさで、臨時国会の審議時間が大幅に削られてしまいました。自民党新総裁の選出は23日で、新しい総理が決まるのは今日から1週間後の25日(火)の予定です。
 もう、テロ対策特措法の延長は無理でしょう。期限が切れる11月1日まで1ヵ月ほどしかありませんから。
 もし、インド洋での給油を継続するというのであれば、新法しかありません。もともと、テロ対策特措法は期間を限定した特別措置法で、延長を繰り返すのは好ましくありませんから、そうするのが当然でしょう。

 記者の方からはいろいろと質問されました。国会審議で何が明らかにされるべきかについては、すでに8月30日付けのこのブログ「テロ対策特措法審議で明らかにされるべき3つの疑問」http://blog.so-net.ne.jp/igajin/2007-08-30で書きました。
 今日の取材では、それ以外にもいくつか強調した点があります。その一つは議論の前提に関するものです。
 「テロとの戦い」には、私を含めて誰も反対していない。したがって、テロ対策特措法の延長反対や海上給油の継続への反対は、「テロとの戦い」に反対することを意味しないということです。これが混同されてはなりません。

 争点は、テロと戦うか否かではなく、いかにしてテロと戦うかということです。海上給油の是非も「アフガン戦争」への協力も、この観点から判断されなければなりません。
 これらの取り組みが、テロをなくすために役立っているのかということです。逆に、テロ組織の勢力増大を引き起こしているとすれば、それは「テロとの戦い」ではなく、テロの幇助ということになります。
 アフガンの現状はどうなのでしょうか。給油活動や海上警備行動の実際は、テロの防止になっているのでしょうか。

 これに対する答えは明らかです。アフガニスタンではタリバンが勢力を盛り返し、イラクでも米軍は泥沼にあえいでいます。
 軍事力ではテロを平定することができないからです。誤爆や肉親の被害は、人々の胸に怒りや恨みの火をともし、テロ活動の温床を拡大しています。
 アフガンやイラクで、アメリカはこのような過ちを犯してきました。中東全域で反米勢力が力を強めているのは、ブッシュ米大統領の政策的誤りによる「成果」にほかなりません。

 給油活動の継続に関して事実上問われているのは、このような過った「反テロ」活動を継続するのか否かという問題なのです。ブッシュ大統領の誤った政策を手助けするのかどうかという問題です。
 日本は、給油活動を継続せず、海上自衛隊をインド洋から引き上げるべきです。そうすることによって、平和国家としての日本の対外イメージを回復し、ブッシュ大統領に誤りを悟らせなければなりません。
 給油活動の中止は、日本の政策転換を世界中に明らかにし、過った「対テロ戦争」の泥沼からブッシュ米大統領を救い出すことができる絶好のチャンスを意味します。このようにして、日本外交の独自性を明示するチャンスでもあるでしょう。

 世界の流れは、「対テロ戦争」の誤りを是正する方向にあります。イラクのバスラからはイギリス軍が撤退し、アフガンからは今年中に韓国軍が引き揚げます。
 ブッシュ大統領の「対テロ戦争」に同調したイタリアのベルルスコーニ首相は総選挙で敗れ、ブッシュの「プードル」と揶揄されたイギリスのブレア首相もその地位を去りました。
 アメリカでも、「対テロ戦争」を主導したネオコン勢力は政権を去り、ブッシュ大統領は孤立しています。昨年の中間選挙での大敗に続いて、来るべき大統領選挙での敗北は避けられないでしょう。

 そして、この日本です。最後までブッシュ大統領をサポートしようとした安倍首相は、突然、政権を投げ出して慶応病院に逃げ込んでしまいました。
 日本と共にブッシュに付き従っていたオーストラリアのハワード首相も、年内に行われると見られている総選挙を前に支持率低下にあえいでいます。おそらく、ここでも政権交代が起きるでしょう。
 このように見てくれば、「対テロ戦争」の勝敗は明らかです。「テロとの戦い」という大義名分を掲げて間違った「戦争」に突っ走ったブッシュ大統領と、それに無批判に付き従った各国の指導者たちは、全て「敗北」したのです。

 それでもなお、日本は「テロとの戦い」という虚構にしがみつこうというのでしょうか。日本外交の間違いを正し、ブッシュ大統領に過ちを悟らせる絶好のチャンスを棒に振ろうというのでしょうか。