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12月29日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月29日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「コロナ後手後手対応の元凶 これ以上の五輪固執は命取り」

 英国で見つかった変異種は未知の部分が多いが、感染力が強いとされる。24日から英国からの入国者の制限を強化したが、変異種は欧州だけでなく北米でも発見されるなど世界各国に“飛び火”していて、英国以外から上陸する恐れも指摘されていた。今さら全世界を対象に出入国緩和を停止したところで、どれだけの効果があるのか分からない。

 しかも、中国、韓国、タイなど11カ国を対象としたビジネス関係者の往来は引き続き認めるというのだ。

 「政府が国民の不安の声をよそに出入国制限の緩和を進めてきたのは、来夏の東京五輪開催のためでしょう。海外から人が入ってきても大丈夫だという実績を作りたかった。2月の第1波で震源地の中国からの渡航制限が遅れたのと同様に、インバウンド目当ての思惑もある。『Go To キャンペーン』もそうですが、すべてが業界がらみの利権と五輪優先で、感染症防止対策は中途半端なのです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」も28日から全国で一時停止となったが、それも来月11日までの短期間で、帰省や年末年始の旅行による人の移動を多少、抑えようというだけだ。

 「菅政権はGo To トラベルを早く再開したいだけでなく、来年6月まで延長することを決めて、第3次補正予算案に来年6月までの延長経費として1兆円以上を計上しています。
 五輪を開催するためには、人の移動が制限される状況であってはまずいのだろうし、五輪関連の需要につなげる意図もあるのでしょう。しかし、感染拡大が止まらない現状を見れば、五輪開催に固執するのはどうかしていると思います。五輪ありきではなく、国民の命や安心を優先すべき局面です。世論調査でも大多数の国民が延期か中止を望んでいる。五輪のためにコロナ感染拡大に目をつぶってきた政府の対応は、一般国民の感覚とかけ離れています」(五十嵐仁氏=前出)

 25日の「スポーツ報知」が、東京オリ・パラ組織委員会の複数の理事らが、開催に慎重論を訴えていることを報じていた。

 世界中での新型コロナ感染拡大の状況を踏まえ、「五輪を開くには状況が悪すぎる。不安と心配の方が大きく、国民の賛同が得られない」と厳しい見方を示したという。


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12月28日(月) 2020年の仕事 [日常]

 さんざんな1年でした。2月頃に新型コロナウイルスの感染が始まり、健康と生命、生活と営業の危機が拡大したからです。「緊急事態宣言」によって予定されていた講演などは軒並み中止となり、「不要・不急な外出」を控え「三密」を避けるために、様々な集まりも自粛の波に飲み込まれました。
 1月の八王子市長選挙は何とか通常通り取り組めたものの、7月の都知事選挙はコロナ禍による様々な制約の下での選挙となりました。私は市長選挙で白神ゆりこ候補の選挙母体の共同代表となり、都知事選では宇都宮健児候補を支援する革新都政の会の呼びかけ人として運動に関わりました。どちらの選挙も残念な結果でしたが、市民と野党の共闘の地方自治体版としての実績を残すことができたと思います。
 その激動の2020年も、間もなく暮れようとしています。

 さて、今日は仕事納めです。例年のように、1年間の仕事をまとめさせていただきたいと思います。
 今年は著書が1冊、論攷・インタビュー・談話・コメント・書評などが28本、講演・報告などが20回、街頭演説・あいさつなども20回でした。夕刊紙『日刊ゲンダイ』の記事内でのコメント掲載は100回を超えて106回に上りました。
 
(1)著書
・五十嵐仁『日本を変える―「新しい政治」への展望』学習の友社

(2)論攷・インタビュー・談話・コメント・書評など(28本)
・「2020年―被爆75年を核兵器禁止・廃絶、非核の政府実現への歴史的転換点に」『非核の政府を求める会ニュース』第345号、2019年12月15日・2020年1月15日合併号
・「書評:田辺俊介編著『日本人は右傾化したのか』勁草書房」『しんぶん赤旗』1月24日付
・「首相としての資質問われる」『しんぶん赤旗』2月15日付
・「都政を変えれば日本は変わる」『全国革新懇ニュース』第418号、4月10日付
・「危機に真正面から向き合う」『しんぶん赤旗』2020年4月18日付
・「後手後手招いた政府の姿勢 知事選は暮らし守る選択」『東京民報』第2134号、5月17日付
・「現代の問題点、教えてくれる」『しんぶん赤旗』5月29日付
・「コロナ禍の下で生存権を守るための都知事選挙」日本科学者会議の『東京支部つうしん』No.632、2020年6月10日付
・「都政転換 人権派でこそ」『しんぶん赤旗』6月11日付
・「都知事選 湧きあがる共闘」『しんぶん赤旗』6月22日付
・「安倍首相 また任期中に改憲」『東京新聞』6月23日付
・「安倍政権のコロナ対策を検証する」『学習の友』No.803 、2020年7月号
・「都知事選 「同じ思い」で本気の共闘」『しんぶん赤旗』7月12日付
・「東京都知事選を振り返って―来るべき総選挙に向けて市民と野党の共闘が大きく発展」『生きいき憲法』No.68、2020年7月28日付
・「東京都知事選の結果と今後」『東京革新懇ニュース』第454号(7月・8月合併号)、8月5日付
・「ただちに臨時国会召集を」『しんぶん赤旗』8月18日付
・「コロナ禍、歴史的な野党連合政権の実現を!」『神奈川革新懇ニュース』No. 229、2020年9月号
・「安倍総理の退陣は日本保守終末の始発点になる」韓国のウェブメディア《NEWSTOF》2020年9月8日付
・「官房長官ふさわしいのは」『東京新聞』9月10日付
・「「安倍政治」の継続を許さず野党共闘で連合政権実現を」『全国商工新聞』第3426号、2020年9月14日付
・「菅新政権をどう見るか―安倍なき「安倍政治」を受け継ぐ亜流政権」『けんせつ』第2331号、2020年10月2日付
・「学術会議への人事介入」『しんぶん赤旗』10月5日付
・「ポスト安倍時代における憲法闘争の課題」『生きいき憲法』No.69、2020年10月14日付
・「安倍政権とは何だったのか―7年8ヵ月の総括」『学習の友』2020年11月号
・「書評:上西充子著『呪いの言葉の解きかた』晶文社、2019年」『社会政策』第12巻第2号、2020年11月号
・「日本学術会議人事介入事件の本質」『東京革新懇ニュース』第457号、2020年11月5日号
・「大原社会問題研究所の思い出―『日本労働年鑑』の編集業務を中心に」『大原社会問題研究所雑誌』第745号、2020年11月号
・「日本政治の現状と変革の展望」『民主文学』2021年1月号
・以上のほか『日刊ゲンダイ』の記事内でのコメント掲載106回

(3) 講演・報告など(20回)
・1月12日:全商連南関東地域新春決起集会「政治経済の動向と民商運動への期待」
・1月26日:埼玉土建久喜幸手支部旗びらき「政治経済の動向と政治転換への課題」
・2月15日:茨城県学習協議会「元気になれる、政治変革の見通しの話」
・2月23日:日野革新懇「野党連合政権の展望と市民運動の役割」
・3月10日:江東革新懇「市民と野党の共闘で小池都政の転換を」
・4月11日:神奈川革新懇「野党連合政権と革新懇運動」
・5月18日:三多摩革新懇「コロナ禍への対応と都知事選の課題」
・6月15日:九条の会東京連絡会「憲法を活かして命とくらしを守る都政の実現を」
・7月22日:戦争させない江戸川の会「コロナ禍の下で安倍政権を終わらせるために」
・7月25日:戸塚区革新懇「コロナ禍の下での革新懇の課題と展望」
・7月25日:金沢区革新懇「安倍政権の終焉と野党連合政権」
・8月22日:埼玉オール1区連絡会「総選挙に向けて市民と野党の共闘にどうとりくむか」
・9月18日:九条の会東京連絡会「ポスト安倍時代における憲法闘争の課題」
・9月26日:奈良革新懇「ポストコロナの時代と国民が主人公の新しい政治―革新懇運動の出番がやって来た」
・10月16日:三多摩革新懇「菅新政権をどう見るか」
・10月24日:69九条の会(高田高校)「ポスト安倍の下で改憲問題にどう取り組むか」
・10月31日:小平総がかり行動実行委員会「「アベ政治」継承の菅政権で日本はどうなる?―コロナ禍の中、私たちの命と暮らし、教育を守るには」
・11月14日:福生革新懇「菅政権の性格と革新懇の役割」
・11月15日:東久留米市民連合「野党連合政権樹立と「新しい政治」への展望」
・11月21日:郡山革新懇「市民と野党の共闘で新しい政治を実現しよう」
・12月20日:いちご市民の会(平塚)「日本政治の現状と政権交代の展望」

(4) 街頭演説・あいさつ・発言など(20回)
・1月5日:八王子市長選街頭演説
・1月7日:八王子市長選白神ゆり子記者会見であいさつ
・1月9日:新宿駅西口で演説
・1月11日:八王子市長選白神ゆり子事務所開きであいさつ
・1月16日:八王子市長選街頭演説
・1月19日:八王子市長選街頭演説
・2月21日:八王子労連30周年記念レセプションであいさつ
・2月24日:革新都政をつくる会呼びかけ人会議であいさつ
・3月7日:東京革新懇事務局(室)長会議であいさつ
・3月18日:革新都政をつくる会野党への要請行動であいさつ
・6月3日:革新都政をつくる会呼びかけ人会議であいさつ
・6月9日:新宿駅西口で演説
・6月13日:労働者教育協会総会で発言
・6月16日:新宿駅西口で都知事選について訴え
・6月25日:都知事選に向けての集会であいさつ
・6月27日:新宿駅南口で演説
・6月30日:全国革新懇・東京革新懇合同集会であいさつ
・10月19日:新宿駅西口でスピーチ
・12月11日:新宿駅東口でスピーチ
・12月19日:八王子駅北口でスピーチ


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12月27日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月27日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「満天下にさらされたデタラメ 安倍菅コンビはもう逃げ切れない」

 そもそも安倍は14年から不記載を始めた動機を聞かれても「当時の責任者に接触できない」と説明を拒否。野党側は「同年に小渕優子元経産相の政治団体の政治資金規正法違反事件が発覚。その影響もあったのでは」とみているが、安倍の念頭には真相を隠すための方便しかないのだろう。

 「いつも通り『真摯に反省』なんて口先だけ。公的行事の『桜を見る会』の私物化や、118回も嘘を繰り返して国会を欺き、貴重な審議時間を空費させたことへの反省の色もない。全く誠実さに欠けた説明でした。『みそぎ』のポーズを示すだけのセレモニーに国会を利用したに過ぎず、茶番としか言いようがありません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 25日はくしくも、東京地検特捜部が衆院議員を辞めたばかりの吉川貴盛元農相の議員会館や札幌市にある事務所などをガサ入れ。容疑は収賄で、大臣在任中に鶏卵大手「アキタフーズ」(広島・福山市)の前代表から計500万円を受け取った疑い。うち300万円は大臣室で2度にわたって現金で受領したというから、モラルもヘチマもない。前出の五十嵐仁氏はこう言った。

 「慢性心不全で入院中の吉川氏は、特捜部の聴取に『現金は返すつもりだった』と開き直ったそうです。バレなければ、ずっと預かったままだったのか。全てを『秘書のせい』にして、都合が悪くなれば『病院に逃げ込む』が自民党の常套手段。こんな言い分が通じると思っているほど、国民をバカにしている。折しも、賭けマージャン問題の賭博罪で告発され、不起訴処分となった黒川弘務元東京高検検事長に、検察審査会が『起訴相当』を議決。『規範意識が鈍麻している』と厳しく批判しました。かような人物を“官邸の守護神”として検事総長に担ぎ上げようとした菅首相や安倍氏にも同じ言葉はあてはまります。長期政権のウミがたまり、上から下まで『規範意識が鈍麻』した面々に政権を任せるのは限界です。いっそう腐敗が進むだけです」


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12月25日(金) 安倍前首相がこれで逃げおおせると思っているとしたら大間違いだ [スキャンダル]

 茶番ですね。桜を見る会前夜祭の会費補填問題です。
 昨日の安倍前首相の謝罪会見を見ました。公設第一秘書がやったことで、自分は何も知らなかったということで逃げおおせるつもりのようです。
 結果的に国会で偽りの証言をしていたことを謝罪しました。しかし、それは「結果的に」ではなく、意図的だったのではないでしょうか。

 安倍前首相は見積もり書などの発行はなかった、明細書についてホテル側は「営業秘密」のため開示できないと述べていると説明し、質問にに立った無所属の小川淳也議員がホテル側から書面で回答をもらうように求めたことに対して「私がここで話しているのがまさに真実です」と強調し、「いい加減にやっているんだと決めつけるのであれば、もうコミュニケーションがみなさんとは成り立たない」と述べて文書での回答を拒みました。
 そして、こう言ったのです。「私がうそをついているというのであれば、うそをついているということを説明するのはそちら側ではないのか」と。
 今ではここで安倍前首相が述べたことの全てがうそだったことが明らかになったわけですが、そんなことはホテル側に確認すればすぐに分かったはずです。自らの潔白を証明するはずの確認を、なぜホテル側に対してしようとしなかったのでしょうか。

 安倍前首相が秘書の「補填はしていない」という説明を信じたのであれば、それを裏付けるのはたやすかったはずです。ホテルニューオータニとANAインターコンチネンタルホテルから明細書を取り寄せれば済んだのですから。
 秘書の説明が本当であれば、そこには後援会事務所が補填を行っていない事実が書かれていたはずです。それで野党の追及をかわすことは簡単にできたのではありませんか。
 しかし、安倍首相は自分の無実を証明できるはずの明細書を取り寄せようともしないで、「明細書はない」と虚偽答弁を繰り返したのです。秘書の「補填はしていない」という言葉を本当だと思ったのであれば、なぜ自らの潔白をはっきりと証明できる明細書を「ない」と言い張って文書での回答を拒んだのでしょうか。

 実際には、明細書も領収書もありました。そこには安倍後援会事務所が4年にわたって費用を補填していた事実が書かれていました。
 ホテル側から明細書を取り寄せなかったのも、文書での回答を求めなかったのも、この事実が明らかになるのを恐れたからではないでしょうか。会費の不足を補填していたことに気づいており、それが明るみに出ては困るから、ホテル側への照会をかたくなに拒んだのではないでしょうか。
 安倍前首相が国会で明言した「事務所は関与していない」「明細書はない」「差額は補填していない」という三つの答弁は事実と異なっていました、衆院調査局によれば、安倍前首相はこれらのうその答弁を少なくとも118回行っていたことが明らかになっています。

 東京簡裁は政治資金規正法違反(不記載)で後援会代表の配川博之公設第一秘書に罰金100万円の略式命令を出し、安倍前首相を嫌疑不十分で不起訴としました。これで一見落着としたいのかもしれません。
 しかし、刑事告発した法律家団体は特捜部の処分を不服とし、検察審査会への審査申し立てを検討しています。賭けマージャン問題で不起訴となった黒川元東京高検検事長にたいして検察審査会は「起訴相当」と議決しました。
 安倍前首相に対しても、検察審査会が同様の決定を行うにちがいありません。これで逃げおおせると思ったら大間違いですよ、安倍さん。

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12月23日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月23日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「悪夢のクリスマス、暗黒の正月 菅政権“支持率2割台”も目前」

 昨夜(21日)、TBS系の「NEWS23」に出演(収録)した菅首相は、世論調査で内閣支持率が急落していることを問われ、「新型コロナ対策で結果を出すことが大事だ。やれることは全てやるという意識で、先頭に立って取り組む」と強調していた。

 だが、そんな口先アピールはもはや通用しない。9月16日の首相就任会見で、「今、取り組むべき最優先の課題は新型コロナウイルス対策です」と豪語していたのに、何もしなかった。コロナ対策そっちのけでやってきたのは、学者パージと安倍隠しだけだ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「安倍政権以上に酷い政権であることを国民に分かりやすく示した3カ月だったと思います。就任早々、日本学術会議の新会員候補6人を任命拒否して、気に入らない人を排除し、強権を振りかざした。そして、排除した理由を説明しないだけでなく、説明する答弁能力もない。トップリーダーとしての能力や資質に疑問符が付きました。一方で、安倍政権から続く、森友問題や桜を見る会の問題については、再調査することなく、フタをする。桜問題に捜査のメスが入っても、当時、官房長官として安倍氏をかばってきたのに、説明責任を果たそうとしない。さらには、コロナ無策の結果、『勝負の3週間』を『敗北の3週間』にして、『書き入れ時の年末年始だけは』という国民の切なる願いを踏みにじった。この首相はダメだという失望が支持率急落に表れています」


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12月21日(月) 拙著『日本を変える―「新しい政治」への展望』が刊行された [日常]

 拙著『日本を変える―「新しい政治」への展望』が刊行されました。出版社は学習の友社です。
 表題は大きなものですが、本そのものは124頁で本体1000円+税というコンパクトな仕上がりになっています。気軽に手に取っていただけるのではないでしょうか。

 この本は、総選挙での野党共闘を後押しし、市民と野党との連携によって連合政権を樹立することを目指したものです。そうすることで「日本を変える」ための「新しい政治」を実現することを展望しています。
 本を書き始めた頃は菅新政権に対する内閣支持率が高く、自民党内に早期解散論がありました。もし解散されれば、本を出した途端に古くなってしまいます。
 しかし、内閣の顔ぶれを見て、菅新首相は実務型の堅実な政権を目指しているのではないかと思い、早期解散はないと判断しました。世論へのアピールよりも、着実に実績を積むことで支持を安定させようとしたのだと思います。

 菅首相には、それが自分には可能だという自負も自信もあったにちがいありません。だからこそ、携帯電話の料金引き下げや不妊治療の保険適用拡大、デジタル庁の新設などの実利政策に力を入れてきたのです。
 それから3ヵ月が経ち、ようやく本が形になり出版されました。「行き詰まった前政権を『継承』すれば、同じように行き詰まることになる」と本書で警告したように、菅内閣は数々の失政によって支持率を急落させ、新型コロナウイルスの感染も広がり続け、とてもすぐに解散できるような状況ではなくなりました。
 解散・総選挙は来年4月以降に延び、9月になる可能性が最も高いと見られています。そうなると、本書の「賞味期限」もずっと先に延びることになり、内閣支持率の動向次第では、菅政権の「賞味期限」の方が先に切れてしまうかもしれません。

 いずれにせよ、来るべき解散・総選挙は「日本を変える」ための「天下分け目の決戦」となるにちがいありません。その総選挙で市民と野党の共闘が功を奏し、野党連立政権が樹立されること、そのために本書が役立つことを願っています。
 そうすることでしか、「日本を変える」ことはできません。「新しい政治」への展望もそこにあります。
 本書を手にとって、「時代の転換点にさしかかった日本の政治を本格的に変える必要性と可能性、あるべき政治と社会の姿、市民と野党の共闘による連合政権樹立に向けての展望」をじっくりと味わっていただければ幸いです。ということで、以下に本書の「はしがき」をアップさせていただきます。

 はしがき

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、人々の命とくらしが脅かされる深刻な事態が生じました。この未曽有の危機に対して、安倍首相は効果的な対策を講ずることができず、経済再建の展望も失って辞任に追い込まれました。直接の理由は潰瘍性大腸炎という持病の再発だとされていますが、その背景には政権の迷走と行き詰まりがあります。
 この安倍政権を官房長官として支えてきたのが、後を継いだ菅義偉新首相です。「安倍政治」に対して共同責任を負うべき菅首相は「安倍政権の継承」を掲げ、その主要な自民党役員と閣僚を留任・再任させて骨格を維持しました。行き詰まった前政権を「継承」すれば、同じように行き詰まることになるでしょう。
 菅新政権の前途を見通し、それに代わる「新しい政治」を展望するためにも、コロナ禍によって明らかにされた現代社会の脆弱性、安倍暴走政治の問題点とそれが残した「負の遺産」を検証することが必要です。そうすることでしか、希望ある未来の扉を開くことができない時代になってきているのですから。
 本書を通じて、「安倍政治」に代わるべき「新しい政治」の姿を明らかにし、日本国憲法の理念と条文が政治と生活に活かされる「活憲の政治」に向けての道すじを示したいと思います。本書によって、時代の転換点にさしかかった日本の政治を本格的に変える必要性と可能性、あるべき政治と社会の姿、市民と野党の共闘による連合政権樹立に向けての展望をつかんでいただければ幸いです。
 「新しい酒」は「新しい革袋」に。「新しい政治」は「新しい政権」によって担われなければなりません。そこにこそ、希望が生まれます。生きるに値する政治と社会を生み出すために、共に一歩を踏み出そうではありませんか。「日本を変える」ために。
 注目されていた大阪都構想についての住民投票では反対が多数になり、アメリカの大統領選挙ではトランプ大統領の再選が阻止されました。歴史の大きな転換点を目撃しているような気がします。民主主義の勝利です。
 歴史を変える瞬間に我が身を投ずることによって、これからの歴史を新たに紡ぐことができるのではないでしょうか。そのために歩み出そうではありませんか。これまでにはなかったような「新しい政治」を作るために。


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12月20日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月20日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「「桜疑惑」安倍氏は喚問、菅首相も吊し上げなければダメだ」

 緊急事態宣言下での「賭けマージャン」という文春砲のスクープで失脚することがなければ、今ごろ黒川氏は検事総長に就き、安倍の「桜捜査」も吉川元農相が大臣室で現ナマをもらった「鶏卵捜査」も、闇に葬られていただろう。

 安倍の虚偽答弁が白日の下にさらされることもなかった。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

 「国権の最高機関における安倍前首相の虚偽答弁は33回に上る。それだけでも国会議員としての資格に欠ける。議員辞職に値しますし、当然、証人喚問が行われるべきです。説明すると言うのなら、これまでのような嘘や言い逃れといった前科を繰り返させない形式が絶対です。安倍前首相の虚偽答弁を確かめることなくうのみにして、同様に国会を欺いてきた菅首相も責任重大。コロナ感染拡大の中での大人数会食など、国民の神経を逆なでするような問題行動ばかりで、一国のトップリーダーとしての自覚が足りない。安倍前首相とともに、過去と現在の責任を取って、辞任してもらいたい」

 茶番の国会招致は絶対に許されない。国民の決起が必要だ。


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12月18日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』12月17日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「GoTo停止「菅の決断」国民は笑えない“裸の王様の独り相撲”」

 東大などの研究チームが、「トラベル」利用者の新型コロナ発症リスクは2倍との調査結果を公表したのは今月7日。菅にまだ「移動によって感染は拡大しない」と言わせている官僚たちも、どうかしている。

 忖度なのか、菅の恫喝が恐ろしいのか。周囲の政治家も同様だ。一昔前の自民党なら「Go Toを止めろ、止めるな」で百家争鳴。侃々諤々の議論を戦わせ、必ず菅の耳にも届いたはず。今は官僚も政治家も閣僚ですら、右にならえで菅にひれ伏すのみだ。

 FNNによると、菅周辺は「全国で一時停止することで、感染との因果関係がないことがハッキリするだろう」と大放言。菅に媚びるのにも程がある。そんな実験に国民を使うのは「やめてくれ」だ。

 「今の菅首相は『裸の王様』です。二階幹事長を背後につけて党内にニラミを利かせ、官僚には人事権を振りかざして忖度を強制。メディアには裏で圧力という強権的手法で国民は騙せても、ウイルスは騙せません。1強体制にあぐらをかいた恐怖政治がアダとなり、誰も進言できず菅首相の孤立は深まっているように映ります。日本学術会議や専門家の科学的知見を軽んじる反知性主義も相まって、失政の連続。菅首相がたった一人で社会を未曽有の混乱に陥れています」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 裸の王様の「独り相撲」に国民は笑えない。頑迷固陋の首相とひれ伏すだけの閣僚、官僚たち。場当たりコロナ対策で振り回される国民は今こそ退陣を迫るべき時だ。


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12月17日(木) 日本政治の現状と変革の展望(その4) [論攷]

〔以下の論攷は、日本民主主義文学会の『民主文学』2021年1月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

4、変革への鳴動

 市民と野党の共闘をめぐる新しい動き

 菅新政権の発足と同時に、立憲民主党と国民民主党が共に解党し、それぞれ立憲民主党と国民民主党に再編されました。これはかつての民主党や民進党の再現ではありません。市民と野党の共闘を推進する立場に立ち、新自由主義と反共主義から抜け出した150人を擁する野党第一党の誕生を意味しています。
 この過程で大きく変わったのは、労働組合ナショナルセンターである連合の立ち位置です。民進党を分裂させた「希望の党騒動」のとき、神津里季生連合会長は小池百合子都知事や前原誠司民進党代表と共に分裂を画策しました。しかし、今回は国民民主党の玉木雄一郎代表を説得し、新党結成に協力する立場に立ちました。
 このような形で連合が共産党などと共に行動するのは、リーマンショック後の年越し派遣村以来です。今回はコロナ禍の下での方針転換です。いずれの場合も、労働者の置かれている状況が急速に悪化し、賃金と雇用条件の低下によって生じた労働組合の危機が背景にあります。
 派遣村で生じた共同への胎動は脱原発運動に受け継がれ、特定秘密保護法や安保法制、「共謀罪」法反対運動などへと発展してきました。とりわけ、2015年の安保法反対運動の中で沸き上がった「野党は共闘」という声は、翌2016年2月の民主党・日本共産党・維新の党・生活の党・社民党による参院選での共闘に向けた「五党合意」に結実します。
 その後、この市民団体と野党との共闘の流れは、紆余曲折を経ながら太く大きくなり、共闘志向の野党第一党を生み出すまでに発展してきました。こうして新たな「受け皿」が形成され、共闘をめぐる新たな条件が生まれたのです。

 政策合意の発展

 新たな発展を遂げたのは政策合意においても同様です。2020年9月19日、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は「立憲野党の政策に対する市民連合の要望書」を発表し、立憲民主党・日本共産党・社民党・国民民主党・れいわ新選組などに対して申し入れました。
 これは4本柱15項目で、「いのちと人間の尊厳を守る『選択肢』の提示を」との副題が付けられ、「利益追求・効率至上主義(新自由主義)の経済からの転換」「消費税負担の軽減」「原発のない社会と自然エネルギーによるグリーンリカバリー」「持続可能な農林水産業の支援」などを掲げています。2019年の参院選前に市民連合と5野党・会派が合意した13項目の「共通政策」をさらに発展させたものです。
 このような政策合意の出発点は前述の2016年の「5党合意」でしたが、この時は4項目にすぎず、政策的には「安保法制の廃止」だけが掲げられていました。翌年の総選挙を前にした2017年9月26日、市民連合は再び「野党の戦い方と政策に関する要望」を出し、さらに2019年5月にも「共通政策」を提示し、合意の幅はさらに広がりました。
 今回の「要望書」は分量も増え、内容的にも一段と充実したものとなっています。1年以内に確実に実施される総選挙という「天下分け目の合戦」に向けての大きな旗印です。市民と野党の共闘による政権交代に向けて新たな選択肢を示すものとなるでしょう。

 解散・総選挙に向けて

 菅新首相が誕生した9月16日、野党の側にも注目すべき動きがありました。衆院の首班指名選挙で、立憲・国民・共産・社民・れいわの野党が初めて立憲民主党の枝野幸男代表に投票したのです。来るべき野党連合政権が、おぼろげながら姿を現した瞬間でした。
 次の総選挙で、これらの野党が力を合わせて多数派になれば、新しい連合政権を樹立することができます。その可能性は、市民と野党の共闘の核となる立憲民主党という新しい大きな塊が誕生したことで、一段と現実味を増しています。
 しかも、一方の菅新政権は新自由主義に基づく「自助」型の自己責任社会の旗を掲げ、他方の立憲民主党などの野党は新自由主義から抜け出して「いのちと暮らしを守る」社会の実現を提起しています。将来社会のビジョンをめぐる対抗軸も鮮明になりつつあります。
 今後は市民連合の「要望書」を基にした政策合意を図りつつ、小選挙区での統一候補の擁立をめざさなければなりません。一時的な選挙共闘ではなく、政権を共にすることを合意して政権交代をめざす決意をはっきりと示す必要があります。
 このようにして初めて、野党連合政権樹立に向けての本気度を有権者に示すことができるのではないでしょうか。「新しい政治」に向けての希望を生み出し、政権交代の「受け皿」として選択を問う選挙とし、投票率を上げられれば野党共闘の勝利を生み出すことができます。

 むすびに代えて―コロナ後に目指すべき「新しい政治」

 新型コロナウイルスの急速な拡大によって、世界は大きな問題に直面しました。日本も例外ではありません。このような感染症の拡大に対して、ひたすら市場の拡大を進めて環境を破壊する資本主義や、経済効率最優先で自己責任社会を生み出してきた新自由主義の害悪が明瞭になりました。
 このような社会システムの下ではセーフティーネットが破壊され、社会の維持と運営に不可欠な労働者たち(エッセンシャルワーカーズ)が虐げられ、人々の健康と生命、生活と生業を守ることができないことが明らかになりました。このような社会の脆弱性を克服するためには社会構造の大転換(パラダイムシフト)が必要になります。
 そのような転換のための見取り図は、すでに存在しています。日本国憲法を政治と暮らしに活かすことによってこそ、人権を保障し、国民のいのちと暮らしを守る「新しい政治」を実現することができるからです。「活憲の政治」こそ、コロナ後の日本が目指すべき青写真であり、「新しい政治」の姿にほかなりません。
 そのためには、安倍前首相がめざし、菅首相も受け継いでいる改憲策動を最終的に打ち砕き、憲法を守り活かすことのできる新しい政権を樹立する必要があります。市民と野党の共闘による連合政権の樹立です。来るべき総選挙が、そのための大きなチャンスとなるにちがいありません。菅政権を、最後の自公政権とするチャンスに。(2020年10月31日脱稿)

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12月16日(水) 日本政治の現状と変革の展望(その3) [論攷]

〔以下の論攷は、日本民主主義文学会の『民主文学』2021年1月号、に掲載されたものです。4回に分けてアップさせていただきます。〕

3、必要なのは継承ではなく大転換

 山積する難問

 菅新政権の前途には難題が山積しています。本来であれば、政権交代を機に新たな方針を打ち出して新政権への期待を高めることもできたはずです。しかし、今回は「振り子の論理」は働かず、政策転換のチャンスを自ら放棄してしまいました。
 安倍前首相が得意とし、一般的には評価の高い外交ですが、実態は散々なものです。日米関係を重視するからといって、一方的に従う必要はないはずです。自ら譲るばかりの隷従外交から対等平等な関係に変え、外交・安全保障政策を刷新することが求められています。
 具体的には、日米地位協定の改定、沖縄・辺野古での土砂投入の中止、武器爆買いの見直しなどに着手すべきです。北東アジアでの軍縮・緊張緩和の提案、韓国をはじめとした周辺諸国との関係改善を進めなければなりません。
 陸上イージスの撤回に当たって安倍前首相が談話を出して置き土産とした敵基地攻撃論の検討も大きな問題です。先制攻撃は国際的ルールや憲法、専守防衛の国是に反し、軍事技術的にも財政的にも実現不可能な妄想にすぎません。外交と話し合いによる安全保障政策へと大転換するべきです。
 全く前進しなかった拉致問題と北方領土問題の打開、核兵器禁止条約の批准などの課題にも取り組む必要があります。核兵器禁止条約の批准国が50カ国を超え、2021年1月に発効することが決まりました。唯一の戦争被爆国である日本政府は核兵器を違法とする国際条約に加わっていません。核保有国と同じ立場に身を置くことによって、世界に恥をさらしました。
 内政面では、コロナ対策を強化し、医療・保健・介護などのケア優先の社会に転換しなければなりません。非正規労働者や女性、外国人労働者など社会基盤の維持に不可欠な労働者たち(エッセンシャルワーカーズ)の役割をきちんと評価して差別をやめ、処遇を抜本的に改善することが必要です。
 消費増税とコロナ禍で大打撃を受けた経済を立て直すことも必要です。大企業と株主優遇から中小企業・地方重視の経済政策への転換が迫られています。賃上げや最低賃金の引き上げなどによる可処分所得の増大を図ることは急務です。年末に向けて職と食、住居を失う労働者、中小企業の倒産や廃業の激増が懸念されます。早急に手を打たなければなりません。
 政府は福島第一原発事故の放射能汚染水を太平洋に放出しようとしています。科学的根拠の乏しい独断専行で海洋汚染と風評被害を拡大する暴挙であり、直ちに中止すべきです。
 菅政権の目玉政策とされている携帯電話の料金値下げは民間企業の経営への介入です。不妊治療と新婚家庭への支援は少子化対策としての効果は薄いとの批判があります。デジタル化の推進にはマイナンバーカードの普及と監視社会化の推進、情報通信産業を成長産業とする狙いなどが隠されています。
 
 改憲の野望とジレンマ

 「首相の考え方は安倍政権を踏襲することが基本。憲法改正にまい進する意思表示と受け取っていただいて結構だ」。自民党憲法審査会の佐藤勉前会長は、後任の細田博之審査会長(前自民党憲法改正推進本部長)や衛藤征士郎本部長など、憲法関連の新たな体制についてこう強調しました。「安倍9条改憲」の基本路線に変更はないということです。
 衛藤新本部長は役員会冒頭のあいさつで「現在、議論中の『条文イメージ』は完成された条文ではない。よって党の改正原案を策定するために憲法改正原案起草委員会を立ち上げたい」と発言しました。その後、起草委員会は初会合を開いて年内に成案を取りまとめる方針を決めています。憲法論議の加速化に意欲を示したことになります。
 しかし、原案策定で自民が独走すれば野党の硬化を招きかねません。直後に新藤義孝自民党憲法改正推進本部事務総長が「一切これまでの方針に変更はない」と打ち消すなど、早くも足並みの乱れが生じています。安倍改憲路線には大きなジレンマがあり、それが解決されていないからです。
 強力な改憲推進体制を確立し、力づくで進めようとすれば野党や国民の警戒心を高めてしまい、丁寧にやろうとすれば時間がかかるというジレンマです。どちらにしても、思うようには進まないというのがこれまでの経過でした。
 そもそも、憲法は国の基本法です。改憲は禁じられていませんが、そうしようとするのであれば、幅広い国民の理解と与野党間の合意のもとに丁寧に行われなければなりません。国民の過半数以上が反対している9条改憲を、99条で憲法尊重擁護義務を負う安倍首相が先頭に立って強引に進めようとしたこと自体、初めから間違っていたのです。
 菅新政権でも改憲路線に違いがないのであれば、自民党案4項目に示されている9条への自衛隊の書き込みと緊急事態条項の新設という発議を阻止しなければなりません。また、特定秘密保護法、安保法制=戦争法、「共謀罪」を含む組織犯罪処罰法など違憲の疑いの濃い法律を廃止することも必要です。

 「負の遺産」と「負の資産」

 菅新政権は「安倍政治」が残した「負の遺産」も継承しました。政治の私物化として大きな批判を浴びた「森友・加計」学園疑惑、「桜を見る会」や河井夫妻の大量買収事件など、「安倍政治」の闇を支えてきたのが菅官房長官です。その人が正面に出てきたのですから、「負」の側面がさらに大きくなる恐れさえあります。
 菅氏は森友問題など疑惑解明に向けての再調査を拒み、官僚の忖度を強めた内閣人事局を見直さないばかりか、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と明言しました。また、総裁選で首相の国会出席について「大事なところで限定して行われるべき」だと主張し、できるだけ制限したいという意向をにじませました。
 森友疑惑や河井夫妻の事件については裁判が進行中で、新たな事実が出てくる可能性があります。事実、河井事件では買収された側の証言や森友事件でも新たな音声データが公開されたりしました。再調査を実施し、記録の保存と公文書管理の適正化を図り、政策形成過程の事後検証が可能なようにして官邸支配とマスコミ統制をやめさせなければなりません。
 しかし、事態は逆に進みそうです。菅首相の著書『政治家の覚悟』が新書版となって発売されましたが、単行本時の「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」と公文書管理の重要性を訴える記述があった章が削除されました。菅氏のオフィシャルブログには同様の記述が残されており、このような自分の見解まで隠蔽するのかとの批判を招いています。
 また、これまで以上に、マスコミ統制が強まる恐れが出てきました。新内閣の首相補佐官に柿崎明二元共同通信社論説副委員長が就任したからです。今後は「政策の評価・検証を担当」するようですが、本当の役割はメディア各紙の政治部長を牽制することではないかと見られています。
 菅新首相は安倍前首相以上に権力闘争に長けた陰険で狡猾な本性を示しています。安倍前首相の路線と手法を受け継ぎつつも、それとは異なる独自の政策と手法によって「安倍政治」の本質を継承しようとしているのです。「安倍政治」から引き継がれた「負の遺産」と菅首相による独自の「負の資産」の両方が絡み合い「負のスパイラル」が加速しそうです。
 今必要なことは、行き詰まった前内閣の路線を継承することではありません。コロナ禍の広がりによって明らかになったのは、日本政治の根本的な刷新によって新たな希望を生み出すような大転換が求められているということです。そして、そのような転換をもたらす変革への鳴動も始まっています。

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