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8月25日(火) 政界の底流にあり続ける「革新」 [論攷]

〔以下の記事は、私のインタビューを鈴木英生記者がまとめたもので、『毎日新聞』8月19日付夕刊に掲載されました〕

政界の底流にあり続ける「革新」

 戦後の日本政治は、長い間、保守の自民党対革新の旧社会党、共産党という大枠があった。1990年代以降、冷戦終結や政界再編で、具体的な政治勢力としての革新は、すっかり小さくなった。だが、五十嵐所長は「革新的なものは今の政界の底流にもあり、その意義は小さくない」とする。
 共産党や社民党が今も存在するというだけではない。そもそも、戦後の革新が主に要求してきた、再分配による平等や「平和」の希求といった傾向は、自民党内でもずっと底流を流れてきたものだ。
 「軽武装、成長重視の保守本流は、経済成長と一定の再分配を促進したし、旧三木派に代表される護憲リベラルも党内に常にいました」。つまり、保守だが実態では革新と同調できる面のある勢力は、政治の多数派だった。平等や「平和」を、革新政党とは違った手法でそれなりに実現しようとしたのが自民党とも言える。
 結果、皮肉なことに「旧社会党は、保守に半ばお株を奪われ、冷戦後の変化に対応できなくなってつぶれました」。90年代半ば以降は、アメリカの圧力下で本格化した新自由主義的な構造改革に、革新系の一部もいったん同調してしまった。「これで、革新の姿が国民に見えにくくなったことは確かです」
 ところが、その後新自由主義路線は行き詰まりを見せ、外交や安全保障面でのタカ派的主張も失速した。大きく言えば、今の選挙情勢を規定するのは、「この間、力を持っていた右派に対して、再分配路線などで革新に近い旧保守本流が盛り返した構図です」。しかも、民主党内に旧社会党系の議員がいることもあり、「保守2大政党の戦いではあっても、以前の自民党内での派閥争いの拡大版ではない。かつての保革対立に近い雰囲気もあるのでは」とすら言う。
 もう一つの論点である「平和」はどうだろうか? 「革新の側もイデオロギー色が薄まり、保守派と議論がしやすくなった。他方、この間の政権は右側に流れすぎ、保守にもそれへの批判がある。総選挙後は、この間の右傾化傾向が中道寄りに是正されるのではないでしょうか」
 旧来の革新政党も、「選挙制度や消費税問題などで、2大政党へのオルタナティブを提起するといった役割があります」。多数派からこぼれる意見の受け皿として、革新政党が一定の存在感を持つ状況も、アメリカなどとは違う、今の日本政治の特徴になっている。【鈴木英生】