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7月29日(日) 自民・公明両党、予想通りの歴史的惨敗 [参院選]

  「こんなに与党が負けるなんて、一体、誰が予想したでしょうか」
 テレビの中で、アナウンサーが叫んでいました。出口調査で、自民党の歴史的惨敗が避けられないとの予測が出たときです。

 でも、この結果は驚くようなものではありません。事前の予想通りだったといって良いでしょう。
 まだ、これを書いている段階では最終結果が出ていませんが、自民党は過去最低の36議席前後、公明党も愛知で落選、埼玉や神奈川でも苦戦しており、10議席以下になりそうです。
 与党が89年選挙と同じ様に惨敗し、過半数を割ることが確定しました。このような結果になるかもしれないということについて、私は公示日(12日)のブログで、次のように書きました。

 世論のあり方が89年と今回とで似通っているということであるなら、それによって生まれる選挙の結果もまた、似通ったものになるでしょう。つまり、自民党が40議席を割ることもあり得るということです。

 ここで、自民党にとっての大きな「不安要因」を指摘しなければなりません。それは、安倍内閣に対する不支持率が51%と、過半数を超えていることです。
 戦後の参院選は20回を数えますが、内閣に対する不支持率が過半数を超えたままで参院選に突入した例はありません。今回が、初めてになります。
 それだけ、安倍政権に対する拒否感情や政治のあり方に対する怒りが強いということになるでしょう。それがどういう結果をもたらすのか、過去最低であった36議席を下回り、戦後初めてというほどの自民党の歴史的敗北をもたらすことになるのか、大いに注目されるところです。

 いずれにせよ、このような自民党にとっての「悪夢」が「正夢」になるためには、29ある定数1の小選挙区での勝敗が決定的になります。89年の大敗のとき、定数1の選挙区は26でしたが、与党にとっては3勝23敗という結果に終わりました。逆に、「小泉ブーム」に乗って大勝した01年の参院選では、27の1人区で自民党は25勝2敗です。
 世界を見れば、もっとすごい例があります。カナダの下院では、景気の低迷と高失業率への不満を背景に、93年10月の総選挙(小選挙区制)で与党の進歩保守党が解散前の152議席からわずか2議席に激減するという歴史的大敗を喫しました。
 与党からすれば、2勝150敗という結果です。小選挙区制には、勝敗を増幅するという特性があり、勝つものはより多く勝ち、負けるものはより多く負けるのです。

 今度の参院選で、果たして、このような「悪夢」が自民党を襲うことになるのかは分かりません。しかし、そのような可能性が生まれてきているということもまた事実です。
 世論調査が示す自民党にとっての「悪夢」のシナリオが、現実のものとなるかどうか。その答えが出るのは、約2週間後のことになります。

 ということで、それから約2週間の後、「このような『悪夢』が自民党を襲」い、「自民党にとっての『悪夢』のシナリオが、現実のものとな」りました。注目すべきことは、このような与党惨敗が事前に予測されなかったことではなく、その予測通りの結果が投票によって示されたということでしょう。
 選挙が公示されて以降、世論の動向にはほとんど変化がなかったということになります。それほどに、民意は明確で揺るぎのないものでした。

 このような結果が生まれた背景として、自民党の幹部の1人は、「野党と闘う前に後ろから弾が飛んできたからだ」と説明していました。失言、暴言、事務所費問題など、与党内の問題の方が大きかったということでしょう。
 民主党からすれば、赤城農水相などに“感謝状”を出したい気持ちかもしれません。安倍首相自身の対応や資質の問題、イデオロギーや政策理念に対する国民の警戒感や反感も大きかったように思います。
 選挙が始まったとき、安倍首相は「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民の考えを聞きたい」と言いました。今回の結果は、「小沢さんの方が首相にふさわしい」と国民が考えていることをはっきりと示したものです。

 与党惨敗に対する安倍首相の責任には大きなものがあります。しかし、安倍さんは続投の意向を示しました。
 その場の空気が読めず、責任の自覚もなく、決断もできない安倍さんなら、当然の対応です。「安倍首相は退陣するべきだ」と言っている野党は、心の中では喜んでいることでしょう。
 安倍首相が辞めなければ、選挙敗北の責任をめぐる自民内のゴタゴタは続きます。中川幹事長の辞任は避けられず、党役員と内閣の改造もあるでしょう。野党は、これからまだいくらでも攻めようがあるということになります。

 7月25日のブログで、私は「参院選後の政局を安倍首相で乗り切れるのか」と書きましたが、今また同じ問いを発しなければなりません。これほどの不信任を無視して、政権運営が可能だと考えているのですか、と……。
 テレビのインタビューで、安倍さんは続投について「国民の理解を得られるだろう」と答えていました。しかし、「国民の理解」を得られなかったから、この選挙でかくも手ひどく惨敗したのではありませんか。懲りない人ですね。


7月27日(金) 深刻な日本の現状が見えているのか [参院選]

今日の『東京新聞』に日本版ヴォートマッチ「投票ぴったん」http://votematch.jpn.org/についての記事が出ています。昨日、サーバーがダウンしたそうですが、もう復旧したようです。ミラーサイトが三つも付けられていました。

 赤城農水相についての疑惑が、またまた浮上しました。赤城さんが支部長を務める自民党支部と後援会が政治資金収支報告書に同じ領収書のコピーを添付して二重に計上していたことが分かったからです。
 赤城事務所は二重計上を認めて「事務処理上のミス」と説明し、後援会の収支報告書を訂正したそうです。でも、ちゃんと説明できない赤城さんは、ごねて帰国を遅らせたり、空港から直行で病院に入ったりして、逃げ回っています。
 そのうえ、小池百合子防衛相についても、今週発売の『週刊現代』が、「家賃ナシ・高熱水費ナシの議員会館に事務諸費4542万円」と報じています。何とも、絶妙のタイミングで新しい疑惑が浮かび上がったものです。

 ところで、今日の『毎日新聞』には、「格差問題も争点」という記事が出ていました。毎日新聞が25、26日に実施した全国世論調査で、「『格差問題』への関心の高まりが改選数1の「1人区」での自民苦戦の一因になっていることがうかがえた」というのです。
 この記事は、次のように報じています。

 投票の際に最も重視する政策を聞いた質問の回答では、格差問題の伸びが目立つ。5月の前々回調査は13%で年金、教育、憲法に次ぎ4番目だったが、前回は15%に上昇し、今回は16%で年金に次ぐ2番目の争点に浮上した。特に内閣不支持層では21%が格差問題を挙げており、年金の22%と同水準となった。
 注目されるのは、格差を挙げた人の参院選への考え方。勝ってほしい政党は民主62%、自民17%で、民主のリード45ポイントは全体の14ポイントを大きく上回った。投票先の質問でも選挙区で民主47%、自民15%、比例代表で民主49%、自民14%と大きく差が開いており、格差問題が自民に打撃を与えていることがうかがえた。
 また、格差を挙げた人の内閣支持は18%にとどまり、不支持は71%。支持政党でも民主35%、自民11%などで、いずれも全体と比べて自民により厳しい数字が並んだ。
 格差問題は民主が今春の統一地方選で最大争点と位置づけたテーマ。統一選ではあまり効果が上がらなかった戦略が、ここにきて奏功した形だ。

 「格差」そのものは、今までの日本社会にも、また、どのような社会にもありました。しかし、それがあまりに拡大すれば、大きな不平等を生み、社会の統合を困難にすることになります。
 また、全体として底上げされる中での格差であれば、それほどの問題ではないかもしれません。しかし、今問題になっているのは、「勝ち組」とされる豊かな人々がさらに豊かになっているだけでなく、「負け組」とされている貧しい人々がさらに貧しくなっているということです。

 しかも、これらの「負け組」状況に落ち込んだ人々は、なかなか働き口を見つけることができず、働いても貧しさから抜け出すことができません。このようなワーキングプアの広がりによって格差が拡大しているという点に大きな問題があります。
 昨日の『読売新聞』夕刊に、ある男性の例が紹介されていました。次のような事例です。

 薄い板で仕切られたタタミ一畳ほどの空間が、男性(24)の一日の疲れを癒やす場所だった。今年5月、都内で開催された労働条件改善を求める全国青年雇用大集会で男性と出会い、彼が暮らすインターネットカフェに案内された。家賃5万円のアパートの契約更新ができず招いた現実。「すぐに終わるはずだった仮の生活」は、先月まで2年以上も続いた。
 上京後、映像ディレクターを目指し、専門学校で学んだ。2003年に卒業。小さな映像プロダクション助手の働き口を見つけた。終電で帰る毎日だが、手取りは月13万。好条件の会社に移ろうとしたが、プロダクションの仕事も失い、完全に失業した。すでにアパートを引き払い、インターネットカフェ暮らしを続けていた。
 住所不定という弱い立場では職探しも思うに任せない。深夜行う商品仕分けの日払いのアルバイトをどうにか見つけた。「その日の生活費を考えるだけで精いっぱい。保険証がなく病気になっても医者にもかかれない」。心身ともにすさんでいた。
 インターネットカフェ難民は今も大勢いる。「首都圏青年ユニオン」などが中心となってこの春、全国19都道府県の94店舗で、利用者の聞き取り調査を行った結果、65店舗で長期暮らしの人がいることがわかった。
 男性は先月、映像関係の仕事を郷里に見つけ、ネット難民生活に区切りをつけた。「路上生活の一歩手前で踏みとどまっているようでみじめな気分。抜け出すのは難しかった。一晩1000円程度で雨露がしのげる便利さもあった」と男性は過去2年を振り返る。「もう二度と戻りたくない。健康的な生活が一番だ」とも。
 「貧困の悪循環から自力で脱出できずに苦しんでいる。行政や社会が関心を向け、生活保護や住まいの保障を充実させる必要がある」と生活困窮者を支援するNPO「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)の湯浅誠事務局長は訴える。厚生労働省は近く、ネットカフェなどで生活する人の実態調査を行う予定だ。

 ここに紹介されているのは、「ネットカフェ難民」と言われる人々の姿です。今日の日本にも「難民」がいるという現実をどう考えたらよいのでしょうか。
 働こうとしていたり、あるいは、働いているにもかかわらず、「貧困の悪循環から自力で脱出できずに苦しんでいる」人々(ワーキングプア)の存在は、今日の日本の政治がいかに問題解決能力を失っているかを象徴しています。それは個々人の問題ではなく、明らかに政治と社会の問題なのです。
 最近読んだNHKスペシャル『ワーキングプア』取材班・編『ワーキングプア-日本を蝕む病』(ポプラ社、2007年6月)には、これについて次のように書かれていました(222~225頁)。

 取材した人たちはいずれも必至で仕事をさがし、家族のことを真剣に考えていた。懸命に努力をしているにもかかわらずワーキングプアから抜け出せない。だからこそこの問題は極めて深刻なのだ。
 ……
 つまり私たちが普通に暮らしていて起きる、身近なきっかけでワーキングプアに陥ることがあるということだ。逆に言えば身近な出来事を前もって想定してきめ細かな対策をとればワーキングプアに陥ることを避けられるということだ。運が悪かったではすまされないと思う。
 最後に、決してあってはならないのはワーキングプアの問題が次の世代に引き継がれてしまうことだ。……
 つまり今この時点で、具体的な取り組みを始めなければもう間に合わないのである。問題を先送りすることはできない。
 ……
 ワーキングプアの問題を解決することは容易ではない。運用の問題をはじめ医療や社会保障の問題、さらに高齢化や経済のグローバル化の問題などそれぞれの人が異なる事情を抱えているからだ。しかしこの問題を放置することはもはやできない。個人の責任としてだけではなく社会の責任としてこの問題をどのように考え、対策を講じていこうとするのか、あるいは今の社会のあり方をよしとするのか、新たな社会の構築をめざしていくのか、その選択は私たち1人1人の決断にかかっていると強く思う。

 「日本人で良かった」などと脳天気なことをいう人には、このような現状が見えていないのでしょう。「日本人で良かった」と「今の社会のあり方をよしとする」ような人に、この現状を変えて「新たな社会の構築をめざしていく」ことができるのでしょうか。

 このような問題の解決を含めて、「その選択は私たち1人1人の決断にかかっている」のです。そして、その「決断」を下す絶好の機会が、いよいよ明後日に迫ってきています。