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6月30日(木) 『しんぶん赤旗』に掲載された談話 [コメント]

〔以下の談話は『しんぶん赤旗』6月28日付に掲載されたものです。〕

 共産党ここに期待 今こそ〝ソフトパワー〟

 自民党や日本維新の会などの改憲勢力は、国民がロシアのウクライナ侵略に浮足立って軍拡や改憲を支持していると思っているかもしれませんが、必ずしもそうではありません。逆に、「軍事対軍事」ではない、戦争に頼らない形で平和や安全を保つにはどうしたら良いのかと、真剣に考えている人たちが生まれています。
 軍事というハードパワーではなく、戦争を起こさないための力を生み出す非軍事の〝ソフトパワー〟の抑止力。これこそが今必要な安全保障の構想です。
 軍事的抑止力は相手の恐怖を引き起こせるかどうかにかかっていますが、ソフトパワーの抑止力はお互いに仲良くなることで生まれます。ほとんどの政党が軍事的な「拡大抑止」に頼る一方で、日本共産党が9条を生かした平和外交と対話で東アジアに信頼関係を築こうと呼びかける姿は際立っています。
 ベトナム戦争でもイラク戦争でも自衛隊が「9条のバリアー」に守られ、専守防衛に徹して国際的な信頼を得てきたという歴史的事実を、説得力を持って語ってほしい。
 物価高で多くの国民が苦しむなか、政府は「軍事費倍増」などを打ち出していますが、倍増というなら所得倍増、賃上げこそ必要です。現実を直視できない政府に壊されつつある日本を、共産党に立て直してもらいたい。

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6月29日(水) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月29日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「物価高にも食料危機にも打つ手なし G7の“空しい結束”」

■税金はまず自国民のために

 西側政府はG7の場で、ロシアの外貨建て国債の利払いが猶予期限の26日までになかったことについて、「デフォルト(債務不履行)」に該当するとの認識を示したが、通貨ルーブルは値を戻し、27日のモスクワ市場ではプラス圏に浮上した。西側の制裁はどれだけ効果があったのか。

 そんな空しいG7が28日に閉幕し、岸田はその足で29日に開かれるNATO首脳会議に出席するため、スペインのマドリードに飛ぶ。

 「岸田官邸は、日本の首相として初めてNATO首脳会議に参加するとアピールすることが選挙にプラスになると計算していたのでしょうが、有権者の関心は安全保障から物価高に移ってきている。西側各国は物価高問題が政治を動かしています。日本でも思いのほか早く梅雨が明けて、いきなりの猛暑でエアコンはフル稼働、電気代が家計を圧迫するでしょう。食料品など生活必需品の値上げも相次いでいる。外交安保も重要な問題ですが、物価高は国民生活にとって切実です。首相が外遊で不在中に、自民党の茂木幹事長が『消費税減税なら年金カット』と国民をドーカツするような発言をして批判が集中しているし、G7でも物価高対策の主だった成果はない。この外遊でどれだけ票の上積みができるかは疑問です」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 G7の演説で岸田が発展途上国のインフラ投資に今後5年間で650億ドル(約8.8兆円)以上の拠出を目指すと表明したことにも、「途上国への支援もいいが、税金はまず自国民のために使って欲しい」と批判が噴出だ。8.8兆円といえば、消費税3%以上に相当する。自国民には、節電でポイント付与とかセコイことしか言わない政府が、国際社会でいい顔したくて税金を好き勝手にバラまく。そんな政治で本当にいいのか。有権者が「NO」を突きつけるには、参院選は絶好のチャンスだ。


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6月28日(火) 大軍拡・9条改憲論に乗せられてはならないこれだけの理由(その2) [参院選]

 『東京新聞』の昨日(6月27日付)の社説は「外交安保政策の基本は、戦争を始めない、始めさせないことだ。防衛力増強に偏った姿勢はこの基本に背くことにならないか」と問うています。まさにその通りで、大軍拡は「外交安保政策の基本」にも憲法の平和主義にも「背くことになる」のは明らかです。

 この点で重要なのは、このような「防衛力偏重」路線は安保条約に基づく日米軍事同盟を背景としているということです。それと憲法9条改憲論は一体のものだという点も強調しておかなければなりません。
 安保に基づく日米軍事同盟は日本を守ってきたのではなく、日本を戦争に引きずり込む役割を果たしてきました。これに対して憲法9条は戦争への加担と協力に対する重要な歯止めとなってきました。
 歴史を振り返ってみれば、安保こそが戦争への呼び水であり9条はそれに対するバリアーとなってきたことが明らかになります。憲法9条の改憲を論ずるにあたっては、このような両者の相互関係を改めて確認し、再認識する必要があります。

 歴史的な事実としては、ベトナム戦争とイラク戦争での事例が象徴的です。安保によって日本はベトナム戦争に協力させられ、沖縄の米軍基地は出撃・補給・休養などの面で重要な役割を果たしました。
 しかし、9条などの憲法上の制約があったために、直接、自衛隊の部隊を派遣することはありませんでした。この点は、韓国などの同盟国とは大きく異なっています。
 イラク戦争では安保によって陸・海・空の自衛隊が派遣されましたが、陸上自衛隊が赴いたのは「非戦闘地域」とされるサマーワで、飲料水の供給や道路の補修などの非軍事的業務に従事し、PTSDの被害はありましたが殺すことも殺されることもなく引き上げてきました。自衛隊は「9条のバリアー」によって守られていたのです。

 なお、これとの関連でとりわけ強調しておきたいのは、沖縄米軍基地の役割とその意味についてです。沖縄に駐留する米軍は日本の防衛ではなく他国への殴り込みを主要な任務とする「海兵隊」であることはよく知られていますが、その米軍基地はベトナム戦争で出撃基地となり、爆撃機がベトナムに向けて飛び立っていくなど重要な役割を果たしました。
 沖縄での基地がなければ米軍はベトナムに介入したり、戦争を継続したりできなかったかもしれません。ベトナムへの軍事介入はトンキン湾事件のでっち上げを口実にした不正義の戦争で、アメリカの若者5万8000人が亡くなり、ドルの支配体制の崩壊をもたらすなどアメリカにとっては大きな傷跡を残す痛恨の失敗でした。
 アメリカはベトナムでの戦争に介入すべきではなく、大きな過ちを犯しました。沖縄に米軍基地が無ければ避けられたかもしれない過ちであり、この点で沖縄の米軍基地は沖縄にとってだけでなく、アメリカにとっても無いほうがよかったのです。

 このことは、これからあるかもしれないと言われている「台湾有事」にとっても、大きな教訓を残しています。台湾周辺での偶発的な衝突が米中間の本格的な戦争に発展する誘因となるかもしれないからです。
 沖縄での基地や南西諸島での自衛隊のミサイル基地が無ければ断念するかもしれない戦争を、基地あるがゆえに踏み切ってしまうリスクがあります。こうして、今後予想される米中対決と台湾有事に際しても、沖縄の米軍基地は軍事的対抗の呼び水になるかもしれません。
 しかも、戦後のアメリカは中南米やアフリカ、インドシナや中東などで、不当な軍事介入を繰り返して失敗を積み重ね、安保という日米軍事同盟に縛られて自主性を持たない日本政府はこれに追随するばかりでした。対北朝鮮や中国に対してだけアメリカは間違えず、日本政府も自主的な対応が可能だと言えるのでしょうか。

 その上、台湾有事への自衛隊参戦のリスクは、これまで以上に高まっています。平和安保法制(戦争法)によって集団的自衛権の一部が容認され、米中間の軍事的衝突が生じ、日本が攻撃されていなくても存立危機事態と認定されれば、自衛隊は米艦防護などのために共同作戦体制に組み込まれることになります。
 もし、憲法9条に自衛隊が書き込まれれば、もはや憲法上の制約を理由にこのような参戦を断ることはできなくなります。というより、自動的な参戦によるフルスペック(全面的な)での戦争協力を可能とするために、9条に自衛隊を書き込もうとしているのです。
 大軍拡と9条改憲はアメリカによる台湾海峡への軍事介入という戦争への呼び水になるかもしれず、日本を戦争から守り自衛隊員のバリアーとなってきた憲法上の制約が失われれば、もはや戦争を避ける歯止めはなく自衛隊は戦火にさらされることになります。そうならないことを祈るような気持ちで見つめているのは、自衛隊員とその家族、関係者の皆さんではないでしょうか。

 もう一つ、憲法9条が果たしてきた重要な役割について指摘しておきたいと思います。それは「9条の経済効果」と呼ばれるものです。9条は防衛費ではなく民生への投資を増やし、平和経済の確立によって戦後の高度経済成長を生み出すという大きな成果をもたらしました。
 その結果、アメリカにとって日本は経済摩擦を引き起こすほどの手ごわいライバルに成長したのです。そこでアメリカが持ち出してきたのが米国製兵器の購入拡大と防衛分担であり、最近では合同軍事研究と経済安全保障です。これらによって平和経済から軍事経済へと転換させ、ひいては日本の経済成長の足を引っ張ることでアメリカのライバルや脅威にならないようにしようと考えているのではないでしょうか。
 自民党や維新の会が叫んでいる大軍拡や9条改憲、学術研究の軍事化、経済・貿易面での安全保障上の制約などは全てこのような思惑に沿ったものです。大軍拡と9条改憲によって失われるのは、平和国家としてのブランドを生みだした日本への好印象と魅力、文化・芸術・人的交流などの安全保障のソフトパワーだけでなく、「9条の経済効果」がもたらした平和経済としての成長力、学術研究の発展と技術開発力などでもあるということを忘れないようにしたいものです。

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6月27日(月) 大軍拡・9条改憲論に乗せられてはならないこれだけの理由(その1) [参院選]

 「平和を守るために 防衛力偏重は打開策か」
 これは今日付けの『東京新聞』の社説です。これを読んで、私なりの警告を発しなければならないと思い、急遽「大軍拡・9条改憲論に乗せられてはならない理由」を書くことにしました。
 これは講演などで繰り返し話してきたことですが、改めて強調する必要があるように感じました。というのは、「防衛力偏重」を批判したこの社説ですら「厳しさを増す周辺情勢に応じて防衛力を整備する必要性は認めるとしても」と書いていたからです。

 「なんだ。防衛力を整備する必要性は認めるんかい」と思いました。「防衛力の整備」はしても「偏重」してはならないというのが、東京新聞の立場だということになります。商業新聞の社説としては、ここまでが限界ということでしょうか。
 しかし、私の主張は違います。「整備する必要性」があるのは外交力であって、必要なのは外交・安全保障政策の自主性自立性です。
 社説は「世界や日本周辺の情勢をこれ以上、緊張させないために何をすべきか」を問い、「短期間に防衛費を倍増すれば、周辺諸国の警戒を招いて軍拡競争に拍車をかけ、逆に緊張を高める『安全保障のジレンマ』に陥りかねない」と警告しています。財源も示されていないこと、世界第3位の「軍事大国」になること、「敵基地攻撃能力を持てば先制攻撃の意図を疑われる」こと、そうなれば「専守防衛」とは言い切れず、「平和国家の道から外れてしまうのではないか」とも書いています。これらの指摘はすべて正しいものですが、批判としては中途半端で弱いと言わざるを得ません。

 5年という短期間に倍増されなくても米製兵器の爆買いなどですでに防衛費は増え続けており、日本周辺の情勢は緊張と厳しさを増しています。「これ以上、緊張させないために」は防衛力整備を口実とした軍拡路線をストップさせ、憲法9条の路線に立ち戻ること以外にありません。
 社説は「防衛力の主眼は、日本を攻撃しても反撃されて目的を達することができないと思わせる『抑止力』だ」と指摘しています。これもよく知られている一般的な説明ですが、問題は「思わせる」というところにあります。
 「目的を達することができない」と思うかどうかは相手国の主観(意図)に委ねられており、そう「思わせる」ためにどのような軍事力がどれだけ必要なのかは不明です。そのために「軍拡競争に拍車をかけ」、逆に緊張が高まる「ジレンマ」に陥ることになります。このようなジレンマにすでに陥り緊張を高めているのが、今の日本ではないでしょうか。
 
 5年間に防衛費を倍増するという大軍拡論だけではありません。敵基地攻撃能力保有論も、相手国の懸念を強め緊張を高めることは明らかです。
 相手国のミサイルが発射される前にその国の中枢部を攻撃するというのですから、日本からの攻撃が先になります。「反撃能力」と言ってゴマ化しても、先に攻撃すれば「先制攻撃」にほかならず、防衛のための「特別軍事作戦」だと言ってウクライナを攻撃したプーチンと変わりありません。
 「専守防衛」だとの言い訳は通用せず、先制攻撃を禁じた国連憲章に違反し、今日のロシアと同様、国際的に孤立することは明らかです。すでに日本でこのような議論が堂々となされ、それが国政選挙で与党や一部野党の公約とされているという事実は、「軍事大国」となって先制攻撃を行うと国際社会に向けて宣言し、「平和国家の道」からの離脱を表明しているようなものではないでしょうか。(明日に続く)

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6月26日(日) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月26日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「自民党の鬼門”は消費税減税 やらない理由は嘘ばかり」

 直近の例を見ても、消費税率が8%に上げられた2014年に法人税率は28%から25.5%に引き下げられ、以降、段階的に下げられて、現在は23.2%にまで低減されている。減少した法人税や所得税・住民税の“穴埋め”に消費税収が使われているのは明らかだ。

 なのに、高市政調会長は19日のNHK「日曜討論」で、「消費税が、法人税の引き下げに流用されているかのようなデタラメを公共の電波で言うのはやめていただきたい」と平然と嘘をつき、茂木幹事長にいたっては、選挙の応援演説で「(消費税を下げたら)どうなるか。社会保障の財源を3割以上カットしなくてはなりません」と、国民を恫喝しているのだから、フザケるにもほどがある。

 「自民党は『消費税減税はシステム変更が大変だ』などとも訴えていますが、安倍政権だけでも消費税増税を2回もしています。増税が可能なら、減税だってやれるはずです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 自民党が消費税に執着しているのは、打ち出の小づちだからだ。なにしろ、税率を1%アップするだけで2兆円以上の税収が入ってくる。税収が増えれば、支援者にバラまく原資が増え、スポンサーである大企業の減税だって可能となるということだ。

■海外の有権者は物価高に「ノー」 今必要なのは「#消費税を下げろ」の国民運動

 こうなったら、国民は絶対に自民党を圧勝させてはダメだ。物価高騰を抑止するために、91の国と地域が「消費税減税」に踏み切っているのに、嘘と恫喝で拒否する岸田政権では、「物価高」も止まらない。

 7.10参院選が終わると、この先3年間、国政選挙は行われない可能性が高い。はやくも岸田周辺は「黄金の3年間だ」などと口にしている。このチャンスを逃したら、あと3年間、自民党がどんなに悪政を重ねようが、国民はノーの意思を示せないということだ。

 「フランスでもドイツでも、海外の選挙では、物価高騰への不満から、有権者が政権与党にノーを突きつけている。豪州では政権が倒れています。それが民主主義というものです。岸田自民党は、防衛費を現在の5兆円から2倍の10兆円にすると公言しています。5兆円の財源を捻出するために、いずれ消費税増税を実施するか社会保障費をカットすることになるでしょう。7.10参院選の意義は、そうしたことも含めて、自民党政治を容認するのかどうか、ということです。本当に自民党を勝たせていいのか、有権者はよく考えるべきです」(五十嵐仁氏=前出)

 いま必要なことは、「#消費税を下げろ」という国民運動と、一票による鉄槌なのではないか。

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6月24日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月24日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「与野党激論という大メディアの茶番劇 今やマトモな野党はひと握り」

 NHKで生中継された党首討論の様子は、とてもじゃないが「論戦」「激戦」と評するには程遠い内容だったからだ。

 それはそうだろう。そもそも「与野党の激しい攻防」などと報じているが、立憲が9日に提出した岸田内閣に対する不信任決議案は、自民・公明両党に加え、日本維新の会、国民も反対に回って否決されているのだ。岸田政権を“信任”し、今や永田町などで「地獄行こう連立=(自国維公)」と揶揄されている政党を、選挙の時だけ野党扱いしてどうするのか。

 まともな野党は一握りで、残りは与党の補完勢力、「ゆ党」が実態。大メディアはそんな構図を知っていながら「与野党の激しい戦い」とはよくぞ言えたもの。これぞ茶番劇、茶番報道というものではないか。

 大体、大メディアは岸田の「新しい資本主義」などという中身のサッパリ分からないゴマカシの造語を無批判で垂れ流し、年末の国家安全保障戦略改定で焦点となる「敵基地攻撃能力」の議論から逃げ続けた岸田の姿勢を追及することもしなかった。

 安倍元首相の桜を見る会前夜祭をめぐる新たな不正疑惑や、細田衆院議長のセクハラ疑惑といった与党にとってマイナスとなる材料はほとんど取り上げず、せっかく野党候補が勝利した杉並区長選はチョボチョボ。大メディアが与党に加担しているのはアリアリで、そんな大政翼賛会と化したやらせ選挙に「与野党の攻防」もヘッタクレもないだろう。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「与党以上に保守的な主張をしている野党もあり、与野党の政策の違いがよく分からない。それが有権者の実感でしょう。本来はメディアが物価高や憲法問題といった課題、論点を整理した上で、各党の姿勢の違いを分かりやすく伝えるべきなのですが、それができていないのです」

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6月18日(土) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月18日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「生活苦はロシアのせいか? この国の首相と日銀総裁はイカれている」

 今度の参院選の公約で野党は物価高対策として消費税減税や消費税廃止を掲げたが、「消費税を触ることは考えていない」とかたくなな岸田自民は消費税減税を完全否定。しかし世界を見渡せば、日本の消費税に当たる付加価値税の減税を実施・予定している国が89カ国もある。なぜ日本ではやれないのか。ガソリン高騰対策で補助金を与えた石油元売りを最高益で潤わせるだけで満足してもらっちゃ困る。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

 「岸田政権がやっている物価高対策は企業支援策であり、家計を直接助けるという発想は自民党にはありません。なぜなら、スポンサーとして献金をしてくれる大企業にしか目を向けていないからです。大企業優先の政治でも選挙に勝ってきているので、今度の参院選も『楽勝できるだろう』と庶民は見くびられている。国民の側がしっかり異議申し立てをしなければ、この国は今まで通りで何も変わらず、衰退していくだけです」

 自民党政権が続く限り、貧者はむしり取られるだけ。有権者はよく噛みしめて参院選に臨むべきだ。

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6月16日(木) 改憲阻止へ、学んで伝え、伝える言葉を選び、伝える手段の工夫を! [論攷]

〔以下の記録は5月15日に開催された茅ヶ崎革新懇主催の「春の政治教養講座」での講演の要旨をまとめたものです。『神奈川革新懇ニュース』NO.247 、2022年6月号、に掲載されました。〕

 軍事力に依存すれば結局は安全を損ねる

 ロシアによるウクライナに対する明らかな侵略が行われている。この時にプーチンが使った口実が、ウクライナがNATOに入ろうとしていることだった。
 国連憲章は、加盟国に対し、主権の尊重、領土の保全、武力行使の禁止を義務付けている。本来、国の在り方は主権者であるその国民が決めることであり、外国は干渉してはならない。ところがプーチンは、軍事力でウクライナに干渉し、占領して、民間人まで殺戮した。理由はどうあれ、プーチンのこの行為は許されることではない。
 ウクライナがNATOの軍事力に頼って安全を確保しようという行為が、逆に侵略を狙っている周辺国に口実を与え、侵略を引き寄せた。軍事による安全を求めても、逆に安全を損ねて侵略を呼び寄せる、一種のパラドックス(逆説)が生じた。これが安全保障のジレンマというものだ。武力を強化すればするほど周辺国が警戒心を高め、軍拡競争を引き起こし、逆に緊張が高まり危険になる。このことは教訓として記憶しておく必要がある。
 ロシアは圧倒的な軍事力をもっているが、それでもウクライナ侵略戦争は2か月以上たった今も続いている。アメリカはベトナム戦争で大規模な侵略をしたが、結局は撃退された。他国に軍隊を送って仕掛けた戦争は成功しない。侵略はますます困難になっている。これが歴史の教訓だ。
 かつてベトナム戦争で失敗したアメリカは、ドルの価値を大きく低下させ、ドル支配が破綻した。アメリカ国内の反戦運動も招いた。ロシアはこれから同じように経済危機を招くだろう。道徳的な敗北による国際的な威信低下は避けられない。いずれロシア国内で戦争を忌避する動きが強まり、国際的な反戦運動や包囲網と結び付いて戦火が収まることを期待したい。

 危機便乗型改憲策動を打ち破る憲法闘争を

 ウクライナ侵略で軍事力依存の危険性が目の当たりになった。それにもかかわらず、自公政府はこれを好機と軍事には軍事との好戦的雰囲気を盛り上げ、安全保障を前面に出して軍備の拡大、憲法改悪へ向けた動きを強めている。敵基地攻撃能力の保有、軍事予算の倍増、内閣は否定するものの自民党内では核共有待望論まで出ている。
 「敵基地攻撃能力」は誤解を招くとして、自民党の安全保障調査会は「反撃能力」と言い方を変えた。今のミサイルは進化していて、発射されたら迎撃が難しい。だから、ミサイルを発射される前に敵基地を攻撃しなければと考えているのだ。「攻撃」される前に「反撃」だなんて、日本語が分かっているのか。
 ロシアによるウクライナ侵略という惨事に乗じて、軍事には軍事との好戦的雰囲気を盛り上げ、改憲を一挙に進めようとしている。憲法9条は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」としている。
 ロシアに9条があれば、プーチンは戦争できなかった。ウクライナにも他国に軍事的脅威を与えないという9条があれば、プーチンに侵略の口実を与えなかったはずだ。軍事的な威嚇により互いに隙を伺うのではなく、信頼によって周辺の国との関係を保てば戦争にはならない。
 周辺国との平和な関係を保つ努力を放棄して、抑止力なる危険なパラドックスを信じていては平和を保つことはできない。日本には9条という政治資産がある。軍事費が抑えられてきたという経済効果、平和国家というブランドの効果がある。世界各地で人道支援に携わり、日本は信頼されてきた。
 ウクライナ戦争が契機になって安全保障に対する国民の関心が高まっている。だからこそ平和憲法の意義と9条の価値を知らせていくことが重要だ。国会で改憲勢力に3分の2の多数を与えず、憲法の書き換えを阻止するだけでなく、憲法に沿って現実を変えていく。憲法違反を許さない政府を作っていく。これらの努力を多面的に進めていかなければならない。

 参院選の特別の意義と活憲政府へ

 日本政府は極端な対米従属で自主性がない。ところが、そのアメリカは中南米、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン侵攻など、戦後は間違い続きの戦争をしてきた。「台湾有事」も懸念される。   アメリカの言うままに戦争の手伝いを続けても良いのだろうか。
 国内政治でも、岸田首相は当初こそ、貧富の差の拡大を問題にし、新自由主義からの転換や金融所得課税などを掲げていたが、つぎつぎと撤回し現状を追認している。「新しい資本主義」と言わざるを得なくなったのは、「古い資本主義」が行き詰まったからだ。しかし、今の危機を乗り越える力はない。
 次の参院選では、壊れ始めた日本にストップをかけ憲法を活かす野党連合政権の樹立へと流れを変えなければならない。市民を介しての立憲野党間の共闘再建を果たし、1人区での統一、草の根の力を発揮した複数区での躍進を実現させよう。
 何もしなければ何も始まらない。既成事実に屈せず、声を上げれば変わるという確信を持ち、学んで伝える。伝わる言葉を選び、伝える手段を工夫する。個人で多くの人に発信できるネットとSNSの活用を進めよう。参院選の公示まで時間が短くなったが、諦めず努力を続けましょう。
(文責編集委員会)


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6月13日(月) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月12日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「不信任案で「野党分裂」 大メディアのトンチンカン報道」

 予想通り、内閣不信任案も、衆院議長不信任案も、あっさり否決されてしまった。

 それにしても異様だったのが、大手メディアの報道ぶりだ。<内閣不信任 割れた野党><立民 際立った「孤立感」><「切り札」野党を分断>などと、2つの不信任案を提出した立憲民主党を一斉にヤユしていた。まるで立憲民主党が、とんでもない失態を犯したかのような報道だった。

 たしかに、日本維新の会と国民民主党が内閣不信任案に反対したため、野党が分断されたのは間違いない。立憲民主党のやり方も、相変わらず稚拙だった。

 しかし、大手メディアが問題にすべきポイントは、“立憲の孤立”や“野党の分断”ではないはずだ。メディアが焦点にすべきは、不信任案の提出が的を射ているのかどうか、なのではないか。内閣不信任案を提出した理由について、立憲民主党は「国民に安心を届ける機会だった補正予算案においても経済無策をつづけ、国民生活の苦境を放置している」と、物価高に対する岸田内閣の無策をあげていた。

 客観的に見て、立憲民主党の主張は正しいのではないか。ところが、不信任案の中身の是非に焦点を当てた大手メディアの報道は皆無だった。

 「大手メディアの報道は、ピントがずれています。維新と国民民主が不信任案に反対したことを、さも一大事のように“野党分断”と報じていますが、もともと2党は、与党みたいなものでしょ。不信任案に反対した一件は、2党の立ち位置がハッキリしたということ。それこそがニュースでしょう。一番の問題は、参院選が近いのに、野党第1党を批判する報道が結果的に自民党を利することになることを、大手メディアが分かっているのかどうか、ということです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)

 大手メディアは、不信任案を提出した立憲民主党をヤユするのではなく、議長不信任案に反対し、細田を守った自民党こそ批判すべきなのではないか。

 おかしいのは、週刊文春の記事によれば、大手メディアの女性記者がセクハラ被害を受けているはずなのに、大新聞テレビから「告発報道」がまったく出てこないことだ。少なくても、週刊文春の記事が事実なのかどうか、自社の女性記者全員から聞き取り調査をして結果を公表すべきなのに、実施するそぶりもない。

 「岸田内閣のインフレ対策と細田議長のセクハラ疑惑は、自民党にとって大きなアキレス腱であり、夏の参院選で争点になりうるテーマです。ところが、大手メディアは、2つの問題で不信任案を提出した立憲民主党に問題があるかのような印象を与えている。いったい大新聞テレビは、どこを目指して報道しているのか疑問だらけです」(五十嵐仁氏=前出)

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6月10日(金) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント [コメント]

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』6月10日付に掲載されたものです。〕

*巻頭特集「全ての病根は自民党 野蛮な国のハレンチ政治とハレンチ議長」

■ルールを守らず反則ありの自民党政治

 衆院議長という重責の自覚が欠如しているのか、もともと国会議員としての資質がないのかはともかく、細田のセクハラ疑惑が示しているのは、落ちるところまで落ちた今の日本の政治の劣化、国会を愚弄している与党の姿勢、権力の横暴──の表れだということだ。

 第2次安倍政権誕生以降、国会審議は形骸化し、嘘とゴマカシのオンパレード。歴代内閣が積み上げてきた法解釈を何の議論もないまま反故にし、閣議決定を乱発してやりたい放題。少数政党の意見にはまるで耳を貸さず、審議時間だけを費やしたら強行採決してシャンシャンという独裁。

 憲法の規定に基づき、野党が臨時国会の召集を求めても無視し続け、あろうことか総理大臣が国会で118回も嘘をつく。「説明責任は私にある」「真摯に説明を尽くす姿勢が大事」とか言いながら口先だけで何もしない。そんな破廉恥政権をメディアはロクに批判もせず、提灯報道で嘘と詭弁を垂れ流す。

 ワイドショー番組の中には「野党は批判ばかりだから支持が集まらない」などと、エラソーに解説しているコメンテーターもいるが、野党が苦戦を強いられているのは批判ばかりではなく、今の与党がメチャクチャだから。国会をスポーツに例えれば、安倍政権以降の自民党は試合のルールすら守らず、勝つためなら反則も当たり前。その上、審判も抱き込んでいるのだから、ルールにのっとって戦う野党が太刀打ちできる状況ではないのだ。

 ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、国内では「無法者のプーチンを止めろ」といった声が出ているが、プーチンを止める前に、同じように無法者の政権、すべての病根である自民党を止める方が先だろう。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。

 「安倍政権以降、加速している政権、与党の国会軽視の動きが、今の細田議長のセクハラ疑惑につながっていると言っても過言ではないでしょう。つまり、国会に対する権威や信頼など、どうでもいいという今の政権、与党の驕り高ぶりの表れ。全く冗談ではありません」

 ハレンチ政治とハレンチ議長。この国の政治情勢は悪化する一方だ。


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