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12 月17日(火) 軍事大国化の流れを変える起点に―憲法、政治情勢、軍事費(その1) [論攷]

〔本稿は、全国労働組合総連合と労働者教育協会の合同編集による『学習の友 2020春闘別冊』に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕

 20年春闘はどのような政治・社会情勢の下で闘われるのでしょうか。労働組合運動の要求の基本は、賃金や労働条件の改善に関わるものですが、その要求を実現するためにも制度・政策面での取り組みが重要になってきています。春闘にとっても政治課題は大きな意味を持ちます。
 この間、私たちに襲いかかってきた問題は、このことを明瞭にしているのではないでしょうか。たとえば、消費税の8%から10%への引き上げによって生活はますます苦しくなりました。台風15号や19号、21号による激甚災害の発生は地球温暖化の深刻さを改めて教えてくれました。日韓関係の悪化や日米貿易問題、米中「新冷戦」などの外交問題も、これからの生活に暗い影を投げかけています。
 それにもかかわらず、安倍政権はこれらの問題を解決する意志も能力もありません。経済的な生活要求とともに、政治的な「人災」を防ぎ政治を変えるための取り組みが急務になっています。2年以内には必ずやってくる解散・総選挙は、その絶好の機会となることでしょう。
 20年春闘は、このような政治課題についても大きな前進を勝ち取る重要な機会になります。それを通じて、「安倍一強」と言われるような状況を打ち破り、市民と立憲野党による連合政権樹立に向けての希望の扉を開く準備を進めなければなりません。

 憲法―改憲をめぐる最終決戦が始まった

 第4次安倍再改造内閣が発足しました。安倍首相の盟友や側近を総動員した「改憲シフト」内閣です。この陣容によって、安倍首相は任期内での改憲施行をめざして最終決戦に挑もうとしているようです。
 安倍晋三首相はもとより、麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官はいずれも再任されました。第2次安倍内閣発足以来同じで、7年物の「古漬け」のようなものですからすえた臭いがします。この悪臭を消すための「消臭剤」として使われたのが小泉進次郎環境相の初入閣でした。
 この内閣の最大の特徴は安倍首相自身や麻生副首相を始め、高市早苗総務相、橋本聖子五輪相、衛藤晟一1億総活躍相、加藤勝信厚労相、江藤拓農林水産相、西村康稔経済再生相、萩生田光一文科相など、日本会議国会議員懇談会の幹部が顔をそろえていることです。森友学園疑惑や財務次官のセクハラ問題で責任を問われた麻生副首相の留任、加計学園疑惑の当事者の一人である萩生田文科相の入閣、加計学園から献金を受けていた下村博文選対委員長の就任、口利き疑惑で辞任した甘利明元経済再生相の自民党税制調査会長への抜擢などの汚点もあります。
 改造内閣の発足に当たって安倍首相は改憲に向けて「困難な挑戦だが、必ずや成し遂げる決意だ」と述べ、相変わらずの執念を示しました。二階俊博幹事長や岸田文雄政調会長などの自民党役員もこれまで以上に改憲への意欲を強め、大島理森衆院議長まで国民投票法案の成立を訴えて批判を浴びました。
 同時に、温厚な重鎮で平和・安保法制(戦争法)を取りまとめた細田博之元自民党幹事長を改憲本部長に、野党人脈が豊富なベテランである佐藤勉元国会対策委員長を衆院憲法審査会長に起用し、参院への影響力を強めるため議員会長に側近の世耕弘成前経産相を送り込みました。野党を懐柔し党内の抵抗を抑えて改憲発議を実現する挙党体制を敷いたわけです。
 しかし、首相の任期は2021年9月までですから、あまり時間は残されていません。急ごうとして無理強いすると野党が反発して動かなくなり、丁寧に合意を得ようとすると時間がかかります。このジレンマをどう乗り越えるのでしょうか。
 しかも、9条改憲には大きな世論の壁が立ちはだかっています。朝日新聞が実施した世論調査の推移を見ても分かるように、2014年2月に「憲法を変える必要はない」という意見が「変える必要がある」という意見を上回って以降、一貫して多数を占めています。19年5月の調査では、安倍政権のもとで憲法改正を実現することに「反対」は52%(前年調査では58%)、「賛成」は36%(同30%)となりました。
 日本世論調査会が2019年10月に実施した調査でも、回答者の56.3%が「憲法9条を改正する必要はない」と答え、2年前の前回調査より3.3ポイント上昇しました。「改正する必要がある」という回答は37.7%にすぎません。安倍政権下での憲法改正反対も51.0%と過半数を超え、国会で憲法改正議論を急ぐ必要はないという意見は68.9%と約7割に達しています(『東京新聞』10月13日付)。
 安倍9条改憲ノーの3000万人署名を通じて草の根の世論に訴えてきた成果が、このような形で表れています。その結果、昨年の国会でも改憲発議を阻止し、今回の参院選では改憲勢力の3分の2割れを実現することができました。このような世論をさらに高め、安倍政権を追い詰めていくことができれば、発議を許さず安倍改憲をめぐる最終決戦に勝利することは十分に可能です。

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