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7月26日(日) 出てきたのはマニフェスト(政権公約)ではなく麻生首相の暴言 [首相]

 「政局」より「政策」だ、選挙でも問われているのは「政策」だ、と言いながら、いつまで経っても「政策」を出せない。「私の発言で誤解を招いた」と、両院議員懇談会で謝罪したご本人が、またも誤解を招くような発言を繰り返す。
 「一体どうなっているのだ、自民党は」と、言いたくなります。どうなってもいない、それが落城間近の自民党の本当の姿なのだ、ということなのでしょうか。

 今日の『日経新聞』に、「この逆風は選挙区を回ったくらいでは変えられない。ここまできたら日本をどうするのかという政策論議で真っ向勝負するしかない」という自民党の閣僚経験者の声が紹介されています。この言葉を紹介した坂本編集委員は、「自民党は勝機を見いだすのはかなり難しい状況だ。遅きに失した感は否めない。が、ほかに得策があるとも思えない」と書いています。
 自民党の閣僚経験者は「政策論議で真っ向勝負するしかない」と言い、『日経新聞』の編集委員は「遅きに失した感」はあるが、そうするしかないだろう、というのです。カギは、「政策論議」にあるということになります。
 ところで、その「政策」は、どこにあるのでしょうか。論議をするための材料がどこにも見あたりません。

 『日経新聞』の同じ面の右上に、大きく「政権公約 自民もたつく」という見出しが出ています。「自民党の衆院選のマニフェスト(政権公約)づくりが『麻生降ろし』を巡る党内の混乱のあおりで難航している。……完成版の公表時期も8月にずれ込む可能性が出てきた」というのです。
 何ですか、これは? 「政策論議で真っ向勝負するしかない」と言いながら、その中心になるべき「マニフェスト(政権公約)」がまだできていないというのは?
 今でも「遅きに失した」と言われているのに、さらに1週間ほども遅れるというのです。これで、「真っ向勝負」になるのでしょうか。

 この記事が「『麻生降ろし』を巡る党内の混乱」と書いているように、自民党は分裂状態で選挙に突入しようとしました。それを収めたのが、両院議員懇談会での麻生首相の反省と謝罪でした。
 自己の発言や政策のブレが政治への信頼を損ねたとして、両院議員の前で謝ったのです。目に涙を浮かべての訴えにほだされたのでしょうか、反麻生の急先鋒だった中川秀直元幹事長も握手をして矛を収めました。
 ところが、またも、麻生首相の発言が問題になっています。横浜市内で開かれた日本青年会議所(JC)の会合であいさつし、次のように発言したからです。

 全人口の約20%が65歳以上、その65歳以上の人たちは元気に働ける。いわゆる介護を必要としない人たちは実に8割を超えている。8割は元気なんだ。
 その元気な高齢者をいかに使うか。この人たちは皆さんと違って、働くことしか才能がないと思ってください。働くということに絶対の能力はある。80(歳)過ぎて遊びを覚えても遅い。遊びを覚えるなら「青年会議所の間」くらいだ。そのころから訓練しておかないと、60過ぎて80過ぎて手習いなんて遅い。
 だから、働ける才能をもっと使って、その人たちが働けるようになれば納税者になる。税金を受け取る方ではない、納税者になる。日本の社会保障はまったく変わったものになる。どうしてそういう発想にならないのか。暗く貧しい高齢化社会は違う。明るい高齢化社会、活力ある高齢化社会、これが日本の目指す方向だ。もし、高齢化社会の創造に日本が成功したら、世界中、日本を見習う。

 「働くことしか才能がない」とは何ですか。このような言葉は、人を馬鹿にするときに使うものです。それ以外の使い方があるなら教えていただきたいものです。
 この発言について野党は一斉に批判し、麻生首相は「私の意図は正しく伝わっていない。申し上げたいのは、日本に元気で活力がある高齢者が多いということ。社会参加してもらい、働く場をつくる。それが活力ある明るい高齢化社会だ」と釈明しています。
 それなら、初めからそう言えばよいでしょう。どうして、「働くことしか才能がないと思ってください。働くということに絶対の能力はある。80(歳)過ぎて遊びを覚えても遅い」などと言ったのでしょうか。

 麻生首相は、普段からこういう風に考えている人だからでしょう。だから、思わず口をついて出てしまうのです。
 いかに麻生さんでも、言って良いことと悪いことの区別はつくはずです。こう言えば反発を招くということも分かるはずです。
 しかし、普段から頭の中にあるから、調子に乗ってしゃべっていると、つい外に出てしまう。話を面白くしよう、笑いをとろうという意識と生まれながらに身に付いた「見下ろし目線」が組み合わさると、往々にしてこのような、人を小馬鹿にし、侮辱するような発言になってしまうのです。

 解散から投票まで40日という最長期間を設定し、「ほとぼりが冷める」のを待つ作戦だったと思われます。しかし、これは逆に作用するかもしれません。
 ダムの堤防が決壊して流れ出した水は、時間が経てば経つほど、その勢いを増すからです。まして、麻生首相や細田幹事長などの「失言」や「暴言」が飛び出せば、どんどん水かさが増えることになるでしょう。

 逆風が吹き荒れているにもかかわらず、戦うに武器なく、指導部は相手に攻撃材料を提供するという体たらくです。選挙区に戻った自民党の前議員や候補者は頭を抱えているにちがいありません。