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12月20日(日) 労働総研創立20周年記念シンポジウムへの参加 [労働]

 昨日、労働運動総合研究所(労働総研)http://www.yuiyuidori.net/soken/の創立20周年を記念してのシンポジウムとレセプションに出席してきました。レセプションでは、「労働総研創立20周年、おめでとうございます。私どもの研究所は、それよりも少し古くて、今年、創立90周年を迎えました」と、挨拶させていただきました。

 労働総研は、20年前に全労連が結成されたのにともない、1989年12月11日に創立されました。「運動の発展に積極的に寄与」することを目的にした、全労連のシンクタンクにあたります。
 最近では、「大学生の労働組合観について」のアンケート調査や大企業の「内部留保」についての試算と緊急提言などを行っています。とくに後者の試算では、「内部留保が急膨張したのは1998年度以降」で、それからの「10年間で218.7兆円も積み増しし、2倍以上になっている」ことを明らかにしてマスコミの注目を浴びました。
 この試算は『2010年国民春闘白書』に詳しく掲載されていますが、その内容は『日刊ゲンダイ』にも引用され、記事になっていました。私の札幌学院大学での講演で使わせていただいたのが、この記事です。

 記念シンポジウムは「人間的な労働と生活の新たな構築をめざして」というテーマで、牧野富夫日大名誉教授(労働総研代表理事)をコーディネーターに、ダイハツ雇用問題を考える会の柴田外志明さんが「トヨタ式労務管理下の労働現場」、ジャニック・マーニュ共立女子大教授が「フランスの労働者家庭とその生活」、暮らしと経済研究室主宰の山家悠紀夫さんが「働くルールの確立と日本経済」、小田川義和全労連事務局長が「労働組合の課題とたたかいの展望」について、それぞれ報告されました。
 最初に問題提起された牧野先生は、90年代の半ばからおかしな社会になってしまったことを指摘され、「経済的ゆとり、時間的ゆとり、心身の健康」の重要性を強調されました。
 柴田さんは、トヨタ式の労務管理が進んでいるダイハツの労働現場におけるSSC(シンプル・スリム・コンパクト)化の問題点を明らかにしました。その中で、欠陥車に対するリコールの増大は人を育てていないところに原因があること、それによって100億円の損失が出ているが、このような問題は非正規労働者を正規化して技術力を向上すれば解決できることだと発言されたのは、大変重要な指摘です。

 フランスから日本にやってきて共立女子大で教えているマーニュさんは、フランスでの子育てに対する手厚い支援措置を紹介されました。日本で生まれたお子さんがフランスの大学で学び、1年間にかかったお金がたったの3万円だったと発言されたときには、会場から大きなどよめきが漏れました。夏休みにお子さんが参加した1カ月のサマーキャンプも、費用はたったの4万円だったそうです。
 山家先生は、企業が儲かるような構造に改革すれば経済は活性化するというのが構造改革で、それは全くの嘘だったとして、労働や生活に関わるどの統計も98年から悪化し続けていることを指摘されました。また、日本の労働者では午後6時までに帰宅する人が6.8%しかいないのにスウェーデンでは70.9%が帰宅していること、逆に、午後8時以降帰宅する人が日本では61.4%もいるのに、スウェーデンではたったの1.8%にすぎないことが紹介され、彼我の違いに唖然とさせられたものです。

 労働運動の課題と展望について発言された小田川さんは、労働時間の弾力化や派遣労働の拡大など、時短や雇用増という一見良さそうに見える政策が打ち出されると同時に、その抜け道も具体化されてきたと発言されました。これは重要な指摘だと思います。
 また、雇用の安定、生活できる働き方の実現、各種セーフティーネットの整備、社会保障の底上げなどの課題を示し、多国籍化や国際化の下での公正な競争基準、非正規労働者の組合加入による組織率の向上、温暖化防止のための深夜営業の是正など環境に優しい働き方の実現などを手がかりに新たな運動の高揚をめざしたい、春闘との関連では、景気後退による深刻な影響が出てきているけれど、「今こそ賃上げを」という世論を盛り上げたいとの決意を示されました。

 外需依存による景気悪化やデフレ・スパイラルからの脱出のカギは、賃金を上げて可処分所得を増やし、内需を拡大することにあると思います。不況宣伝に惑わされたり、萎縮したりせず、攻勢に転じてもらいたいものです。
 なにしろ、大企業の内部留保は「10年間で218.7兆円も積み増しし、2倍以上になっている」のですから……。支払い能力がない、などと言わせてはなりません。