SSブログ

12月23日(水) 『週刊ダイヤモンド』に掲載された特集「労働組合の腐敗」 [労働組合]

 「特集 労働組合の腐敗」という文字が目に入りました。『週刊ダイヤモンド』2009年12月5日号です。
 この特集号のためだったんですね。しばらく前、研究所に「労働組合の財政についての資料はありますか」という取材の電話がかかってきたのは……。

 この『週刊ダイヤモンド』の特集にも、大原社会問題研究所の刊行物が使われています。35ページにある「表 労働組合戦後60年史」の「参考文献」として挙げられている『社会・労働運動大年表』です。
 この『大年表』は、労働旬報社(現・旬報社)から出されていて、これに、『日本の労働組合100年』と『日本労働運動資料集成』を加えた3点を、私たちは「旬報社3部作」と呼んでいます。現在、これ加えて『社会労働大事典(仮題)』の刊行も準備していますので、いずれ、「旬報社4部作」になるでしょう。
 たまたま昨日、この『大事典』の編集会議が開かれました。今年最後の会議だったので、終わってから忘年会に行きましたが……。

 それはともかく、この『週刊ダイヤモンド』の特集記事で残念なのは、現在までに出された「旬報社3部作」のうち『大年表』しか参照しなかったようだということです。他の『日本の労働組合100年』の「組織系統図」や、『日本労働運動資料集成』の別巻を参照していれば、あのような間違いはなかったでしょうに……。
 というのは、46ページの「離合集散送り返し 戦後の労働組合再編の歴史」の図に大きな間違いがあるからです。労働組合の系統図の最後のところで、「全労協」と「全労連」が入れ替わり、逆になっています。

 「統一労組懇」の後継組織は「全労協」ではなく「全労連」だということは、日本の労働組合運動について多少の知識を持っていれば、すぐにわかることです。これは、あまりにも初歩的な間違いですから、「旬報社3部作」を見なくてもすぐに気づくに違いありません。
 ということは、『週刊ダイヤモンド』の記者さんは、そのような知識を持たない人々だということになります。そのような記者や週刊誌が労働組合についての大きな特集を組んだということに、私としてはある種の感慨を覚えてしまいます。

 「労働組合の腐敗」という表題からもわかるように、特集の内容は労働組合運動に対して好意的なものとはいえません。しかしそれでも、このような週刊誌に労働組合が特集として取り上げられたことには意味があると思いますし、「民主党パーティ券を購入した労組一覧」「連合傘下の産別労組の集票力」「労組の政治団体から政治献金を受けた主な民主党議員」「ひと目でわかる! 労組業界勢力図」「労働貴族の呆れた実態」などの興味深い図表や事実も紹介されています。
 
 たとえば、旧JPU(日本郵政公社労働組合)の幹部の年収は「単純平均では、1人2500万円」で「事務次官並みの好待遇」(39頁)だといいます。また、「NTT労組が積み上げたスト資金は前期末で548億円」(40頁)だそうです。
 548億円ものスト資金があっても、ストをする可能性はありません。この資金をどうするのでしょうか。
 スト用の「闘争資金」なのですから、「闘争」用に使うべきでしょう。0.1%の利子でも、5480万円になりますから、この利子だけでも、全額、非正規労働者の運動のためにカンパしたらどうでしょうか。

 年収が高くてもスト資金が積み上がっても、それ自体が悪だというわけではありません。それに見合った運動を指導したり、展開したりすれば良いのです。
 労働運動の発展のために役立てるべき資金が生かされないとき、それは無駄金になります。「労働貴族」とか「恐竜労組」などと後ろ指を指されないために、そのお金をどう生かすのか、真剣に考えるべき時ではないでしょうか。