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12月3日(木) 政権交代による大きな成果も生まれている [政権交代]

 気がついたら、師走に入っていました。私ども教員にとっては、走り回らなければならない季節ということでしょうか。
 今日は、もう3日になってしまいました。街路樹の木々も葉を落とし、紅葉の季節も終わりを告げています。

 今年の流行語の発表がありました。大賞を受賞したのは「政権交代」という言葉です。 日本近代史始まって以来の明確な政権交代の実現ですから、それも当然でしょう。選者のセンスを評価したいと思います。
 その「政権交代」から約80日が過ぎ、鳩山新政権の成果や弱点が明らかになってきています。すでに弱点については指摘しましたので、今回は成果について書かせていただきましょう。

 成果の第1は、新しい法律の制定です。臨時国会の最終盤で、鳩山新政権による新しい法律が次々と成立しています。
 これらは基本的に、これまでの自公政権では実現できなかったものであり、国民生活を守り支援するために大きな力を発揮することが期待されます。

 その第1は、中小企業を支援するための中小企業等金融円滑化法(返済猶予法)です。中小企業に対して返済猶予など債務の条件変更に応じるよう金融機関に促すもので、全会一致で可決・成立しました。
 これは政権交代後の臨時国会で初めて成立した法律であり、記念すべき第1号でした。景気悪化によって借金の返済に四苦八苦している中小企業にとっては、まさに干天の慈雨とも言うべき法律でしょう。
 これで一息ついて、体力を回復してもらいたいものです。地域経済を支えている中小企業の蘇生こそ、日本社会再建の第一歩なのですから……。

 第2は、肝炎対策基本法の成立です。ウイルス性肝炎の患者支援と医療体制の整備を盛り込んだもので、これも全会一致で可決・成立しました。
 ウイルス性肝炎患者・感染者は全国に約350万人いるとされています。これらの人々にとっては、長年の悲願が成就した瞬間でした。
 このような当然の対策が、どうしてこれまで実現できなかったのかということの方が不思議です。いかに自公政権が命と健康を軽視する政権であったかが、この一事に象徴されていると言って良いでしょう。

 第3は、原爆症救済法(基金創設法)の成立です。これは12月1日午後の衆院本会議で、自民党を除く全会一致で成立しました。
 原爆症認定をめぐる集団訴訟の原告約300人全員を救済するため、3億円の補助金を元にした基金の設立などが盛り込まれています。原爆症認定集団訴訟全国原告団の山本英典団長は、都立大学時代の塩田ゼミの大先輩です。良かったですね、山本先輩!! これで長年の苦労が報われましたね。
 これについても、肝炎対策基本法と同じ問題が指摘できるでしょう。どうしてこれまで、このような当然の法律が制定されなかったのか、という問題が……。

 第4は、郵政民営化の見直しに向けての郵政株売却凍結法案です。これは衆院を通過した段階ですが、明日には成立するとみられています。
 この法案は、政府が保有している、持ち株会社「日本郵政」、「ゆうちょ銀行」、「かんぽ生命保険」の株式や、「かんぽの宿」などの施設の売却を、あらためて法律で決めるまで凍結するというものです。12月1日、自民党が欠席するなか午後の衆議院本会議で採決が行われ、民主党などの与党と共産党などの賛成多数で可決され、参院に送られました。
 小泉構造改革の「本丸」は落城寸前というところでしょうか。郵政民営化の「反転」も、政権交代がなければ実現不可能だったことは明らかです。

 このような新しい法律の制定以外にも、具体的な施策として評価できるものがあります。これも以前の自公政権では実現できなかったことであり、政権交代による成果であると評価して良いでしょう。

 その第1は、事業仕分けです。これについては、賛否両論が寄せられています。
 厳しい指摘と官僚への追及の激しさに、「これでは仕分け人というより、仕置き人ではないか」とか、仕分け人には労働の規制緩和の急先鋒だった福井秀夫政策研究大学院大学教授なども含まれており、「まず、仕分け人の仕分けが必要だったのではないか」などと言いたくなります。
 しかし、このような事業仕分けが国民の目の前で行われたということはかつてなかったことであり、それによってムダな事業が削られ、予算編成の透明化に役立ったことは否定できません。予算の使われ方に対する国民の関心が急速に高まったのも、大きな成果でしょう。
 元々利益が上がるはずのない事業に対して収益や効率性を問題にしたり、大学関連の文教予算や科学技術予算、文化・スポーツ関連の予算が削られたりという問題はありますが、それでも事業仕分けを行ったこと自体は評価できるのではないでしょうか。

 第2は、生活保護受給者に対する母子加算制度の復活です。民主党がマニフェストに盛り込んでいたものですが、これで助かった人も多かったでしょう。
 厚労省によると、支給対象は18歳以下の子どもを養育する母子家庭と父子家庭の計約10万世帯に上ります。子どもは約18万人になります。
 母子加算は、自公政権によって05年度から段階的に減らされ、今年3月で廃止されていました。とりわけ困難な状態にある1人親世帯に対する手厚い支援は当然のことであり、その復活も政権交代あったればこそ、だったと思います。

 第3は、ハローワークの窓口でのワンストップサービスの実施です。これは、職業紹介と住宅相談、低所得世帯に生活費を貸し付ける生活福祉資金や生活保護の相談、保健所による「心の健康相談」などを一つの窓口で実施するというものです。
 11月30日、17都道府県77カ所のハローワークの窓口で開催されました。今回はこの日だけですが、年末年始の実施や定期開催も目指し、自治体の協力を得て今回できなかった県でも実施する方向だといいます。
 菅直人副総理兼国家戦略担当相は「できれば年末にかけてもっと継続的にできないか、相談していきたい」と述べています。昨年末のような「年越し派遣村」の再現が必要とならないように、今から万全の態勢で臨んでもらいたいものです。

 さらに、この他にも政権交代によって生じた副次的効果もあったように思われます。自公政権の時代から継続され懸案だった問題でも、政権交代という時代の変化を受けて新しい局面が開かれているように思われます。

 たとえば第1に、鞆の浦の埋め立て反対訴訟についての広島地裁での判決を挙げることができるでしょう。広島県福山市の景勝地「鞆の浦」で県と市が進める埋め立て・架橋計画について、県知事は県と市に対して埋め立て免許を交付しないよう命ずる判決が下され、埋め立てに反対する原告側の勝訴となりました。
 そればかりではありません。このような計画が行政の裁量権を逸脱したと認め、「鞆の浦の景観の価値は私法上保護されるべき利益であるだけでなく、瀬戸内海における美的景観を構成するものとして、また文化的、歴史的価値を有する景観として、国民の財産とも言うべき公益である」として、景観の価値を最大限尊重すること、景観を守ることが環境権の侵害を防ぐ大切な道筋であることを認める点で、画期的な内容を持っています。
 11月30日、広島県知事選で初当選した湯崎英彦知事は、「鞆の浦」について賛成、反対両派を含む協議の場を来年2月までに設けたいとの考えを明らかにしています。このような方向も、時代の変化を反映したものと言えるのではないでしょうか。

 あるいは第2に、沖縄密約に関する裁判での吉野証言もあります。この問題も以前からの継続ですが、公の場における密約の暴露は大きな変化だと言えるでしょう。
 沖縄返還に伴う財政負担について密約を結んだとされる文書をめぐって、作家らが国に開示を求めた訴訟の口頭弁論が12月1日、東京地裁でありました。当時アメリカとの交渉に当たった吉野文六元外務省アメリカ局長の証人尋問が行われ、吉野さんは「(秘密文書に)イニシャルでサインした」と述べ、改めて密約の存在を証言しました。
 この問題については、拙著『戦後政治の実像-舞台裏で何が決められたのか』(小学館、2003年)も取り上げています。今回の吉野証言によって拙著の記述も裏付けられたことになりますが、詳しくは、そちらをご覧いただきたいと思います。

 これに関連して第3に、普天間基地の移設問題も挙げることができます。自公政権の下では万に一つも可能性がなかった県外への移設が、選択肢の一つとして浮上しただけでも大きな前進であると言うべきです。
 これも、政権交代の成果であり、大きな変化です。この問題がどのような形で決着するかは分かりませんが、来年まで先送りし、自民党が国外移設方針に転換して名護市長選挙で県外移設派が勝利するなどの状況変化を待ち、世論を背景にグアムへの移設という方向で一挙に決着を図るしかないでしょう。
 これに成功しなければ三党連立に大きな亀裂が入り、鳩山政権の基盤は危うくなって連立解消などという緊急事態が生まれるかもしれません。逆に、もし成功すれば、鳩山政権と民主党の基盤は盤石となり、長期政権になることは確実でしょう。

 なお、明日の金曜日、韓国の毎日経済テレビ(MBN)の取材を受けます。韓国のテレビ局からの取材を受けるのは、これで2度目になりますが、多分、日本では放送されないでしょう。
 この日の夕方から、社会的労働運動研究会での報告を皮切りに、ほぼ3回連続で講演が予定されています。5日(土)は全農協労連・生協労連・全倉運・金融労連・全損保の5つの単産が加わる第三次産業労働組合連絡会(三次労組連絡会)のシンポジウム、6日に北海道に飛んで、7日(月)は札幌学院大学での講演です。
 お近くの方に、ご参加いただければ幸いです。関係者の皆さんにはお世話になりますが、よろしくお願いいたします。