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12月31日(火) 八王子市長選挙で憲法弁護士の白神優理子さんが立候補することになった [選挙]

 昨日のブログで、「今日が仕事納め」と書きました。しかし、まだ納まってはいなかったのです。
 大きな仕事が残っていました。来年1月の八王子市長選挙で、市民と立憲野党が推す候補を擁立するという仕事が。

 昨日、フォーラム八王子で相談会が開かれ、それに出席していた八王子合同法律事務所の白神優理子(しらがゆりこ)弁護士が立候補の決意を表明しました。これで、来年1月19日告示、26日投票の八王子市長選挙に、保守系の2候補に対抗して革新系の候補者が立つことが決まりました。
 選挙母体になるのは、「平和・くらし・環境 市民でつくるチーム八王子」(チーム八王子)です。前回の選挙に私が立候補した時の母体を部分的に受け継いでいますが、基本的には別の団体として昨日、立ち上げられました。
 これで、投票する相手がいないという市民の悩みや戸惑いにお答えすることができるようになり、ホッとしています。というのも、私が目にしたフェイスブックに、次のような書き込みがあったからです。

<ぼくが暮らす八王子市では2020年1月に市長選挙があるが、困ったことがある。ぼくにとって応援できる立候補者がいないことだ。まだ告示されていないが、今のところ立候補予定者は2名。自民公明が推薦する3期目を目指す現職と、無所属?の元市議(自民党)の争いだ。
ちなみにその元市議は2019年4月の統一地方選(市議選)ですら1,435 票(得票率0.69%)で落選している。先日自宅の最寄り駅で演説をしていたようで、ぼくの連れ合いがビラを持ち帰ってくれたが、書かれた内容(政策)を見ても、現職よりはマシのように見えるが、賛同できる部分はほとんどない。なんとも悲しい状況だ。
前回2016年の市長選は現職を破るために、ぼくは投票だけでなくビラ配りなどわずかだが新人候補の運動を支援していたし、選対で開票結果を見守って悔し涙を飲んだ。でも今回はそんな応援をしたいと思う人はいない。投票についても、選挙権を得てからこれまで、ぼくは棄権したことがないが、今回の状況は想定していない困った状況だ。選択肢を示せない(候補者をかつぎ出せない)地域の状況にもやるせない思いだ。>

 この方の気持ちは、痛いほど良く分かります。私も投票する相手がいないという「困った状況」に戸惑い、「選択肢を示せない(候補者をかつぎ出せない)地域の状況にもやるせない思い」を募らせていたからです。
 そのような状況を何とか打開しようと、市民の立場に立つ候補者の擁立のために努力を重ねてきました。そして、とうとう最善の候補者の擁立に成功したというわけです。
 白神さんは新進気鋭の若き弁護士で、憲法についての講演で全国を飛び回ってこられました。八王子の市長選挙で女性が候補者になるのは初めてです。

 私の時も年末年始の休みを挟んだために、実質的な選挙運動期間は3週間でした。今回も、そうならざるを得ません。
 短期決戦で、厳寒期の厳しい闘いになると思います。近隣の市や都区内はもとより、全国的なご支援をお願いいたします。

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12月30日(月) 2019年の仕事 [日常]

 曜日の関係で、今年は例年より早く27日が仕事納めでした。私の仕事納めは今日です。
 今年も忙しい一年でした。2月に県民投票の応援のために沖縄に行き、7月の参院選では東京選挙区での吉良よし子候補の当選のために共産党の志位委員長や小池書記局長と一緒に宣伝カーの上で演説をするなど、選挙に取り組んだ一年でした。7月の参院選では東京選挙区で吉良さんが当選し、全国的にも1人区で野党候補が10勝して市民と野党の共闘を大きく前進させた年でもあります。
 11月には「オール埼玉総行動」に招かれ、7000人が集まった大宮駅前で、立憲民主党の初鹿明博衆院議員、国民民主党の津村啓介副代表、共産党の穀田恵二国対委員長、社会民主党の福島瑞穂副党首と共に、ゲストスピーカーとしてスピーチさせていただきました。初鹿さんと福島さんには八王子市長選挙の時に応援演説をしていただいたことがあり、穀田さんとは10月の全国革新懇交流会での分科会「『市民と野党の共闘』で政治を変えよう」でもご一緒しています。
 その後、初鹿さんは強制わいせつの疑いで書類送検され、立憲民主党を離党してしまいました。誠に残念としか言いようがありません。
 その2019年も、間もなく幕を閉じようとしています。

 さて、 例年のように、1年間の仕事をまとめさせていただきたいと思います。今年は共編で1冊、論攷・インタビュー・談話・コメント・書評などが33本、講演・報告などが42回、街頭演説・あいさつなどは15回で、夕刊紙『日刊ゲンダイ』の記事内でのコメント掲載は83回に上りました。
 『日刊ゲンダイ』でのコメントを除く、具体的な内容は以下の通りです。
 
(1) 編著書
・五十嵐仁・木下真志編/法政大学大原社会問題研究所編『日本社会党・総評の軌跡と内実―20人のオーラル・ヒストリー』旬報社

(2) 論攷・インタビュー・談話・コメント・書評など(33本)
・「本気の共闘で改憲阻止・安倍政権打倒をめざそう―2019年の政治展望と革新懇」『全国革新懇ニュース』第405号、2018年12月・2019年1月合併号
・メッセージ『非核の政府を求める会ニュース』第335号、2018年12月15日・2019年1月15日合併号
・「『平成』時代の総括とこれからの日本」東京土建一般労働組合『けんせつ』第2268号、1月1日付
・「勝利への活路 共闘にあり」『全国商工新聞』1月7日付
・「改憲を阻止し安倍首相に引導を渡す年に」『学習の友』No.785、1月号
・「政治考 参院選向け〝決戦〟」『しんぶん赤旗』2019年2月4日付
・「『希望の政治』」をめざし参院選に向けて『本気の共闘』を」『東京革新懇ニュース』第442号、5月5日付
・「書評:飯田洋子著『九条の会―新しいネットワークの形成と蘇生する社会運動』」『大原社会問題研究所雑誌』第727号、5月号
・「清潔な政治実現して」『しんぶん赤旗』5月21日
・「米国の本音むき出し 『TPPに縛られない』トランプ氏〝戦闘宣言〟」農協協会『農業協同組合新聞』5月30日号
・「労働資料館の役割を考える」日本鉄道福祉事業協会・労働資料館『労働資料館ニュース』No.2、6月号
・談話「本当の受け皿への一歩」『しんぶん赤旗』6月12日付
・記事「市民と野党の共闘進化」でのコメント『しんぶん赤旗』6月12日付
・「統一地方選後の情勢と参院選の展望─『市民と野党の共闘』と憲法闘争の前進にむけて」勤労者通信大学・通信『活かそう憲法②』
・「決戦・参院選―安倍改憲に終止符を」社会主義協会が発行する『研究資料』No.43、7月号
・談話「自民党〝地金〟天皇の政治利用」『しんぶん赤旗』7月17日付
・記事「謎多き国鉄三大ミステリー、時の政府は『共産党の仕業』」でのコメント『朝日新聞』デジタル版7月31日付
・「共闘の力、政権に『黄信号』」『東京民報』第2096号、8月4日付
・「野党共闘の威力が示された参院選 改憲勢力は3分の2を割る」『東京革新懇ニュース』第444号、8月5日号
・「改憲3分の2議席阻止に確信を持ち、総選挙で革新共闘の勝利を」日本科学者会議『東京支部つうしん』No.622、8月10日号
・「自民敗北 原動力は共闘」『しんぶん赤旗日曜版』8月11日・18日合併号
・「シリーズ 共闘の力 『信頼の発展』に結実」でのコメント『しんぶん赤旗』8月16日付
・「シリーズ 共闘の力 政権合意『覚悟問われる』」でのコメント『しんぶん赤旗』8月25日付
・「日本社会覆う〝韓国バッシング〟 あおる政治の責任重大」『しんぶん赤旗』9月10日付
・「第4次安倍改造内閣をどう見るか」『全国商工新聞』第3379号、9月30日付
・「参議院選挙後の情勢と課題」東京土建『建設労働のひろば』No.112、10月号
・「自民党の重鎮が訴える 『9条の改正だけは許さない』」日本ジャーナリスト会議(JCJ)の機関紙『ジャーナリスト』第740号、11月25日付
・「軍事大国化の流れを変える起点に―憲法、政治情勢、軍事費」全国労働組合総連合・労働者教育協会合同編集『学習の友 2020春闘別冊』
・「全体会閉会あいさつ」全国革新懇『地域・職場・青年革新懇全国交流会in兵庫記録集』
・「『共闘』分科会開会あいさつ 研究の対象から実践の課題となった統一戦線」全国革新懇『地域・職場・青年革新懇全国交流会in兵庫記録集』
・「まとめ 『市民と野党の共闘』の進化・発展」全国革新懇『地域・職場・青年革新懇全国交流会in兵庫記録集』
・「『安倍一強』政権の正体と『退陣戦略』」『月刊 全労連』N0.275、2020年1月号

(3)講演・報告など(42回)
・1月12日:埼玉9区野党共闘市民連絡会「市民と野党の共闘で未来を拓く」
・1月18日:三鷹事件から70年―無実・竹内景助の冤罪を晴らそう! 三鷹事件当時の社会情勢と今日的意味」
・1月26日:神奈川16区市民連合「暴走政治 どうしたら安倍政権を倒せるか」             
・2月2日:かわぐち9条の会「改憲に突き進む安倍独裁政権よ、さようなら」
・2月9日:川崎市幸区革新懇準備会「国政の焦点と2019年の展望」
・2月11日:山形治維法同盟211集会「安倍異常政権はなぜ続くのか―打倒のチャンスがやって来た」
・2月17日:はすだ9条の会「安倍政権を終わらせるときがきた―沖縄からの報告」
・2月24日:東久留米革新懇「統一地方選・参院選の勝利で改憲ストップ 消費税増税やめ くらしと平和を守ろう」
・3月2日:富山市革新懇「市民と野党の共闘の現状と革新懇活動の役割について」             
・3月16日:あいち連続憲法講座「安倍9条改憲をめぐる情勢と阻止闘争の課題」                       
・3月17日:国民救援会小金井支部「三鷹事件の真相解明を求める今日的意味」
・3月19日:年金者組合北陸信越ブロック「平和で長生きできる政治と社会をめざして
安倍暴走政治にストップを!高齢者の果たす役割」
・4月27日:健康友の会長房支部「健康で長生きできる社会と身体をめざして」
・5月2日:平和憲法をまもる秋田県民集会「9条改憲阻止のために何が必要か」
・5月3日:栃木革新懇「9条改憲を阻止し、安倍よアバヨ!」
・5月8日:日野革新懇「統一地方選挙の結果と参院選の展望」
・5月11日:和歌山革新懇「参院選に向けての情勢と野党共闘、革新懇の役割」
・5月17日:三多摩革新懇学習会「統一地方選後の情勢をどうとらえるか―参院選を見据えて」
・5月31日:三多摩高齢期運動連絡会「平和で長生きできる政治と社会をめざして」
・6月15日:安倍改憲NO! 憲法を生かす葛飾のつどい「参院選で安倍9条改憲を阻止しよう」
・6月18日:教え子を再び戦場に送らない退職教職員のつどい「野党共闘の前進で安倍9条改憲を阻止しよう」
・6月21日:戦争させない江戸川の会「野党共闘と草の根からの闘いでストップ安倍政治」
・6月22日:湘南学習会議市民講座「安倍政権のファッショ化と参院選」
・7月27日:福島県革新懇「参院選の結果と革新懇運動の課題」
・7月29日:三多摩革新懇7月度世話人会「参院選の結果をどうとらえるか」
・8月11日:三重県革新懇「参院選の結果と革新懇の役割」
・8月27日:日本科学者会議八王子科学フォーラム「私たちが政治を変える―参議院選挙の結果と課題」
・8月31日:基礎経済研究所「参院選の結果と日本政治の行方」
・9月1日:京建労活動者会議「参議院選挙後の日本の政治情勢」
・9月14日:憲法九条を守る上尾共同センター「参院選の結果と9条改憲の行方」
・9月20日:杉並革新塾「安倍政権は参院選で「国民の信任を得た」のか」
・9月21日:千葉県革新懇「参院選の結果と政治革新の展望」
・10月5日:香取革新懇「安倍政権で国民の生活を守れるのか―憲法・民主主義破壊の政治を転換するために」
・10月7日:板橋革新懇「改憲阻止!市民と野党の共闘で衆院選勝利を」
・10月12日:東北ブロック学習交流集会「参院選の結果と野党共闘の展望」
・10月14日:コミュニティユニオン東京「参院選の結果と労働組合運動の課題」
・10月17日:三多摩革新懇世話人会「今の情勢をどうとらえるか―臨時国会をめぐる情勢と課題」
・10月24日:川崎市幸区革新懇「参議院選挙を踏まえ、野党と市民の共闘で明るい未来を」
・11月14日:日本印刷技術研究所「安倍政権の悪政にどう立ち向かうか」
・11月24日:新潟から野党連合政権をめざす集い「野党連合政権の展望と課題」
・11月29日:埼玉県オール7区連絡会「市民と野党の共同で 安倍政治にサヨナラを! 」
・12月15日:自治労連関東甲越ブロック「財界戦略に立ち向かう!20春闘をどうたたかうか」

(4)発言・街頭演説・あいさつなど(15回)
・1月5日:八王子市共産党新春のつどいであいさつ                    
・1月27日:鈴木ゆうじ八王子市議の新春のつどいであいさつ    
・3月24日:市川かつひろ八王子市議と語る会であいさつ
・3月28日:鳥取県議選の市谷とも子候補出発式で応援演説
・4月14日;八王子市議選の市川かつひろ候補出発式で応援演説
・5月18日:志位和夫共産党委員長と共に吉良よし子参院議員予定候補の応援演説
・6月7日:新宿駅西口での憲法共同センターの宣伝でスピーチ
・6月8日:労働者教育協会の総会で発言
・7月14日:小池晃共産党書記局長と共に吉良よし子参院議員候補の応援演説
・8月3日:労働者教育協会の代表者会議で発言
・9月18日:革新都政をつくる会「都政を考える夕べ」の呼びかけ人として発言                   
・10月19日:全国革新懇交流会in兵庫「安倍政治を終わらせ希望ある政治へ」全体会で笠井貴美代新婦人会長と共に司会、閉会のあいさつ
・10月20日:全国革新懇交流会の「市民と野党の共闘」分科会で冒頭発言、まとめの発言         
・10月27日:松田さんを支える会50周年記念のつどいであいさつ
・11月26日:大宮駅西口でのオール埼玉総行動でゲストスピーチ

 ということで、皆様、良いお年をお迎えください。来る2020年が、希望に満ちた飛躍の年となりますように。

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12月29日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月29日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「政府の理屈は総崩れ 狂気の域に入ってきた辺野古埋め立て」

 さらに和泉氏は「米国政府は、日本政府は沖縄関連で何もしていないと見ている」「本件は、日本政府も汗を流している証拠として、20年間、放置されていた件を動かした」と説明。だが、「反対派の活動もかなりのもの」だとしてJパワーに協力を要請し、「反対は活動家だけ」と勝手に決めつけていた。

 米国を恐れ、おもねり、点数稼ぎのためなら、何でもアリの一方で、盾突く者は政権の敵と断定して切り捨てる。メモはそんな政権中枢の姿を、ハッキリと映し出す。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

 「当事者の意見を聞かず、異論は権力で抑えつける。不都合な情報は隠し、嘘とゴマカシと強弁を重ね、ひたすら“敵”が疲弊するのを待つ。沖縄問題には安倍政権の体質が、にじみ出ています。もはや辺野古と切り離して普天間の早期返還を求めるべきですが、埋め立てが自己目的化した政権に自浄能力を求めるのは不可能。この問題に限らず、カジノや入試改革、桜を見る会も同様です。政策を変えるには、もう政権を代えるしかありません」

 来年こそ「アベよ、あばよ!」を実現しなくてはいけない。


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12月28日(土) 「安倍一強」政権の正体と「退陣戦略」(その3) [コメント]

〔下記の論攷は、『月刊 全労連』N0.275、2020年1月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

Ⅲ 活路はどこに

 真の「危機」を知ること

 危機は、それを正しく認識できない時にこそ、本当の危機になる。今の日本は、まさにこのような状況に陥っている。これこそが、真の危機である。
 戦争法は集団的自衛権行使を一部容認するために「存立危機事態」という条件を付けた。別の意味で、今の日本は「存立危機事態」に直面している。子供を産んで育てることができず2008年を境に人口が減少している量的な縮小と、普通に働いてもまともな生活ができず老後も不安にさらされる質的な劣化こそが「真の存立危機事態」にほかならない。この現実を直視することが必要だ。
 このまま事態が進行すれば、日本社会は外から攻撃される前に内から縮小し崩壊する。兵器などの高額な防衛装備はこのような内なる崩壊に対して役に立たないばかりか、「金食い虫」となって福祉予算を侵食し崩壊を促進してしまう。
 このような政治の現実を知らせるために、労働組合の政治的社会的影響力の発揮が求められている。そのための活路は東日本大震災と原発事故以降に生じた「デモの復権」にあり、国会議事堂前や首相官邸前での集会や抗議行動が世論を変える上で大きな力を発揮してきている。
 政治の中枢だけでなく地方や地域でも、デモや集会、パレード、駅頭などでのスタンディング、署名活動や演説などによって広く社会にアピールし、問題の所在を知らせ国民の関心を高める行動が日常的に取り組まれてきた。一部の活動家による「自己犠牲的な行動」を核としながら、幅広い市民が日常の生活の延長としての「平凡な異議申し立て」へと広がってきた。
 それは特殊な活動ではなく、当たり前の日常的な風景となりつつある。この取り組みの方向を維持しつつ、幅を広げ活動の水準を高めていけば、やがては国際的な大衆運動の流れに合流する可能性が生まれるだろう。
 韓国での「ろうそく革命」や香港のデモ、アメリカでの銃規制を求める若者の運動、フランスでの「黄色いベスト」運動、チリでの激しい大衆デモ、そして温室効果ガスの削減を呼びかけて国際的なうねりを生み出しているスウェーデンの高校生の取り組みなど、政治の問題点を可視化し、その解決を求める地道な社会運動が世界各地で広がりを見せている。真の「危機」を明らかにし、それを解決するための手がかりは、このような運動の現場から生み出されてくるにちがいない。

 労働組合の力の発揮を

 このような点で、社会運動の「老舗」としての労働組合の政治的社会的影響力の向上が大いに期待される。しかし、それだけでは不十分だ。社会的に組織された集団としての労働組合だけでなく、それを構成している個々の組合員も大きな役割を果たさなければならない。
 労働組合の構成員の多くは自覚的な市民であり、今日の社会運動における市民の役割は、これまでになく大きなものとなっている。したがって、労働組合の社会的な力の発揮は「外へ」だけでなく、「内へ」というもう一つの方向でも強められなければならない。
 労働組合は要求実現に向けての職場での活動とともに、政策制度課題実現のための地域社会での活動や政治活動にも取り組む必要がある。これが社会運動的労働運動としての役割の発揮であり、「外へ」向けての活動である。
 同時に、組合員などに対する広報宣伝や教育学習も重要であり、これが「内へ」向けての活動である。政治の現実や問題点を可視化する機能は、何よりも労働組合の構成員に対して発揮されなければならない。従来の広報手段に加えて、ネットやSNSによる情報発信にも習熟することが必要である。
 個々の組合員が意識的に学ばなければ、「安倍一強」体制の正体を見破り、そのカラクリを知ることはできない。個々人の情報リテラシー(読解力)を高めることはますます重要になっている。一人でそれを行うことは困難であり、助けあえる仲間が必要だ。労働組合にはそれができる。
 個別的な労働者管理が広まり働く人々が切り離されて孤立し処遇の格差が拡大している現状の下で、労働組合の組織化は新たな意義と有用性を持ってきている。分断ではなく連帯、競争ではなく助け合いの場を提供できるという意味で、労働組合の存在は貴重である。「仲間のいる幸せ」によってこそ、分断や孤立から抜け出すことが可能になる。
 労働時間の短縮によって、自分や家族のためだけでなく政治や社会などの公共空間のためにも使える自由時間の増大を図ることも必要である。それは民主的な社会を実現し維持するためのコストであり、個人の努力に任せるのではなく社会全体で保障すべきものだからだ。

 「手を結ぶ」しかない

 個々の労働者は弱い存在である。その労働者が団結し、手を結ぶことによってはじめて交渉力を強め資本と対等の立場に立つことができる。それが労働組合である。団結こそが労働組合にとっての「武器」であり、力の弱いものが団結して弱さを克服し、対等な立場を獲得するのは労働組合の「お家芸」だ。
 同様のことは、政治の分野でも当てはまる。「多弱」とされている野党が「安倍一強」に対抗するためには、手を握らなければならない。大政党に有利になる、当選者が一人の選挙区では野党がバラバラでは勝ち目はない。市民と野党との共闘によって「1対1」の構図をつくり出すことで、はじめて対等な競争条件が獲得できる。
 2015年の戦争法に反対する大衆的な運動の盛り上がりの中から、「野党は共闘」という声が上がり、これに応える形で日本共産党は国民連合政権の樹立を呼びかけた。この時は唐突に見えたこの呼びかけは、2016年参院選に向けての「5党合意」に結実した。
 以後、市民と野党の共闘は、3回の国政選挙と地方の首長選挙などで実績を上げてきた。とりわけ、2016年と19年に実施された2度の参院選1人区での野党共闘の成果は大きかった。そこで示された教訓は、「安倍一強」に対抗する「受け皿」を提供するためには、市民と野党が共闘するしかないということだ。「手を結ぶ」ことこそ「退陣戦略」の要にほかならない。そのためには、克服しなければならない難しさもあった。
 第1に、市民と個々の政党が互いに尊敬、尊重する態度を貫き、共闘する意志を固めあうことが必要である。とりわけ、共産党を除外するという「反共意識」を克服しなければならなかった。今では共闘に共産党を含むことは当たり前の光景になった。共闘の推進力である共産党を含んだからこそ、大きな成果を上げることができたのである。
 第2に、共通する政策と各政党が独自に掲げる政策とを区別し、一致点を拡大すると同時に各政党の独自政策を尊重することが必要である。各政党の理念や政策に違いがあるのは当然であり、違うからこそ政策のすり合わせや一致点の確認が必要になる。これまで、市民連合を仲立ちとして政策合意の幅は広がり、合意内容の水準も高められてきた。これをさらに広げ、高めていかなければならない。
 第3に、2年以内に実施されることが確実な総選挙に向けて、各小選挙区での共闘のための具体的な協議を始めていくことが必要である。統一候補を擁立し政権交代によって政策実現の条件を作りだし、政治の転換につなげるまでの一連の取り組みで市民参加型をめざすことである。要求課題にもとづく対話と共闘を日常的に地域と職場で強め、市民と野党の共闘の担い手を増やすとともに小選挙区で力を出し合える選挙態勢をつくり出す必要がある。

 むすび

 「安倍一強」体制の強みが弱みに転化し、その正体が次第に明らかになってきた。長期政権であるが故の驕りと緩みが大きな問題を生み出し、安倍首相に対する責任追及の声も高まっている。その原因となったのは、大臣の辞任や「桜を見る会」など政権スキャンダルの噴出である。
 第4次安倍再改造内閣発足後、1ヵ月半で2人の重要閣僚が辞任した。しかも2週続けてである。有権者に公設秘書がメロンなどの金品を配ったり秘書が香典を渡したりしていた疑惑で菅原一秀前経産相が辞任したのに続き、妻の参院議員が法定額を超える日当を運動員に支払った疑惑で河井克行前法相も辞任した。
 第2次安倍政権発足以降、このような閣僚の辞任は10人に上る。多くは「政治とカネ」がらみで、行政の私物化疑惑や暴言なども数知れない。導入予定だった英語の民間試験についての萩生田光一文科相の「身の丈に合わせて頑張って」という発言も憲法や教育基本法で保障された教育の機会均等を踏みにじる暴言で、発言の撤回と試験導入の「延期」に追い込まれた。
 相次ぐスキャンダルの発覚と閣僚の辞任で、安倍首相の求心力は急速に低下している。さしもの「安倍一強」体制にも陰りが生じた。消費増税や社会保障の削減で国民いじめを続ける一方、不正や疑惑にまともな説明責任も果たさず強引な政権運営を続けてきたモラル崩壊の安倍政権の正体が露わになってきている。
 「退陣戦略」の発動に向けて動き出す時がやってきた。市民と野党が手を結び共闘によって連合政権樹立をめざし、安倍政治の正体を明らかにして「受け皿」を提供すれば、あきらめていた国民も投票所へと足を運ぶことは、参院選1人区での勝利などで実証されている。
 「審判の日」は近づいている。解散・総選挙で安倍退陣を実現することは十分に可能だ。そのために、来るべき政治決戦に向けての準備をいそがなければならない。(2019年11月27日脱稿)

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12月27日(金) 「安倍一強」政権の正体と「退陣戦略」(その2) [論攷]

〔下記の論攷は、『月刊 全労連』No.275、2020年1月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

Ⅱ 「政権安定」のカラクリ

 国政選挙6連勝の実態

 「安倍一強」と言われるほどの安倍首相の「強さ」はどこにあるのか。その「政権安定」のカラクリが解明されなければならない。
 まず指摘する必要があるのは、国政選挙での「強さ」である。安倍首相は政権に復帰した2012年の総選挙を含めて6連勝という成績を収めてきた。これが「安倍一強」と言われる国会での勢力関係を生み出し、自民党内でも安倍首相の支配力を強めている。
 しかし、この間、有権者内での得票率(絶対得票率)は選挙区で約25~26%、比例代表で16~17%であった。自民党に投票する有権者の割合は約4分の1にすぎず、残りの4分の1は野党に、さらに残りの半分ほどの有権者は投票所に足を運ばず棄権している。
 このように有権者の4分の1ほどにしか支持されていない自民党が選挙で勝ち続けたのは、公明党の選挙協力と選挙制度に助けられてきたからだ。とりわけ、衆院選で289ある小選挙区や参院選で32ある1人区では、野党がバラバラで立候補することで自公勢力を有利にした。「ベからず選挙」と言われるような選挙運動に対する厳しい制限も、政策の浸透を阻むことで自民党に有利に働いた。
 これを打破するためには、大政党に有利な定数1の選挙区を、少数政党も不利にならない比例代表的な制度に変え、選挙運動を自由にして有権者に政策が浸透しやすくする必要がある。同時に、制度が変更される前でも、野党や少数政党が不利にならず自民党に対抗するためには、野党間での共闘を実現して選挙区での1対1の構図を作らなければならない。
 2016年の参院選では、このような対抗戦略が功を奏し、定数1の選挙区で統一候補は11議席を獲得した。2019年の参院選でも統一候補は10議席となり、有権者内での自民党の絶対得票率は19.8%と2割を下回って9議席を減らした。自民党は参院での単独過半数を失い、公明党などと合わせた「改憲勢力」は発議に必要な3分の2の議席を割っている。
 投票率が戦後2番目に低い48.8%に低下したため、この程度の陰りにとどまった。投票率が上がれば、選挙制度の制約を乗り越えて自民党に勝利することができる。このことは、参院選1人区で共闘した野党4党の比例代表の合計より26.6%もの「上積み効果」があり、山形60.74%、岩手56.55%、秋田56.29%、新潟55.31%、長野54.29%など、統一候補が立候補した選挙区で軒並み投票率が上昇し、いずれも当選したという事実によって裏付けられている。

 内閣支持率の「安定」

 「安倍一強」を支えてきたもう一つの要因は内閣支持率の「安定」である。NHK世論調査による内閣支持率の推移を見れば、長期にわたって一定の水準を維持していることが分かる。一時的に不支持が支持を上回ることがあっても、また支持が盛り返して4割台を維持してきた(図表5:省略)。
 同時に、森友・加計学園疑惑が国会で追及されたときには不支持が支持を上回り、その後の回復によっても支持率は5割に達していない。つまり、政権の安定は5割以下の世論を背景にした低い水準のもので、国会での追及などで政権を追い込むことは十分に可能だということになる。
 しかし、安倍政権は森友・加計学園疑惑というピンチを乗り切った。それが可能だったのは、この問題に関わった官僚などが公文書の改ざんや虚偽の証言などによって安倍首相と昭恵夫人を助けたからである。今に至るも、この疑惑の真相は明らかになっていない。
 このような状況が生まれた要因の一つは、官僚に対する官邸の支配力が強化されたことにある。2014年の内閣人事局の新設によって高級官僚の人事が一元化され、その中心に官房副長官が座った。そのために官僚は官邸の意向に逆らうことが困難になり、森友学園疑惑で決済文書の書き換えに関与させられた財務省近畿財務局の職員の1人は、それを苦にして自ら命を絶った。
 逆に、森友学園疑惑で首相夫人付きだった官僚は昭恵氏をかばい続けた後に在イタリア大使館の一等書記官へと栄転し、決裁文書改ざんで中核的な役割を担った財務省官房参事官も駐英公使となった。不起訴とした大阪地検特捜部長は大阪地検の次席検事となって出世コースに乗り、当時の近畿財務局長も財務官に昇進している。加計学園疑惑で白を切り続けた萩生田元官房副長官は文科相に抜擢された。飴と鞭による官僚支配の貫徹である。
 もう一つの要因は、公文書管理のルールが明確にされず、問題が発生した後での検証が困難になっていたことである。これについては、その後一定の改善がなされたが、かえって行政関連の文書や記録が隠蔽されやすくなったという面もある。行政に関連する情報は国民の財産であり、行政監視の徹底や国民の知る権利を守るという点からも、行政の記録が残され事後検証可能な条件を整備しなければならない。
 さらに、第3の要因として、国会での野党の追及のあり方という問題もあった。野党がバラバラに質問するため、論点が分散したり重複したりして十分に政権を追い込めなかった。その後、野党合同のヒアリングや立憲・国民・社保・社民などによる統一会派の結成、質問に向けての調整など一定の改善がなされている。

 教育による若者の取り込み

 かつて若者は革新的で政権批判の傾向があると見られていた。しかし、今日ではその若者が「安倍一強」を支える世代として注目を集めている。とりわけ、18歳選挙権が導入された4年前の第24回参院選では、新たな有権者となった18~19歳の与党支持率の高さが際立っていた。それは何故なのだろうか。
 その最大の理由としてあげられるのが、教育による若者の取り込みである。自民党政権は一貫して日教組を敵視し教育への介入を試みてきたが、安倍首相は特に教育改革に力を入れてきた。
 第1次安倍内閣では教育基本法と学校教育法など関連3法を改定して愛国心教育を強化した。第2次政権となってからも教育再生実行会議を発足させ、道徳教育の教科化、教科書検定の強化、大学入試改革、教員への管理・統制、教育内容への関与と介入を強めてきた。
 教科書の内容も変わった。とりわけ、「つくる会」の教科書や育鵬社版の歴史教科書によって従軍慰安婦などの記述は削除されたり書き換えられたりしてきた。その結果、安倍首相が期待する若者が形成されてきたのである。その目的は、政権に従順で愛国心に満ち「祖国」のために進んで命を投げ出すことを望むような若者の育成であった。
 しかし、戦後教育がめざした民主的な人格形成のための教育を取り戻せば、状況を変えることができる。愛国心教育や道徳教育の教科化、教科書検定の強化に反対し、検定内容の偏向を正して誤った歴史記述の教科書の採用を許さない取り組みに力を入れなければならない。教員に対する管理・統制や労働強化、長時間労働を是正し、教員が子供たちと接する時間を増やすことも必要だ。
 過去の歴史的事実や周辺諸国との関係について、教育やネットなどによって注ぎ込まれた誤った知識を是正しなければならない。若者に事実を伝えていくための様々な取り組みを工夫することも重要だ。街頭宣伝や講演会、ネットやSNSなども活用し、社会的レベルでの歴史教育を幅広く展開していく必要がある。
 現状を肯定しがちになる若者の心理には、将来に対するあきらめと期待値の低さもある。自らの将来が今よりも良くなるという希望や展望を持ちにくい現状は政治の貧しさの結果であり、安倍首相によってもたらされたものにほかならない。その因果関係を理解し、現状打開の展望、将来への希望を持つことができれば、現状肯定に傾きがちな若者心理にも変化が生ずるにちがいない。

 マスメディアの変容

 マスメディアの変容によって政権の正体が隠され、見えにくくなっている。それが「安倍一強」を支える大きな要因だ。国民が目にする政治の実相は数々のベールによって隠され、別の映像や言説によって惑わされている。その結果、「フェイク(虚偽)ニュース」が氾濫し「ポスト真実」の時代が生まれた。
 近年になって、国民をとりまく情報環境は大きく変容した。ニュースを入手する主たる手段であった新聞は購読者の減少に悩み、政府を監視したり牽制したりする役割を放棄し始めている。若者などが情報を入手するのは主としてインターネットやツイッター、ファイスブックなどのSNSで、事実に基づかない誹謗や中傷なども飛び交っている。
 このような情報環境の悪化こそがヘイト発言や偏狭な差別心が巣くう社会、国民意識の右傾化を生み出す大きな要因だ。安倍政権はそれを是正しようとしないばかりか、ハードで強権的な管理・統制とソフトで目立たない懐柔策との併用という形で促進してきた。
 テレビに対しては、場合によっては電波の免許を停止すると脅した高市早苗総務相の発言があった。元総務次官経験者によるNHK経営委員会に対する抗議、JR九州の相談役で日本会議福岡の名誉顧問だった経営委員長によるNHK会長への厳重注意など、日本郵政によるかんぽ不正を描いたNHKのテレビ番組『クローズアップ現代+』をめぐる一連の介入事件もテレビ番組への直接的な圧力行使の一例である。
 ソフトな懐柔策の例は、安倍首相の臨時国会に向けての所信表明演説前日の動静に示されていた。この日の午後、「2時31分、新聞・通信各社の論説委員らと懇談。59分、在京民放各社の解説委員らと懇談。3時23分、内閣記者会加盟報道各社のキャップと懇談」と報じられている。これらの報道関係者と、時には酒食をともにした「懇談」もなされている。
 また、「国境なき記者団」が発表する「報道の自由度ランキング」で日本は67位であり、「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」中止をめぐる一連の経過と文化庁による補助金の不交付という事例もあった。これは政治情報に関わるものではないが、日本における言論・表現の「不自由」を象徴的に示したものだと言える。
 マスメディアは激しい競争にさらされ、一部のメディアは企業としての生き残りを模索するようになっている。商業主義に屈服し、売り上げや視聴率を気にして理想・理念よりも商売・業績を優先し、誤った情報環境によって醸成された歪んだ社会意識に迎合しようとする。売上優先でフェイクニュースを垂れ流し、それによって社会の劣化と右傾化がさらに促進されてしまうという悪循環に陥っている。
 大企業化したメデイア産業は商業主義に屈し、ますます保守化していく。大きな産業になれば、政権との距離も近くなる。それを牽制できるのは有権者であり消費者でもある国民だけだ。絶えず、有権者として権力を監視し牽制するジャーナリズムとしての本分を問い、情報のよしあしを見分ける目を持った賢い有権者・消費者にならなければならない。

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12月26日(木) 「安倍一強」政権の正体と「退陣戦略」(その1) [論攷]

〔下記の論攷は、『月刊 全労連』No.275、2020年1月号、に掲載されたものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 はじめに

 この日本はおかしくなっている。政治も行政も腐ってしまった。経済は低迷し、アベノミクスの破綻は覆い難い。国会は軽視され、議会制民主主義は窒息状態に陥っている。首相は権力を私物化し、国会で平然と嘘をつく。大臣の辞任が相次ぎ、暴言を吐く。官僚は国民そっちのけで、「安倍首相と不愉快な仲間たち」に奉仕する上目使いの「ヒラメ」ばかりだ。国有地払い下げの不正、公文書の隠蔽に改竄・捏造と「桜を見る会」の私物化など、何でもありではないか。
 森友・加計学園疑惑では総理夫妻の関与と不正が疑われたにも関わらず、真相はやぶの中で誰も責任を取っていない。公文書の改ざんや事務次官のセクハラ問題が明らかになったのに、麻生副総理兼財務相は居座ったままだ。加計学園問題で「総理の意向」を盾に文科省に圧力をかけ、それが露見してもシラを切り続けた萩生田元官房副長官は「ご褒美」として文科相に抜擢された。
 安倍政権になってから、こんなことばかり続いている。それは国のトップである安倍首相自身が先頭に立って悪事の限りを尽くし、何の責任も取らずにきたからだ。それなのに、11月20日には歴代最長の首相在職日数となった。なぜここまで続いたのか。ほとんど実績らしい実績もないというのに。
 衆院議員の任期は2年後に切れる。それまでには間違いなく解散・総選挙が実施され、与野党激突の局面がやってくる。今からそれに備えなければならない。安倍政権の正体を明らかにし、その秘密を探り、強みだけでなくジレンマや弱点を明らかにすることを通じて、来るべき政治決戦において安倍退陣を実現する条件を明らかにしたい。

Ⅰ 「安倍一強」政権の正体

 キャッチ・オール・パーティーの変貌

 2019年、台風15号が関東の東海岸を襲う中、安倍首相は災害対策をなおざりにして第4次再改造内閣を発足させた。この内閣は麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官、自民党の役員では二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長など骨格を維持し、それ以外は大きく入れ替わった。その最大の特徴は安倍首相の盟友や側近などの「お友だち」が総動員されたことにある。
 しかも、これらの「お友だち」は極右「靖国」派の幹部でもあった。図表1(省略)に示されているように、日本会議国会議員懇談会に加盟している閣僚は安倍首相はじめ20人中16人で、神道政治連盟国会議員懇談会に加盟している閣僚も同じく16人となっている。しかも、日本会議の特別顧問や副会長、幹事長や副幹事長などの幹部がずらりと顔をそろえた。
 まさに、内閣が極右「靖国」派に乗っ取られたようなものである。安倍首相は、消費増税後の難局を乗り切って悲願の改憲を実現するために、「お友だち」を総動員して「改憲シフト」を敷いたように見える。 
 これまでも安倍首相は「お友だち」を重用して「官邸支配」を貫き、固い支持基盤とされる極右層を惹きつけ、政権基盤の安定を図ってきた。これは安倍首相にとって「一強」体制を生み出す要因の一つであったが、同時に大きな弱点にもなっている。キャッチ・オール・パーティーとしての自民党の変質を引き起こしたからである。
 かつて自民党は、その幅の広さで知られていた。保守派からリベラル派まで政治的・イデオロギー的な雑多な勢力を糾合し、多元的な構造によって国民の幅広い層の要求を敏感に察知し、柔軟に対応することが可能だった。
 しかし、安倍政権には、このような幅の広さも多元的な構造も存在していない。その代替物となったのが、保守化した強固な支持基盤とそれを背景にした盟友や側近のグループである。安倍首相を中心とする右翼的な勢力による権威主義的で専制的な構造は安倍政権における「官邸支配」を可能にした。
 同時に、それは自民党の支持基盤の狭隘化と多元的柔構造の喪失をもたらした。思想的な右傾化による保守リベラルの切り捨て、安倍首相の個人的な交友関係の優先、派閥均衡ではなく首相の専権による公平・平等な人事の放棄、地方議員からのたたき上げに多い「土着保守」の切り捨て、当選回数だけは多いが能力に問題のある大臣適齢期議員の「滞貨」を生み出している。
 こうして形成された安倍首相を中心とする同心円構造は、一面では「安倍一強」を実現することに成功した。しかし他面では、自民党総裁選での地方票の少なさに示されたように、地方の幅広い保守層を結集するという点で大きな限界をもたらしているのである。

 安倍9条改憲のジレンマ

 参院選の結果、自民・公明・維新の改憲勢力は、3分の2の議席を獲得できなかった。このままでは、参院での改憲発議は不可能だ。それにもかかわらず、安倍首相は「何としても実現する」と述べて、改憲への野望をたぎらせている。
 内閣改造と同時に実施された自民党の役員人事で、改憲4項目をまとめた細田博之元幹事長が憲法改正推進本部長に再登板した。公明党の北側一雄憲法審査委会長とは安保法制(戦争法案)を成立させた間柄で、これを生かして自公間の調整を加速するつもりのようだ。
 また、本部長代行に古屋圭司元国家公安委員長、事務総長に根本匠前厚生労働相を充て、地方から改憲機運を盛り上げる「憲法改正推進遊説・組織委員会」(古屋委員長)の新設などを決めた。細田本部長は「新しい体制で、精力的に活動していく必要がある」と述べている。
 衆院憲法審査会長に就任したのは、国会対策の経験が長い佐藤勉元総務相だった。戦争法案審議で一部野党を修正協議に巻き込んで成立させた手腕に期待しての人事である。同審査会の筆頭幹事には安倍首相側近の新藤義孝元総務相を留任させた。参院幹事長には首相側近の世耕弘成前経産相、新任の議長には日本会議議連幹部の山東昭子議員を配するなど、参院の「改憲シフト」も強められた。
 さらに、自民党内でも改憲推進の動きが強まっている。とりわけ、それは改憲慎重派あるいは護憲派とされてきた二階幹事長と岸田政調会長に顕著で、岸田政調会長は「党を挙げて憲法改正を動かしていきたい」と述べ、全国で改憲集会を開いていく方針を明らかにした。この両者を前面に立てて、「安倍カラー」を薄める狙いがあるようだ。
 しかし、これらの動きは確たる成算があってのことではない。安倍首相がめざす「任期内」(2021年9月まで)の改憲施行までには時間が限られている。丁寧に説明して野党との同調を図ろうとすれば時間切れとなり、焦って無理強いすればかえって反発を生んで停滞するリスクを高める。
 このようなジレンマの中で打開策を模索し、国民投票法の改正問題を手掛かりに憲法審査会での審議を再開させ、並行して改憲項目をめぐる自由討議に野党を引き入れようとしている。しかし、閣僚のスキャンダルや辞任、「桜を見る会」疑惑などもあって難問山積で厳しい状況に変わりはない。

 「富国」を犠牲にした「強兵」の突出

 10月1日に消費税が10%に引き上げられた。安倍政権下では2回目の消費税増税である。8%と10%の複数税率と2%と5%のポイント還元、低所得層向けのプレミアム商品券などの「景気対策」が導入されたため現場は混乱し、景気の先行きへの不安が増大している。
 デフレ不況からの脱却を掲げて「3本の矢」を放ったアベノミクスが成功していれば、消費不況への懸念など生ずるはずはなかった。しかし、「黒田バズーカ」による異次元金融緩和は功を奏せず、インフレターゲットはいつの間にか消えてしまった。
 「アベノミクス」が打ちだされた当初、それは「富国強兵」の現代版だと見られた。安倍首相のめざす軍事大国化(強兵)のための不況脱出による経済成長(富国)ではないかというのである。しかし、それから7年近く経って明らかになったのは、経済成長なしの軍事大国化という現実であった。
 消費税が3%から5%に引き上げられたのは、1997年4月1日である。それから昨年までの実質可処分所得の推移を見れば、ほぼ一貫して減少していることが分かる。1997年から2018年までで82万6000円の減少であった。この間、民主党政権時代の2009年から20012年では2万4000円のプラスだったのに、安倍政権時代の2012年から2018年には、17万6000円のマイナスとなっている(図表2を参照:省略)。
 日本の一人当たり名目GDPの推移(図表3参照:省略)を見ても、大まかな傾向に変わりはない。円高の影響があったとはいえ、民主党政権時代に増大し安倍政権になってからほぼ低迷していることが分かる。
 他方で、安倍政権になってから防衛費は減少から増大に転じた。2015年に過去最高額を突破して以降、毎年、それを更新し続けている(図表4:省略)。今後も、戦闘機F35の爆買いや陸上型イージスの設置計画、ヘリ空母「いずも」型の改修、敵地攻撃も可能な巡航ミサイルの購入など、軍事大国化に向けての整備計画は目白押しだ。
 結局、アベノミクスはデフレ脱却に成功せず、景気を回復させることもなかった。2012年の第2次安倍政権発足後に成長戦略の目玉として新設された10の「官民ファンド」も18年度末で計323億円の赤字となった。
 「経済の安倍」は虚構だった。アベノミクスの看板は偽りで、景気は低迷し貧困化と格差が拡大した。安倍首相が実施してきたのは軍事力の増強によって経済成長や国民生活を犠牲にする軍事大国化一本やりの路線であり、「富国強兵」ですらなかったのである。

 強みから弱みに転じた外交

 安倍首相にとって強みから弱みに転じたのはアベノミクスだけではない。「外交の安倍」も看板倒れに終わり、漂流を始めている。日本外交の基軸となってきた日米関係も揺れ出した。日米貿易協定の調印について安倍首相は「ウィンウィン」だと述べたが、実際には日本側が譲るだけの「大敗」だった。
 安倍首相がトランプ米大統領に追随し続けてきたツケが、このような形で回って来たことになる。トランプ米大統領は「アメリカ第1」を掲げて同盟国との協力を度外視する態度を取り、日米同盟の信頼性が弱まることは避けられない。また、国際関係を破壊し、パリ協定やイラン核合意などから一方的に離脱するとともに中国に貿易戦争を仕掛けて国際協調に背を向けてきた。
 これに対して、安倍首相は手をこまねいているだけだ。武器購入で米国に押しきられ、早期の普天間飛行場の返還を求める沖縄県民の意志を無視して辺野古新基地建設を強行し、不平等な日米地位協定を改定するための交渉すら行おうとしていない。
 北方領土をめぐるロシアとの交渉は進展せず、日朝首脳会談も展望が開けないままだ。戦後最悪となっている韓国との対立は徴用工の問題から通商、安全保障分野にまで拡大し、観光業や輸出産業は大打撃を受けた。アメリカとイランとの板挟みになり、苦し紛れに「調査・研究」名目で中東への自衛隊派兵にも踏み切ろうとしている。
 国際社会からの離反と時代への逆行も覆い難い。非核・脱原発の動きに背を向けて原子力発電を成長戦略に位置付け、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの利用促進には消極的で原発推進の国策に固執している。
 温暖化防止のための環境政策、ジェンダー平等や女性の地位向上、LGBT(れず、芸、バイセクシュアル、トランスジェンダーの総称)などマイノリティの権利擁護、国連の持続的な開発目標(SDGs)の達成、国連家族農業の10年に示されている農家支援などに取り組もうとしていない。かつての植民地支配や慰安婦などの戦時性暴力への反省もなく、国連人権理事会や人種差別撤廃委員会による勧告を無視し続けてきた。
 決定的な問題は、国連総会で採択された核兵器禁止条約への背反だ。唯一の戦争被爆国でありながら条約に背を向けている安倍政権の対応は日本の国際的地位を大きく低下させ、信頼を失わせている。この条約が国連で批准されるとき、その場に日本政府の姿が無いということになりかねない。そのような不名誉なことにならないよう「非核の政府」を樹立することは急務である。


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12月25日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月22日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「ヤキが回った安倍政権 恐らくカジノも頓挫だろう」

 地域住民がギャンブル依存症になれば間違いなく地域は崩壊だ。80年代後半、地域振興などと称して「リゾート法(総合保養地域整備法)」が制定され、地方で乱開発が進んだ結果、自治体や地元企業が多額の債務を抱えて行き詰まるケースが見られたが、カジノも同じ道をたどるだろう。

 3日の衆院地方創生特別委で、IRと地方創生の関係について質問した日本共産党の清水忠史議員は、韓国ではカジノの「利益」が年間約2兆円なのに対し、賭博中毒患者が生まれることによる社会的・経済的「費用」が年間7兆円を超えるという試算を紹介。「(誘致自治体は)経済効果を詳細に試算しているが、マイナスの社会的・経済的効果についても試算し、地元議会や住民に示すべきだ」と主張していたが、その通りだろう。

 遊ぶ方も資産を丸裸にされる中途半端な博打場に誰が行くのか。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「カジノは経済成長に結びつかない上、そもそも人の不幸で経済成長する考え方が間違い。秋元議員の事件を見ていると、カジノ導入を見込んで、すでに利権に群がる怪しい動きがあったということ。カジノ計画など一刻も早く潰すべきです」

 ヤキが回り始めた安倍政権。カジノも頓挫は避けられないのではないか。

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12月24日(火) 安倍政権を終わらせ希望ある政治へ(その3) [論攷]

〔以下の私の発言は、10月19・20日に神戸で開かれた「地域・職場・青年革新懇全国交流会in兵庫」でのものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 まとめ:「市民と野党の共闘」の進化・発展

 ここで結びの言葉を兼ねて、市民と野党の共闘の進化・発展についてお話をさせていただこうと思っておりますけれども、きのうも全体の交流会の司会をやりまして、閉会のあいさつをやってるんですね。これから結びの言葉を述べようと思ったときに、どうも同じことを言いそうだなと。かといって、まったく違うことを言うわけにもいかない。いくつかの点で少し重なるかもしれませんので、あらかじめお断りしておきたいと思います。
 1つは、皆さんのご報告とご発言をうかがいまして、昨日も同じようなことを言いましたが、政治の光景が変わってきていると実感しました。市民と野党の共闘というのが当たり前の光景になってきた。この共闘の中で共産党が大きな役割を演じ、推進力を発揮するという形で加わってきた。こういう光景は自然にそうなったのではなくて、私たちが変えてきたから光景が変わったんだということなんですね。これを変えてきたのは私たちであり、皆さんであったということを、まず共に確認しておきたいと思います。
 ここに穀田さんがおられますけれども、共闘の枠組みに共産党がどう関わるかが問題とされてきた。しかし、それはもう過去の話。先ほど反共主義という話もありましたけれども、「共産党アレルギー」がありました。今は「共産党エネルギー」ですね。アレルギーということで毛嫌いされるような状況が、エネルギーとして頼りにされている。高知では「ぜひ立ってくれ」とお願いされるような状況になってきている。各地で市民と野党の共闘を動かす、推進する力、機関車としての役割を果たすようになってきている。もっともっと変えていかなきゃならない。そのための目標はできたし、そのためにどうやればよいのかということも、昨日と今日の議論を通じて、いろいろな教訓を学ぶことができたのではないでしょうか。
 これをそれぞれの地域、職場、地方に持ち帰って、さらに大きく政治の光景を変えていく。こんなに希望の持てる、そういう政治があるんだということを知らせる。多くの国民が実感できるような、絶望から希望に変わっていけるような、そういう政治の道を切り開いていくことを、これからの課題として考え、実行していく必要があるだろうと思います。
 2つ目の問題として、市民と野党の共闘はかつての「社共共闘」の単なる再現ではないということです。60 年代後半から70 年代初めにかけて、特に革新自治体などで社共間の共闘が進みました。それとの違いと発展があるということです。社共共闘の場合は、総評を仲立ちに社会党と共産党が手を組むという、政党間の連携が主導する形がほとんどであったわけですね。そして、政党や労働組合の系列の団体が勢ぞろいして共闘体制を組んだり、選挙を戦ったりという形になっていました。
 しかし今は、労働組合はもちろん大きな役割を果たしておりますけれども、それとともに市民がさらに大きな役割を果たすようになってきている。草の根での運動と連携が進んでいます。小田川さんのお話では、市民連合といっても人・金は不足しているというお話でしたけれども、不足っていうことは足りないっていうことです。運動が進んでいなければ、足りないっていうことも問題にならない。それが問題となり課題になっているということは、草の根で市民の運動や組織化が大きく発展し進んでいるということの証拠であろうと思います。
 このような市民団体とともに、個人のイニシアチブも大きい。これが特徴ではないかと思います。革新懇も地域で草の根でのイニシアチブを発揮していく。今まで以上に、草の根の根を深く、広く張り巡らしていかなければなりません。それがこれからの政治の革新と野党の連合政権を支える大きな力になっていくのではないかと思います。
 3番目に言いたいことは、これは穀田さんも強調しておられましたけれども、過去を問うことなく、手を結ぶということです。過去を問うたら、一緒にやれる人はあまり居なくなっちゃうんじゃないか。とりわけ2年前の総選挙のとき、東京都知事の小池さん、「希望の党」を立ち上げることによってわれわれの希望を打ち砕いてしまった。「小池にはまって、さあ大変」、選挙情勢が激変して大混乱という状況が生じました。あっちに行ったりこっちに来たりという方がたくさん生まれたわけです。
 しかし、これからの共闘に当たって、相手を好きだ、嫌いだなどと言うぜいたくは許されない。そんなことを言っていられるような状況ではありません。好き嫌いをなくす。昨日私は、食べず嫌いは駄目だという話をしましたけれども、食べず嫌いなしで好き嫌いも言わず、なんでもおいしくいただこうということです。そうすれば、栄養も付くしエネルギーも湧いてきます。
 というのは、私は都立大学時代に全共闘を名乗る暴力学生の旗竿によって右目を突かれて失明するという事故といいますか、事件に遭遇いたしました。右目があるように見えるかもしれませんが、私の右目はプラスチックの義眼でまったく見えません。20 歳のときから左目しか見えない。先ほどからの司会でも、誰か手を挙げてもよく分からない。視界不良です。後ろのほうだと、よく見えない。しかも、右目が義眼ですから、左しか見えない。どうも左ばかり見る傾向が、このころからあったんじゃないかと思います。
 しかし、暴力学生であった方であろうとも、今、安倍政権を倒すんだ、安倍内閣と対決するんだというのであれば手を結ぶ。先ほど冨田さんがおっしゃいましたけれども、若者は病んでいる。若者だけじゃないんです。病んでいるのは、この国の政治そのものです。政治のあり方が、安倍首相によって腐らせられてしまっている。これをなんとかしなきゃならない。この一点で一致できるのであれば、そして暴力はふるわない、かつてやったことは反省しているということさえ確認できれば、恩讐を越えて共に手を組もうということを、私はいろんな所で訴えてきました。ここでも、このことを強調したい。
 政治は変えられるし、変わるんです。人も変わる。中村喜四郎さんの話が出ましたけれど、今私、古賀誠さんの『憲法九条は世界遺産』という本を読んでいます。これは書評を頼まれたからです。まさか自民党元幹事長の本を書評するなんて、思いもよりませんでした。しかも評価する立場で。本当に、人生は生きてみなきゃ分からない。古賀さんは昔から憲法は大切だって言っていましたけれども、とうとうこういう本を書くようになった。
 昨日は小林節さんが出席して、あいさつされました。私は政治学者ですから、小林さんの名前は昔からよく知っています。その主張は、私とは正反対でした。その向こう側に居た人が、気がつくといつの間にか横に居るんです。私が八王子市長選挙に立候補したときは、2回も応援に来てくれました。後ろから押し上げてくれたんですね。本当に人間というのは変わるもんだなと感動しました。政治も変わるし、人も変わる。これらの変化を、われわれの力にするということが共闘の大きな意味であり、役割ではないかと思います。
 最後に、これからの「あり得るシナリオ」について、ひとこと言いたいと思います。ことしの参議院選挙を見ていて思い出したのは、1992年7月の参議院選挙です。この年の5月に、細川護熙元熊本県知事が日本新党を立ち上げました。大きなブームを呼びまして、2カ月後の7月の参議院選挙で一挙に4人の議員を誕生させた。その後もブームは続き、翌1993年7月の総選挙で35 人の議員を誕生させ、自民党を政権の座から追い落とすことに成功しました。これで55 年体制は崩壊したわけです。8つの政党・会派を糾合して野党連合政権を樹立し、細川さんは首相になりました。同じようなシナリオが、これから来年にかけてあり得るのではないか。それを目指そうじゃないかということを、私は皆さんに呼びかけたいと思います。
 この93 年の政権交代、2009年にも民主党を中心に政権交代がありました。しかし、今めざしている野党連合政権は、3つの点でこれらと大きな違いがあります。
 1つは、政権樹立をめざしている市民と野党の連合の中に、共産党が大きな推進力、エネルギーとして入っているということです。この点にも共闘の進化・発展の姿が示されています。
 2つ目は、草の根ですでに準備が始まっているということです。それぞれの地方や選挙区で、野党の共闘が実現し、ダッシュに向けて着々と動きが始まってきている。過去には、このような動きはありませんでした。風頼みです。一時的な、いわば「追い風」に押し上げられるような形で政権が変わった。今回は風ではない。草の根からの力で政権を変える。
 そして3つ目は、政策合意がすでにできているということです。最初は2016年の「5党合意」で4項目です。その翌年の総選挙で7項目、そして今回の参議院選挙で13 項目についての合意がなされました。政策の幅が広がり、合意の水準も上がってきている。これが土台となって来るべき連合政権樹立に向けて野党間の政策を訴え、新しい政権の姿を明らかにする。これも準備ができている。準備は整った。これからは進撃を開始するのみ、ということになろうかと思います。
 フロアからも発言がありましたけれども、新しい政権交代の形を私たちの力で示していく。改革者としての新しい試みを、開拓者精神を持ち勇気をふるって、新しい政治、新しい時代の扉を開く。そのジャンピングボード(跳躍台)に、この交流会がなれば本当にいいなと思います。将来、あのときから政権交代への動きは一気に加速したんだと振り返られるような、そのような場になったのではないかと思います。
 今回のこの交流会、今日のシンポジウムの成功を皆さんと共に喜び合うことで、結びの言葉とさせていただきます。どうもありがとうございました。


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12月23日(月) 安倍政権を終わらせ希望ある政治へ(その2) [論攷]

〔以下の私の発言は、10月19・20日に神戸で開かれた「地域・職場・青年革新懇全国交流会in兵庫」でのものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 「共闘」分科会:開会あいさつ
 研究の対象から実践の課題となった統一戦線

 ただ今から、シンポジウム「市民と野党の共闘で政治を変えよう」を開会いたします。よろしくお願いします。司会兼コーディネーターということで、私が仕切らせていただきます。コーディネーターというのは“こうでねえか”という感じで進めたいと思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。
 この間、全国で市民と野党の共闘が大きく発展、前進してまいりました。このような経験を背景にしまして、その経験を持ち寄り互いに教訓を学びあおうというということで、たくさんの方にお集まりいただいています。大変多くの方から出席のお申し出をいただきまして、ありがとうございました。

 さて、共闘というのは統一戦線の萌芽でございます。私事にわたり誠に恐縮ではありますが、最初に私と統一戦線との関わりについて述べさせていただきたいと思います。
 私の修士論文の題名は「コミンテルン初期における統一戦線政策の形成」というものでございました。法政大学大学院で、『統一戦線史序説』を書かれた故中林賢二郎先生の指導を受けました。東京都立大学で塩田庄兵衛先生に師事した縁で、法政大学大学院の中林ゼミに進んだわけです。
 もう時効だと思いますので、ここで明らかにしたいと思います。この中林先生に紹介されまして、実はアルバイトとして共産党の野坂参三元名誉議長の自伝執筆のお手伝いをいたしました。その結果は『風雪のあゆみ』第7巻と第8巻にまとめられております。その際、人民戦線政策を打ち出したコミンテルン第7回大会の様子について、つぶさにうかがうことができました。
 その後、大学院を卒業して法政大学大原社会問題研究所に就職するわけですが、そこに在籍していたとき2カ月間、中国に短期留学いたしました。そのときのテーマが「中国共産党と抗日戦争についての調査」ということで、中国全土を1カ月間かけて旅行いたしました。
 この旅の途中、張学良が蒋介石を襲って共産党との共闘を求めた「西安事件」の舞台を訪問しました。蒋介石の宿舎のあったのが華清池です。ここは楊貴妃と玄宗皇帝のラブロマンスの舞台でもありますが、この華清池に建っている五間庁という建物に蒋介石は宿泊していました。五間庁にはまだこのときの弾痕が残っていました。この「西安事件」を契機に第2次国共合作が成立し、その後の中国革命の趨勢が決められていくことになります。
 また、その後、アメリカのハーバード大学に客員研究員として留学した後、地球を1周して世界の労働資料館と労働組合を調査いたしました。私、旅行が好きなものですから、調査を名目に、あっちに行ったり、こっちに来たりしていたわけです。このとき三十数カ国を訪れ、ヨーロッパも訪問しました。フランスやスペインなど人民戦線の現場にも行く機会がありました。このように、私の学究生活は統一戦線の研究と切っても切れないものであったと言っていいだろうと思います。

 しかし、2015年に状況は一変いたしました。安保法制(戦争法)に反対する運動の中から、「野党は共闘」という声が挙がったことは、皆さんよくご存じのとおりであります。私にとってもひとごとではなく、翌2016年1月の八王子市長選挙に、市民と野党の共同候補として立候補したといいますか、させられたといいますか。その辺は大変微妙ではございますが、最終的には「担ぐ神輿がなければ祭りは始まらない」などと言われまして、立候補を決意したわけです。これは参議院選挙に向けての「5党合意」が成立する1カ月前の選挙であったということを、ここで強調しておきたいと思います。
 すでに沖縄では「オール沖縄」という形で市民と野党の共闘は始まっておりました。けれども、まだ本土ではそういう形になっていませんでした。八王子からそのような市民と野党の共闘という形での選挙を戦うことで、そのような機運を盛り上げたいと思ったわけです。八王子から統一戦線結成に向けての先鞭をつけるのだという演説をして市長選挙を戦いました。このとき、私にとりまして統一戦線という問題は、研究の対象から実践の課題に変わったわけです。
 その後の市民と野党の共闘の進化・発展は、皆さんご承知のとおりでございます。このシンポジウムはその実践を振り返り、経験から学び、教訓をくみ取ること。これが大きな課題になっております。今後2年以内には必ず総選挙が実施されます。衆議院議員の任期は再来年の10 月までです。人気があってもなくても任期満了。議員を辞めなきゃならないということになっております。それを見据えて、市民と野党の共闘をどう発展させていくのか。豊かな報告と多彩な発言を期待したいと思います。

 ここにお並びの報告者には、参議院選挙の結果をどう見るか、市民と野党の共闘の到達点と課題、安倍改造内閣が発足しましたけれども、この内閣の評価、野党連合政権についてもどうなるのか、どうすべきなのか、この見通しと課題などについて、それぞれの立場から自由に語っていただければと思います。また、革新懇の課題などについても言及していただければ幸いです。
 発言の順番は、あいうえお順ということで、全国革新懇の代表世話人でもあり、市民連合運営委員、総がかり行動実行委員会共同代表など、たくさんの肩書きがありますが、小田川義和全労連議長から、労働運動や社会運動に深く関わり市民と野党の共闘の内部でその推進のために努力をされてこられた経験から、ご発言いただきたいと思います。
 次には、日本共産党国会対策委員長である穀田恵二衆議院議員から、現在の国会の状況や、国会内での野党共闘ということもかなり前進しているというお話がきのう志位委員長からもありました。その状況や今後の野党共闘に向けての政党間協議、大まかなことはすでに志位委員長に話をされてしまったということをおっしゃっていますけれども、ちょっとこぼれたところを、打ち合わせなどでのエピソードなどもありましたらお話しいただければと思っております。
 3人目は、政治学者で関西学院大学の副学長をされておられるそうですが、冨田宏治教授から、市民連合や関西の状況、草の根での共闘のあり方、あるいは現状と今後の課題などについてご発言いただければと思っております。
 最初のご発言は1人20 分ということでお願いしてありますが、これだけたくさんの方がひとこと何か言いたいということで来られたのではないかと思われますので、できるだけ多くの方に発言していただきたい。20 分は最大で、短くても良いということでご発言いただきたいと思います。
 報告者の方の発言が終わってから休憩を取ります。15 分ほどの休憩を取りますので、その間に、ご報告や活動などについて質問などがありましたら、質問用紙をお配りしますので、それに記入して提出していただきたいと思います。
 その後、フロアからの発言をお願いいたします。これは大体1人5分間ということです。これもできるだけたくさんの方にご発言いただきたいという趣旨です。とうとうと演説される方がたまにおられますけれど、それは別の機会に、別の場所でやっていただくということで、ここでは端的、明瞭、かつ簡潔に、5分程度で話をしていただければと思います。今から準備をしておいてください。
 それでは、最初に小田川全労連議長から、ご報告をよろしくお願いいたします。

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12月22日(日) 安倍政権を終わらせ希望ある政治へ(その1) [論攷]

〔以下の私の発言は、10月19・20日に神戸で開かれた「地域・職場・青年革新懇全国交流会in兵庫」でのものです。3回に分けてアップさせていただきます。〕

 全体会 閉会あいさつ

 どうも、ありがとうございました。以上をもちまして、会場からの発言を終わらせていただきます。
 本日の参加者は、45 都道府県から1830人の方になりました。これまでで最多の参加者で、交流会が大きな成功を収めたことを確認し、共に喜び合いたいと思います。

 ここで一言、閉会にあたってのごあいさつをさせていただきます。「あってよかった革新懇」「今が出番の革新懇」「共闘の要は革新懇」。この3 つが、今日の報告と発言を通じて明らかになったのではないでしょうか。革新懇運動をやっておりますと、確信がコンコンと湧いてまいります。これは、シャレではなく事実ではないでしょうか。
 この間、政治の景色、光景が変わってまいりました。市民と野党の共闘は、もはや当たり前のことになっています。これに共産党が推進力として加わるというのも当然のことになっている。「共産党を除く」という壁が、除かれたわけでございます。
 私たちのパートナーになっているさまざまな政党、あるいは団体の方も、ある種の「食わず嫌い」がありました。私たち自身もそうだったかもしれません。自分の周りの方とだけ付き合うという傾向が強かったのではないかと思います。
 しかし、この間、お互いに食べたり食べられたりしてきた。食べてみたら意外においしいじゃないか。それだけでなく、栄養もあるしエネルギーも出るということが、実感を持って確かめられてきたのではないでしょうか。
 今日の皆さんの発言でも、その一つひとつに共闘のリアルな姿が示されました。ここで学んだことを持ち帰って、解散・総選挙がいつあっても戦えるような、草の根からの力を作り上げていこうではありませんか。
 2年以内には解散・総選挙必ずあります。心配しなくていいですよ。任期はあと2年しかありません。安倍さんは、「解散する、解散する」と脅そうとするでしょうけれど、恐れることはありません。「やれるものならやってみろ、返り討ちだ」という気概で、受けて立とうではありませんか。

 ここまでが閉会のあいさつでございます。今日の交流会には、兵庫革新懇と賛同団体の方およそ100人もの要員にご協力いただいております。スムーズな運営に対して、大きな拍手で感謝の意を表したいと思います。
 それでは、以上をもちまして全体会を閉じさせていただきます。ご参加、ご協力に心からお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
 まだ終わりではございません。これからは業務連絡でして、発言を希望されて発言できなかった皆さんには、ぜひ明日の分散会、分科会で発言をしていただくようお願いいたします。とりわけ市民と野党の共闘につきましては、私、分科会のコーディネーターもやっておりますので、どしどしご発言いただきたいと思います。明日の分散会、分科会も豊かな発言で大きく成功させましょう。どの分散会、分科会に参加するのか、名簿はロビーに掲示してあります。各県革新懇事務局にもお渡ししてあります。どの分散会に参加するのか、ご確認ください。
 なお、お帰りの際、感想文の提出にも、ぜひご協力いただきますようお願い申し上げます。それでは、以上で終わります。お忘れ物のないように気をつけてお帰りください。どうもご協力ありがとうございました。


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