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7月30日(月) 最大の敗因はアベシンゾウ [参院選]

参院選の最終議席が確定しました。出口調査で予測されたとおり、与党の惨敗でした。 各党の最終議席は、自民党37、民主党60、公明党9、共産党3、社民党2、国民新党2、新党日本1、無所属7というものです。

 自民党が過去最低の36議席を下回らなかったこと、護憲政党の共産党や社民党が伸びなかったことなどでは不満が残ります。しかし、歴史的に見れば極めて大きな前進だといるでしょう。
 改憲タカ派首相の全面的な攻勢に直面して、危ういところでうっちゃったというところでしょうか。反民主的で強権的な政治運営によって国民の幅広い反撃を呼び起こしたという点でも、安倍首相には岸元首相の“DNA”が受け継がれていたということになります。 ただし、総理の椅子にしがみついている点では、お祖父さんより数段劣ると言わなければなりませんが……。

 与党の敗因には複合的な要因があります。1年前に私は「次の参院選で自民党が勝てない5つの理由」(後掲)を挙げましたが、今回はそれに年金、政治とカネ、失言・暴言の「3点セット」が付け加わりました。
 しかし、その複合的な要因の中核に総理・総裁として安倍さんが座っていたということは紛れもない事実です。そこで問われていたのは、カーキ色の「安倍カラー」であり、強権的な「安倍手法」でした。
 7月25日のブログで、『朝日新聞』政治担当編集委員の早野透さんの次のような言葉を引用しました。もう一度、思い出していただきたいものです。

 争点はカタカナの「アベシンゾウ」問題になっちゃったな。行きつく先が赤城農水相のばんそうこう騒ぎ。安倍氏の政治姿勢、未熟差への不信感だね。「戦後レジームからの脱却」とか「美しい国」とか、「何言ってんの」という反応だ。安倍氏のイデオロギー性は有権者に届かない。

 「争点はカタカナの『アベシンゾウ』問題」だったのです。そして、その結果としての歴史的な惨敗でした。
 ということは、最大の敗因は安倍さんそのものだったということになります。今日の『朝日新聞』は、安倍首相に対する地方の自民党選対関係者による次のような「うらみ」の声を伝えています。

 「支持率があれだけ低迷していては、来てもらっても役に立たない。党本部から一方的に『首相が行く』と言ってきたが、逆風に加えて台風が来たようなものだ」
 「人気の高い小泉前首相の応援をお願いしたのに、来たのは安倍さんで、逆効果だった。国会での強行採決にしても、小泉さんなら『リーダーシップがある』と映るが、安倍首相では『策がない』としか受け止められない」

 今回の選挙で不信任されたのは与党であり、その中心にいる安倍首相です。『読売新聞』の「編集手帳」は、「安倍首相は引き続き政権を担う意向という。大敗を喫して続投する以上、敗因をきちんと取り除かなければ有権者は納得しない」と指摘しています。
 ここに、安倍さんの最大のジレンマがあると言って良いでしょう。自らの「続投」のためには、最大の「敗因」であった自らを「取り除かなければ有権者は納得しない」からです。
 国民を無視して民意を顧みないおごりへの怒りが表明され、大きなしっぺ返しを食らったのに、それでもなお、「国民の声など聞く気はないよ」というのが、今回の続投宣言にほかなりません。この程度の「お仕置き」では不十分だったというのであれば、さらに大きなペナルティを科すしかないと、多くの国民は考えているにちがいないでしょう。

 衆院選挙と違って、参院選挙は「政権選択」を問うものではありません。今回の選挙も、与党が大敗して過半数を割ったからといって、政権が変わるわけではありません。
 「だから、安倍首相は辞任する必要がない」というのが続投弁護論です。しかし、それは逆です。
 安倍首相が辞任しても、次に出てくる首相も与党の中からです。首相が交代しても、政権の枠組みには変化がありません。だから、自民党支持者の4分の1の人が安心して他党に投票し、安倍さんへの不信任を表明したのです。

 衆院選挙で与党が過半数を失えば、政権が交代します。これは制度的に確立されたシステムです。同様に、参院選挙で与党が過半数を失えば、首相が交代するべきです。これは制度的には確立されていませんが、89年の宇野首相、98年の橋本首相が実行しました。
 選挙が民意を直接示すものである以上、それに従うのは当然でしょう。宇野首相や橋本首相は、そう考えたから自ら身を引いたのです。
 それが民主主義のルールであると理解していたからです。安倍首相は民意を尊重するという民主主義のルールに従う気のないことが、今回の続投宣言ではっきりと示されたことになります。やはり、首相としての判断力と資質が大きく劣っていると言わざるを得ません。

 潔さもまた、日本人の美学です。かくも明瞭に不信任されたのに、それでもなお首相の椅子にしがみつこうとしている往生際の悪さは、果たして「美しい日本」にふさわしいものなのでしょうか。

 なお、昨年の5月10日、私はHPで「次の参院選で自民党が勝てない5つの理由」について書きました。今となっては、読むことができませんので、参考のために、ここに再掲しておきましょう。
 ここで指摘した5つの理由は、いずれも今回の自民党の敗因に当てはまると思います。新たに付け加える必要があるのは、首相が安倍さんだったということだけです。

5月10日(水)次の参院選で自民党が勝てない5つの理由

「参院選へ青木氏、渋面」という見出しが出ています。昨日の『東京新聞』に掲載された、次の参院選についての観測記事です。
 「自民 3つの逆風」とあります。「小泉人気の反動 大勝揺り戻し 統一地方選疲れ」の「逆風」の中で闘わないといけないと自民党の青木幹夫参院議員会長ら参院執行部は危機感を募らせ、引き締めに懸命だといいます。
 実は、「逆風」はこれだけではありませんが、先ず「3つの逆風」とは何か、記事の内容を見てみることにしましょう。

 第1に挙げられているのは、「小泉ブームの反動」です。今回改選を迎えるのは2001年の参院選で当選した人々です。
 このときの選挙は「小泉ブーム」のまっただ中で、自民党は64人が当選しました。しかし、次の選挙ではそのような「ブーム」は考えられません。
 通常の選挙であれば、前回04年参院選並の50人前後ということになるでしょう。「しかも改選を迎える議員は、5年前に圧勝したことで気を緩め、その後の選挙運動が余り熱心でないと指摘される人も少なくない」と、この記事は指摘しています。

 第2は、「振り子の原理」です。昨年の総選挙で圧勝したことへの反動があるというのです。
 青木さんは、「前回の衆院選であれだけ勝たせた。今回、また勝たせていいのかという心理が働く」と分析しているそうです。
 来年の参院選まで一年以上ありますし、総選挙から2年も経ちますから、そのような「心理」がどれだけ持続するかは分かりません。しかし、衆院での多数の横暴が続けば、参院でストップをかけなければならないという「心理」やバランス感覚は働くかもしれません。

 第3は、「統一地方選」です。来年は、7月の参院選の前に4月に統一地方選が行われます。
 12年に一度、この二つの選挙が重なります。それだけでなく、自分の選挙が終わり、統一地方選で疲れた地方議員が動かず、参院選の投票率が下がって自民党が苦戦するという特徴があります。
 亡くなった石川真澄さんが指摘する「亥年現象」です。しかも、来年の統一地方選挙は、「平成の大合併」の後ですから、広くなった馴染みのない選挙区で、候補者が乱立する可能性があります。「統一地方選を闘い、疲れ切った後で行われるのが来年の参院選だ」と、青木さんが心配するとおりです。

 しかし、冒頭にも指摘したように、「逆風」はこれだけではありません。さし当たり、二つの「逆風」を付け加えておく必要があるでしょう。
 その一つは選挙マシンとなって集票する支持組織が弱体化していることです。もう一つは、この間進められてきた小泉「構造改革」の問題点が、さらに多方面で生じてくるだろうということです。

 第4の、「支持組織の弱体化」についても、「『劇場選挙』で疎遠に」という記事が5月4日付の『東京新聞』に出ています。「小泉は、地方組織を弱体化させただけでなく、業界団体と自治体との結びつきも弱めた」というわけです。
 昨年の総選挙が「分裂選挙」となったために、自民党の地方組織はズタズタになりました。公共事業を減らし、国民の支持に直接訴えかけるやり方は、業界団体などとの関係を疎遠にしました。参院選で重要な役割を果たすはずの集票マシンが、小泉首相によって「ぶっ壊された」というわけです。
 「参院議員会長の青木幹雄ら自民党参院執行部が懸念するのは、こうした支持構造の変化が来夏の参院選に与える影響だ」と記事は指摘しています。「地方組織を立て直し、業界団体との関係を修復しなければ、参院選での自民党勝利は困難」と「判断」しているとのことですが、それが可能なのでしょうか。

 さらに第5に、「構造改革の問題点の全面開花」という問題もあるでしょう。国民生活を直撃する「痛み」も、今後、増してくるにちがいありません。
 すでに、その兆候は現れています。昨年のJR西日本福知山線の大事故などもそうですが、今年始めに明らかになったいわゆる「4点セット」、つまり、耐震強度偽装問題、ホリエモンの逮捕、米国産牛肉の輸入再開問題、防衛施設庁発注工事に絡む官製談合事件などは、基本的には、この間の「構造改革」と密接な関わりを持っていました。
 これは、ホンの序の口です。小泉さんが首相の座を去れば、これまで隠蔽されてきた「構造改革」の負の側面が一挙に表面化する可能性があります。

 このように、青木さんの心配するとおり、次の参院選で自民党は苦戦するでしょう。12年に一度の試練に加えて、この間の小泉政治によってもたらされた新たな問題を全て引っ被らなければならないのですから、青木さんも気の毒です。
 しかし、それもこれも、旧橋本派の仲間を裏切って小泉さんを支えてきた青木さん自身が、自ら招き寄せたことです。これを、世間一般では、「自業自得」と申します。

 ただ、老婆心ながら申し添えておくと、次の参院選で野党は労せずして勝利するというわけではありません。このような新聞報道もまた、油断させるためではないかと疑うのが、正常な感覚です。
 とはいえ、私は、野党に油断させるために、このようなことを書いたわけではありません。頑張れば勝てる可能性があるということを、理解していただきたいがためです。
 闘いでの勝利は、天から降ってくるものではなく、自らの力でたぐり寄せるものなのですから……。