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12月10日(木) 労働組合の組織率も反転した [労働組合]

 嬉しいじゃありませんか。「反転の構図」に、また新しい項目が付け加わりました。
 長年の間、低下を続けていた労働組合の組織率が上昇したのです。このような形での反転こそ、私が密かに期待していたことです。

 厚生労働省は、全国の労働組合の推定組織率(雇用労働者に占める労働組合員の割合)が6月末現在で対前年比で0.4ポイント増の18.5%だったと発表しました。1976年以降減少を続けてきた労働組合の組織率が、34年ぶりに上昇へと反転したのです。
 報道では、組合に入っていない契約や派遣などの非正規労働者が不況で大量に失業したために雇用労働者が110万人減って5455万人となったのが主な要因であると指摘されています。分母が減ったから、組織率が増加したというわけです。
 しかし、それだけではないでしょう。分子となる労働組合員数も1万3000人増え、労働組合員は1007万8000人となっているのですから……。

 なかでも、パート労働者の組合員数は8万4000人増えたといいます。それだけ増えたのに増加数が1万3000人だというのはおかしいと思われるかもしれませんが、退職したり辞めたりクビを切られたり、ということで組合員が減っているからです。
 労働組合員の組織率が増えるためには、減少を上回る数の人々が労働組合に入らなければなりません。また、分母となる雇用労働者がその増加率を上回るほどに増えないことも必要です。
 今回は、一方で分母となる雇用労働者が減り、他方で分子となる労働組合員数が増えたために、前年度の組織率を0.4ポイント上回ることになりました。組合員を増やした労働組合の努力を高く評価したいと思います。

 私は、『日本労働研究雑誌』10月号の巻頭言として、「戦後労働運動の第3の高揚期を生み出す新たな条件が生まれている」という論攷を、期待を込めて書きました。その一つの表れが、今回発表された労働組合組織率の反転です。
 この論攷では、「戦後第3の高揚期を迎える可能性と条件をもたらすかもしれない」として、「非正規労働者の多くは、既存の労働組合に加入したり、新たに労働組合を結成したりしている」ことを指摘しました。今回の厚生労働省の発表は、この私の直感的な指摘を、事実をもって裏付けたことになります。
 今年が「第3の高揚期」となることを願っています。組織率だけではなく、労働組合運動自体の大きな高揚を期待したいものです。

 なお、この労働組合組織率の反転が「34年ぶり」であったことにも、注目すべきでしょう。34年前といえば、1975年のことになります。
 これについても私は、「75年に8日間にわたって実施された『スト権スト』は、戦後労働運動が攻勢から守勢へと追い込まれる分岐点になった」と書いたことがあります。山田敬男さんが書かれた『新版 戦後日本史-時代をラディカルにとらえる』の書評で、雑誌『経済』の2009年8月号に掲載された論攷です。
 ここにも書いたように、戦後労働組合運動は大きく二つの時期に分かれるというのが、私の理解です。1975年を境に、攻勢から守勢へと転換したのです。

 この労働組合運動の攻勢から守勢への転換にともなって、労働組合の組織率も1975年を境に上昇から減少へと転換したということになります。そしてそれが、今年2009年に、34年ぶりに上昇へと転じたというわけです。
 戦後労働運動の守勢の時期は終わったのでしょうか。攻勢へと転ずる時期が訪れたのでしょうか。
 少なくとも、それを期待させるような朗報です。今後、雇用労働者が増えてもなお、労働組合組織率が上昇を続けるような本格的な反転が訪れることを願っています。

 そうなれば、「戦後労働運動の第3の高揚期」は、現実のものとなるでしょう。大きな期待を抱きながら、今後の労働組合運動の推移を見守りたいと思います。