SSブログ

7月25日(水) 参院選後の政局を安倍首相で乗り切れるのか  [参院選]

 参院選後の安倍首相の対応が問題になってきています。与党の過半数割れが確実になってきたためです。
 民主への追い風、自民に対する逆風は、その後も強まり続けています。このままいけば、自民党は過去最低の36議席を下回る歴史的惨敗を喫する可能性もあります。

 毎日新聞は先週末の20~21日、参院選に関する第3回ネットモニター調査を実施しました。「自民、民主両党のどちらに好感を持っているか」を尋ねたところ、民主72%、自民26%になりました。
 問題はトレンドです。第2回調査(12~13日)に比べて民主が1ポイント増、自民が2ポイント減となって、両党の好感度の差はさらに広がりました。
 過去3回の変化を見ると、自民党は33→28→26、民主党は66→71→72となっています。民主優勢の“風”がずっと吹き続けているということが明瞭です。

 また、この調査では前回に続いて「安倍晋三首相と小沢一郎民主党代表のどちらが首相にふさわしいか」という質問も行っています。安倍氏が34%(前回比1ポイント減)、小沢氏が65%(同1ポイント増)で、わずかながら差が広がりました。
 今回、初めての質問もあります。「自民大敗の場合、安倍首相は退陣すべきか」について聞いたところ、「退陣すべきだ」が68%に上り、「退陣する必要はない」の30%を上回りました。2倍以上の差があります。

 読売新聞の調査も同じような傾向を示しています。読売新聞社が24日にまとめた参院選ネットモニター調査で、与党が過半数(122議席)を割った場合の安倍首相の対応について尋ねたところ、「辞任すべきだ」が48%で、「辞任すべきでない」の26%を上回りました。辞任論が22ポイントも多くなっています。
 また、参院選で与野党のどちらに勝ってほしいかとの質問には、「大差で野党」とした人が最多で33%に上りました。以下、「小差で与党」17%、「小差で野党」16%、「与野党伯仲」10%、「大差で与党」8%の順だったそうです。
 参院で与野党が逆転した場合、国会運営が不安定になることへの対処法については、「できるだけ早く衆院を解散すべきだ」が51%で、「与党が民主党と協力すべきだ」は18%でした。要するに、半分ほどの人が、参院選で野党に勝ってほしいと思っており、そうなったら安倍首相は辞任し、衆院を解散して総選挙を行うべきだと考えていることになります。

 しかし、政府・与党内では、このような世論動向に逆らうように「続投論」が相次いで表明されています。すでに、昨日のブログでも紹介した塩崎官房長官、渡辺喜美行革担当相、小泉前首相や中川昭一政調会長など、「首相と親しい面々」(『日経新聞』7月25日付)が、退陣する必要はないと主張しています。
 選挙敗北の責任追及を避けるために、早々と手を打っているということでしょう。政府・自民党は、参院選で与党が過半数割れしても安倍晋三首相の引責辞任は必要ないとの判断を固め、参院選後は首相続投を前提に9月に内閣の大幅改造と自民党役員人事を断行、人心一新により挙党態勢を確立した上で、秋の臨時国会に臨む方向で調整するとの報道もあります。
 戦闘中であるにもかかわらず、最後の決戦を前に退却の仕方を相談しあっているようなものです。これで選挙が戦えるのでしょうか。

 なお、土俵を狭めてしまおうという、姑息な手段も取られようとしています。投票終了時間の繰り上げです。今回の選挙で、特に、このような繰り上げが増えている点が注目されます。
 総務省によれば、今回の参院選では全国の投票所5万1743カ所のうち、約3割を占める1万4840カ所で、最大4時間繰り上げられるといいます。前回参院選での繰り上げ実施は2割程度でした。
 一方で、投票率向上のためのキャンペーンを行いながら、他方で、投票時間を繰り上げる。誠に、ちぐはぐな対応といわざるを得ません。
 開票に合わせるための短縮などというのは言語道断で、開票よりも投票を優先するのは当然でしょう。投票してこそ開票に意味があるわけで、開票を早くするために投票時間を繰り上げるなどというのは本末転倒です。

 ところで、安倍首相の「続投論」に対して、民主党の鳩山さんは政府・与党を批判しています。「政権の是非は有権者が判断することだ。首相官邸の人が負けても責任を負わないという発言には、そこまで逃げるのかという思いがする」というわけです。
 鳩山さんはまた、参院選の位置付けについて「政権選択の選挙だ。安倍政権の信任選挙であることは間違いない」と強調しています。昨日も書いたとおり、それを望んだのは安倍首相自身ですから、鳩山さんがそう言うのも当然でしょう。

 しかし、民主党は内心では、安倍首相の続投を望んでいるかもしれません。これほどの追い風を生み出す点で、安倍首相個人の“貢献”も少なくなかったからです。
 今日の『朝日新聞』での編集委員座談会の記事「『安倍政治』審判は」で、政治担当編集委員の早野透さんは、次のように語っています。

 争点はカタカナの「アベシンゾウ」問題になっちゃったな。行きつく先が赤城農水相のばんそうこう騒ぎ。安倍氏の政治姿勢、未熟差への不信感だね。「戦後レジームからの脱却」とか「美しい国」とか、「何言ってんの」という反応だ。安倍氏のイデオロギー性は有権者に届かない。

 参院選苦戦の原因は、安倍首相自身にあるということです。安倍さんの考え方や政治姿勢、経験不足未熟さ、トップリーダーとしての指導力不足や危機対応能力のなさなどが、次々と露呈し、それは選挙期間中も続いています。
 その結果としての参院選敗北であるなら、安倍さん自身が責任を取るのは当然でしょう。しかも、参院で与党が惨敗して過半数を失い、参院で民主党が主導権を握るという状況の下で、安倍首相がどれほどのイニシアチブを発揮できるというのでしょうか。
 これまで同様の失敗を重ねることは避けられないでしょう。さらに“敵”に塩を送ることになるのではないでしょうか。

 もし、参院選で自民党が惨敗すれば、民主党はじめ野党の皆さんはこう願うことでしょう。「次の総選挙も、是非、安倍さんでやって欲しい」と……。