7月11日(月) 参院選の結果をどう見るか [参院選]
注目された参院選が終わりました。当初の予想通り、自民・公明の与党の勝利となり、改憲勢力も3分の2を超えています。
容易ならざる局面が訪れることになったわけですが、正確に言えば、与党の勝利というより野党の敗北ではないでしょうか。ただでさえ弱体化した野党が厳しい情勢の下での選挙を強いられ、対抗する陣営を築くこともできず、負けるべくして負けてしまったように見えます。
もともと厳しい情勢の下での選挙であったことは否定できません。それは、長期・中期・短期の3層構造でした。
長期的には、安倍政権以来進行してきた日本社会の右傾化という問題があります。これは中間層の没落と貧困化の進展を背景にしたもので、維新の会への支持の増大、NHK党の勃興や今回の選挙での参政党の進出、労働組合・連合の保守化と自民党への接近などの背景にもなっています。
中期的には、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気の高まり、安全保障への関心の強まりと大軍拡・9条改憲の大合唱などを挙げることができます。強権的な前任者とは異なるソフトな印象の岸田首相の手ごわさ、内閣支持率の安定と自民党支持率の高さなどに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない姿勢が功を奏したということでしょうか。
そして短期的には、安倍元首相に対する銃撃と死去という衝撃的な事件の影響があります。投票日2日前の最終盤という微妙な時点で勃発したこの事件によって自民党に対する同情が沸き起こったのではないかということは、7月9日の期日前投票での調査からもうかがうことができます。
このような不利な情勢の下で選挙に臨んだ野党でしたが、その対応は大きな疑問符がつくようなものでした。「これでは勝てない」と、選挙の前からある程度予想できるような対応に終始してきたからです。
何よりも大きな問題は、昨年の総選挙の総括を間違えたことにあります。政権との対決の強化と野党間の共闘の再建こそが野党勢力の挽回にとって必要な最善の道であったにもかかわらず、その逆を選択してしまったからです。
総選挙後、野党に対して「批判ばかりだ」という批判にたじろいだ国民民主党は「対決より対案」を掲げて政権にすり寄り、当初予算に賛成して内閣不信任案に反対するなど補完政党へと転身し、これに引きずられる形で立憲民主党も政権批判を手控えて対案路線に転ずるなど、維新の会を含めた翼賛体制づくりの波にのまれていきました。これでは政権の問題点が明らかにならず、与党の失点を浮かび上がらせることもできません。
加えて、「共闘は野合」「立憲共産党」などの分断攻撃に屈し、連合による揺さぶりによって腰が引けた立憲民主党の執行部は、共産党との連携や野党共闘に対して消極的な姿勢を強めてきました。まさに、自民党の思うつぼにはまってしまったわけです。
その結果、32ある1人区での共闘は11にとどまり、前々回の11勝、前回の10勝の半分以下、たったの4勝に終わりました。こうなることは選挙の前からある程度予想されていたことで、一人区での勝敗が参院選全体の勝敗を大きく左右するということからすれば、ここでの分裂が自民党に漁夫の利を与えて参院選での勝利をもたらすことは自明でした。
一人区での共闘に向けて真剣な取り組みを行わなかった立憲民主党と、背後から揺さぶりをかけ続けた連合の責任は大きいと言うべきでしょう。形だけの共闘によって表面を取り作ってみても真剣さが欠けていれば本気の共闘にはならず、力を発揮することができないのは当然です。
選挙後の記者会見で、岸田首相は改憲に向けて「できるだけ早く発議し、国民投票に結び付けていく」と強調していました。新型コロナ感染第7波の懸念と今後さらに強まる物価高の大波に備えて命とくらしを守ることとともに、大軍拡・改憲阻止のための憲法闘争に力を入れる必要があるということです。
この点では、すでに指摘したように安保体制による日米軍事同盟と憲法9条の相互関係、憲法上の制約を生み出している9条の意義の再確認が重要です。9条改憲によって「失うものの大きさ」と「招き寄せるリスクの危うさ」を、国民に幅広く知らせていく情報発信と草の根での世論への働きかけがますます大きな意味を持つことになります。
同時に、野党共闘の必要性と成果についても再確認し、先の総選挙と今回の参院選を含めた総括と反省をきちんと行い、それぞれの地域や選挙区で立憲民主党の覚悟を問い、野党共闘の再建に向けての努力を開始しなければなりません。
今回の選挙の結果、直面することになった困難な事態を打開するための活路は共闘にしかありません。力を合わせること以外に情勢を切り開くことのできる道はなく、どれだけの覚悟を持って腰を据えた取り組みができるのかが問われています。
何もしない岸田政権ですが、大軍拡と改憲だけは執念を持って実行する意図を示しています。国政選挙での審判を受けることのない「黄金の3年間」を許さず、早期に与党を追い込んで解散・総選挙を勝ち取り、活憲の政府に向けての展望を生み出すことが、これからの大きな課題です。
容易ならざる局面が訪れることになったわけですが、正確に言えば、与党の勝利というより野党の敗北ではないでしょうか。ただでさえ弱体化した野党が厳しい情勢の下での選挙を強いられ、対抗する陣営を築くこともできず、負けるべくして負けてしまったように見えます。
もともと厳しい情勢の下での選挙であったことは否定できません。それは、長期・中期・短期の3層構造でした。
長期的には、安倍政権以来進行してきた日本社会の右傾化という問題があります。これは中間層の没落と貧困化の進展を背景にしたもので、維新の会への支持の増大、NHK党の勃興や今回の選挙での参政党の進出、労働組合・連合の保守化と自民党への接近などの背景にもなっています。
中期的には、岸田政権の登場とロシアのウクライナ侵略による好戦的雰囲気の高まり、安全保障への関心の強まりと大軍拡・9条改憲の大合唱などを挙げることができます。強権的な前任者とは異なるソフトな印象の岸田首相の手ごわさ、内閣支持率の安定と自民党支持率の高さなどに加え、「聞く力」を前面に対立を避け、安全運転に徹して聞き流すだけで何もしない姿勢が功を奏したということでしょうか。
そして短期的には、安倍元首相に対する銃撃と死去という衝撃的な事件の影響があります。投票日2日前の最終盤という微妙な時点で勃発したこの事件によって自民党に対する同情が沸き起こったのではないかということは、7月9日の期日前投票での調査からもうかがうことができます。
このような不利な情勢の下で選挙に臨んだ野党でしたが、その対応は大きな疑問符がつくようなものでした。「これでは勝てない」と、選挙の前からある程度予想できるような対応に終始してきたからです。
何よりも大きな問題は、昨年の総選挙の総括を間違えたことにあります。政権との対決の強化と野党間の共闘の再建こそが野党勢力の挽回にとって必要な最善の道であったにもかかわらず、その逆を選択してしまったからです。
総選挙後、野党に対して「批判ばかりだ」という批判にたじろいだ国民民主党は「対決より対案」を掲げて政権にすり寄り、当初予算に賛成して内閣不信任案に反対するなど補完政党へと転身し、これに引きずられる形で立憲民主党も政権批判を手控えて対案路線に転ずるなど、維新の会を含めた翼賛体制づくりの波にのまれていきました。これでは政権の問題点が明らかにならず、与党の失点を浮かび上がらせることもできません。
加えて、「共闘は野合」「立憲共産党」などの分断攻撃に屈し、連合による揺さぶりによって腰が引けた立憲民主党の執行部は、共産党との連携や野党共闘に対して消極的な姿勢を強めてきました。まさに、自民党の思うつぼにはまってしまったわけです。
その結果、32ある1人区での共闘は11にとどまり、前々回の11勝、前回の10勝の半分以下、たったの4勝に終わりました。こうなることは選挙の前からある程度予想されていたことで、一人区での勝敗が参院選全体の勝敗を大きく左右するということからすれば、ここでの分裂が自民党に漁夫の利を与えて参院選での勝利をもたらすことは自明でした。
一人区での共闘に向けて真剣な取り組みを行わなかった立憲民主党と、背後から揺さぶりをかけ続けた連合の責任は大きいと言うべきでしょう。形だけの共闘によって表面を取り作ってみても真剣さが欠けていれば本気の共闘にはならず、力を発揮することができないのは当然です。
選挙後の記者会見で、岸田首相は改憲に向けて「できるだけ早く発議し、国民投票に結び付けていく」と強調していました。新型コロナ感染第7波の懸念と今後さらに強まる物価高の大波に備えて命とくらしを守ることとともに、大軍拡・改憲阻止のための憲法闘争に力を入れる必要があるということです。
この点では、すでに指摘したように安保体制による日米軍事同盟と憲法9条の相互関係、憲法上の制約を生み出している9条の意義の再確認が重要です。9条改憲によって「失うものの大きさ」と「招き寄せるリスクの危うさ」を、国民に幅広く知らせていく情報発信と草の根での世論への働きかけがますます大きな意味を持つことになります。
同時に、野党共闘の必要性と成果についても再確認し、先の総選挙と今回の参院選を含めた総括と反省をきちんと行い、それぞれの地域や選挙区で立憲民主党の覚悟を問い、野党共闘の再建に向けての努力を開始しなければなりません。
今回の選挙の結果、直面することになった困難な事態を打開するための活路は共闘にしかありません。力を合わせること以外に情勢を切り開くことのできる道はなく、どれだけの覚悟を持って腰を据えた取り組みができるのかが問われています。
何もしない岸田政権ですが、大軍拡と改憲だけは執念を持って実行する意図を示しています。国政選挙での審判を受けることのない「黄金の3年間」を許さず、早期に与党を追い込んで解散・総選挙を勝ち取り、活憲の政府に向けての展望を生み出すことが、これからの大きな課題です。
2022-07-11 11:02
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